ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。同人・出版活動の報告を含みます。

コミティア126(2018/11/25) た13a(壁)で参加告知

2018/11/25(日)開催予定のコミティア126に、サークル参加する予定です。今年は2月に参加して以来となります。



コミティア公式・126開催概要


コミティア126・頒布予定物

コミティアは商業出版の持ち込み(著者の本)がOKなので、『日本の執事イメージ史 物語の主役になった執事と執事喫茶』と『日本のメイドカルチャー史』を持っていきます。



また昨年制作したポワロ本も持ち込みます。



※『英国執事の流儀』は手元に在庫がないので、今回は持ち込めません。

※本が多いので、種類を今回は絞ります。



『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻(ドラマに登場する執事、メイドに特化した解説本)1,000円
『英国メイドがいた時代』(ポワロの時代を含むメイド衰退の歴史資料本)1,000円
『日本の執事イメージ史』星海社から出版1,300円
『日本のメイドカルチャー史』上巻星海社から出版2,500円
『日本のメイドカルチャー史』下巻星海社から出版3,500円
『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』(メイド好きが語るメイドブーム)1,000円
『屋根裏の少女たち Behind the green baize door』ワンダーパーラーカフェとのコラボ)500円

『日本の執事イメージ史 物語の主役になった執事と執事喫茶』校了

昨日、星海社から刊行予定の『日本の執事イメージ史 物語の主役になった執事と執事喫茶』が校了となりました。新書ながらも384ページと分厚く、約20万字以上書いたところを14万字ぐらいまで削り込みました。税抜き1300円の予定で、8月末発売です。

どのように日本では漫画や小説で執事が描かれており、そこから執事ブームと呼ぶべき「執事が主役の作品の爆発的増加」が生まれたのかを、丁寧に追いかけました。元々、「日本のメイドブーム」研究が本書執筆のきっかけであり、メイドブーム同様に、突然、執事ブームが生じたわけでもありません。ブームに至るまでに、表現が少しずつ増えていく「トレンド」があり、その積み重ねが臨界点を超えたときに、「ブーム」として観測されて、拡散していく、その様子を描き出しました。

英国屋敷での暮らしと、そこで働く家事使用人の研究から始まった活動は、講談社から『英国メイドの世界』の出版に結実しました。同書では英国メイドや執事、ガーデナーなどを詳細に扱いました。その後、日本の女中や華族の生活、並びに世界中の国々のメイドの調査を始めつつも、縁があって「日本のメイドブーム」に踏み込み、『日本のメイドカルチャー史』を書くこととなりました。

その『日本のメイドカルチャー史』執筆に観測できたのは、同時代に発生していた「執事ブーム」でした。そこから作品で描かれる執事と実在の英国執事を比較するはずが、明治時代以降の日本の華族の家にいた「家令」や富裕層の家にいた「執事」、あるいは「バトラー職」を比較したり、「メイド喫茶ブーム」考察で行ったように大宅壮一文庫でキーワード「執事」に紐づく雑誌を全部読み、日本の雑誌上で語られた執事イメージの多様性をお伝えしたりする内容になりました。

その中で見つけた記事のひとつは、私がこの研究活動を始める前となる1997年の大学在学時に読んでいたものでした。2002年に刊行した2冊目の同人誌『ヴィクトリア朝の暮らし 貴族と使用人(一)』の「執事」の解説では、この記事を思い出して、内容について触れています。そこから2018年になって、この記事と再会し、執事の解説に使うことになりました。

学生時代に読んで記憶にあった雑誌の「執事」記事を、約20年ぶりに読む巡り合わせに驚くとともに、「英国執事の1980年代以降の状況」を知ることにもなりました。さらに、「世界中の国々のメイドの調査」をしていたおかげで、英国執事と王室に関する記載があるテキストも見つけており、今回、取り込むことができました。

というように、これまでの研究が積み重ねって成立している本です。

華族の家令」の調査はまた難航しました。これも、近代日本の女中(メイド)事情に関する資料一覧にまとめていたので少し貯金があったものの、その後、だいぶ調べ直すことになりました。この辺が読んだ資料の大半です(あとは電子書籍国会図書館でのコピー)。

華族の家に家令がいて、主人たちの目から見てどういう仕事をしていたのか」が語られる資料は出ていますが、英国執事や英国家事使用人と同じような分量で「職業・仕事」として商業出版でしっかりまとまった形では出ておらず(天皇家の侍従は別)、経験者の日記や家政の記録が幾つかあることは確認できていますが、「それだけを扱った本」ではないのです。

新書の本文では触れませんでしたが、「志賀直哉の祖父・志賀直道は、旧相馬中村藩主相馬家の家令を勤めていた」という話もあります。
http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/creator/70456.html


