ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。同人・出版活動の報告を含みます。

コミティア123参加予定 サークルSPQR:ね43b

2010/02/11(日・祝)開催予定のコミティアに、サークル参加する予定です。前回11月は風邪で欠席し、それ以前の参加が4年前なので、久しぶりの参加となります。主に同人の場でお会いしてきた方達への出版報告、という位置付けになります。



コミティア公式・123開催概要


コミティア123・頒布予定物

コミティアは商業出版の持ち込み(著者の本)がOKなので、『日本のメイドカルチャー史』を持っていきます。



また冬コミ新刊のポワロ本も持ち込みます。



※『英国執事の流儀』は手元に在庫がないので、今回は持ち込めません。

※本が多いので、種類を今回は絞ります。



『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻(ドラマに登場する執事、メイドに特化した解説本)1,000円
『英国メイドがいた時代』(ポワロの時代を含むメイド衰退の歴史資料本)1,000円
『日本のメイドカルチャー史』上巻星海社から出版2,500円
『日本のメイドカルチャー史』下巻星海社から出版3,500円
『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』(メイド好きが語るメイドブーム)1,000円

冬コミ新刊『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻



26冊目の本です。冬コミコミケ93)の新刊はNHKで放送された、デビッド・スーシェ主演のドラマ『名探偵ポワロ』の同人誌になります。内容はドラマ全70話から、各話に登場する働く人たちとして、「家事使用人」(メイド、執事、庭師など)をリスト化して、個々の立ち位置や着用する制服を、イラストを交えて紹介する本です。



紹介数は「153人」以上です。



今回は「上巻」として35話分までを扱います。本来は第35話「夢」が最後の話数となりますが、代わりに第65話「オリエント急行の殺人」を盛り込みました。また、思ったよりも大きなボリュームゾーンとして、近接する領域の「喫茶店・レストラン」、「ホテル」の制服を着たスタッフも紹介しています。登場機会が多すぎたためです。



単一の作品を扱う同人誌は、サークルSPQRとしての同人活動では初めてです。




タイトル:『『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド〜執事・メイドから、ホテルスタッフ、ウェイトレスまで〜上巻』

著作:久我真樹、装画/デザイン:梅野隆児(umegrafix)様

仕様:A5サイズ、132ページ

内容:解説+イラスト

サークル:SPQRコミックマーケット3日目東6ホールト16bで頒布開始

価格:1000円

Webコミケカタログ:https://webcatalog.circle.ms/Circle/11919725

委託:COMIC ZIN



ポワロの時代は1930年代のため、メイド服は日本で見慣れている「クラシックなメイド服」ではありません。そのイメージを物語る動画があるので、ご紹介しておきます。




Ideal Home Exhibition (1920-1929)






同人誌の概要を示すために、以下、同人誌本文から「はじめに」など冒頭部分を、抜粋します。

【はじめに】


 本書は2017年の冬コミの新刊です。



 日本のメイドブームを解説する『日本のメイドカルチャー史』(星海社、2017年)を刊行してから、次に作る本として選んだのはドラマ『名探偵ポワロ』(ITV、1989-2013年)です。私がメイドという職業に強い関心を持つに至ったドラマで、主演デビッド・スーシェ(吹き替えは熊倉一雄氏)は24年の長期間、ポワロを演じ続けました。私の中の「ポワロ」イメージは、デビッド・スーシェのイメージで固定しています。



 私が初めてNHKでこのドラマを見たのは、初放送となる1990年、中学生の頃でした。殺人事件を扱うミステリというジャンルに興味を持ったのも、この作品がきっかけとなりました。高校に進むと、図書館にあった早川書房アガサ・クリスティー作品を読みふけりました。



 そんな私が、ドラマで見た英国の屋敷と家事使用人の研究を行うことになったものの、実際に『名探偵ポワロ』にどれほどの使用人がいたのかを、正確に記憶していませんでした。そこで、数年前に家事使用人のリストを作ろうと思いました。



 この発想は「先行研究」の影響を受けています。同人におけるメイド研究の先駆者、サークル「制服学部メイドさん学科」の同人誌にはNHKで放映した、ジェレミー・ブレット主演のドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』(グラナダテレビジョン、1984-1994年)のメイド登場リスト「グラナダメイドに関する小報告」(めりあだす氏)が掲載されていたからです。この報告は、作品タイトルごとに、「エプロン」「髪飾り」「関与」「備考」として出現するメイドを細かく記載した密度の濃いものでした。



