ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。同人・出版活動の報告を含みます。

出版社から出ることで同人誌はどう変わったか?

はじめに

『英国メイドの世界』へのAMAZONレビューでいただいた「平易で十全」や「今までにあった家事使用人研究のどの文献よりも読みやすい」と評価していただけたことは、自分にとって響くものでした。同人誌から品質を上げていく際、講談社BOX編集部と共に最もこだわった部分だからです。



読者の方には「読み、感じたことがすべて」です。制作側の意図は評価対象となりませんが、「同人版との違い」「出版社で出すことで得られたこと」を自分として確認する目的で、以下に今回の講談社BOX版で目指した「読みやすさ」を実現するために何をしたかを記します。



『英国メイドの世界』は2つの意味で、私がこれまで多くの研究書を読む中で感じたことや、同人誌を作る中で研鑽したことを踏まえた理想を追求しました。



・1.日本に存在しない本でかつ、初心者だった頃の自分が読んで楽しめる本

・2.物理的に読みやすく、読んだ内容が頭に残ること



今回のテキストでは、2を軸にご紹介します。



個人では限界を感じた様々な壁を破る手段として、私は出版社に頼りました。そこで、同人誌で実現できなかったことを編集の方に伝え、その解消を行うことを要望した上で、私が個人として持ち得なかった「『読みやすさ』と『質的な向上』に関するノウハウ・スキル」を書籍に反映していただきました。



同人時代から実現してきた、情報が構造的に整理されていることでの「読みやすさ」は、出版時の骨格にもなりました。この情報構造の整理が『英国メイドの世界』の本質であり、「読みやすさ」に繋がったと思います。



こうして振り返るのは半ば趣味のようなものですが、書いておかないと忘れてしまうので、記しています。


目次

  • 1.同人誌時代に感じた「改善したい点」を明確にする
    • 1-1.同人誌を読者が読み終わっていない現実
    • 1-2.読みにくい・わかりにくい
    • 1-3.重たい
  • 2.出版社で本を出すことで得られた大きな改善点
    • 1.プロの編集・校閲によるチェックと提案
    • 2.読みやすいデザイン
    • 3.図版と写真資料
    • 4.読みやすさの徹底・冒頭の掴み
    • 5.読みやすさの徹底・物理的な改善
  • 3.最大の特徴・同人時代から意識した「情報構造」
    • 1.階層構造化は難しい?
    • 2.理解しやすくするための階層構造化
    • 3.階層構造化のメリット
  • 4.終わりに


1.同人誌時代に感じた「改善したい点」を明確にする

私は必ず、「次に作る本は、どこか前回を越える要素を持つこと」を心がけ、伝え切れなかったことを反省し、次回に活用するようにしています。同人版『英国メイドの世界』は同人として出来ることは限界まで出し切ったものでしたが、それだけに個人としての限界も感じました。



「この本は、もっと良くできるのではないか?」と。



同人誌『英国メイドの世界』は面白く役立つ本だと思っていますが、同人イベントやネットの反応を見て、同人誌はその面白さを適切に伝える情報量・構造ではなかったかもしれないと感じました。以下3つが、大まかなところでの反省材料でした。


1-1.同人誌を読者が読み終わっていない現実

同人誌として作った『英国メイドの世界』についての振り返りとして、同人イベントでお会いした方々の言葉として最もいただいた感想は、「まだ読み終わっていない」ことです。みなさん、それを申し訳なさそうに告げてくださるので、こちらが申し訳なくなりました。



分量が非常に多いとしても、内容が面白ければ、ページ数は気にならないと思います。冒頭の使用人の歴史を扱った箇所が整理し切れておらず、各職種でも情報量の過多でバランスが悪いなどの問題がありました。


1-2.読みにくい・わかりにくい

同人版では「縦書き・2段組」のレイアウトを採用しましたが、字が小さい、人名・地名の英語表記が縦書きで読みにくいとの指摘がありました。校正も友人の手伝いを得ましたが、彼らは本業が別にありますし、反映する作業時間を考慮して、指摘箇所を広げすぎないようにもしてもらいました。



また、イメージを伝える最も重要な「実際の写真」は著作権の都合や権利関係の問題が分からなかったので、ほとんど使えませんでした。イメージできるように小説の描写やイラストを交えましたが、限界がありました。


1-3.重たい

同人誌を作り上げることに必死で気が回りませんでしたが、同人版は1kgと非常に重く、同人イベントで買いに来た方がためらう事態が起こりました。私自身、このページ数の本を作ったことがなかったので、想定外でした。実際に本を読むときも重いですし、鞄に入れて持ち運ぶのは難しくなりました。



物理的に重いので読まない、ということもあったかもしれません。少なくとも、長時間かけなければ読み終わらない本が、長時間の読書に向いていない重さというのは、望ましいことではありませんでした。


2.出版社で本を出すことで得られた大きな改善点

上記の「改善したいポイント」を事前に編集部の方に伝えたところが、本作りのスタート地点でした。ゴールは「読破されること」で、そのために、面白く、読みやすくする必要がありました。その上、出版化に際しては、同人イベントに本を買いに来場される「メイドについてこだわりを持つ」方以外に意識を広げることになるので、「完全にゼロベースで読んでもらうための分かりやすさをどう実現するか」が、課題となりました。



結論として、講談社BOX編集部は私の要望のほとんどを実現してくれました。その上、要望以上のクオリティで本を仕上げてくださったので、同人誌『英国メイドの世界』と、講談社BOX『英国メイドの世界』は、本全体として別物に仕上がっています。


1.プロの編集・校閲によるチェックと提案

多くの人によって徹底的に読み込まれて、フィードバックを得られた点が、同人版との決定的違いです。



まず、編集の方はすべての原稿に目を通してくださいました。その上で、「見出しは内容を書く」「見出しの次の本文に結論を書く」「その後で具体例や根拠を書く」、つまりは相手に伝えるための論理構造を徹底しました。



以前書いたように、講談社版は「キュレーターが手を入れた、テーマのある博物館」というところで整理されています。実際の原稿の総量は新規追加を大幅に行ったので、多分、出版された本の1.5〜2倍ぐらいありました。その中のエッセンスを、編集の方がうまくアレンジしてくれました。



一連の作業は校閲の方々の手も経ており、脇が甘い部分の指摘だけではなく、「こうではないか?」という提案や、私が見落とした引用箇所の面白い点の指摘など、本文の質を向上させる内容を含みます。「講談社という最高レベルの出版社が抱えるリソース」を私は利用できましたし、個人レベルではこのレベルの方たちと仕事はとても出来ません。(コスト的にも)


2.読みやすいデザイン

次にこだわったのはデザインです。同人版の反省として「英語表記が多いので横書きにする」ことと、「引用表記を読みやすくしたい」ことを伝えました。そして、その道のプロである編集さんとデザイナーさんにお任せし、仕上がった物を見て再度要望を伝える、という形で進みました。出版営業の友人、本が好きな友人、イラストレーターの方から本の感想を聞いた時に高く評価されたのは、デザインや細かさでした。



また、AMAZONレビューで評価いただいている引用書籍の出典表記ですが、章の終わりや巻末ではなく、同一ページ内にしているのは、これも編集さんとデザイナーさんの提案によるものです。私もこれは使い勝手が良いデザインだと思っています。


3.図版と写真資料

「図で分かりやすく見せる」ことは、2001年に同人誌を作った当初から行ったことです。図(フロー図やグラフなど)は私がラフをおこし、デザイナーの方に仕上げてもらう形で進みました。ゼロから図にしていただいたものや、私の指示では足りなかった点を補ったり、広げてくれたりしたものもあります。



写真は学術上の引用や、利用に料金を支払わなければならないものの権利関係を適正に処理した上で組み込まれています。海外の権利主との交渉も編集部が行ってくれました。プロが持ち込んだ出版企画ならばそこも含めて行っているはずですが、私はノウハウを持たなかったので、非常に助かりました。


4.読みやすさの徹底・冒頭の掴み

最も重視したのは、冒頭の第一章でした。冒頭が読みにくいと、読み進めない可能性が高くなります。私は同人版はここが課題だったと考え、また「読者はイギリスの歴史を知らない」前提に、伝える情報を選別しました。



出版までの2年間、使用人の歴史は資料を増やし、情報を見直し、噛み砕き、自分が納得できるレベルに落とし込み、編集さんも第一章は何度も、書き直しにつきあって下さいました。「なぜ、メイドが雇われるようになったか」「誰が雇い」「誰が雇われたのか」の答えを読者に伝え、足元を固めてもらうことが、その先に読み進めてもらう鍵でした。



冒頭はイメージしやすいように、屋敷と使用人の写真や組織図を盛り込みました。読者の方にどこでどの情報を伝えるのが望ましいか、考えました。もちろん、すべてにおいて実現できたとはいえませんが、帯や表紙をめくった内側などの写真やイラスト含めて、雰囲気を伝える工夫が行われています。


5.読みやすさの徹底・物理的な改善

もうひとつの最も大きな課題は物理的重さです。1kgあった本は、600gに改善されました。今のところ、電車の中や外出先で読んでいる方の話をそこそこ見るので、効果が大きかったと安堵しています。



分厚い本のページのめくりやすさについても、印刷会社さんが新開発の糊を使って下さったことで、使い勝手が良くなっています。


3.最大の特徴・同人時代から意識した「情報構造」

『英国メイドの世界』の読みやすさは出版社の手を経たことが大きな要因ですが、情報の骨格・設計思想は同人時代から作り上げてきました。それは、私なりの理想論、「テキストの構造化」です。


1.階層構造化は難しい?

