ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。同人・出版活動の報告を含みます。

『ダウントン・アビー』(『Downton Abbey』)英語版Blu-rayやDVD、ガイドブック情報など

日本ではスターチャンネルで放送中のドラマ『ダウントン・アビー』。AmazonUKだけではなく、日本でも英語版の取り扱いが始まっています。DVD版も出ていますが、Regionコードの違いがあると思うので、ここでは取り上げません。



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個人的なオススメとしては、Season1と2のガイドブックです。ハードカバー・フルカラーで2000円ちょっとと非常にお買い得です。



World of Downtown Abbey

World of Downtown Abbey




ダウントン・アビー 〜貴族とメイドと相続人 10/18放送開始

ということで、日本での放送が迫ってきましたね。スターチャンネルに加入しようと思って忘れていたので、結局、DVDでの再視聴を行う予定です。



ダウントン・アビー〜貴族とメイドと相続人 - スター・チャンネル

ダウントン・アビー 〜貴族とメイドと相続人〜 #1



DVDを見た時点での感想は『Downton Abbey』(ダウントン・アビー)は「屋敷と使用人」の史上最高レベルの映像作品(2010/12/02)に記しました。英国ではこのドラマに喚起されて、イギリスで屋敷・メイド研究本や関連書籍の刊行ラッシュ、『ダウントン・アビー』効果か(2011/07/21)と、様々な本が刊行されています。



番組を見る前に、『ダウントン・アビー』を見る前に読んでおきたいカントリーハウスと職場の解説(2011/08/16)をオススメします。『英国メイドの世界』第一章・PDF版ですが、屋敷が成立した背景や使用人たちの構造が分かります。一章だけですので、短い時間で読めるのではないかと。



また、もしもこのドラマに興味を持ち、まだコミックス『Under the Rose』をご存じなければ、一読をオススメします。個人的に、最も実写ドラマ化(もちろん英国で)して欲しいと思える作品です。



Under the Rose(アンダー・ザ・ローズ)感想

『ダウントン・アビー』を見る前に読んでおきたいカントリーハウスと職場の解説

『Downton Abbey』(ダウントン・アビー)は「屋敷と使用人」の史上最高レベルの映像作品(2010/12/02)と、昨年に『ダウントン・アビー』の紹介をしましたが、つい先日から、検索での流入が増えています。そろそろ、テレビ(スターチャンネル)での放映が近づいているからでしょうか?



折角なので、私が書いた『英国メイドの世界』の第一章・PDF無償配布版をご紹介しておきます。



『英国メイドの世界』第一章・PDF試し読み版(約23.7MB)



英国メイドの世界

英国メイドの世界





第一章「英国使用人の世界」はどのように屋敷という職場が発展していったのか、貴族の屋敷で日常生活を支えた執事やメイド、ハウスキーパー、コックといった多様な職種の解説を行っています。また、上級使用人・下級使用人という階下の組織構造・マネジメントにも言及しています。



これを読んでおくだけでもドラマの見え方が大きく違いますので、未読の方にオススメしております。


『Downton Abbey』(ダウントン・アビー)は「屋敷と使用人」の史上最高レベルの映像作品

今年注目していた英国ドラマの一つ、『Downton Abbey』(ダウントン・アビー)のDVDをようやく見ました。11月は忙しかったのでDVDが手元に届いてから遅れに遅れましたが、エドワード朝を舞台にした本格的な屋敷ドラマということで、とても楽しみにしていました。



『Downton Abbey』を2話まで見た感想として、予想以上にクオリティが高く、自分の中の「映像作品」では最高評価になりました。このレベルの階下の描写をしているのは『エマ』ぐらいでしょうか。『MANOR HOUSE』はドキュメンタリーなので別枠ですが、壮麗さは『MANOR HOUSE』を凌駕しました。


使用人の描写を徹底した異色作〜『ゴスフォード・パーク』を超える密度

屋敷そのものの美しさ自体はさることながら、使用人の描写が徹底しています。このレベルで使用人を描いたドラマを、私は見たことがありません。『Upstiars Downstairs』はロンドンのテラスハウスで、かつ、ややドラマ色強くなっていますし、『ゴスフォード・パーク』も「日常ではなく、ゲストがいるときの屋敷」で、「屋敷の美しさを強調する」ところは話の筋ではありませんでした。映画『日の名残り』とも視点が違っていて、『Downton Abbey』は屋敷と使用人(上級や下級を含む)を調和させ、屋敷の美しさの中で動き回る使用人とその仕事を、しっかりと描いています。とにかく、使用人マニアは「ニヤリ」とするような、仕事の細かい描写であふれています。(※ただし、『ゴスフォード・パーク』『日の名残り』は時間が限られた映画で、話の本筋は別にあり、当時の徹底した再現にはないので、私の今回の比較が一面的な点はご了承ください)