 私がそのリストを初めて見たのは2002年で、「『名探偵ポワロ』でも作りたい」と思ったものの、ドラマが完結したのは2013年となり、だいぶ待つこととなりました。



 とはいえ、全70話の壁は分厚く、どうしようかと思っていた時に、服飾を大学で専攻されていた樹さん(@chez_toi)と知り合い、手伝っていただくことで情報を抽出できました。


■本書の内容:解説+イラスト

 本作品は、「数多くの家事使用人を徹底的に解説しよう」との意気込みで始まっています。しかし、これだけ数多くの人物が登場していながら、「背景としての登場=セリフがわずか」であるため、深い解説をできる登場人物が限られました。その結果、基本的には各話に登場する制服描写がメインになりました。



 この「描写」を分かりやすくするため、本書の表紙デザインとレイアウト、編集を担当してくださる梅さん(@umegrafix)のご協力で、作品に登場する制服を着た人々のイラストを掲載することと相成りました。これにより、ドラマに登場する1930年代の「メイド服」や職業服を、把握する「図鑑」のような本となっています。


■対象となる「働く人たち」

 本書では家事使用人と、彼らと同様に制服を着た人々が働く近接領域のホテルスタッフやレストラン・喫茶店の従業員を話数ごとに取り上げ、その在り方や制服の解説を行います。



 「制服を着て働く人」は、警察官や鉄道職員などにも広げられます。しかし、今回は家事使用人が私の関心領域であるため、近しいサービスを提供する職場で働く職種に限定しました。



 具体的には、家事使用人が働く「屋敷」と類似するサービスを提供する職場は「ホテル」とみなしました。屋敷で人をもてなす紅茶の時間やディナーの給仕を提供する職場としては、「喫茶店・カフェ」や「レストラン」「パブ」「バー」などを対象としました。



 加えて、メイド服とウェイトレスの制服との区別は難しく、ホテルスタッフの制服も家事使用人を想起されるものを含むため、デザイン的な親和性も加味しています。



 なお、仕える形を想起させる「秘書」と、育児を担う「ナース(乳母)」や「ナースメイド」と遠くない「看護婦」の制服も対象としました。


■「働く人リスト」の情報

 基本的には各話で区切り、登場する「腹たく人」を職種、キャラクター名、備考(主に外見年齢)から、登場順で紹介します。名称がない場合は名称を省きました。これに物語上の立場を加え、制服の構成要素を詳述しました。



 外見年齢の識別は難しいため、印象で判断しています。


■対象とする話数と作品

 時間的制約のため、今回は上巻のみを刊行します。この上巻では全70話中の半分となる35話分の解説を行います。対象は、ドラマ版の英国での放送順を参考に第1話「コックを捜せ」から第34話「エジプト墳墓のなぞ」までに加えて、本来は後半で扱う第65話「オリエント急行の殺人」をピックアップしました。



 世界的名作「オリエント急行の殺人」を加えたのは、理由があります。



 第一に本書を作ろうと思ったのは「オリエント急行の殺人」がきっかけだったからです。同作品は家事使用人が大勢出てきます。しかし、彼らが家事使用人だと語ることは作品のネタバレとなるために、今までネットでの発表の機会を持ちませんでした。同人誌ならば許されるだろうと、この機会にしっかりと言葉にしたいと考えました。



 第二に、冬コミ直前の12月にはケネス・ブラナー監督・主演の映画『オリエント急行殺人事件』の公開もあり、比較をしたいと思いました。付け加えれば、2015年1月には三谷幸喜氏による『オリエント急行殺人事件』の地上波放送もありましたので、作品に接している方も多いことで、ネタバレ対象としました。


■留意事項

・原作小説との比較がある場合、早川書房クリスティー文庫(2003年創刊)に準拠しています。また、文中の「初めて」は、原作小説ではなく、ドラマとして初めてを意味します。原作小説とドラマの発表順は、揃っていません。



・ドラマは「ポワロ」表記ですが、クリスティー文庫では「ポアロ」表記となっています。本テキストでは、クリスティー文庫のタイトル記載を表記する場合を除き、ドラマの「ポワロ」表記に準拠します。



・ドラマの映像確認はAmazonビデオの『名探偵ポワロ』第1〜4シーズン+第6シーズンを用いています。人物表記は字幕の表記を用いています。ドラマで人物名やホテル名など固有名詞が不明だった場合は、原作小説を確認して当てはめています。