この辺りの「情報はあるけど、欲しい切り口だけでまとまった情報がない」という状況は、自分が「英国メイド研究」をするために、英書を取り寄せ始めた頃を思い出させました。あの時、日本の本だけを読んでいた時は、あちこちのいろいろな資料に家事使用人の情報が点在していて、「家事使用人だけを解説する本」が存在しませんでした。なので、英書でそうした本が山ほどあることを知った時は、すぐに取り寄せました。誰かが「家令」や「華族の家にいた執事」でも、将来、手をつけてくれることを願いします。

なお、華族関係の資料のリストと内容紹介などのコラムは、別の機会に更新します。


いずれにせよ、ほぼ休みなく、2年ほど本の執筆・研究(『日本のメイドカルチャー史』と、2017年冬コミポワロ本、そして今回の『日本の執事イメージ史』)していたので、しばらくのんびりします。

『チャーチルの新・秘密エージェント』と、英国の暮らし再現ドキュメンタリー/リアリティーショー

はじめに

英国の屋敷っぽい風景があったので、何気なく第1話を見始めたNetlifxオリジナル番組『チャーチルの新・秘密エージェント』は、1940年代の時代を再現し、そこで第二次大戦中の英軍が組織した、敵地に潜入して工作を行う特殊作戦執行部(Special Operations Executive、SOE日本語版wikipediaは充実していましたので、FYIで)として、一般の応募者が当時のSOEと同じ選考試験を受け、さらに通過者はSOEとしてのトレーニングを受けるという番組です。

この番組は、英国で定番化している「一般人が参加するリアリティーショー」の観点と、「歴史を伝えるドキュメンタリー」の観点、そして「当時の技術・手法」を再現する番組として、英国で数多くある番組の系譜として、非常に面白いものでした(日本では、『ザ!鉄腕!DASH!!』がこれに近しいでしょうか)。

英国が好きな人、ミリタリが好きな人に、おすすめです。

「秘密エージェント」の訓練を受ける現代人

第1話では「選考過程」として、1940年代の格好をした、様々な職業経験・バックグラウンドの14名の現代人が「スコットランドのあるカントリーハウス」(あらすじでは、人里離れた邸宅)に集められて、エージェントとしてのスキル・資質を審査されました(外国語、勇気、判断力、適応力、身体的強さ、リーダーシップ、観察力など)。

実際にあった4日間のSOEの選考をできるだけ再現し、参加者をフィルターにかけるプロセスを担うのは、番組に協力する軍隊出身者たちの教官・選考官と、SOEを研究する歴史家です。彼らは多様な軸で日々審査を行い、秘密にされていたSOEの選考・トレーニングを体験して、「エージェント」として鍛え上げていくのです。

面白かったのがテストの内容で、たとえば記憶力や観察力をチェックするテストでは、「建物の地図を覚えて」と記憶力を試す教室でのテストのように始まりますが、突然、「追いかけられている人」と「銃を撃つ人」が乱入し、教室の中を通り過ぎていくのです。あまりの出来事に反応は様々ですが、教官は冷静に「今、撃たれた銃の回数は?」「二人組のうち、どちらが衣服をはだけていたか?」など、本番の審問を始めました。

審査過程で様々な個性も出てくる中で、私が一番気に入ったのは「チームを組み、いかだで、池の真ん中にある箱を回収する」テストです。樽や木の棒、ロープ、櫂などがある中、リーダー役の人が指示を出しながらいかだを組み上げ、回収に向かうのですが、最初の班は「全員で乗り、途中で転げ落ち、いかだも解体」されて、失敗します。

ところが、第二班ではひとり特殊な人がいて、「池の周りを歩き回って観察」して、「隠されていたいかだ」を発見しました。そして前の班とは異なる結果を出すのです。

勇気を試すために、高い木と木の間に渡したロープを渡るテストもありました。より高い場所と、低い場所と、ふたつの渡る場所があり、どちらを渡るかで結果も変わるのです。

最終日には、「誰と一緒に任務をしたいか」だけではなく、「誰とは組めないか」を各人が全員の前で発表するという、テストも課されました。ここは、リアリティーショーの系譜を受け継ぐものでしょう。

歴史番組としての構成

もうひとつのユニークさは、「第二次世界大戦の当時を、SOEという視点で伝える」歴史ドキュメンタリーとしての要素です。SOEを創立した戦時経財相ののヒュー・ダルトン(エージェントによる敵地でのゲリラの組織化・遂行)や、SOEが実戦投入されるまでの経緯が語られます。

当初、敵地への潜入への協力に必須となるイギリス空軍は「暗殺者の一般人への偽装は信義に反する」として反対し、海軍も「海峡より先へ輸送しない」と、非協力的な時期がありました。

実在した隊員の写真やプロフィールも、合わせて紹介されます。そこには、祖国フランスのために志願した女性がいたり、教員だった背景の志願者が敵地で武装レジスタンスを組織する指揮官になっていたりと、「普通の人の戦争との関わり」も伝えられます。

