ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

コラム

メイド喫茶に初めて行ってみたい人向けに、英国メイド研究者が書いてみる

最近、知人との会話の中で「仕事」という言葉をポジティブな意味で使ったら、ネガティブな意味で受け止められて、そのギャップが面白いなぁと思う機会がありました。「その人が使う言葉は、その人がどのような経験をして、見方をしているかで決まる」という…

イメージの中のメイド/メイドが「いて」「いない」現代日本の風景

目次 ・メイドイメージの広がり ・日本のメイドイメージと、「英国メイド本」の相次ぐ刊行 ・『執事とメイドの裏表 ─ イギリス文化における使用人のイメージ』 ・終わりに:メイドイメージを「消費」する時代への興味 ※執事ブームがピークに思えるのですが、…

メイドやヴィクトリア朝を軸としたイメージ形成を巡るブレスト的つぶやきなど

最近、ブログを更新していませんが、Twitterで主にメイドイメージや、メイドイメージとの重なりを持つクラシックなドレス・イメージについて、ブレストをしていました。あるイメージはどのようにして受け入れられているのか、というところへの関心が強く、メ…

「2つの使用人問題」を巡る19世紀末時点での女主人の見解

英国メイドの終焉を語る際には、「使用人問題」という言葉は欠かせません。英語では「The Servant Problem」「The Servant Question」と表記するこの問題は、時代によって「何が問題か」という意味が異なりました。 まず、19世紀末までに表面化した大きな問…

英国王室・王族と縁があった三人の執事

今日はTBS『世界ふしぎ発見』で「ウイリアム王子ご成婚おめでとう記念!英国ロイヤル・カップル秘話」と、英国王室の特集を行うということで、王族に仕えた執事の話を書きます。 これまでに私が調べてきたメイドや執事や多くの使用人たちは直接仕えたり、仕…

NHK朝の連続ドラマ『おひさま』と昭和の家事

このところ、日本の女中事情を調べています。もう少し幅広く明治〜昭和の女性の職業にも目を向けていますが、ちょうどNHK朝の連続ドラマ『おひさま』は戦前の日本を題材としている点で興味軸が重なるところが多く、録画しています。 英国との比較 私は英国貴…

書店・店員様向けの案内を告知するカテゴリを、サイトに新設

前回のコラム書店で本を売る現状認識と著者が提案可能なアクション(2011/02/07)で、「著者が、情報を出す窓口を作る」と書いたので、実際に作ってみました。 まだ、今のトレンドに沿ったフェア的な情報は更新できていませんが、過去に行った書店フェアの情…

書店で本を売る現状認識と著者が提案可能なアクション

本コラムは出版した本に1日でも長く生きてもらうため、著者に出来ることの第3回目です。本を出した著者が何を出来るのかを考えていくテキストです。 第1回目:出版した本に1日でも長く生きてもらうため、著者に出来ること(2011/01/16) 第2回目:本を書店で…

メイドブームを整理していて気付いたこと

前にも少し触れましたが、世の中で伝わる「メイド・イメージ」は限定的で、多様性を伝えるのが難しく思えましたので、整理することにしました。私が個人的に存じ上げる詳しい方々や雑誌、売り上げデータ、コンテンツの発売リストなどの情報から、なるべく「…

家事とメイドが透明な存在であることと

『まおゆう』2巻はかなりメイド回で、料理を行うメイド妹の、料理がもたらす幸福感についての描写が素敵です。何よりも、今回はお腹が空いた状態で読むと危険です。食欲増進的においしそうな料理の描写が多くないでしょうか? かつてギムがお祭りでほおばっ…

本を書店で初めて売る体験から気づいたこと

本コラムは出版した本に1日でも長く生きてもらうため、著者に出来ることの第2回目です。本を出した著者が何を出来るのかを考えていくテキストです。 初見の方は、上記リンクを先にお読みください。 目次 1.はじめに 2.筆者が自分の本をなかなか見つけられな…

日本で描かれたメイドイメージとブームを考えた1年

今年1年は、メイドブームをいろいろと考えていました。以下、Twitterで呟いていたものをまとめていただけていたので、ご紹介です。 メイドブームはいかに発生し定着していったのか? 補足となりますが、以下が今の把握している「断続するメイドブーム」です…

宮崎駿監督アニメの服装とメイド服イメージについて

昨日、『ルパン三世 カリオストロの城』を見ました。クラリスの衣装を見ていて「いいなぁ」と思いつつ(潜入中の不二子の服装もですね)、あらためて「宮崎駿監督的スカート・袖・ドレス」の描写が、ヨーロッパ的でかつクラシカルな雰囲気の衣装の原点のひと…

メイドブーム関連の知識のありか

以前、いろいろとメイドブームへの考察を重ねました。不完全にせよ、書くことで、正確な知識ある方からのコメントをいただけると思ったからです。さながら、自分が「メイドに詳しくない方に語られて、語ろう」と思ったように。 メイドブームの終焉は「衰退」…

メイドブーム関連はひとまずここまでに

いろいろとメイドブーム関係を調べるうちに、「あまり詳しく無い領域」に足を踏み入れてしまいました。元々、「あまり詳しく無い方によって語られることへの釈然としない気持ち」があったことで書き始めましたが、自分が同じことをしつつある、というオチで…