・登場するキャラクターの全リストは印刷に適さないサイズのため、ネットで公開します。

コミティア122参加予定 サークルSPQR:A04a

※2017/11/17追記 風邪のため、コミティア不参加となります。

2017/11/23(木・祝)開催予定のコミティアに、サークル参加する予定です。ブログを見ると、前回参加がコミティア110だったので、2014年11月開催の3年ぶりです。コミティアコミケよりもまったりしていて時間に余裕があるのと、年末コミケは参加しにくい方も多いと聞きますので、主に同人の場でお会いしてきた方達への出版報告、という位置付けになります。



コミティア公式・122開催概要


コミティア122・頒布予定物

コミティアは商業出版の持ち込み(著者の本)がOKなので、『日本のメイドカルチャー史』を持っていきます。経験則的に、商業で出たものはどこでも買えるのと、私の本の場合は会場ではかさばるので、どこまでというのもありますので、部数は絞って持っていきます。



冬コミにも受かったので、そちらにリソースをフォーカスする予定です。



また、『日本のメイドカルチャー史』のベースとなっている『メイドイメージの大国』シリーズはこれを機に頒布を中止します。

『日本のメイドカルチャー史』上巻星海社から出版2,500円
『日本のメイドカルチャー史』下巻星海社から出版3,500円
『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』(メイド好きが語るメイドブーム)1,000円
『英国執事の流儀』(実在の執事の仕事の仕方)700円
『誰かの始まりは、他の誰かの始まり
ヴィクトリア朝の暮らし短編集・総集編』
(短編51本)1,000円
『屋根裏の少女たち Behind the green baize door』ワンダーパーラーカフェとのコラボ・メイド写真+小説)500円

コミックマーケット93(冬コミ)当選

ということで、2017年12月31日開催のコミックマーケット3日目に、サークル「SPQR」として東ト16bのスペースで参加することが決まりました。前回参加が2016年夏コミ(コミケ90)なので、だいたい1年4ヶ月ぶりです。



Webコミケカタログ上の配置情報
 https://webcatalog.circle.ms/Map#13604518/day=Day3/hall=e456/scale=1



お誕生日席です。さらにお隣のサークル「辺土研究所」は「東京大学メイド研究会」が前身となる筋金入りのメイドサークルです。サークル配置担当の方たちは、分かりすぎている布陣にしてくれました。



最近、「日本のメイドブーム関連の同人誌が多いから、評論」として申し込みました。考えていたのは『日本のメイドカルチャー史』の製作裏話的なものです(情報を補完するものは、基本的にはウェブ公開していくスタンス)。ところがスイッチが入ったため、準備し続けていた『名探偵ポワロ』のドラマ版全使用人リスト本を作ろうと思っています。



「どこが日本のメイドブームか?」と問われれば、「私の原点」と答えます。



加えて、最高峰の執事小説『日の名残り』の著者カズオ・イシグロノーベル文学賞を受賞したのを記念して、カズオ・イシグロの同人誌を作ろうかと画策中です(多分ペーパー)。



なお、コミケは商業出版本の頒布がNGのため、『日本のメイドカルチャー史』を持っていくことができません。


というところで、出版が一段落したので、コミケに時間を使っていきます。


コミケ88新刊『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』



24冊目の本です。夏コミ(コミケ88)の新刊は『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』と題して、1990年代以降のメイドブームが生じる土壌への考察として、メイドイメージとの接点を求めて、1970年代にさかのぼりました。具体的には下記3軸での考察を行いました。



(1)1970年代から始まる世界名作劇場シリーズのメイド出現リストや登場メイドの傾向の分析

(2)1970年代の少女漫画『ベルサイユのばら』『キャンディ・キャンディ』『風と木の詩』『はいからさんが通る』『バジル氏の優雅な生活』などに登場するメイドの制服や表現

(3)宮崎駿監督作品におけるドレス表現とメイドの親和性の考察



タイトル:『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』

著作:久我真樹、イラスト:さるまたくみ様、編集・本文デザイン:梅野隆児(umegrafix)様

仕様:A5サイズ、60ページ

内容:解説+イラスト16カット

サークル:SPQRコミックマーケット3日目西い40aで頒布開始

価格:500円

Webコミケカタログ:https://webcatalog.circle.ms/Circle/11919725

委託:とらのあなhttp://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/33/30/040030333040.html