番組では、1941年のポーランド侵攻後、ポーランドからの避難者・亡命者が英国の防空に貢献した経緯もあり、ポーランドへの潜入工作にSOEが起用されることが決まり、イギリス空軍の協力で、3名がポーランド南部に降下しました。

第1話はここまでで、第2話「戦闘技術」として武器・爆発物の扱い、近接格闘術や作戦行動、第3話「サバイバル訓練」で極限まで追い込まれ、第4話「卒業試験」で開錠や暗号、尋問への対応、そして第5話では厳選されたメンバーで24時間の最終計画を遂行する、というものになっていきます。

まだ全話を見ていないのですが、「技術の再現」「リアリティーショー」、そして「SOEの歴史」がこの後も描かれていくのでしょう。

個人的にふと思ったのが、もしもこれば「番組」ではなく、「本当のエージェント」を探すもので、最後に実戦に投入されるというものです。それはフィクションの題材にもなるでしょうし、既にあるとは思いますが。

英国で定番化している「暮らしの再現+歴史+リアリティーショー」

補足で、なぜ私がこの辺りの番組を見ているかについて。

私個人は英国メイドや執事を研究する立場から、「過去の英国の暮らしを再現・体験するドキュメンタリー」が大好きで、英国ヴィクトリア朝の料理を再現しつつ当時を解説する『The Victorian Kitchen』や、屋敷の菜園(キッチンガーデン)を当時のガーデナーの技術で野菜や果物を育てる『The Victorian Kitchen Garden』、あるいはヴィクトリア朝の農場の技術を再現する『Victorian Farm』や、薬局を描く『Victorian Pharmacy』など、このジャンルを見ています。

そうした主流の「技術の再現と、当時歴史を解説するドキュメンタリー」に加えて、英国では一般人が作品に応募・参加する「リアリティーショー」が根強く存在します。

私がそのジャンルに初めて出会ったのが、1900年の中流階級の生活を家族で体験する『THE 1900 HOUSE』で、以降、エドワード朝の貴族の邸宅で「主人たち家族」と「メイド・執事など家事使用人」を体験する『MANOR HOUSE』(The Edwardian Country House)、1940年代の戦時下の暮らしを体験する『THE 1940s HOUSE』といった作品もあります。

日本では恋愛系では『あいのり』や、『バチェラー・ジャパン』などもありますが、英国では「当時の生活と歴史ドキュメンタリー」とを融合させたジェーン・オースティンの『高慢と偏見』をテーマにしたリアリティーショー、『REGENCY HOUSE PARTY』の放送がありました。軸が難しく、あまり面白くなかったので全く話題になりませんでしたが。

他にもいろいろな時代があり、中世の農場を再現する『Tales From The Green Valley』や、『Victorian Farm』を主導したRuth Goodmanが中世のお城の生活の再現を試みる『Secrets of the Castle』などもありますし、ヴィクトリア朝シリーズの新作・パン屋さんを扱う『Victorian Bakers』や、ある通りを舞台に家族で商店を営み、年代ごとに取り扱う商品が変化してスーパーマーケット的な業種が勝利を収める『Turn Back Time: The High Street』などもあります。

「接収された屋敷」

「人里離れた邸宅」なのは、当時、軍が屋敷(領地に囲まれたカントリーハウスを含む)を接収して軍事施設に利用した故事にならったものです。第二次大戦中、人里離れた領地にある屋敷は人を集める軍の駐屯地としての利用に適しており、接収されました。建物はダメージを受け、戦後、それが理由で取り壊した屋敷も多くあり、研究書『Requisitioned: The British Country House in the Second World War』なども出ています。

Requisitioned: The British Country House in the Second World War

Requisitioned: The British Country House in the Second World War

この戦時下の屋敷を舞台にした私が思いつく作品では、『Brideshead Revisited』(ブライズヘッド再び)と、NHKで放送した戦時下の生活での事件を描いた『刑事フォイル』などがあります。

終わりに

この辺は、そのうち、紹介するテキストを書いていきます。私の情報収集力が低いので日本での類似した展開ですぐ思い起こされるのが、『ザ!鉄腕!DASH!!』だったというのが、少し驚きでもあります。

過去の伝統料理の再現などは様々に見かけることもありますが、「その時代の生活レベルに、一般人を放り込み、数週間〜数ヶ月生活をさせる」という番組は、自分の情報圏内に入ってきません。ただ、私が今回取り上げた作品群も、10-100万人にひとりしか日本では知らなさそうなので、このジャンル自体がそういうものかもしれません。

Netflixオリジナルでは、そのあたりの生活技術再現+歴史ドキュメンタリー系を期待したいと思います。

なお、日本の生活史を描くものは、書籍ではいろいろとあります。今回のテーマに近い強いものでは「昭和のくらし博物館」の小泉和子氏による、『くらしの昭和史 昭和のくらし博物館から』や、『パンと昭和』、そしてメイド研究者として欠かせない『女中がいた昭和』をあげます。

パンと昭和 (らんぷの本)

パンと昭和 (らんぷの本)