この情報の階層構造化がどれぐらい大きな意味を持つのか、最近読んでいた電子書籍に自分の着想を裏付ける言葉が出ていたので、元になった公開ページから部分引用します。プロの方たちが、論理構造の重要性を指摘されています。




●本はどこまで構造的にできるのか
(前略)
沢辺 僕は技術的なことではなくて、編集的な面で、文章の構造化が課題になると思っています。章・節・項、大きいところから小さいところへという概念が、今はいい加減すぎると思う。
逆にいうと、今の山路さんのような編集的ポジションにいる人に求められるのは、本の構造をきっちりつくることではないでしょうか。
(中略)
山路 私は、最初の著者の段階で論理構造を持っていないと、デザイナーがこだわりを持っても難しいとは思いますけどね。
だから、今後は著者から出版社に原稿を送る時にタグを付けたものを送るのがマナーになってくるんじゃないでしょうか。
沢辺 いや、そんなことができる著者はほとんどいないんじゃない?
山路 タグといっても、そんな難しいことじゃないですよ。今だって「大見出し」「小見出し」くらいは書いているのではないでしょうか。私が書くときは、プレーンテキストで送る時でもマークをつけるなどして、必ず構造がわかるようにして送っています。
(後略)
『談話室沢辺 ゲスト:山路達也 「電子出版時代の編集者」』より部分引用(本文の中ほど)
http://www.pot.co.jp/danwashitsu/20100302_185606493916916.html


『英国メイドの世界』は構造化を筆者が行った上で、それに沿って編集により構造の一部の組み替えやブラッシュアップが入り、デザインに反映してもらっています。同人の頃は大分類【】、中分類○、小分類■のように行頭文字とフォントを変更して区別を見せていましたが、今回はより分かりやすいデザインで実現してもらいました。こうした論理構造が整っているので、電子書籍やウェブとの親和性は極めて高いと個人的に思っています。


2.理解しやすくするための階層構造化

論理構造の整理は、これまでに学術書で感じた読みにくさの解消がきっかけです。平坦なテキストでは全体の流れや何が重要なのか、分かりにくいです。この読みにくさの要因を分解すると、「情報のレイヤーの違いが分からない」ことが挙げられます。



「1つ目は〜」で書かれている文章で「2つ目は〜」がなかなか見つからなかったり、「3つ目はどこ?」と思っていたら別のテーマに切り替わっていたり。また、箇条書きにすればすぐ分かる情報が羅列で読みにくかったりもします。だったら最初から、次のように書けばよいのではないかと思う次第です。


  1. テーマ1
    1. 詳細1
    2. 詳細2
  2. テーマ2
    1. 詳細1
    2. 詳細2



『英国メイドの世界』では前述したように大中小の分類で区切り、フロー図やグラフで情報を補いましたが、これは別に特別なものではなく、参考書やマニュアル、プレゼン用ドキュメントなどで実現されているものです。ウェブサイトもこの「情報構造」に沿った作りと親和性が高く、上記引用文中で出ているwikiが最たるものです。


3.階層構造化のメリット

構造化のメリットは、情報が区切られて読みやすくなることと、どこまで読んだか分かりやすく、読者が迷いにくくなることだと思います。大分類や中分類の見出しを読んで、読む・読まないの判断を行う「読み飛ばし」もできます。



もうひとつ、自分なりに分類項目を設けて職種を語る階層構造を共通化したことでメリットがありました。以下は、『英国メイドの世界』でハウスメイドやランドリーメイド、キッチンメイドなどの職種解説を行う際の切り口です。


  • 概要
    • 歴史
    • 種類
    • 制服
  • 仕事の内容
  • 主な特徴
  • エピソード
  • 待遇と将来
  • 終わりに



上記のようにすべての職種で解説する項目を共通化すると、「各職種で何を調べなければならないのか」が明確になり、作業効率が上昇しました。この項目も同人活動の中で試行錯誤しながら作り上げたものです。ある意味、求人情報サイトの求人広告がテンプレート化されているのと似ています。


4.終わりに

今回のテキストは「出版社の手が入ることで、本がどう変わったか」を軸にしつつ、今までの読者の方への「同人版との違いは何か」という回答にもなります。また、情報の構造化が上記で引用したテキストを含む電子書籍『電子書籍と出版』を読んでいたときに評価されていたので、自分の本の魅力を伝える意味で追記しました。



このレベルの本を作るだけのリソースは出版社が持ち得るもので、私のようなニッチな本が世に出たのも、出版社に体力があればこそだと結論付けられます。しかし、出版社が介在する余地は、作る本の性質や筆者のレベルによると思います。小説・マンガ・写真集・イラスト集と比べて、今回の『英国メイドの世界』は同人(2008年当時の私個人)でできなかったことの実現を追求したので、手間がかかりすぎました。漫画家の場合、同人作品でデビューしたり、かつて作った同人誌がデビューした出版社から刊行されるケースもあります。



出版社との取り組み方も千差万別で、人によっては個人やその知人といったネットワークでクオリティを担保出来ると思います。プロのイラストレーターを軸に起用して、プロとしての経験がある方が「同人→出版」と展開された、『萌えるヘッドホン読本』のような本も存在します。この本の商業化に際して出版社の方がどの程度介在したかは存じませんが、既に高いレベルにある方にとって、出版社で本を出す意味は、私の場合と大きく異なっているでしょう。



出版社や書店が持つ本のPRや流通・販売の役割について今回は触れませんが、今後、自分の経験を踏まえて書けたらと思います。



全体のオチとしては、ここまで書いたテキストが、必ずしも綺麗な構造化をできていないので、「読みにくい」かもしれないことです。この辺りを本では編集者の手を借りて工夫していますよ、ということで。



英国メイドの世界

英国メイドの世界




同人活動の継続性を高める手段としての「利益」

「同人誌が儲かるか」については様々な議論がされ、まとめられてもいますし、毎年繰り返す話題です。



以下、儲けに関する議論や考察が整理されているサイトです。



9/5 同人誌は儲かるとか儲からないとか

コミケは色んな人が色んな思惑持って集まってくる色んな要素の集まった場所なんだよね



本考察は実際に活動し、リスクを取っているサークルの立場から、異なる視点で光を当てるものとなります。


目次

[1]はじめに
[2]営利と非営利を考える
[3]サークルが利益を出すことは活動継続に必要
[4]終わりに〜

[1]はじめに

本を作る目的と活動のリスク

同人活動はそれ自体が楽しみです。本を作る、祭りの場に出て目の前で読者に出会い、言葉を交わしたり、その笑顔に癒されることも多々あります。自分が作った本を目の前で買ってもらえる喜びは体験した人には忘れがたい大きなもので、参加し続けることでまた来訪してくれる方にお会いできると、絆のようなものも感じます。もっと楽しませたい、それが創作の原動力にもなります。



しかし、同人活動をしていく上で、幾つか活動の障害になるものがあります。本を刷るのに印刷代が必要で、それは日常の生活費から捻出されます。印刷代は数万円から数十万円まで幅があり、「多くの人に読んで欲しい」「良い本を作りたい」と思って部数を増やしても、「部数計算のミス」で在庫が過剰になったり、「値段を安くつけすぎる」ことで完売しても赤字になったり、という話が出てきます。



完売しても赤字ならば再版を望むのは酷なことですが、折角読者がいるならば読んで欲しいと思うのも人情です。しかし、その増刷で何部刷るのかは難しい判断で、過剰在庫を抱えるリスクをもう一度、背負うことを意味します。根本的には、「お金」が同人活動には大きな比重を占めます。数万円の損失でも大きいですが、数十万円の損失はシャレになりません。(本にするからであって、ウェブにすれば良い、という話はここではしません)



趣味にしては、費やす金額が高く、リスクが大きくなります。楽しみではなく、時にそれらが重荷となります。その苦しみを回避する方策を探すのが、これら考察の目的です。


活動をしていて遭遇する悩み

同人誌は儲かるか、儲からないかの話がコミケの後には盛り上がりますが、「儲けてはいけない」とギリギリの値段設定をしていた知人もいます。サークルの中にも、「儲け」を出してはならない、という気持ちの方もいます。(二次創作には著作権上の負い目もあると思いますが、自分の体験ではない想像なので今回は話題にしません)



しかし、サークルの活動を広げたり、完売後により多くの読者に出会おうとすると、部数を徐々に多く発行していくことになります。100部→200部→300部……気づいたら自転車操業、100部再版→完売を繰り返したので思い切って300部刷ってみたら、壮絶に200部余る、など。



「あと100部刷りたいけど、在庫が家に置けない」という人には「在庫預かりの印刷所」があるよと、「部数計算のミス」は「どれぐらいの人がスペースに来ているか知るとリスクが下がる」という話を書きましたが、「値段設定」を安くしすぎて「完売しても赤字」ということも珍しくないと思います。(同人サークル三重苦と向き合う


「大切な創作を続ける」「読者に出会う」ための利益を否定しない

サークル活動を続けて本を作り続けるにはお金が必要で、活動で得た利益を罪悪視しないことが、スムーズに活動を続けるのに役立ちます。「お金がないから、新刊を刷れない・作りたい本が作れない」ことがないように、趣味が「日常生活に支障をきたさないように(家族の視線・自分への言い訳)」、この趣味を続けられるように、好きなものを好きでい続けるには、現実として好きでい続ける努力が必要です。



このテキストは「完売経験がある一定部数を出しているサークル」を想定したノウハウとして書いていますが、その方の作品を楽しみにしている固定の読者の方がいるとも思います。そうした読者の方たちともう一度出会う可能性を高め、またその笑顔を見る機会や、前回の感想を聞かせてもらうためには、「参加し続ける」ことも大切です。



同人にまつわる話の中で、「儲け」という言葉は広い意味で使われています。この言葉を使い分けたら、サークル活動がもう少し自由になるのではないかと思いましたので、このテキストを書いています。ここでは印刷した同人誌を販売して得られたプラスのお金を「儲け」ではなく、「利益」といいます。



利益は額の大小関係なく、「単価×同人誌販売数−印刷代(印刷に関わる諸経費)」と定義します。その上で、久我は「もうけ主義=利益の極大化を目指すことを目的とすること」を推奨しないものの、「結果として利益が出ることを否定しない」立場で、建前を抜きにこのテキストを書きます。



もちろん、その前提は「自分が作りたい本を、作る」ことが第一義であり、「売れるためならば何でもする」という発想ではありません。考え方のひとつとして、「こういうのもある」ぐらいに思っていただければ、幸いです。


[2]営利と非営利を考える

同人活動で大切なのは、「利益だけを得ることを目的にしない」ことです。数字を追いかけると、楽しみを見失い、部数に一喜一憂し、訪問して下さる方が数字にしか見えなくなります。1部は1部であっても、その方がその本のために初めて同人イベントに来てくれたならば、「人の人生を変えた1部」なのです。買って下さる方の「時間と、お金」をその代価として受け取る意味の大きさを、もっと誇りにしていいと思います。



趣味で、それだけの可能性を秘めているのは、すごいことです。少なくとも自分は、多くの「普段ならば出会えない人たち」に出会ってきました。これは参加し続けた結果、本を出し続けた結果です。



しかし、本を無理なく印刷するにはお金が必要です。どんなに性能の良い車でも車検が必要ですし、ガソリンを入れないと走れません。そのメンテナンス代となる同人活動の利益を考えてみます。


コミックマーケットは「営利を目的としない」団体・個人の発表の場

同人活動を「お金のためにする」ことは、少なくとも一番大きな場所であるコミケにおいて、否定されています。コミケのサークル参加申込書セットに、頒布物についての規定があります。この中で営利企業としての参加を断ること以外に、頒布物の値段についての言及もあります。




制作原価よりも著しく高い価格をつけたり、ビニ本まがいの悪質な売り方、もうけ主義、営利主義はコミケットの趣旨に反するのでやめて下さい。
しかし、コミケの中で営利を否定しているのは「利益を目的とする」「利益を出しすぎる」「利益を得るために手段を選ばない」ことであって、作品発表と出会いの場であるという本筋を忘れなければ、後は自由、というふうにも解釈できます。少なくとも、「同人誌で結果として利益を出してはいけない」とのコメントはありません。



サークル運営はコミケの運営スタイルに似ています。コミケはサークル参加費を集めたり、企業にスペースを貸して資金を集めていますが、それは場の運営・維持に使われています。スタッフはボランティアで、仮に利益が出たとしてもスタッフ間で分配するものではありません。



サークルも、同じ考えで良いと思います。お金があれば、無理なく2冊新刊が作れるかもしれませんし、ちょっと変わったデザインをできるかもしれません。イベント参加の機会を増やせたり、制作を便利にするソフトウェアを買ったり、必要な資料集を買うこともあるでしょう。



得た利益は創作に費やし、作品として返せばいいのです。


「営利」「非営利」、どちらも利益を上げるのは同じ

今回、これを書いていて、似た構図の話があるのを思い出しました。



NPOです。




Q.NPOは利益を上げてもいいのですか?