補足・メイドブームの断続性と連続性を考える

目次 はじめに 初期のメイドブーム:成人向け 「屋敷を飛び出したメイド」補足 「メイド服」となることでの広がり 女性が楽しむメイド 『エマ』とヴィクトリア朝 少女マンガ・「世界名作劇場的なるもの」の親和性 終わりに:メイドブーム関連の言説 補足:ブ…

メイドブームの終焉は「衰退」か、「定着」か

目次 ・私が見てきた同人におけるメイド ・日本で「普遍化」する(ように見える)メイド表現 ・屋敷を飛び出したメイド ・「日本に実在したメイド」と過去を見るまなざし ・まとめ:メイドは21世紀の「吸血鬼」たるか 私が見てきた同人におけるメイド きっし…

二つの意味でメイド研究は同時代的

使用人の研究をしていると、その労働環境も目に入ります。前回書いたことと重なりますが、ざっくりとした感覚的に、貴族や裕福な屋敷に仕えた使用人は全体の多分3〜5%以下(上級使用人のいた屋敷・体験した「経験者」ならばもう少し多いかもしれません)、少…

使用人の歴史へ・補い合う資料たちと知の連鎖

残りの大きな原稿は使用人の歴史だけで、18世紀を起点にしたものへの再構築を行う為、資料を精読中です。ヴィクトリア朝は最盛期であっても、「資料が残っている最盛期」でもあり、それ以前が栄えていなかったという話でもありません。使用人の参考資料のほ…

時間と命を賭して作家が描いた作品を食べて、生きている

タイトルは、最近思ったことです。友人のライブを見て、それまでに培った技術を使い、作品へ費やした時間とそこへの想いを感じて、それが表現される瞬間に立ち会うことは、その人の人生の時間と向き合うこと、そしてその人の時間を自分の時間を代価に、消費…

屋敷の技術集団ガーデナーとコスト感覚

ここ最近、ガーデナー関連の資料をあさっています。同人誌第七巻『忠実な使用人』の男性使用人で扱った題材です。思考をまとめるために、気づいたことを雑談的に書いていきます。後半ではクリスタルパレス(水晶宮)の設計者であるパクストンについて考察し…

1960〜70年代の使用人研究ブームは屋敷の荒廃と表裏一体か?

そもそも、なんでイブリン・ウォーの本を読んだかと言えば。 使用人の歴史を勉強がてら、ちょうど今、1960〜70年代にイギリスでなぜ使用人の資料本が数多く誕生したのか、外堀を埋めている最中です。ある方に、イブリン・ウォーの影響も若干あったのではない…

なぜ執事はデキャンタにワインを入れるのか?

イーヴリン・ウォー (現代英米文学セミナー双書 (19))作者: 小池滋出版社/メーカー: 山口書店発売日: 1983/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 最近の乱読具合はひどく、ここで取り上げている興味の幅が、どれだけ散在しているのか、と思…

最高の執事としての条件再び

過去に、幾つか、執事関係で考察をしました。 『日の名残』、或いは「上級使用人・執事」補遺 百年前の執事から学ぶマネジメント 考察自体は同人誌(総集編)の解説「執事」で完成させましたが、他にも再考の執事に必要な要件が必要だったのではないか、と思…

ヴィクトリア朝の貴族の両親は冷たかったのか?(21:00)

資料を読んでいて面白いと思うのは、研究者によって視点が違うことです。研究者にも何種類かあり、書いた人が大学の先生かジャーナリストかでも違ってきます。 今日読んでいた資料本は「ナニー」の資料の裏づけの為でした。曰く、ヴィクトリア朝の両親は子供…

屋敷と言う経済圏(07:40)

昨日の日記を書いてから、資料の読解に移行しました。ランド・スチュワードの根幹を成す要素は把握できましたが、同時に、ハウス・スチュワードに対する考察が甘すぎることも気づきました。今回執事の項目にまとめようとしましたが、それだけでは足りません…

ハウスキーパーがなぜ保存食を作ったか?(12:10)

ハウスキーパーの締めくくりに入りました。解説部分で疲れ果てましたが、スチュワードも控えているので手を抜けません。「後で翻訳すればいいや」と骨組みを作ってきましたが、その後がもう無いので、不退転の覚悟で一個ずつ潰しています。 個人的に面白かっ…

ハウスキーパーはなぜ鍵束をぶら下げているのか?

今回コミティア83ではお隣の方が北欧神話の創作をされている方で、いろいろと興味深い話を伺いました。 『女神転生』やTRPGをやっていたことで「ロキ」「オーディン」など少しは知っていますが、名前ぐらいです。たとえばそれが「文字」として伝わったのか、…

『テス』的な世界〜農場主とメイド

ちょっと興味深かったのが20世紀に入っても尚存在した、「小作人」と「農場主」の関係です。今回調べていて、「農場で働くメイド」たちが何人か出てきました。ほとんどが『テス』のように住み込みのメイドで、牛乳搾りや農場の手伝いをしつつ、メイドとして…

ヴェルサイユ宮殿と縁がある「デイリーメイド」

はじめに 今年の夏に友人とフランスに行っていました。目的としてはパリを歩くこと、美術館巡りだったのですが、ちょうどフランスに行くと決まったとき、何か「今までの自分と縁があるものが無いか」と考えました。 イギリスに行ったときも『エマ』アニメ版…