女中がいた昭和 (らんぷの本)

女中がいた昭和 (らんぷの本)

「日本の執事ブーム」を解説する新刊『日本の執事イメージ史』を星海社から出版予定・告知

『日本の執事イメージ史 物語の主役になった執事と執事喫茶』 2018年8月24日刊行予定

タイトル通り、日本の創作(漫画、アニメなど)における「執事のイメージ」が、いつぐらいから変わり、現在の形にいたったのかを解説する『日本の執事イメージ史 物語の主役になった執事と執事喫茶』を、星海社から2018年8月24日刊行する予定です(この記事を書いている時点で最終の著者校閲の資料待ち)。





(アマゾンの画像は旧タイトルで入っていますので、そのうち修正されます)


執事ブームとメイドブームの類似と相違

本書誕生のきっかけは、『日本のメイドカルチャー史』にあります。日本のメイド作品を調べていると、執事が同僚として出てきており、執事ブームを考察する項目を作りました。英国メイド漫画の金字塔『エマ』でも、メイド喫茶作品となる『会長はメイド様!』でも、枚挙にいとまがないほどに、メイドの登場と重なって、執事も登場していたのです。



とはいえ、「執事ブーム」を一定のボリュームで書くと、「メイドブームの本」としては収まりが悪くなるため、星海社の太田さんと櫻井さんから「新書にしましょう」とご提案をいただき、切り離すことになりました。とはいえ、言及した範囲が限定的だったため、その後、半年間を使ってほぼ書き下ろしになり、資料本も数百冊、雑誌記事も数百記事を取り寄せて読むことになりました。



全体としては「日本の執事ブーム」を解説する本となり、「1990年代のメイドブーム」と比較をしながら、どのように執事イメージが変化し、「執事喫茶」が生まれ、世の中へイメージが伝わっていったのかを扱いました。


「日本の執事」であること

元々、私が専門とする英国家事使用人の職業研究でも、メイドと執事は同じ職場にいる(執事がいるかは限定的ですが)ものであり、私も2009年に『英国執事の流儀』という執事専門同人誌を作っていますし、『英国メイドの世界』もそのタイトルに反して?、執事やフットマン、ヴァレット、コーチマン、ガーデナーやゲームキーパーなど屋内・屋外の男性使用人の職業解説も行っており、「執事」という職業自体は私の研究フィールドの範囲内でした。



ところが、「日本の執事ブーム」として見た場合に、最も難しかったのは、日本には「執事」という言葉が先にあることです。「英国執事=butler(家事使用人)」が後付けで「執事」を割り当てられたがために、「執事」と書かれている場合に何を意味するのかは、一対一ではないのです。このため、日本における「家事使用人としての執事描写」は、旧来の意味合いの「執事」を含んで描写されることがありました。



「メイド」の場合、「女中」「女給」など対応する言葉はありますが、そのままの「メイド」という言葉では、メイドブーム以前には普及していません。ここに、大きな差があります。



以下、日本における「執事」の意味です。「家事使用人」の言葉はありません。



  • ① 身分ある人の家にあって、庶務を執り行う人。
  • ② 内豎所ないじゆどころ・進物所しんもつどころなどの庶務職員。
  • ③ 院司・親王家・摂関家大臣家などの家司けいしの長。
  • 鎌倉幕府の職名。
    • ㋐ 政所まんどころの次官。
    • 問注所の長官。
    • ㋒ 執権しつけんの別名。
  • 室町幕府の職名。
  • 江戸幕府若年寄の別名。
  • ⑦ 寺社で、事務に当たる役。
  • ⑧ 〔deacon〕 キリスト教会の職務の一。聖公会では司祭、ルター派教会では牧師に次ぐ聖職者の職務。長老派・会衆派教会では信徒の職名。聖礼典の補助、会計管理などを行う。正教会では輔祭ほさいという。 → 助祭
  • ⑨ 手紙の脇付わきづけの一。貴人への手紙のあて名に添える。

執事 大辞林:第三版より引用



「執事本出版するよ!」という情報に対して、「(足利尊氏の執事の)高師直いるの?」という反応も見ました。さすがにこの領域すべてを扱うのは困難であるため、「家事使用人としての執事」にエリアを限定しています。



ただ、例外として、「身分ある人の家にあって、庶務を執り行う人」に該当する「家令」など、「華族の家を仕切った家職」について言及をしました。これは英国貴族の家にあった職種「house steward」が「家令」と訳されることや、明治以降に西洋化が進んで洋館に住む生活様式を取り入れていった華族家を運営する「家令」のイメージが、「日本の執事イメージ」形成に影響を与えているためです。