回答
 「特定非営利活動促進法NPO法)」でいう「非営利」とは、団体が利益を上げても、その利益を構成員に分配せずに、団体の目的を達成するための活動費用に充てるという意味です。
 利益を得て配当することを目的とする企業との比較で、「NPOはもうけてはならない」という誤解がありますが、団体の目的を達成するためにも、そして、継続的な運営を行っていくためにも利益は必要です。

青森県http://www.pref.aomori.lg.jp/life/faq/contents2-5-10.html より引用



NPO 利益Google検索



NPOの話を見ると、「非営利」でも利益を出すことは否定していませんが、罪悪視している・される傾向があるとの立場も出ています。同人でも、似た傾向があるように思います。



活動で得た利益を構成員で分配するのが営利、利益を活動の継続に使うのがNPOだと理解します。NPOの流れを見ると、むしろしっかりと利益を上げて「活動結果」を出し、事業の継続性を高めることを推奨しています。



公共的で社会性が高いNPOと同人を同一に論じることは極論ですし、同人の場合は幅が広くて著作権侵害に繋がるグレーゾーンがあるのも確かですが、「営利」「非営利」の明確な違いがあることは、自分にとっては新鮮でした。確かに、NPOでどれだけ良い活動をしていても、経営が悪ければ続きません。


[3]サークルが利益を出すことは活動継続に必要

無理なく続けるために

同人の難しいところは、趣味でありながらも「読者」がいることです。ニーズに応える、ニーズの声にイベントごとに直面するというところが、他の趣味にはあまりない形です。これはサークル主にしかわからない視点ですが、完売したら、ほぼ次の参加時に聞かれます。自分のようにシリーズで作っているサークルには、それが顕著です。



「新しい出会いがあるならば、読んで欲しいし、刷ろうか」という気になりますし、完売は読者がいる限り許容しないようにしたいと思っています。しかし、それが時として大きなリスクを招く要因になります。読者のためといいながら、部数計算を間違えると大きな負債を抱えることになり、それが理由で新しい作品を作れなくなるような悲しい事も起こりえます。



同人活動は創作発表の場ですが、「新しい読者に出会う(既刊)」ことと、「常に新しい創作を発表する(新刊)」を良いバランスを求められるのです。創作発表する自分を守るためにも、「リスク管理」思考は大切です。



完売がずっと続くような「ブランド」で大勢が訪れるサークルならばいざ知らず(そのサークルも母数が大きい分リスクは巨大ですが)、ほとんどのサークルは部数に変動があったり、来訪数の影響を受けやすかったりしますし、社会人として働きながらやっていると「いつ止める」機会が来るとも限りません。その時、在庫を多く抱えていたとして、「やらなければ良かった」と思うかもしれません。



もちろん、リスク回避以外の観点でも、利益が出せるならば出した方がいいと思います。利益を出すことを否定しないのは、「同人活動を趣味に留め、日常に影響を与える金銭的リスクにしない」ためです。利益をタブー視しないことが、その作品を期待してくれる読者の方に次の作品を返せる確率を高めてくれます。


「大手以外の同人サークル」における利益は「結果」


制作原価よりも著しく高い価格をつけたり、ビニ本まがいの悪質な売り方、もうけ主義、営利主義はコミケットの趣旨に反するのでやめて下さい。
もう一度の繰り返しになりますが、価格の何パーセントが適正な原価なのか、どれぐらいの金額がもうけなのか、これはイベント側が定義できる問題ではありません。自分の場合は「在庫リスク」を考慮して、印刷代を回収することを念頭に置きます。原価率が50%の時もあれば、70%の時もあります。



しかし、率による一律規制はナンセンスです、本の制作単価が高ければ率は同じでも金額の差は大きくなります。原価500円を1,000円で売るのと、原価1,500円を3,000円で売るのは同じ50%でも、結果として得られる利益が大きく異なるのです。



では、率ではなく、金額ならば良いのでしょうか? これもナンセンスです。売上は本が実際に売れたかどうか、で決まります。しかし、本が売れるかどうかは事前に誰にも分かりません。予測はできても、保証はありません。



たとえば原価1,500円で価格3,000円の本を1,000冊刷った場合、想定では150万円の利益が出ます。これは儲けすぎだと思われるかもしれませんが、この本が「どれぐらいの期間で売れるのか」を考えなければなりません。



1年で売れるかもしれませんし、5年かかるかもしれません。後者の場合、年間の平均利益は30万円になります。これが妥当な金額かはさておき、完売を繰り返すようなブランド力がある大手サークルでもない限り、完売までどれぐらいかかるかは分かりません。



仮に5年後までに半分の500冊までしか売れずに廃棄することになれば、利益75万円・処分する原価75万円で、利益はゼロです。その5年間の在庫保管費や搬入諸経費で、収支はマイナスです。こうした不確定性があるのに、「150万円の利益が出る本はもうけ主義だから印刷するな」といえるでしょうか?



また、同人サークルは「1冊」だけしか本を作っているわけではありません。昨年体験しましたが、一冊強力な新刊が出ると、関連する既刊も相当な数で動きます。そこまで考慮して「もうけ過ぎの基準となる利益を出さない」ようにすることをサークルが計算することは困難です。



ならば、初めから完売しても利益が出ないようにするのが正しいのでしょうか?



そうは思いません。


印刷部数と値段で利益とリスクを考える

そもそも、なぜ利益が出るような設計にするのかの根底の話に戻りますが、同人サークルは「絶対に売れる部数」というのを分かっていません。計算もできないでしょう。イベントが開催されるのか、自分が参加できるかどうか、個人の事情で参加し続けられるかも分かりません。そうした「リスク」を考慮して、「せめて印刷代だけは回収したい」と考える場合、原価率は低めに設定されます。



自分は「リスクの最小化」をしています。



本の内容によって印刷部数を調整しつつ(マニアックすぎるものは部数を減らす・買いやすいものは部数を増やす)、利益が出ることを恐れた値段設定をせず、「売れなかったことを考えた値段設定=例えば50〜70%程度の原価率」にして、利益が出ることを許容しています。結果として利益が出たとしても、印刷部数が数千部もあるような大手サークルでも無い限り、世間的に見れば巨大という結果になりません。



「半分売れれば、印刷代は確保できる」

「2/3売れれば、印刷代は確保できる」



そうした本がたまたま完売したら、利益は出ます。その利益があるお陰で次の値段を下げたり、印刷部数を増やせたりと、選択肢は広げられますし、「同人活動に費やすお金」を賄うこともできるようになります。



運転資金です。



「利益が出る」のは結果であって、まず値段設定は「リスクを回避する」のを主体で考えています。何よりも、「全部完売しても赤字!」という状況が続くと、よほどの道楽でない限り、続きません。自分の場合、活動を続けることで読者が増えて小部数印刷で完売が続いた結果、あらかじめ多めに部数をするように、行き渡るように、せめて完売が出ないようにと考えるようになりました。



総集編『英国メイドの世界』の印刷代と向き合った話を書きましたが(同人誌1トンの印刷コストと向き合うリスクマネジメント)、稀に出会ってしまう「普通に考えたら作れない本」も、利益を出す構造にしておかなければ、ひどい損害を受けるので、作るのを躊躇したでしょう。万が一、まったく売れなかった場合、誰も損失を引き受けてくれません。なので、入手しやすさに繋がる値段を下げつつも、原価率を自分が許容できる範囲に納める必要がありました。



お金が理由で作れない本があること、そして欲しいと思う人に出会う機会を作れないこともあるのです。


同人活動に費やす印刷代以外のお金

手前味噌ですが、分厚い同人誌(ボリュームが大きい)は製造コストだけではなく、関連コストも高いです。通常、久我の同人誌はダンボール1箱に100冊入ります。1kgあった総集編は20冊しか入りません。その結果、100冊の同人誌を移動させる場合のコストが、今までの5倍になります。先ほど少し去年の数字を見直していたのですが、総集編が登場した8月から年末の冬コミまでのわずか5ヶ月間の宅急便費用は、「11万円超」でした。



搬入時にも問題があります。コミケでは200冊(10箱)持ち込むのが限界でした。搬入スペースが狭いコミティアでは壁になる保証がなかったこともあって、周辺サークルに迷惑をかけないため、合体サークルとして申し込み、2スペース(2倍)の参加代を支払いました。在庫のある既刊でも完売が出ないように多めに持ちこみ、あまり出ないで持ち帰りの宅急便コストが膨らむこともよくあります。



これはすべて利益から賄いました。利益がない本つくりをしていたら、とてもではありませんが、対応をためらうものでした。



同人イベントの1スペースはいくらでできているの?