このドラマの1話目は相当エネルギーが使われていて、美しいタペストリのように織り込まれています。映像は屋敷の朝のせわしない時間から始まります。メイドの少女Daisyが午前6時に起床し、階下のキッチンのレンジを用意し、コックにいろいろと言われます。Daisyはtweenyなのか、その後、暖炉磨きと火を入れるための諸々の道具を持って、主人たちが過ごす階上へと行きます。



カメラワークが巧みで、そこではハウスメイドたちが窓を開けたり、ハウスメイドたちが窓を開けたり、クッションを準備したりと、多くの部屋を動き回って仕事をしています。スポットの当たる使用人も適宜切り替わり、銀器を磨く執事、鍵束を持ったハウスキーパー、朝食のテーブルクロスを広げるフットマン(2nd?)、グラスを運ぶフットマン(1st?)、そしてDaisyにもう一度カメラが移り、朝食を取る部屋の巨大な暖炉を磨き、火を入れようとしているところにハウスキーパーがやってくる、というような流れです。



階下の上下関係もしっかりと伝わってきますし、使用人たちが使用人ホールで食事している時に壁にぶら下がった呼び出しベルが鳴るというシーンもしっかり盛り込まれています。屋敷はHighclere Castle、国会議事堂に似ているデザインだと思ったら、同じ建築家Sir Charles Barryが建てたものとのことです。内装は壮麗の一言ですが、残念なことに、servants' quarters(使用人エリア)は完全な形で撮影に使えなかったようで、Ealing Studios, Ealing, Londonと、撮影場所はスタジオになっていました。カメラワークがかなり自由というか、欲しい構図の絵を撮るには不適だったのでしょうね。



音楽も綺麗ですし、私がこのところのイギリスドラマで大好きすぎるおっさんBrendan Coyle(『North & Sounth』では職工長、『Lark Rise To Candleford』では主役Lauraの父の石工)もヴァレット・Bates役で登場し、胸いっぱいの状況です。この手の物語は「メイドが、初めて屋敷に訪れる」(『ゴスフォード・パーク』『Upstairs Downstairs』『リヴァトン館』)が多いですが、今回のドラマの「外からの来訪者」はヴァレットで、系譜としては異色な雰囲気も感じます。


屋敷を照らす多様な視点の魅力〜視聴者になじみやすい「非上流階級」の視点

階下の描写をべた褒めしたものの、ストーリーがどうかというところはまた別の話です。個人的には、第一話から第二話を見る限り、劇的に引き込まれる要素こそ少ないものの、安心してみていられる内容です。



視聴者向けの視点は3つあるようで、雑用メイド的なDaisyの視点。これは一般的に多いパターンだと思います。2つ目が伯爵の従卒をしていたBatesが屋敷になじめるかどうか。彼は足が悪く、提供するサービスを巡って階下で嫌がらせを受けます。ある意味、彼は屋敷の部外者です。



もうひとつが、王道の「相続」に関連するもので、伯爵家の相続者となった中流階級の若者・医師Matthew Crawleyの「上流階級的なる礼儀・水準へに感じる非効率性(馬鹿馬鹿しいと思っている)」という視点です。なんでも自分でやってしまうので、彼に新しくアテンドされた執事Molesleyが手持ち無沙汰そうで可哀想になってきます。



上流階級をただ描く時代ではなく、上流階級の世界をどのように見ていくか、そして視聴者に現実味を持たせる接点をどう作るかという点で、極めて現代的なつくりというか、「おとぎばなし」にしていないように思えます。そういうところは、非常に好みです。



今日の名言は伯爵未亡人の"What is a weekend ?"でしょうか。働いてなければ週末はないですよね、はい。


余談

このドラマでキャスティングされているメイドさんは可愛いです。これは日本で是非放送してほしいというか、DVD化して欲しい作品です。今年最後にこうした作品に出会えて本当に嬉しいですし、このドラマを見る方には『英国メイドの世界』は、非常に役立つと思います。



LaLaTVNHKで、是非放送を検討してください。



登場人物と役柄が分かりにくかったのでウェブを探したところ、MEET THE CHARACTERS OF DOWNTON ABBEYが写真つきで分かりやすかったです。ただ、登場人物の設定も記されているのでネタバレを含む可能性があります。その点はご留意の上でご参照ください。