内容説明:本書「はじめに」より



英国メイドを研究している立場ながらも、ここ数年の私の研究テーマは、「日本でメイドブームはどのように形成され、どのようにメイドイメージ(メイドという言葉を聞いて連想されるイメージ)が拡散していったのか」になっています。これまでに『メイドイメージの大国ニッポン』と題した2冊の同人誌シリーズで漫画やラノベで広がっていくメイドイメージを調査した「漫画・ラノベ編」と、新聞メディアで世間へと伝わっていくメイドの姿をまとめた「新聞メディア編」を発表しました。このほかに同人誌『メイドカフェ批評』へ寄稿した「雑誌メディア」の分析もしました。



そうした「様々なメディア」で表現されるメイドイメージに接していると、「メイド」という言葉は同じでも、種類が異なるメイドイメージの多さに驚かされます。どれだけ「メイド」を切り口として、多様な視点で語り尽くせるのか、その可能性の広がりが、私を捕らえて離さないメイド研究の魅力です。そんな私が今回テーマとする領域は、「どうして、メイドは日本で受容されたのだろうか」という疑問から始まります。職業としてメイド服を着たメイドは、少なくともメイドブーム以前の日本で、見慣れた存在ではありません。しかし、1976年生まれの私は、英国メイドの研究を始めたとき、メイドに「懐かしさ」を覚えました。



私が想起するクラシックなロングスカートのメイド服は懐古的な雰囲気を伴いました。100年ぐらい前の英国では、このようなメイドが100万人を超える労働人口として存在しましたから、メイドに「過去の時代」のイメージを持つのは当然です。しかし、「懐かしい」という気持ちは「昔、見慣れていた」「再会した」との心情へ繋がるものでしょう。他国の過去を「懐かしい」と思うのはおかしな話です。



そこで、掘り下げていくと、私が幼い頃にメイドと接していた記憶は、「メイドが登場した海外の児童文学や」、「児童文学をアニメ化した『世界名作劇場』シリーズ」だったと思い当たります。さらに、メイドを見たときに感じる懐かしさは、「メイド」という職業だけに由来しているわけでもありませんでした。100年以上前の時代を舞台とする児童文学の世界では、登場するキャラクターもロングメイド服を想起させるパフスリーブでスカートの裾が緩やかに広がるドレスを着たり、登場する子供たちがエプロンドレスを着たりと、メイド服と児童文学の世界の衣装のイメージには、強い重なりが見出せるからです。児童文学で言えば、小学校の頃、私は家にあった児童文学全集を読みふけっていたり、児童文学をアニメ化した『世界名作劇場』シリーズを見ていたりしました。最初に物語世界の生活描写に興味を持ったのが『若草物語』でした。失敗した料理のレシピや作品の時系列をまとめる。それが英国メイドの研究に至る原点のひとつでした。



そんな私にとって、メイドブームで見るメイドは「初めて見る姿」ではありませんでした。付け加えるならば、私と同じようなバックグラウンドの人間が一定数いることも、メイドブームを受け入れる土壌になったのではないかと考えました。ただ、実際にどれだけメイド的なイメージが『世界名作劇場』にあふれていたのかは正確に記憶していなかったので、原点回帰の意味で『世界名作劇場』を考察するのが1章目です。



「幼い頃に接した作品」をキーワードにすると、もうひとつ、避けて通れない道があります。それは「少女漫画」です。私の同人誌の読者の方から数年前に、「1970年代の少女漫画で大勢のメイドがいたのを思い出した」とうかがいました。その作品は『この娘に愛のおめぐみを』という、漫画家・おおやちきさんの短編作品でした。実際に作品を確認すると、なんと数十名のメイドが出ていました。



1970年代の少女漫画で言えば、私自身、子供の頃にアニメ『はいからさんが通る』でメイドを見た記憶がありました。さらに、秋葉原にあったカフェ『月夜のサアカス』で手にした漫画『風と木の詩』で、メイド服を着た侍女アデルを発見しました。そんな偶発的な出会いから、なぜ今になって、それも1970年代の作品を同人誌のテーマとして調べようと思ったかといえば、子供の頃に見たアニメ『ベルサイユのばら』の再放送を、NHKで2015年に見たことがきっかけです。主役のオスカルは屋敷に住み、ばあやがいて、ばあやの孫アンドレも「使用人」に囲まれていました。今まで、そういう目でこの作品を見たことがなかったので、もしかすると他の作品もそうでは、と考えました。