こちらのわかりやすいエントリを見ていただくと、印刷代以外でもお金がかかっているのが一目瞭然です。このコストを同人活動内で賄えるのは、同人誌の利益だけです。利益が出るのは運がいいことですから、その結果を引き受けて、同人にまつわる諸経費に使うのは悪いことではない、と信じてやってます。



また、久我の同人誌は資料本を入手していつも作っているので、利益が出ても、長い年月で見れば赤か、ようやくトントンぐらいです。正直なところ、これだけ膨大な時間と手間を費やして、得られる利益と直面する在庫リスクを考えれば、会社員として働いた方が圧倒的に効率が良いです。



しかし、お金が目的ではないので、この活動にしか見出せない楽しみを多く見つけ、続けています。利益は出ていますが、「儲けている」との認識はありません。ただ、今回の数字が出たことでより同人活動は「楽に回せる」ようになったのは事実です。許容できる失敗の量が増えたのですから、実験的な試みを行えるようになりました。


補足:最も簡単な利益を出す方法は早期入稿

利益を出すにはコストを抑えるのが一番で、コストである印刷代を抑える最も有効な手段は「早期入稿」です。印刷所はイベント前に繁忙期を迎え、入稿される数が大変なことになります。そこで、比較的空いている時期に入稿される量を増やすため、「早期入稿割引」をしています。



印刷所によって割引率は異なりますが5〜25%ぐらいの範囲で設定されており、スケジュールどおりに入稿できるならば、一番簡単に利益を得られる方法です。10万円の印刷代で400冊刷る場合、通常原価は250円になります。しかし、20%割引ならば8万円となり、200円で刷れます。



逆にイベントに間に合うぎりぎりの時期に近づけば近づくほど、印刷代は上乗せされてコストは大きくなります。ミスが起こった場合の対応時間も限られ、印刷所としても嬉しくない事態となります。



プロにプロの仕事をしてもらうには余裕のある早期入稿がオススメですし、原価を下げてリスクを下げる意味でも、とても大切です。そのためには時間の余裕を持てる計画性と、落としどころを見極めるのが必要ですが、それは別の話となります。


[4]終わりに

読者との出会いを大切にする

なぜ、利益の話をしたかといえば、結果としてその利益を使って(損失を抑えて)活動の継続性が高まる方が、同人全体が盛り上がると考えるからです。完売という結果に直面したサークルは多くの読者に出会い、また新しい読者に出会う可能性も持っています。しかし、その「新しい人」との出会いは、「増刷」という金銭的リスクを背負わなければできません。



良い本だと思うから、読んで欲しい。



欲してくれるならば、その機会は最大化したい。



イベント会場での出会いは一期一会だとも思っています。だから立ち寄ってもらった偶然を大切にしたいので、完売はなるべくでないように考えています。



同人におけるマーケティングは賛否あると思いますが、「個人で負えるリスクの範囲で欲しいと思ってくれる人に本を用意する」(部数を伸ばす・完売を許容しない増刷対応・過搬入)ことと、「印刷代を極力回収し、次の印刷代を確保し、活動の継続性を維持する努力」のため、だと考えて、一連のエントリを書いています。



同人でも印刷代以外にも様々な活動にお金がかかる以上、同人活動を続けるのに必要な諸経費を補う利益は出るように念頭においていますし、それができているから、無理せずに続いている、とも思います。『英国メイドの世界』を除き、最近では印刷代を支払うために他の何かを止める、という決断はしていません。順調に回転しています。



この考え方ができ、かつ表明できるのは、ジャンルによるかもしれませんし、オリジナルでやっていることが主要因かもしれませんが、「利益を上げる・上げない」で見るのではなく、「同人で得た利益を何に使うか」の視点も欠かせません。


創作発表の機会を自分で作り続ける楽しさ

大切なのは、継続性です。



どんなに才能があっても、伝える力がなければ、潰れてしまうことがあります。同人は成長の機会です。長く続けて初めて芽が出ることもあります。評価を受ける機会も増えていきます。



その継続性を担保することは、同人ノウハウなどであまり扱われなかったことだと思いますが、自分は「創作」と、同人活動における「持続的なサークル運営」を切り分けて考えています。後者を行うために、前者の評価によって得た利益を使い、より多くの機会と出会いを得ていくことを肯定します。



継続性には、蕭何キャゼルヌ的な概念が必要です。項羽のように戦い続けるだけでは大切な虞美人も守れませんし、生き残れません。



だからといって、「持続的なサークル運営」を第三者に完全に委ねることは反対です。自己完結する、自分が作ったものを自分で届ける、それを怠ると「プロ」となんら変わりませんし、その運営自体が同人活動の楽しみ、自分にとって良い経験を重ねる機会だからです。これを人に預けるのは、もったいないです。(その楽しさを伝え切れていないのですが、別に書きます)



それに、利益以外に得るものがないかといえば、そんなことはありません。例えば、同じお金を支払ったとしても、そのサークル主と同じ体験は誰にも出来ないでしょう。自分の作品を発表し、頒布する楽しさは人によって違います。趣味でここまで幅広い選択肢があり、趣味そのもので人と出会いやすいのも、「好き」を共感できるのも、同人活動ならではです。



ある種の「ファン」「読者」がつく趣味は、とても限られています。



一方で、楽しみを得るはずの趣味で苦しみかねない活動であることの自覚も必要です。多くのサークルは利益が出ない現状ではありますが、利益が出るサークルは出ていることを受け入れて良いと思います。それがいつまで続くかも分からないのが、同人でもあります。そして無理をせずに活動を続けて欲しい、そう思ってこのエントリを書きました。



同人活動の棚卸みたいなものですが、お金の話はこれぐらいにしておきます。ガソリン代を稼ぐために走っているというよりも、走るのが楽しいから走っているわけです。その走る楽しさを伝え切れていないので、味わってきた楽しさを伝えるエントリを、次に書きます。




言及していただいたブログ

同人活動と利益の話、そして活動の形。

具体的にサークル参加者としての立場、数字、それに「同人誌以外の同人活動」についても言及されています。


同人誌1トンの印刷コストと向き合うリスクマネジメント

注意事項

このエントリは以下のエントリの続きとなります。事前に読まれているのを前提に書いておりますので、ご留意下さい。



同人誌1トンを刷った経緯と部数決定のプロセス


はじめに

これで「コミケカタログよりも分厚い1kgの同人誌」1,000部を刷った「1トンシリーズ」(?)のノウハウは最後です。正確には「リスクマネジメント」ではなく、「ダメージコントロール」かもしれません。



前回のノウハウ(訪問数の考え方と、スペースに来る人たちの動きや、売れる理由の把握)は常日頃の参加で自覚的に身についたもので、総集編発行の際の重要な材料となりましたが、普段の同人活動で「常に」考えると疲れるかもしれません。何か問題があった時(部数が出ない)、リスクを把握したい時(何部刷るのか)に、参考とするノウハウにしていただければと思います。



久我はコミティアで「暇」だったので、数字を記録しました。時間的に間ができにくいコミケでは数のチェックはしませんし、コミティアでもだいぶ問題が見えてからは、記録を止めています。チェックした方が「変化」が見えますし、男女比を追加すると、より具体的なデータになりますが、これは別の話になると思います。(たとえばアキバBlog様で取り上げられた直後、1:1だった訪問男女比が2:1になる:アキバBlog様が男性向けのメディアなのだろう、という推測など) これは「楽しみ方についてのノウハウ」で、後日書きます。



総集編『英国メイドの世界』を通じた最後の同人ノウハウは、「勝負する所で勝負するためのリスク管理」がテーマです。どうしても書きたくて、どうしようもなく作りたい本に「出会ってしまった」同人作家にとって、「作るしかない」事態に直面するかもしれません。自分には、それがこの本でした。



そんな同人において直面する、「活動の転換期に訪れるかもしれないリスク」の自分なりの解消方法を伝え、活動を続ける人の考えるヒントになれば幸いです。同人に盛り上がって欲しいですし、いろんな形の「同人」があることを伝えるためでもあります。



前回より長い……「はてぶ」でコメントいただきましたが、同人誌にした方がよさそうですね(笑)


目次

[1]同人におけるリスクマネジメント
[2]印刷に際して自分に課した前提条件
[3]意思決定:許容できるリスクの上限=1,000冊
[4]結果
[5]回避したはずの再版リスクに直面した原因
[終わりに]リスクを見極めて活動を楽しむバランス

[1]同人におけるリスクマネジメント

三重苦とその打開策

一般的な同人活動(同人誌を印刷し、頒布する活動)で、現実に影響を与える一番大きなリスクは、過剰在庫です。



「1:在庫確保スペースの問題(場所)」

「2:回収できない印刷代の悩み(お金)」

「3:1と2の重圧と、売れないことで自分を否定されたと感じる(心理)」



まさに、三重苦です。



この問題への打開策として、「1:在庫」は「印刷所を活用すること」で解決し、「2:印刷代」と「3:売れない」はマーケットを把握することで適正な印刷部数の確保と、購読率を上げる努力をすることで認識を変え、引き受けるリスクを軽減できることを示したつもりです。ところが、「2:印刷代」についてしっかりと伝えきれていないと思い、このエントリの締めくくりとして書くことにしました。


印刷代の問題

一連のエントリをネットで書くことで、同人誌発行をされたことがない方が多く読まれていますので、補足します。「なんで完売するのに、再版しないの?」との問いはありますが、今回は自分の体験談・「自分がこの『英国メイドの世界』を再版しない理由」をお話します。これは、既存の読者の方で総集編を最終的に入手できなかった方たちへ、サークル主からの「増刷しないことへの言い訳」でもあります。



印刷代は一定ラインを超えると「趣味」といえなくなります。



結論から言えば、総集編1,000部のコストは100万円を優に超えました。



総集編を作ることだけは決めていたので、一生懸命原稿を書きました。当初の想定では400ページぐらいだったものが、次第に増えていき、気づいたら572ページになっていました。原稿完成時に印刷代を試算したら、血の気が引きました。



それでも、作るのか、と。



これは、「趣味」なのか、と。



1万部を頒布する同人作家ならばまだしも、1,000部を完売したこともありません。資料本という地味なジャンルを軸に趣味で同人をやっている自分にとって、衝撃でした。多分、コミケにこのジャンルで参加したサークル史上、歴代上位となる印刷代のはずです。


成功確率を高めるリスク管理

今回の総集編印刷は、趣味として続けてきた自分の同人活動の「限界点」でした。直面した大きな課題は「分厚い同人誌の在庫を自分でなんとかできるのか」と、何よりも「印刷代を支払う覚悟を決め、この本を作るのか」、でした。



在庫問題は「印刷所の倉庫を使う」ことで自分の日常生活に影響を与えない解決策を知っており、大きな問題にはなりませんでした。もうひとつの印刷代は頭を悩ませ、胃の痛い問題でした。



好きで続ける同人活動と常に自分に言い聞かせてきましたが、好きで続けるには常識的な金額を遥かに上回ってしまったリスク(印刷代)。それと向き合うには、前回のエントリのような思考は絶対に必要でした。同人活動で費やすお金は同人活動で完結させるよう努力する、それが今までの自分のルールでした。今回失敗したら数十万円の不良在庫を抱えるわけで、さすがにその結果を招けば、趣味ではなく苦行になります。



リスクを減らして成功確率を高めるには何ができるか? 本を出版するという結果を出すためにどのような考えをしたのか、それが今回の最後のエントリです。その意味ではこれこそが正しい意味での「部数決定のプロセス」です。


なぜこの本を作りたかったのか?

だいたい仕事において、無茶苦茶なプロジェクトは仕事のクライアントによって引き起こされるものです。低予算、無茶なスケジュール、そして度重なる仕様変更。今回、そのクライアントは、自分です。解決するのも自分です。



墓穴です。



しかし、無謀に思えても、なぜ作りたかったのか?