また、名前のある使用人役とないキャラクターがいるようで、画面上は非常に多く見える使用人も、役名としては多くないです。ヴァレットのBatesが登場した際、階下を床掃除している男性2名:ボーイと思える、キッチンメイドも3人ぐらい?いるようですし、ハウスメイド全部で5人ぐらいいる印象です。午前服・緑がハウスメイド、キッチンメイドは紫系、スカラリーは濃い緑でしょうか。Daisyだけ特別な役柄だと思えるので、少し赤みがかった縞模様の制服を着ています。



そして、Maggie Smith先生です。Dowager Countess of Granthamなので、屋敷の今の主Earl of GranthamのRobertの母で、先代伯爵夫人です。『秘密の花園』『ゴスフォード・パーク』と、この手の映画では良い役ですね。


参考までに:メインの使用人

  • Upper Servant
    • butler : Mr Carson
    • housekeeper : Mrs Hughes
    • cook : Mrs Patmore
    • valet : John Bates
    • lady's maid : Miss O'Brien


  • lower servant
    • Anna : head housemaid
    • Gwen : 2nd housemaid?
    • Thomas : 1st footman
    • William : 2nd footman
    • Daisy : 役柄的にtweeny(between maid:ハウスメイドとキッチンメイドのサポート)


関連リンク

Downton Abbey /IMDb


ITV制作の『Downton Abbey』の雰囲気が素敵過ぎる

以前、今年は自分にとって大豊作の予感(2010/05/31)と題していくつか英国で放映予定のドラマをご紹介しました。最近、ファンサイト?で予告編の紹介がされていました。



http://www.downtonabbey.com/2010/09/12/downton-abbey-trailer/



舞台はエドワード朝、屋敷はHighclere Castle、メイドや執事、使用人の姿が多数登場しており、ここ数年の自分の評価の中では「屋敷モノ」として、『Gosford Park』に匹敵するのではないかと期待しています。『Cranford』や『Lark Rise To Candleford』も大好きですが、「屋敷モノ」ではないのです。



あと、こちらのブログでご紹介をし忘れていましたが、もうすぐサラ・ウォーターズの新作『エアーズ家の没落』が発売します。英語版をKindleストアで購入してから、「日本語版出ていたっけ」と検索したら今月発売、というちょっと悲しい気持ちも味わいましたが、第一章の密度が、もう屋敷&使用人マニアにはたまりません。



エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)







特に注目すべきは、「第二次世界大戦前後の屋敷における使用人事情の変遷」を、詳細に描いている点です。本来、今度出版する『英国メイドの世界』にこの辺りの話も盛り込みたかったものの、出版に間に合う形で私が仕上げられず(品質・分量)、冬コミあたりで自分の同人誌として刊行するつもりです。



とにかく、『エアーズ家の没落』は屋敷の描写が濃密で、いろいろな意味で震えるところが多いので、なかなか読み進んでいませんが、『英国メイドの世界』を読んでから読み直すと、二度楽しめると思いますので、刊行後はフェアなどできたら面白いなぁと妄想しています。


DVD『マナーハウス』公式サイトでプレゼントキャンペーン

春のフェア、はじめますとのことで、新規購入者と、今までに購入した人向けにキャンペーンが始まりました。3月末で公式サイトでの販売も終了とのことで、限定版BOXが欲しい方はお早めに。



久我は2004年にこの番組を発掘し、同人誌やブログで紹介してきました。2007年に日本版が出た際にはお声掛けいただき、縁があって普及に協力することになりました。懐かしい思い出です。運が良ければ、字幕の翻訳をやっていたかもしれませんでした。



マナーハウス』を日本語化したことは、本当に、この界隈では歴史的な事業だと思います。企画者の方には感謝しています。森薫先生も、『ヴィクトリアン・サーヴァント』と『マナーハウス』があればメイドマンガが描けるとおっしゃいましたが、それだけに素晴らしい内容です。



日記内でのMANOR HOUSE記事



自分が5年前に書いたブログ読みましたが、何か乗り移ってますね。ちょうどはてなに移ってきた頃だったなぁと。思えば自分も随分と遠くまで来たものです。


『エマ』10巻・感想

目次

  • 総論としての感想(ネタバレなし)
  • 『エマ』と出会って変わった人生? 作品から受け取ったもの
  • 10巻各エピソード感想:後日更新




総論としての感想(ネタバレなし)