「家事使用人としての英国執事的な仕事描写」は、1990年代に少しずつ、日本の創作で見られていったものと、本書では考察しています。そして、最も大きなテーマが、「執事の低年齢化」です。執事が「青年」「少年」となることで、それまで脇役だった執事が主人公になることができました。これもメイドにはないトレンドです。そして2006年の「執事喫茶の誕生」以降、「執事」の言葉には「執事喫茶の店員」の意味も加わりました。そうした現実の動きと創作イメージとが混ざり合う点では、「メイド喫茶」が生まれてメイドのイメージが塗り替えられたことと重なりがあります。



面白いことに、英国でも「執事」の意味が変わりました。絶滅寸前といわれた執事は、執事養成学校の誕生により、ホテルを職場とする「ホテルバトラー」としての機会が大きく広がり、さらにはホテルバトラーよりも長い歴史を持つ「コンシェルジュ」のイメージも吸収していきました。偶然にも執事ブームと重なる時期に、日本でも「コンシェルジュ」の言葉が認知・流通していく「ブーム」が生じていました。



新書という制約もあって書ける範囲は絞られているために、広げられる範囲・深められる範囲は多いと思いますが、まずは「きっかけ」として、この領域へ関心を持つ人や、執事が好きな人がより執事を好きになる一冊となれれば幸いです。


目次

詳細の目次は後日出しますが、以下、概要での目次です。




はじめに

第1章 英国執事と日本の執事

第2章 執事トレンド ブーム前夜の執事の低年齢化と主役化

第3章 執事ブーム元年 2006年の執事喫茶誕生

第4章 執事ブーム1 2006年からの執事作品増加とその広がり

第5章 執事ブーム2 ミステリと児童作品の執事

第6章 現代の執事イメージ

エピローグ



それぞれの章について、簡単に示すと次のようになります。



 第一章で、元々の私の専門領域「バトラー」と、それに対応する「明治以降、屋敷で働いた日本の執事」を扱います。



 第二章から「執事ブーム」へ至る「執事トレンド」として、「バトラー」が描かれた漫画やアニメと、「日本独自の執事」が登場した広範な作品を扱い、脇役だった執事が低年齢化、主人公化する傾向を描き出します。



 第三章では、執事イメージの広がりに大きな役割を果たした最初の執事喫茶スワロウテイル」の誕生の経緯と報道と、もう一つの執事喫茶「バトラーズカフェ」を扱います。



 第四章では、同じ2006年以降の「執事ブーム」を牽引する『メイちゃんの執事』、『黒執事』に代表される執事作品の増加傾向と、2000年代から2010年代作品を中心に、様々な軸の執事作品を解説します。



 第五章は『謎解きはディナーのあとで』の大ヒットとミステリ作品・探偵作品で脇役だった執事が、探偵助手・探偵となっていく変化と、児童向け作品の執事にフォーカスします。第二章で語る対象からミステリ作品は除外し、ここで一気に解説します。



 第六章は企業のビジネスで活用されるブランドまで進化した「執事」のイメージと、英国で1980年代から登場する「執事養成学校」とホテルの場での広がりやコンシェルジュとの違い、そして「現代の執事」の広がりを考察します。


コミティア123参加予定 サークルSPQR:ね43b

2010/02/11(日・祝)開催予定のコミティアに、サークル参加する予定です。前回11月は風邪で欠席し、それ以前の参加が4年前なので、久しぶりの参加となります。主に同人の場でお会いしてきた方達への出版報告、という位置付けになります。



コミティア公式・123開催概要


コミティア123・頒布予定物

コミティアは商業出版の持ち込み(著者の本)がOKなので、『日本のメイドカルチャー史』を持っていきます。



また冬コミ新刊のポワロ本も持ち込みます。



※『英国執事の流儀』は手元に在庫がないので、今回は持ち込めません。

※本が多いので、種類を今回は絞ります。



『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻(ドラマに登場する執事、メイドに特化した解説本)1,000円
『英国メイドがいた時代』(ポワロの時代を含むメイド衰退の歴史資料本)1,000円
『日本のメイドカルチャー史』上巻星海社から出版2,500円
『日本のメイドカルチャー史』下巻星海社から出版3,500円
『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』(メイド好きが語るメイドブーム)1,000円

2017年の振り返りと2018年のロードマップ

はじめに

今年も恒例、これまでの活動を振り返ります。去年2017年には、振り返りをできていませんでした。



2年前:2015年の振り返り(2016/01/02)

3年前:2014年の振り返り(2015/01/01)

4年前:2013年の振り返り(2014/01/01)

5年前:2012年の振り返り(2013/01/01)


出来た事

1. 『日本のメイドカルチャー史』出版

ここ数年、振り返りに記していた最大級の課題が「日本のメイドブームに関する本を作る事」でした。それをようやく、2017年に『日本のメイドカルチャー史』星海社から出版する事で実現できました。



英国メイド研究から始まった私の研究活動が、様々なきっかけで「メイド研究」へと広がったここ数年の成果物として、日本のメイドブームを理解する上でもまとまった先行研究を作れたと思います。ただ、これは始まりの足場で、「メイドカルチャー全史」へ近づけるように、様々な人の言葉を集めていくのが次の課題です。