久我にとって総集編は、先に進むために叶えたい悲願でした。



過去に頒布したテーマを今書き直せば、絶対に当時よりもクオリティの高いものができる自信がありましたが、それには膨大な時間が必要でした。総集編の企画は印刷する2年前、2006年には考えていました。ところが新刊も並行して作っていたり、書き直しの分量の膨大さに悩んで、先送りしていました。とはいえ、総集編の前身となる1〜4巻+外伝1巻がイベントにないことから、訪問される初めての方に「総集編出ますか?」と度々聞かれます。その都度、「作るつもりでいます」というのを、多分、1年ぐらいやっていたでしょうか。



そんな自分に踏ん切りをつけ、2008年から本格稼動し、4月末〜5月は同人イベント3つにサークル参加し、初めて「総集編は夏に出ます!」と言い切りました。自分の言葉を守るためにも、期待に応えるにも、そして何よりも自分が過去に作った資料よりも良い資料を作るためにも、総集編の完成は絶対に必要なことでした。



良い本を作りたい、読んで欲しい、今の自分を伝えたい。



それだけです。



この時点での判断が正しいかはさておき、この前提で話を進めました。お金のことは一切考えておらず、「作ることは絶対に必要」との想いだけで、動きました。そして、原稿を作り終わった後、現実の壁にぶつかりました。


[2]印刷に際して自分に課した前提条件

そもそも、なぜ、1,000部なのかはこれから説明します。



1,000部の数字は自分を納得させる「確認」のための数字で、「絶対に1,000部は売れるマーケットがあるから1,000部にした」数字ではありません。自分の想定の上では1,000部いけると判断しましたが、仮にそうでなかった場合(その部数に満たなかった場合)、どれだけのリスクになるのかも考えなければなりません。



「1,000部売れるかもしれないし、売れなかったとしても一定部数売れれば印刷代は回収できる設定にしておく」というのがリスク管理です。潜在的なニーズと、許容できるリスクの妥協点が、結果として1,000部でした。


値段設定を始めに行った

同人誌の作り方や値段決定は人によって方法が異なりますが、今回、総集編を作る前から「値段は2,000円は超えない」という条件を課していました。総集編は1冊にまとめることで単価を下げられること(表紙代が浮く)や、総集編で合わせたものよりは安くしたかったからです。



また、同人誌として一見の方に購入されることを考えると(そのために作っているので)、2,000円が限度だろうと考えました。市販されている研究書(『ヴィクトリアン・サーヴァント』)もベンチマークにしました。それが3000円近いので、同人誌である以上、さすがにその値段にはしたくありませんでした。



同人に詳しい方々には頒布後「安すぎる」とご指摘いただきましたが、同人誌として読んでもらうには、この価格でないと躊躇されると判断しました。(それでもイベント会場で「高い」という方もいましたが)


ページ数増加による巨大なコスト

原稿が完成する前、2,000円で想定したページ数は400ページでした。1〜4巻+外伝1巻を再編集するとそれぐらいだろう、との見込みでした。それまで1冊の最大ページ数が180ページだった自分には、倍以上の数字です。ところが、アマチュアは際限を知らず、妥協を知りません。必死になって原稿を書いた結果、572ページ、コミケカタログより分厚い同人誌になっていました。



印刷所の料金表で印刷代を幾つかシミュレーションしたところ、2,000円のままでは、400部で全部売れても相当赤い感じでした。数十万円費やして、全部売れて、赤です。これはさすがにないです。



価格を上げることも考えましたが、2,500〜3,000円では、正直手が出にくいですし、個人的にも自分の本がその値段にふさわしいかには、確証が持てません。少なくとも同人イベントに参加される方が決断するには高い価格です。久我にとって「本を作る」が第一ですが(なのでウェブやダウンロードコンテンツにしていない)、次に「読まれること」が第二になります。読まれる障壁となる価格には、ページ数が増えてもしたくありませんでした。



そうすると、部数を増やすしかありません。


そもそも趣味で使う金額か?

ここでもう一度、足元を見直しました。



完売してもとんとん、にしては費やす金額が高すぎ、数十万円を趣味で費やすのは限度を超えて、道楽です。それまでの印刷代と比較になりません。「これはない」と、思いました。同人活動が成功して印刷部数がとんとん拍子で伸び、徐々に印刷代が上がっていったサークルならばまだしも、部数そのものは大きく変わらないのに突出した「高コスト」の本が目の前に振って湧いたようなものです。



正直、ここで止める判断もできました。ただ、産み落としてしまったものは作りたい、本にしたい欲求が強すぎました。出すといってきましたし、自分でもそのつもりでした。10名の方にゲスト参加もしていただいていました。退路は絶たれています。出さない選択はありませんでした。



普通ならばしない判断も、趣味だからこそできる、そう覚悟を決めました。



そこで、どうしたら作れるのか? どうしたら自分が引き受けられるリスクになるのか、どこかに方策はないのか、自分が無理だと思っているだけで現実的には無理ではないのではないか、というのを真剣に考えました。


再版リスク

印刷するに際して、もうひとつ解決するべき条件がありました。



完売しないようにする設計です。



再版貧乏という言葉がありますが、小部数で刷って完売、小部数で再版→完売が続くと、実際に経験しましたが、かなり疲弊します。自転車操業です。本が頒布されること自体は嬉しいですが、自分が関わるコストやそれ以外の手間、そして次の新刊を作る運転資金にも影響が出ます。印刷代がまだ抑えられているうちはいいですが、さすがに数十万円の印刷代で「完売→再版」は悪夢でした。



この分厚さになると、原価が異常に高くもなります。100部刷ってとんとんと、400部刷ってとんとんでは、まったく意味合いが違います。なぜならば、400部は在庫リスクが100部の時と比較にならないからです。売れればいいですが、常に売れないことも考えなければならず、半分在庫が残っても相当な金額の不良債権になるのです。



これこそが、完売で喜ぶはずのサークルが直面する、もうひとつの自覚されにくい「リスク」です。この危険性については、後述します。



尚、在庫数は印刷所に預けるので問題になりませんでした。


[3]意思決定:許容できるリスクの上限=1,000冊

「値段は2,000円」、「再販は絶対にしたくない」状況でしたので、ではどこまでが自分の同人誌の上限で、リスクとして許容できるかを考えました。



最悪を想定して行動するので、常に「売れ残り」「在庫処分」は視野に入れています。数字をいろいろといじってみて、直感的には800部ぐらいではないかと感じました。しかし、それでも印刷代はとてつもないものでした。ただ、数字を外して半分しか売れなくても、これならば印刷代の回収可能性が高まります。



部数を増やすことはリスクを下げることであって、利益が出るのは運が良い結果でしかありません。本当に売れるかどうかなんて誰にもわからないですし、売れなかったとしても誰も責任を持ってくれませんから、「儲けを目指さない」としても「結果として利益が出る」ことは否定しません。



これまで自分がやってきた印刷代とは桁違いで、売れなかった場合のリスクがあまりにも巨大すぎましたので、自分を納得させ、その判断を誤らないようにするため、「同人誌1トンを刷った経緯と部数決定のプロセス」で書いたような数字を出して、自分に印刷をさせる根拠としました。



直感に頼らなかったといいましたが、直感に頼るにはリスクが大きすぎたのです。


過去実績から想定する最大部数を計算する

まず「刷りたい部数」があり、「その部数が現実的か」の判断をした、というのが正確なプロセスになります。市場規模を見込んで「売れるからこの部数にしよう!」という決定したわけではなく、「自分が印刷費をどこまでリスクとして許容できるか」「売れなかった場合も、どこまでダメージを受けられるか」を考えて、決定しました。



同人誌を刷る多くの人は「刷りすぎて在庫が余る」のを怖れます。その基準が本人の主観なのでコンサバ過ぎて完売することにも繋がります。しかし、いつまでも同じ本が売れるとも限りませんし、それは個人が許容できるリスクを計算した上なので、他者がとやかくいえる問題ではなりません。(その結果、自転車操業になったサークルの方に向けて解決策のひとつとして、「印刷所を活用した同人活動」を提案しました)



「印刷することそのものが、日常生活に巨大なダメージを与える」、そのことを前回のエントリでは伝えていませんでした。普通はこの印刷代を前に、「印刷」の決断は躊躇するものです。


印刷代を回収できる部数を下げて在庫リスクを下げる

3年で売れると数字上判断できても、本当に完売できなかった場合も考慮しました。原価の回収が行える頒布部数のラインを下げるためにも、数字を前回算出した方法で考慮しました。800部の場合と比較検討し、最終的に1,000部の決断をしました。



同人誌は100部増やすと1冊辺りの印刷コストが劇的に変化するので、1,000部刷ることで「仮に400部売れなくて捨てることになっても、原価は回収する」計算を行いました。1,000部刷って大量に在庫を余らせるリスクか、完売して自転車操業して結果として在庫が余る可能性が高いリスクか。リスク(趣味の限界を超えた印刷費)をどう回避するかに頭を悩ませたことになります。



自転車操業の恐怖は知っていたので、結論は決まっていました。前者のリスクならば引き受けられると判断し、印刷する決定をしました。成功確率というよりも、「引き受けられるリスクの計算」でした。



これまでの最大部数は、だいたい5年かけて頒布したもので、大手サークルと異なり、一度のイベントで売れるのは「1,000部」ではないのです。3年後に余っていても、その頃には印刷代は回収できている、という長期的な設計でした。(利益の額も結果として数十万円になりますが、短期間で完売すると思っていなかったので、昨年の納税額は想定外でした)



多分、ここが一番重要な「意思決定」だと思います。


[4]結果

この前提で過去の日記を見ていただくと、再版の辛さが分かっていただけると思います。



「何で完売したのに、喜んで再版しないのか?」



それは、部数予測が不能な未知の領域に足を踏み入れたからです。


個人の限界と、それを超えるための商業化への動き

1,000部が短期で完売したことは嬉しいことですが、「再版しないために刷った」はずが、「再版しなければならない」事態に直面したので困惑しました。基本的に久我のスタンスは、前述したように「多くの人に読んでもらう」なので、ここでも再版は前提ですが、精神的には趣味の範疇を超えるほどのリスクにもう一度、直面するのにためらいがあったのです。



個人で出版できる限界を超えた、と何度も言ってきたのは、あの経験を二度としたくないからでした。柳の下にドジョウは二匹いません。二度と再版できない(再版したくない)のと、同人マーケットでは1,000部が限界とも思っていたので、最初に1,000部刷った後は再版を考えず、すぐ商業化に向けて動き出しました。商業化が叶わなくても、在庫が3年は持つと思っていました。