そして、数年前に倉敷で訪問した「いがらしゆみこ美術館」を思い出しました。『キャンディ・キャンディ』のマンガを描かれたいがらしゆみこさんの作品には、世界名作劇場シリーズに似た時代背景の欧米的作品(『ジョージィ!』『メイミー・エンジェル』)や、『赤毛のアン』のコミカライズ作品など、様々なフリルやエプロンドレスの衣装が出現していました。『ベルサイユのばら』に触発され、今年、『キャンディ・キャンディ』のマンガを読み、キャンディが屋敷の下働きとして「メイド」の役割を担わされていたことも知りました。
風と木の詩』『ベルサイユのばら』『キャンディ・キャンディ』という社会的に大きな影響を与えた作品にメイドがいた、それは私にとって発見でした。これまでの15年以上のメイド研究で、誰かから教わったことがなかったからです。作品に接した方が多くいたとしても、それぐらいメイドは目立たなかったことは、ブーム以前のメイドのあり方を指し示す事例になるかもしれません。



私は「メイドイメージの原点は1970年代にあった」というつもりはなく、その頃から「メイドは自然に作品に登場していた」し、「メイドが登場しやすい時代背景を舞台とする作品が1970年代に目立った」ことが論じられるのではないかと考え、「1970年代の代表的少女漫画に、メイドは普通に出ているのでは?」と調査をしました。



最後に本書のもう一つのテーマが、「宮崎駿監督作品」(高畑勲監督作品を含む)のイメージと、メイドイメージの重なりです。これまで上げてきた児童文学や世界名作劇場シリーズの雰囲気に、宮崎駿監督の作品やスタジオジブリ作品は世界設定や衣装描写が重なるため、本書ではその共通項を考察します。



以前から、私は宮崎駿監督作品とメイド(家事使用人というより、メイドを連想させるパフスリーブのドレス、時々エプロン)の関連性を考えていました。その考えが結晶化したのは、『風立ちぬ』のキービジュアルとして、ヒロイン菜穂子が軽井沢の丘で絵を描く姿を見た時でした。戦前の日本人である彼女は、宮崎駿監督作品の他のヒロインのような裾が長いドレスに、エプロンをつけていたのです。



宮崎駿監督はこの衣装が好きなのではないか、もしそうだとして作品でどのように描かれ、他の監督によるジブリ作品にどのように受け継がれているのかと考えました。多分、このような視点での研究は私しかしなさそうなので、今回、行いました。とはいえ、この視点はメイドイメージ研究から外れるわけではありません。『エマ』『シャーリー』の英国メイドマンガで知られる森薫さんが、宮崎駿監督作品のキャラクターに刺激を受けていることは、有名な話だからです。



派生して「メイド服として認識される要素」となる「ドレス」「エプロン」「頭の装飾」という記号に分解していくと、特に「ドレス」について、私たちは宮崎駿監督作品で数多く接しています。日本を代表するアニメ作品で描かれ続けた「ドレス」を魅力的に思えるならば、同じシルエットを持つメイド服を受け入れることに抵抗感も少ないのではないか、むしろ魅力を感じるのではないか、と思いました。



現代日本ではパーティーやウェディングなどの機会にしか着られない「ドレス」の非日常性、ハレの舞台の憧れの衣装という特殊性も鑑みつつ、メイドイメージの構成要素を考察します。日本の1990年代から始まるメイドブーム以前に、メイドイメージを広げる役割を果たした諸作品を巡る旅へ、一緒に参りましょう。



久我真樹



補足

冬コミ新刊『屋根裏の少女たち Behind the green baize door』(ワンダーパーラーカフェとのコラボ)告知

ワンダーパーラー様とのコラボ企画同人誌の告知です。





タイトル:『屋根裏の少女たち』

仕様:A5サイズ、フルカラー、36ページ

内容:短編11本(書き下ろし8本)+対応するメイドさん写真

サークル:SPQRコミックマーケット3日目東ポ26bで頒布開始

価格:500円を予定


内容説明 :本書「はじめに」より

本書は、池袋のメイド喫茶Wonder Parlour Cafe』(以降、ワンダーパーラー)店長・鳥居様と、英国メイド研究・創作を行う久我真樹(サークルSPQR)のコラボ同人誌です。同じテーマで、ワンダーパーラーメイドさんを撮影した「写真」と久我の「創作」を表現する同人誌となっています。