2. 『名探偵ポワロ』の同人誌を初めて作る&理想に近い同人誌

今年のほとんどの時間は出版の準備に使っていました。その出版が終わった後、ゆっくり休む予定が、コミケに申し込んでいたために、同人誌を作る必要がありました。申し込んだ時は『日本のメイドカルチャー史』を補完する内容で、裏話的なものを書こうと思っていたのですが、いざ作ろうと思った時、作りたいと思えたのは『名探偵ポワロ』の同人誌でした。



冬コミ新刊『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻



元々、同人サークル「制服学部メイドさん学科」の同人誌で公開されていた、ドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』に登場したメイドリストに刺激を受けて、2年前から資料の整備・準備を行っていたものですが、当時はリストだけのはずでした。しかし、ウメグラさんに参加いただく中で豊富な挿絵がある、ポワロの研究同人誌の企画へと生まれ変わりました。


得られた事

1. 『日本のメイドカルチャー史』出版時に武内崇さんのメイドイラストを帯に描いていただける

繰り返しとなりますが、私が大ファンの武内崇さんに、『日本のメイドカルチャー史』の帯に、「メイドのイラスト」を描いていただけました。オリジナルのメイドと、代表作となる『月姫』から「翡翠琥珀」です。





2017年はTYPE-MOONの公式サイトで、お正月に武内様の絵によるメイドセイバーの年賀状が公開されたり、8月にはメイド・オルタがFGOで実装されたり、明確に「武内さんとメイド」に関するトレンドが間近に感じられました。



人生で最大級の出来事でした。


2. NHKのラジオに呼ばれて壇蜜さんにお会いする

「メイドを知りたい」ということで、お声がけいただきました。詳細はNHKラジオ第1『DJ壇蜜のSM( Selected Music)』vol.2 8/17放送 21:05-21:55にメイド解説で出演予定に記載しました。



渋谷のNHKのスタジオに初めて入り、壇蜜さんのお隣に座り、反対側に番組ディレクターの方、そして壇蜜さんの向かいにNHK高市アナウンサーがいらっしゃいました。壇蜜さんがアンミラでのバイト経験があること、かなり「デ・ジ・キャラット」に詳しかったことなど、メイドブームへと繋がる接点に驚きました。



メイド研究をしていたら、2011年には水樹奈々さんに、2017年には壇蜜さんにお会いできました。メイド研究の可能性を感じ入る次第です。


2018年の抱負

冬コミ配布のペーパーに書きましたことを、少し膨らませつつ。時間はかかるものの、だいたい有言実行なので、きちんと形にしていく準備をしていきます。

執事本の出版 from 星海社(進捗:10%)

3冊目の本の出版が決まりました。『日本のメイドカルチャー史』を書いていた時に、同時期の執事ブームについても調べていました。ただ、メイドがメインだったのでバランスが崩れることと、調査不足の観点から掲載を見合わせました。その切り離したテーマが面白いということにて、星海社から出版の提案を受け、新書で作ることになりました。



『日本のメイドカルチャー史』と似たコンテクストを持ちつつ、異なる切り口で書きます。


メイドアワードの創設(進捗:まだ見えていない)

メイド作品を追いかけるのが物理的に無理な段階になったので、作品を表彰するアワードを創設して、メイド作品が集まる仕組みを作る。アワード自体は読者投票も取り入れる。



・主演メイド作品賞:メイドが主役の作品

・助演メイド作品賞:主役ではないメイドがいる作品

・ピンポイントメイド作品賞:単発でのメイド出演

メイド喫茶賞:作品内で出てくるメイド喫茶の描写からの表彰

・殿堂入り作品賞:『エマ』『シャーリー』『まほろまてぃっく』など

・新作品賞:その年に連載を開始、発売した作品のみ限定(続刊がその年に出ても対象外)

・審査員各賞



賞金は、私の自腹です。


メイドライブラリー公開(進捗:交渉中)

メイドブーム研究の時に集めた資料(漫画やラノベが大半。秋葉原系や、ゴスロリ関係の所有雑誌も含む)を公開できる場所を探しています。自分では読んでいない本が多くなっているので、死蔵させないためです。現在、興味を持ってくれている店舗があるので、話を詰めています。



※汚れてしまうことや紛失する可能性があることを前提に、超希少品は出せません。


インタビュー・対談(進捗:実施中)

当事者としてメイドブームを駆け抜けた方達に、話を伺う。話を聞いてみたいのはメイド喫茶の創業者、店員、表現者など様々にうかがいます。年明けに星海社の方で、1回目の対談が公開される予定です。


メイドコラムの寄稿の依頼(進捗:交渉中)

自分以外の詳しい人に、メイドブームの周辺領域を語っていただく計画を進めています。メイド喫茶全体、エロ漫画やニコニコ動画、pixiv、小説家になろうなどのCGMにおけるメイドの出現傾向など。既に周囲にお願いできそうな方が多いので、進行中で、3-4月に幾つか形をお見せできればと思っています。