しかし、在庫がわずか3ヶ月で無くなり、かなり求める声が見えたので、刷ることは必要となりました。


完売後にリスクが最大化

3年計画は大幅に狂いました。狂ったというよりも、失敗ばかり考えていたので、成功したその先は白紙でした。ミヒャエル・エンデの言葉だったと思いますが、『人は叶わないと思った夢が叶った時がいちばん危険』なのです。



幸いにも『英国メイドの世界』が短期間で売れて想定外の利益が出たこともあり、リスクとして引き受けられるラインが下がったので再版に踏み切りましたが、実はこれが今回の出版で遭遇した一番大きな「リスク」でした。



最大を1,000部と見積もっていたので、それ以上の部数を増刷して完売できるかまったく分かりません。ノウハウが通用しない、どれだけ出るかの見通しが無く、「賭け」以外の何物でもありません。全部売れて赤字だけは避けたかったものの、さらなる再版は避けたかったので希望予測部数と、引き受けられるダメージと印刷費回収可能性を考えた400部に決定しました。これでも、わずかしか売れなければ、数十万円の不良債権です。



増刷した理由は、もうひとつあります。シリーズで本を作った結果、「総集編がないと、シリーズとなる新刊を買わない人が出る」可能性が繰り返すのです。最初のシリーズは常に在庫として持たなければならない。これが一回限りの売り切りではなく、常に再版が必要なシリーズ本を作ってきた結果に招いたことでした。



しかし、読んで欲しい、反響があったから応えたい気持ちは強く、自分が引き受けられるリスクの範囲で再版しました。



増刷はマーケットを考えた「予想部数」ではなく、「失敗しても引き受けられる部数」で刷りました。


初期想定部数を超える増刷は「ギャンブル」

最終的に増刷した400部も完売しました。再版に対するニーズはありましたが、ニーズを自分で可視化できませんでした。元々箱に入る部数が少ない=宅急便コストが高いなど、それ以外のコストも大きくなっていったので、再版の決定をしませんでした。



最初に1,000部刷るよりも、増刷で400部刷る方が危険なのは「想定できるかどうか」の違いです。終わりが見えない底なし沼に見えるほど、再版は恐怖に近しいものでした。既刊は原価が低かったので再版を繰り返してもなんとかなりましたが、総集編は印刷代が高すぎる分、わずかな計算違いでもクリティカルなダメージになるのです。




勝率が見えない勝負で、いわば「桶狭間の戦い」的博打でした。踏み切ったのは場の勢いですが、生き残ったのは偶然です。信長は二度とこうした奇襲をしなかったといいますが、まったく同じ心境です。行動予測とリスク管理を大切にしていたので、リスク管理ができない行動はギャンブルになり、心理的負荷が高く、個人での再版はもう無理でした。商業出版の話もこの頃には形が見え始めていたので、リスクはそちらで背負ってもらおうと、二度目の再版は行いませんでした。



総集編に続く5〜7巻も完売して、現在は絶版状況にあります。そちらの総集編を望まれる声もありますが、少なくとも今時点では様子を見ています。総集編と似た分厚さになったとしても、「シリーズ最初の総集編ではない」ので許容できるリスクでの印刷部数設定が、できないのです。



いつか心境も変わるかもしれませんが、あの分厚さの本は、二度と個人では作りたくないのです。それが理由で決意できていませんが、自分への説得材料と伝え方を変えることで活路が見えそうなので、そこは検討中です。


[5]回避したはずの再版リスクに直面した原因

これは余談ですが、「なぜ想定しなかったことが起こったか」を振り返ったものです。



想定以上にマーケットが大きくなったのは、他でもなく、アキバBlog様、そしてそれを基にしたネットの波及効果、さらにティアズマガジンなど、自分の普段の活動と縁がなかった「プラス要因」があったためです。



追い風が吹くことをまったく考えておらず(ある意味、成功したその先を信じていなかった・見たくなかった)、失敗要因ばかりのケアをしていたのが自分らしいといえば自分らしいですが、特にネットの効果が分かりませんでした。


今までと異なるマーケット:同人ショップ委託の「泥沼」

これまで、久我は同人イベントを主体に相手にしていました。自分が参加した同人イベントの自分を取り巻く動きは、ある程度、分かります。しかし、ネットは分かりません。ネットで情報を得た方が委託先の『とらのあな』に殺到したので、普段イベントに来訪される方が今もって入手できていない結果となるのは、想像していませんでした。



ここが、計算外で見えないところでした。今までの経験が通じなかったのです。買われる方の表情も動作も来訪数も購読率も、何も見えません。『とらのあな』初期納品が150部(初期の総印刷数15%)でしたが、最終的には700部(最終的な総印刷数50%)まで膨れ上がりました。再版後もニーズは強く感じましたが、自分の経験が通じない場所なので、在庫リスクが分からず、繰り返しとなりますが、勝負を止めました。


委託の位置づけ変化に気づけずリスク増加

とらのあな』委託で、リスクを下げる方法もありました。これは自分のミスで、価格の値上げを失念していました。増刷した時点でニーズが見込めており、また初期の1,000部と、完売してもぎりぎりに近い400部の増刷を同じ価格設定にしたままだったのです。その結果、リスクは余計に高くなっていました。



元々、『とらのあな』は「同人イベントを知っているし、来たこともあるけれど、会場に来られない方」のために行っていました。今までの全体部数でも10〜15%の比率で、個人で通販をしないので、サポートととして位置づけでした。総集編は値段が高かったこともあったので、サークル主が得られる価格をイベント価格2,000円よりも低い1,750円に設定し、委託手数料が上乗せされても高すぎないように値段を下げました。(税抜きできりが良い2,500円に設定)



初期の150部だけがその値段ならばよかったのですが、想定以上のニーズで、卸せば卸すほど、自分の印刷資金回収が遠くなっていくことになりました。(推定250円×700部の金額を得られなかった計算) 当時はそこまで考えていませんでした。また、特に400部の増刷は印刷コストが上がっていたので、『とらのあな』で吸収してもらうほど、自分の懐が苦しくなりました。これを計算しなかったので、自分が被るリスクの幅が大きくなっていました。



再版のリスクを、同人誌の値段を上げることで、同人誌を欲する人に背負ってもらえたかもと今ならば思えますが、値上げしたら買われるかは分かりませんし、当時はそんなことを考える余裕もありませんでした。委託はあくまでも「サポート」だったので、深く考えていなかったのが、「避けられたかもしれない失敗」でした。



また、『とらのあな』にそこまで委託をするべきだったかどうかは、わかりません。とにかく「ニーズに応える」ことに追われました。ニーズがある、その要望に直面することが「怖い」と思ったのは、初めてです。頑張ればもう少し部数は伸ばせたと思いますが、それは繰り返しですがギャンブルであり、自分の活動の本筋ではないので、止めました。


委託はリスクヘッジになる

同人ショップへの委託は印刷部数を増加させるサークルにとっては保険のようなもので、その結果、イベントで頒布する価格を下げることができますし、原価も下げられます。同人サークルにとって一定数の委託が見込めるようになるのは、売れ残った場合のリスクを下げる大きな効果があるのです。再版を絶対に避けたいサークルにとって、同人ショップは無視できない存在です。



大手サークルになると「買い切り」という契約があり、印刷した部数を買ってもらうことができます。これは最も安全な保険になります。大手サークルになればなるほど売上げも大きくなりますが、万が一外れた場合のリスクは甚大なので、相当、胃が痛いのではないかと。(但し、印刷費自体に「商業」がお金を出して関与することは、コミケの頒布物のルールでは、禁じられています)



委託は「売れないと返本」されてきます。基本、先方が本を確認し「この部数で納品して欲しい」といってきた数で納品しますが、見積部数は売上げを保証しません。自分の本の性質を知らないと、委託部数を当てにして過剰な数字を発注しかねないことにもなります。その損失を、同人ショップは被ってくれません。自分の本を一番知っているのは、自分です。


[終わりに]リスクを見極めて活動を楽しむために

総集編を作ったことに、後悔はありません。作ろうと決めた時から、数多くの信じられない出会いにも恵まれた本でした。だから、これを作ること自体に、迷いはありませんでした。



克服することだけを考え、ゲストの方の原稿に励まされ、友人に相談して支えてもらいながら、そして出会ってきた人たちに「総集編です!」といえる瞬間を夢見て、その先に進めました。本当に、「総集編はそのうち作ります……」と凹みながらいってきた自分が、「総集編です!」と言えた瞬間の喜びは、筆舌にしがたいものでした。



二度は作りたくないですが、二度は作れないものを一度は作れたのは、大きな自信になりました。それまでの同人活動も、大きな力となりました。「何か、どうしても作りたいものに出会ったとき、それを作れるだけの力を持っているか」を、問われました。(自分から向かっていった、ある意味での墓穴でしたが)



苦しいことだけではありませんでした。作った結果、多くの方に出会えました。そしてそれがあってこそ、商業版に繋がる道筋も描けました。こうしてテキストをお読みいただけているのも、出会えたのも、あの本が名刺代わりになればこそです。



ものすごい、人生を変えるような良い体験になりました。


リスクに応じて考える

前回のエントリはどちらかというと「売れない嘆き」の解決策として、「原因の把握と対応」のプロセスを提案するものでした。しかし、売れていたり、そもそも母数が多い所では、あそこまで考える必要はありません。考えた上で結果が出る方が面白いですが、それは時間とリスクとの兼ね合いです。



同人は好き勝手できるのですが、リスクは常に転がっています。自分の取る行動のリスクが見えないと、活動が続けにくくなります。



自分のサークル活動で、今回が最も大きなリスクを取りました。「どうしても刷りたい気持ち」を満たすために、徹底的に考えました。印刷代がここまで高くなければ、シビアな計算はしません。今回自分が体験したことは、1冊のコストと重さが桁外れで、100冊過剰になれば100kgと、それまで経験したリスクとレベルが違ったのです。



たとえば「全部売れなくてもいい。在庫は余ってもいい」という気持ちで、そのリスクを許容できるならば、ここまでする必要はまったくありません。余ったものが重荷になるならば、考えた方が安全、という話です。久我が勝負したのはこの一度限り、この1冊だけでした。たまたま風が吹いたおかげで結果は良好でしたし、ここにいろいろと書けていますが、もしもうまくかなければ、とても書く気にもなれない大惨事になりました。



「在庫」「売上」の解決策を見出せたことでその先に進んだものの、そこに辿り着くまでは薄氷を踏む思いでした。本を書き上げることだけでも膨大なエネルギーを必要とし、虚脱するだけの大きな出来事でしたが、「同人誌に仕上げる」ことでも異常にエネルギーを使いました。実際、長い間、燃え尽きました。(100年前にメイドと結婚した英国紳士が書いた本と出会い、彼が久我の魂を甦らせてくれました)