ワンダーパーラーは二〇〇五年に創業したメイド喫茶で、池袋を拠点に英国的雰囲気の再現と、クラシックなメイド服を着たメイドさんが給仕するのが特徴です。今回、両者が愛好する「クラシックな雰囲気のロングスカートのメイド」という日本で発展する表現を、それぞれの持ち味を生かして形にしました。



本書を作るきっかけは、鳥居様が「住み込みで働くメイドの自室=屋根裏部屋」の再現を行い、そこで撮影した写真をTwitterで公開し始めたことによります。その題材の一つが、久我が過去に書いた創作『屋根裏部屋の少女たち』(本誌収録)でした。



写真を見たとき、久我は英国メイドの創作をしたくなりました。折よく鳥居様から「メイド部屋に来ませんか?」とのお誘いがあり、訪問する中で、今回の企画を提案しました。



メイド喫茶も私の同人活動も「今は実在しない、過ぎ去った時代のメイド」のイメージを、今の時代に表現する試みといえます。その点で、喫茶のみならず、部屋を作り上げた鳥居様のエネルギーは相当エクストリームです。



そしてそれは、「英国らしさ」の発露といえるかもしれません。十八世紀の英国でゴシック表現を発展させたホレス・ウォルポールは、自身で記したゴシック小説の舞台を、屋敷ストロベリーヒルとして再現しました。屋敷の見学も行われ、ハウスキーパーが入場料を徴収したといわれています。そうしたイメージを再現する試みは、私が好きな喫茶『ワンダーパーラー』、秋葉原の『シャッツキステ』、惜しまれつつ閉店した『月夜のサアカス』にも共通しているように思えるのです。



今年二〇一四年は、「日本における英国メイド表現」にとって忘れがたい年になるでしょう。NHKで『ダウントンアビー』が地上波で放映されたからです。屋敷を舞台に貴族と使用人が主役となるドラマが放送されるのは稀有なことで、メイドブームの土壌のひとつとなった「クラシックな海外ドラマ」(『シャーロック・ホームズの冒険』『名探偵ポワロ』など)が地上波で放送され続けた一九九〇年代に回帰するようです。



さらに、九月には十一年ぶりとなる森薫さんの『シャーリー』の新刊が発売しました。ライフワークのようにメイドを描かれる森薫さんの存在はメイド界隈の人間にとっては心強いものです。



そうしたタイミングで、メイドにまつわる表現を行える場にいることは、メイド表現者として報われる気がします。読者の皆様にも、本書を楽しんでいただければ幸いです。


コミティア110・参加予定 サークルSPQR:スペースNo.ち48b

明日の2014/11/23(日)開催のコミティア110にサークル参加します。新刊はありません。



コミティア110案内・公式サイト:https://www.comitia.co.jp/circle110.html



仕事が慌ただしく、冬コミの原稿が進んでいない状況ではありますが、折角なので参加してきます。


コミティア110・頒布予定物

ちょうどNHKで『ダウントン・アビー』のシーズン2の放送があり、貴族の時代が第一次世界大戦以降に衰退していく時代を迎えますが、そうしたあたりをしっかりとまとめている『英国メイドがいた時代』と、そうした貴族の暮らしを支えた執事を現代のキャリア形成、管理職と言う視点で照らし直した『英国執事の流儀』が、時期的にはオススメです。



『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』(メイド好きが語るメイドブーム) 1,000円
『メイドイメージの大国ニッポン 漫画・ラノベ編』(メイドブームの可視化) 300円
『英国執事の流儀』(実在の執事の仕事の仕方) 700円
『英国メイドがいた時代』(『英国メイドの世界』の続く・19世紀末から現代まで) 700円
『誰かの始まりは、他の誰かの始まり
ヴィクトリア朝の暮らし短編集・総集編』
(短編51本)1,000円
『MAID HACKS』(実在の英国メイド・エピソード集)500円

委託:『カップリング表記データブック(1982-1999)』

また、当日はコミケカタログ研究家の友人が刊行している『カップリング表記データブック(1982-1999)』委託も行う予定です。今回のティアズマガジンのP&Rで紹介されているぐらいに、注目の一冊です。



以下、私が読んだときの感想です。