同人誌即売会(進捗:交渉中)

メイドオンリーイベントを代表する「帝國メイド倶楽部」的なるものを考えています。以前、ちらっとつぶやいた時に、企画に興味を持った経験者の方からお声がけいただいたので、今、実現可能か相談しています。



メイド同人誌が読みたければ、メイド同人誌が集まる場を作れば良いのでは?との思いにて。



あと、個人的には、過去にメイドコスプレをされていた方に、その当時の衣装を着ていただきたいのです。日本のメイド服(コスプレ衣装)アーカイブということで、記念に残せないかと。100人ぐらい集まると素敵ですね(どんなお屋敷だろう……)


メイド喫茶とボコラボイベント(進捗:交渉中)

企画中です。公開できる段階になったら公開します(実施できるかは未定)。


ニュースサイトの創設(進捗:やる気が全て)

メイドアワードをやる前に、まずは企業が公開するメイドウェブ漫画作品などを集めてみたり、数万RTされるメイドイラストをアーカイブしたりと、メイドイメージにまつわる記録の散逸を防ぎつつ、メイドイメージへアクセスしやすい環境の整備を計画中です。


メイドメディアの創設(進捗:やる気が全て)

ここのみ、実現可能性やまだ何も見えていない「夢」です。ヴィクトリア朝をテーマとした創作メディアを作りたいです。創作プラットフォームを作り、メイド作品制作を大好きな作家の方たちに依頼してみたいです。


終わりに

これまでは基本的に「個人で完結する」ことがほとんどでした。今年は、「一緒に楽しんでいただける方」「私の活動と関連しそうな方」を巻き込みつつ、お力を借りながら、世界を広げていきます。



メイドブームを把握するには一人ではとても無理で、人の数だけ形もあります。できるだけ、後の人が研究しやすいように、何かを残していこうと思います。



それでは本年も宜しくお願いいたします。



お会いできる方はお会いできる時に。


冬コミ新刊『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻



26冊目の本です。冬コミコミケ93)の新刊はNHKで放送された、デビッド・スーシェ主演のドラマ『名探偵ポワロ』の同人誌になります。内容はドラマ全70話から、各話に登場する働く人たちとして、「家事使用人」(メイド、執事、庭師など)をリスト化して、個々の立ち位置や着用する制服を、イラストを交えて紹介する本です。



紹介数は「153人」以上です。



今回は「上巻」として35話分までを扱います。本来は第35話「夢」が最後の話数となりますが、代わりに第65話「オリエント急行の殺人」を盛り込みました。また、思ったよりも大きなボリュームゾーンとして、近接する領域の「喫茶店・レストラン」、「ホテル」の制服を着たスタッフも紹介しています。登場機会が多すぎたためです。



単一の作品を扱う同人誌は、サークルSPQRとしての同人活動では初めてです。




タイトル:『『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド〜執事・メイドから、ホテルスタッフ、ウェイトレスまで〜上巻』

著作:久我真樹、装画/デザイン:梅野隆児(umegrafix)様

仕様:A5サイズ、132ページ

内容:解説+イラスト

サークル:SPQRコミックマーケット3日目東6ホールト16bで頒布開始

価格:1000円

Webコミケカタログ:https://webcatalog.circle.ms/Circle/11919725

委託先
COMIC ZIN

メロンブックス



ポワロの時代は1930年代のため、メイド服は日本で見慣れている「クラシックなメイド服」ではありません。そのイメージを物語る動画があるので、ご紹介しておきます。




Ideal Home Exhibition (1920-1929)






同人誌の概要を示すために、以下、同人誌本文から「はじめに」など冒頭部分を、抜粋します。

【はじめに】


 本書は2017年の冬コミの新刊です。



 日本のメイドブームを解説する『日本のメイドカルチャー史』(星海社、2017年)を刊行してから、次に作る本として選んだのはドラマ『名探偵ポワロ』(ITV、1989-2013年)です。私がメイドという職業に強い関心を持つに至ったドラマで、主演デビッド・スーシェ(吹き替えは熊倉一雄氏)は24年の長期間、ポワロを演じ続けました。私の中の「ポワロ」イメージは、デビッド・スーシェのイメージで固定しています。



 私が初めてNHKでこのドラマを見たのは、初放送となる1990年、中学生の頃でした。殺人事件を扱うミステリというジャンルに興味を持ったのも、この作品がきっかけとなりました。高校に進むと、図書館にあった早川書房アガサ・クリスティー作品を読みふけりました。



 そんな私が、ドラマで見た英国の屋敷と家事使用人の研究を行うことになったものの、実際に『名探偵ポワロ』にどれほどの使用人がいたのかを、正確に記憶していませんでした。そこで、数年前に家事使用人のリストを作ろうと思いました。