『英国メイドの世界』は、「同人誌としての集大成」であり、「同人ノウハウの集大成」ですが、普通に趣味のレベルで活動をしてきたつもりが、いつのまにか未知の領域に足を踏み入れてしまったのは恐怖でしたし、作ってしまったのはアマチュアだからこその計算のなさです。同人活動をどのような位置づけで行うのか常に考えておかないと、判断を誤る可能性もあります。


仕事も同人も相互にリンク

そこで役立ったのが、社会人としてのノウハウです。



会社では、よほどの権限がない限り、人に説明しなければ何かを実現するのに必要な資源を与えてくれません。その説得や説明の時には、メリット・デメリットを伝え、相談することで、考えがまとまったり、他者から自分には見えないことを教えてもらうことも出来ます。



同人は個人ですべて行えます。人に伝えない、自分の立ち位置を認識しないままに、リスクを考えずに大金を投じる可能性があります。相談相手がいないこともありますし、各自のジャンルが細分化されすぎており、自分にとって正しいことが他人に通じるとも限りません。しかし、ここを「人に伝えるつもりで考えてみる」だけでも、大きくリスクは減ります。



普段、仕事で当たり前にこれ以上の決断をされている方も多いはずです。はてぶに「PDCA」と書かれた方がいましたが、正にその通りです。会社でPDCAを完結させるのは自分には難しいことですが、自分が主体の同人ではやりやすいです。それが、「同人」の魅力です。



どちらかで得た経験をもう片方で使えたら楽しいぐらいの気持ちでいますし、仕事で覚えたことや仕事で機会が無くて試せないことを同人で試し、同人で試したことを仕事に持ちかえるという繰り返しを意識していたのが、この結果に繋がった主要因にも思えます。「コンテンツを作る創作活動」ではなく、「本を出版する同人活動」の部分を、仕事的に取り組んだことが大きいです。注ぎ込んだ仕事のノウハウが同人によって実証され、仕事における自信にもなりました。



もちろん、個人だけでは作れません。印刷所にも事前にいろいろと相談し、柔軟な対応をしていただきました。これも仕事上の経験があればこそ、です。別の形で何か問題にぶつかった時に、この苦しい経験を乗り越えたことは、次に繋がります。同人活動は「趣味で完結し、仕事の役に立たない」ものではなく「仕事にも使える」ですし、逆に仕事で培った経験は「同人活動を支えてくれる」、そう思えるのです。



両者は共存し、補強しあえます。


続けることを大切に、楽しむ

この話は本来、読者の方にはまったく関係のない話ですし、水面下で努力したことは本来表立って見せることではありません。しかし、同人活動のノウハウとしてどこか役に立てばいいなと思って前回のエントリを書き、そこで補足仕切れなかったことを今回書きました。



飾らずに言えば、趣味でこれだけのお金を投じたのは、「馬鹿」です。「狂」かもしれません。しかし、「狂」にならなければできないこともあります。もちろん、決断が「狂」で、実現プロセスも「狂」では失敗します。この長いエントリは、いわば「馬鹿なことをしたけど意味があったし、多くの体験をできる価値がある出来事だった」と自分に言い聞かせる、長すぎる言い訳でもあります。



クールダウンのようなつもりで、当時を思い起こしています。前回のエントリほど役立つものではなく、苦労話になってしまいましたが、結局、何かの課題に資源を使ってどう実現してどこに落とし込んで、どんな効果を上げるかに、同人も仕事も境目はありません。



「創作活動」のノウハウに比べてあまりにも実務的ですが、「創作活動を続ける工夫」になるものだと考えています。どんなに優れたレーサーも、車がメンテされていなければレースに勝てません。レースに参加し続けるために、足場は必要です。営利目的は同人では否定されますが、営利目的の会社組織が行う運営方法で真似できる手法があるならば、真似していいと思うのです。繰り返しですが、目的は営利ではなく、「楽しむことを続ける」ためです。



自分が望む限りにおいて創作をしたいならば、創作をする環境作りまで含めてが同人活動で、無理しないで続く足場を「考えて作ること」が、結果として創作活動の安定に繋がりますし、「無理をしてでも作りたいものを作る」決断をさせてくれると信じています。



創作活動は楽しいです。苦しいこともありますが、楽しい出会いもいっぱいあります。自分が伝えたいことが伝えたい人に伝わるのは、もっと楽しいです。いつかこの活動を終える時がきますが、それまで続けられるよう、考えます。



何よりも、好きでいるには、努力が必要です。



同人は工夫次第で楽しく続けられますし、失敗もいっぱいできます。主体性を持って取り組めますし、試行錯誤がしやすい環境です。なので、もっと同人を楽しんで欲しい、楽しめる余地がある、しかし危険な場所もあるのでそこは避けていきたい、それを伝えることが、これら一連のエントリの終わりの言葉となります。



制作から1年経過しましたが、これを書いてようやく肩の荷が下りました。『英国メイドの世界』の制作にまつわるお話は、これでおしまいです。お付き合いいただき、ありがとうございました。



前回のはてぶやウェブで言及されたことについて、ノウハウとして残せそうなものは、後日あらためてエントリを書きます。さすがにそろそろ自分の創作活動をしないと、というぐらいに時間を費やしました。しかし、このエントリで自分の同人活動を可視化して再評価することはあらためて大切なことだと気づきました。これも、自分の「同人活動」ですね。



尚、これは「紙の同人誌」「同人イベント」にこだわって背負った苦労なので、ウェブでの発表やダウンロードコンテンツ等は一切考慮していません。昔ながらの手法で遭遇した問題ですので、新しい手法を取り入れている人たちには幾つかの問題は無縁ですし、そこでの苦労は新しい手法を取り入れた方たちがいつか話してくれると思います。


今後書こうと思うエントリ

・楽しむノウハウについてと、はてぶの補足(続ける・楽しむ)

同人活動における「儲け」と「利益」を区別する

・読者との出会い方で工夫してきたこと(母数を増やす試み)


同人ノウハウへの反響と、今後の更新予定

同人誌1トンを刷った経緯と部数決定のプロセス



上記は久々に真剣に時間を費やして書いてみましたが、いろいろな方の反応がありました。これだけ多くの反響を得られたのは、まなめさんに取り上げられることで、多くの方に出会えたからです。(この波及効果も時間軸で可視化すると面白いです。まなまさん→はてぶ→カトゆー家断絶様→さらにかーずSP様ゴルゴ31様……というような流れ)



取り上げていただけたこと、そしてお読みいただいた皆様、ありがとうございます。



これもある意味で同人的というか、「書いている内容は同じでも、人との出会いがないと、評価される以前の問題」だという良い実例だと思います。伝えたいことがあるならば、伝わるように工夫が必要です、といいますか、今回に関しては自分では何もしていないので、巡り合った運だけです、はい。



ノウハウで伝えたかったことは、シンプルに言えば「失敗しない部数決定をして、同人活動を楽しもう」です。で、落ち込んでうつむかず、顔を上げたらいろいろ見えた、というような話です。



個人的に感じる「同人サークル三重苦」とどう向き合うか、それが自分の同人活動におけるテーマでもありました。



「1:在庫確保スペースの問題(場所)」

→対策「同人誌を1トン刷る〜印刷所を活用した同人活動」(2009/03/12)

「2:回収できない印刷代の悩み(お金)」

「3:1と2の重圧と、売れないことで自分を否定されたと感じる(心理)」

→対策:同人誌1トンを刷った経緯と部数決定のプロセス(2009/08/29)



ただ、「1,000部刷った意思決定」のところはマーケットの話だけで、「コスト」の話を書いていなかったので、次は「1トンの同人誌を刷った印刷代、そして増刷と向き合った話」を書きます。これはもう少し詰めてから、公開する予定です。「1トンシリーズ?」は次で最後です。



こっちはノウハウというよりも、リスクを回避して生還した記録のようなものです。もっといえば、既刊読者の方向けの、総集編を増刷できない言い訳です。はい。



時間が経過してから客観的にみると、「完売したその後の増刷」が一番危険でした。ですが、完売を迎えた後の「再版」の危険性は、同人サークル以外の方には極めて伝わりにくいことですし、その危険性を言葉にしているところは少ないと思うので、その辺りを印刷代の規模を交えつつ、お話しようと思います。大手サークルの事情はわかりませんが、書いていて「よく刷ったなぁ」と、思うほどでした。



自分はもう、二度とこのような分厚い本を刷るつもりもないですし、もう刷る内容もないのですが、どうしても作りたい何かに出会ってしまい、作らなければならなくなった時、その足場のひとつに使っていただけるように公開します。



経験を共有することも、自分なりの同人への恩返しです。



また、はてぶなどで気づかせていただいたヒントを元に、TIPS的なものは、上記とは別に書くつもりです。


同人誌1トンを刷った経緯と部数決定のプロセス

以前ノウハウとして、倉庫を活用して1トン(1冊1キロを1,000冊)の同人誌を刷った話を書きました。印刷所の倉庫を活用し、大量の在庫を抱えても日常生活に影響を及ぼさない方法でした。



しかし、そもそもサービスがあったとしても、1,000部を頒布できる確信が無ければ、印刷は行えません。部数決定は勘のようなものがありますし、当時友人や話を聞いた人のほとんどは、1,000部は現実的ではないといった反応を見せました。少なくとも表立って1,000部ぐらいいけるのではといってくれたのは、2人だけです。(どちらも同人経験は久我より長いです)



この部数は、希望的観測を交えたものもありますが、直感に頼らず、これまでの活動実績と同人イベントで接した方たちの動きから積み上げて推測した結果です。



3年で頒布する計画が3ヶ月で完売したのはひとえにアキバBlog様に取り上げられた幸運によりますが、少なくとも1,000部を刷らなければ本が流通せず、目にも止まらなかった可能性もあるわけです。吹いた風に乗れたのは「人為」によるので、幸運を逃さなかった態勢にあったのは、良かったです。



では、どのように部数を決定したのでしょうか? それを書いている過程で、同人活動の別のノウハウがあるように思えたので、それを交えながら、実体験に基づいた話をご紹介します。



正直なところ、すべてが他の方に当てはまるとは思いませんし、同じ方法が通用するとも限りませんが、こういう考え方があるのを、知っていただければと思います。

なお、この1トン刷った同人誌『英国メイドの世界』は、講談社から2010/11/11予定で出版されました。



英国メイドの世界

英国メイドの世界





以下、長いです。


前提:作っている同人誌とそのジャンル

同人誌

英国ヴィクトリア朝やそれ以降の時代に実在した使用人の仕事内容や生き方を紹介する資料本・エピソード集・創作です。


ジャンル

した コミケでは「創作少年・メイドジャンル」です。コミティアでは「文章」か「歴史」で申し込んでいます。ただし、コミティアの公式による分類(ティアズマガジンP&R掲載時)では「評論」ジャンルでした。