本日、書店にて『エマ』10巻を買いました。19世紀末のイギリスを舞台に、上流階級の紳士とメイドが恋をする、という物語もついに最終巻を迎えました。



初めて『エマ』に接したのは2002年の大晦日コミケ初参加の翌日でした。当時はまだ1巻を買ったばかりでした。メイドを主役に物語として、実に丁寧に生活風景を描いていて、すぐにファンになりました。



それから実に五年以上の歳月が流れて、ここに終わりを迎えました。(森薫先生のあとがきでは、6年に及ぶ連載とのこと)



最初に最終巻の感想を言うならば、「7巻でメイド・エマの物語は完結」「10巻で、物語『エマ』の世界が完成」だと思います。



7巻で『エマ』の物語は終わりました。しかし、自分としてそれはあまりすっきりした終わりではありませんでした。過去にも書きましたが、後半は「物語を書くことが優先し、最初の頃にあった好きで好きでどうしようもない明るさ・朗らかさ」が感じられませんでした。



最後の場面では当時の絵のようなタッチでウィリアムとエマが並んで歩く構図で終わって行きますが、どこかそれは明るさを感じないものでした。8巻からはそうした制約が解けたのか、好きなものを書いているのが伝わってきて、世界が明るくなった感じがします。



そして最終10巻、最後の大団円のところまでの流れは、今までに登場したキャラクターや、あの世界に生きる人々を要所要所に織り込みながら、とにかく躍動して、生き生きとして、輝くような時間を描ききったと思います。



そのあまりに眩しい世界は、7巻の終わりが「『エマ』という物語の完結」ならば、今回の最終巻の終わりは「森薫という作家が描いた『世界』の完成・終幕」と言う言葉がふさわしいと思います。生きていることへの肯定、踊りや人間としての感情の吐露、メイドが好きだという森薫先生ならではの喜びや明るさは、作品世界を暖かなもので満たしました。





背景やイギリス世界の描き込みの非凡さは元々際立っていましたが、今回はそれ以上に、生きている人間をその情熱で、照らし出しました。



終わるのが惜しく思える。



読んでいて気持ちが明るくなる。



ここまで登場人物の笑顔にあふれた作品はありません。



これが、森薫先生だ、という極致の結末です。



6年間、お疲れ様でした。



この日記に、しばらくの間、一話一話の感想を書き足していこうと思います。久我の中ではアデーレがやばいです。ストップ高です。明日も明後日もストップ高です。



エマ 10巻 (BEAM COMIX)

エマ 10巻 (BEAM COMIX)




『エマ』と出会って変わった人生? 作品から受け取ったもの

『エマ』と言う作品は、久我の人生を変えました。



『エマ』がなければ、ここまでメイドや屋敷に深入りしなかったかもしれませんし、そうした世界に興味を持つ人に出会えたなかったとも思います。久我は『エマ』を知る前に、メイドと屋敷の同人活動を始めていましたが、『エマ』をきっかけに、多くの方に出会えました。



また英国への初旅行も、森薫先生の日記に触発されたところも大きかったです。



一緒に英国へ行った友人も、森薫先生の日記を読んで、「行こう、イギリス」と後押ししてくれました。それがなければ、今こうして英語を勉強し、またこの界隈での活動に楽しみを見出せていなかったかもしれません。



もちろん、何をきっかけにするかは、自分次第です。人生を変える出来事なんて、よほどのことがない限り、ありません。ただそのきっかけで、自分の人生を変えるかどうかです。しかし、「そのきっかけ」として、人を動かすだけの作品、エネルギーを持った作品だったと思うのです。



いったい、どれだけ多くの人がイギリスに興味を持ったか?



また、メイドや執事に興味を持ったのか?



そして森薫先生に押された「スイッチ」で、突っ走ってしまったのか?



森薫先生というある種、「スイッチが入ったまま突っ走っている」先人(久我がニ号生ならば、三号生筆頭)がいましたので、久我は自分自身の活動や情熱にリミットを設けず、走ることが出来ました。



今の人生を好きですから、いい作品を、人生のきっかけを、ありがとうございました!



……人のせいにしているわけではないですよ?



しかし、このように書いていて、もう『エマ』について、新しい単行本の話を書くこともないと思うと、急に寂しさが募ってきました。その寂しさの理由のひとつは、『エマ』Under the Rose』以降、久我の魂に響くメイドや屋敷のコミックスに出会っていないからかもしれません。


10巻各エピソード感想:後日更新