 この発想は「先行研究」の影響を受けています。同人におけるメイド研究の先駆者、サークル「制服学部メイドさん学科」の同人誌にはNHKで放映した、ジェレミー・ブレット主演のドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』(グラナダテレビジョン、1984-1994年)のメイド登場リスト「グラナダメイドに関する小報告」(めりあだす氏)が掲載されていたからです。この報告は、作品タイトルごとに、「エプロン」「髪飾り」「関与」「備考」として出現するメイドを細かく記載した密度の濃いものでした。



 私がそのリストを初めて見たのは2002年で、「『名探偵ポワロ』でも作りたい」と思ったものの、ドラマが完結したのは2013年となり、だいぶ待つこととなりました。



 とはいえ、全70話の壁は分厚く、どうしようかと思っていた時に、服飾を大学で専攻されていた樹さん(@chez_toi)と知り合い、手伝っていただくことで情報を抽出できました。


■本書の内容:解説+イラスト

 本作品は、「数多くの家事使用人を徹底的に解説しよう」との意気込みで始まっています。しかし、これだけ数多くの人物が登場していながら、「背景としての登場=セリフがわずか」であるため、深い解説をできる登場人物が限られました。その結果、基本的には各話に登場する制服描写がメインになりました。



 この「描写」を分かりやすくするため、本書の表紙デザインとレイアウト、編集を担当してくださる梅さん(@umegrafix)のご協力で、作品に登場する制服を着た人々のイラストを掲載することと相成りました。これにより、ドラマに登場する1930年代の「メイド服」や職業服を、把握する「図鑑」のような本となっています。


■対象となる「働く人たち」

 本書では家事使用人と、彼らと同様に制服を着た人々が働く近接領域のホテルスタッフやレストラン・喫茶店の従業員を話数ごとに取り上げ、その在り方や制服の解説を行います。



 「制服を着て働く人」は、警察官や鉄道職員などにも広げられます。しかし、今回は家事使用人が私の関心領域であるため、近しいサービスを提供する職場で働く職種に限定しました。



 具体的には、家事使用人が働く「屋敷」と類似するサービスを提供する職場は「ホテル」とみなしました。屋敷で人をもてなす紅茶の時間やディナーの給仕を提供する職場としては、「喫茶店・カフェ」や「レストラン」「パブ」「バー」などを対象としました。



 加えて、メイド服とウェイトレスの制服との区別は難しく、ホテルスタッフの制服も家事使用人を想起されるものを含むため、デザイン的な親和性も加味しています。



 なお、仕える形を想起させる「秘書」と、育児を担う「ナース(乳母)」や「ナースメイド」と遠くない「看護婦」の制服も対象としました。


■「働く人リスト」の情報

 基本的には各話で区切り、登場する「腹たく人」を職種、キャラクター名、備考(主に外見年齢)から、登場順で紹介します。名称がない場合は名称を省きました。これに物語上の立場を加え、制服の構成要素を詳述しました。



 外見年齢の識別は難しいため、印象で判断しています。


■対象とする話数と作品

 時間的制約のため、今回は上巻のみを刊行します。この上巻では全70話中の半分となる35話分の解説を行います。対象は、ドラマ版の英国での放送順を参考に第1話「コックを捜せ」から第34話「エジプト墳墓のなぞ」までに加えて、本来は後半で扱う第65話「オリエント急行の殺人」をピックアップしました。



 世界的名作「オリエント急行の殺人」を加えたのは、理由があります。



 第一に本書を作ろうと思ったのは「オリエント急行の殺人」がきっかけだったからです。同作品は家事使用人が大勢出てきます。しかし、彼らが家事使用人だと語ることは作品のネタバレとなるために、今までネットでの発表の機会を持ちませんでした。同人誌ならば許されるだろうと、この機会にしっかりと言葉にしたいと考えました。



 第二に、冬コミ直前の12月にはケネス・ブラナー監督・主演の映画『オリエント急行殺人事件』の公開もあり、比較をしたいと思いました。付け加えれば、2015年1月には三谷幸喜氏による『オリエント急行殺人事件』の地上波放送もありましたので、作品に接している方も多いことで、ネタバレ対象としました。


■留意事項

・原作小説との比較がある場合、早川書房クリスティー文庫(2003年創刊)に準拠しています。また、文中の「初めて」は、原作小説ではなく、ドラマとして初めてを意味します。原作小説とドラマの発表順は、揃っていません。



・ドラマは「ポワロ」表記ですが、クリスティー文庫では「ポアロ」表記となっています。本テキストでは、クリスティー文庫のタイトル記載を表記する場合を除き、ドラマの「ポワロ」表記に準拠します。



・ドラマの映像確認はAmazonビデオの『名探偵ポワロ』第1〜4シーズン+第6シーズンを用いています。人物表記は字幕の表記を用いています。ドラマで人物名やホテル名など固有名詞が不明だった場合は、原作小説を確認して当てはめています。



・登場するキャラクターの全リストは印刷に適さないサイズのため、ネットで公開します。