目次

[1]自分の居るジャンルの「交通量」を知る
[2]「人が本当に少ないのか」把握する
[3]「訪問されて読まれない理由」を把握する
[4]「読まれて買われない理由」を把握する
[5]総集編部数決定のプロセスとその結果
[終わりに]一番大切なのは試行錯誤・「考えて」「次に生かすこと」

[1]自分の居るジャンルの「交通量」を知る

同人誌でよく言われるのが「刷ったけど売れない」こと、です。最近でも幾つかエントリが目に入ってきました。「絵のうまさ」「作品の質」に話がいきがちですが、ここではそれは置いておき、他の視点で書いていきます。



頒布部数として正確な部数を算出するには、自分が所属する「ジャンルの母数」を知ることが大切です。新規に店舗を出店する時には交通量調査を行い、その道の「期待できる顧客数」を把握するのと、考え方はまったく同じです。



同人における交通量は、「ジャンル」で決まります。



「二次創作は売れる」というのは、もちろんそれだけ裾野が広く、交通量が多いからです。その中でもサークルの本によっては大きく数字に差が出るのはブランドや提供する価値の違いによりますが、まずは交通量の話を続けます。


人が通らない=読まれない

久我はコミケでは「創作少年・メイドジャンル」に所属し、いわば「メイド本を求めてくる人」がいる場所で参加をしています。そのコミケに参加した後、初めてコミティア(二次創作は原則禁止)に申し込みました。ここで所属したジャンル「文章」は、自分にとって同人活動を続ける上での多くの気づきをくれました。



コミティアの「文章」ジャンルは人が少ないのです。コミティアのメインは「マンガ」で、マンガが欲しい人は文章には興味を示さず、文章ジャンルをあまり通りませんし、「あ、文章か」というふうにちら見してスルーしていくこともあります。コミティアのサークルは「ジャンル」(少年・少女・旅行・エロ)と「表現手段」(文章・イラスト)が混在する形で分類されており、「表現手段」の方は「マンガ」が欲しい人がそもそも足を運ぶ理由がないのです。



久我はそのことを知らず、コミケと同じ気持ちで参加したところ、部数がまったく出ずに、ショックを受けました。しかし、間違っているのは久我です。人が少ないところにいて、人が通らないことを嘆くのですから。


スペースの直接参加よりも売れるイベント内委託

参加した1度目は勢いで80部前後出ましたが、以降はなかなか伸びず、一桁の時もありました。その後、委託に切り替えたところ、意外にも数字が伸びました。出している本が同じであるにも関わらず、委託の方が売れた理由は、委託の方が来場者数が多いからだと考えました。



コミティアの委託スペースは小さく、どのジャンルでも見回しやすく、特定のジャンルを探すというよりは回遊する傾向があり、委託スペースに足を運ぶ人の目に止まりやすいです。少なくとも、文章ジャンルで参加した時より、売れました。



売っている本は同じでも、場所によって出方がまったく違うのです。「売れない」ことで自分を責める方もいるかもしれません。久我は相当落ち込みましたし、自信も無くしました。しかし、原因を分解していくと心も落ち着きますし、改善の余地も見えてくるのです。そしてこの「失敗→原因把握・仮説→次で検証」を繰り返すことは、サークル活動を続ける楽しさに繋がります。


[2]「人が本当に少ないのか」把握する

コミティア参加が目を開かせてくれました。



自分の本は「読まれて、売れないのか」「読まれない」のか、どちらなのかと。同人活動のノウハウや「売れない!」という話題は数多く出ていますが、どちらなのかを明確にしているテキストは多くありません。



まず、手に取られなければ存在しないも同じです。そもそも手に取ってくれる人が存在しなければ、まったく売れなくて当然です。10人しかスペースに来ないのに、「20部売れない」と嘆くのは間違っています。作品の質を問うのも当然ですが、読まれた上でその話が続いてくるのです。



そこで、コミティアでの体験を可視化しようと、過去に何度かコンビニのレジのように、「総訪問者数」と「購入者数」を記録してみました。



以下、「1度目」「2度目(ティアズマガジンP&R掲載=認知度UP)」「3度目(『英国メイドの世界』頒布・アキバBlog様に取り上げられた時&P&R掲載)」の訪問者数と、比率です。まぁ、思いついた当初はそれだけ暇だったということです。


1度目:文章系は人が通らないが、購買率は高い

文章スペースでの参加です。



数字は全部はメモできませんでしたので、おおよそのものです。確か40名程度の方たちがスペースに足を運んで下さいました。そのうち、85%ぐらいの方が購入されていったので、少なくとも内容的には刺さる人に刺さるのではないかと、思えました。



購買34人/総訪問40人(購買率85%)



この購買率は自信につながりました。出会えれば、買ってもらえる確率は高いクオリティなのだと。


2度目:P&Rで一見さん増加も購買率は低下

文章スペースでの参加です。



ティアズマガジンの掲載効果で100名ぐらいの方に来訪いただいた気がします。前回の2.5倍です。ただ、掲載によって目立っただけで、自分の同人誌が合うとは限りませんので、購買率は確か70%ぐらいに低下しました。



購買70人/総訪問100人(購買率70%)



こうしてみると、如何に母数が大切なのかもわかります。少なくとも読まれた上で購入されないのは自分の作品の問題ですし、相手の都合(趣味に合わない・予算・荷物の都合)にもよるでしょう。


3度目:一見さん激増・購買率は低下

分厚すぎた『英国メイドの世界』を搬入をするので、文章スペースではなく、壁を希望し、通りました。2008年9月にアキバBlog様で『英国メイドの世界』が取り上げられ、かつティアズマガジンにも掲載されたコミティア86の時です。これは久我にとってコミティアのピークでした。



購買186人/総訪問319人(購買率58%)



数字だけ見ると、いかに宣伝効果が大きいのかわかります。一見が多い分だけ購買率も低下しますが、それでも記録1回目の「8倍」訪問しているのですから、1度目よりも部数が出て当然です。コミケではジャンル効果があって、配置場所にもよりますが少なくとも300〜400人ぐらいは訪問してもらえていると思います。コミケが、そしてジャンル効果がいかに大きいのか、という数字にもなります。(尚、新刊をコミケでしか出していないので、新刊が無いコミティアは訪問数が相対的に少なくなっているはずです)



ちなみに、「壁」だという理由で買われるほどコミティアは甘くないです。これ以降、コミティアで2度壁になりましたが、話題性が去ったので、訪問者数は文章サークルの時と変わらないぐらいに落ち込みました。壁はある意味「ノージャンル」で、そのサークル目当ての人は大勢来ますが、そこに該当しないサークルの交通量は極めて少ないのです。自分のサークルで言えば、一見さんに出会う確率は、「壁以外」の方が、高いかもしれません。


「読まれていないならば読まれる工夫を」

上記のような自分のサークルへの「訪問数」を言える方は、どれだけいるでしょうか?(時間に余裕がないと出来ないのですが)



まず自分の状況を理解しないと、手の打ちようがありません。読んで欲しいならば、訪問数を増やすのが望ましいですが、人に取り上げられるかは運にもよります。その辺のノウハウはジャンルや作品によって異なりすぎて一般化できません。自分が完璧にそれを出来ていれば、きっとここにはいないでしょう。



正直なところ、母数を増やすのが一番難しいです。



商業作家/プロ、ニュースサイト、ネットで活動など同人イベント以外での活動で多くの読者と接点を持っている人が強いですが、そこに参入していくのが活動の本筋として正しいかもわかりませんし、結果が出るとも限りません。久我が心がけていたのは、少なくとも「日本に存在しないもの作る」=「そこにしかない価値を作る」ことでしたし、それをネットで伝えていくことでした。



話が逸れましたが、言いたいことは「読まれているのかいないのか」をまず把握すること、です。ジャンルによって対応は違ってきますし、そこを自分で考えるのも同人活動だと思います。解決策を出せるものではないので、考えるヒントにでもなれば、幸いです。



同人は部数がすべてではないですし、部数のために自分が描きたくもない本を作るのは本末転倒(主目的が売上ならば否定はしません)です。だから、出来るだけ自分が作った好きな本が評価されるように、それでモチベーションが上がるように、組み立てていくのは、荊の道ですが、正攻法だと思います。



自分の本に自信を持ち、時間とコストを費やしてきたならば、多くの方に読んで欲しいと思うのは当然ですし、読んだ人のプラスになる自負があればこそ、わざわざ作っているはずです。部数は、「どれだけの人に届いたか」の見えやすい結果になります。



では、もともと「交通量」が少ないオリジナルや人気ジャンルではない同人サークルに、読者と出会う機会や、頒布数を伸ばす機会はないのでしょうか?



そうは思いません。工夫の余地はあります。


[3]「訪問されて読まれない理由」を把握する

先ほど大きく取り上げたは「交通量」ですが、次に考えるべきは購読率です。来た人に、手にとってもらえているのか、いないのか? 母数を増やすことは非常に難しいことです。貴重な訪問してくれる人がいるならば、その機会を最大限に活用するのが肝要です。



こちらについてはかなりの数ノウハウが出ていますし、ほとんどの場合はスペース上のディスプレイの話になるでしょう。同人イベントの大前提として、訪問される方の時間とお金は限られています。本を読めばわかるといっても、読んでくれるとは限りませんし、そんな義理もありません。読んで欲しいならば、「わかりやすく、伝える」努力をするのが、建設的です。


1:値段はわかりやすいか?

買い物をする時、最も気になるのは値段です。ショップ運営に学べるところも多いと思いますが、他の人がやっていることを真似ておくのが楽ですし、安心感もあります。


2:内容はわかりやすいか?

一番重要です。



文章系は特に同人イベントだけで判断するのはほぼ無理です。ならば概要やあらすじを紹介するのが親切です。キャッチコピーのようなものです。読んで欲しいならば、「何が同人誌の魅力なのか」を伝える努力はすべきです。「読めば魅力がわかる」としても、まず「読まれてない」のですから。


3:言葉の選び方は適切か?

ブログタイトルでアクセス数が違うように、同じコンテンツであっても「興味を引くか」「相手のニーズに合っているか」で、まったく動きが違います。スペース上から訪問者に訴える言葉は、適切ですか?



これは、意外と奥深いもので、具体例があります。



久我が作った同人誌7巻は「男性使用人」を扱っていましたが、正直、時代が早かったのか、あまり売れていませんでした。しかし、ある時期、執事喫茶経由で執事を知って来訪された方がいるのを知り、執事喫茶に登場するものの日本ではほとんど情報がない男性使用人職「フットマン」の文字を概要に追加したところ、女性が買われる確率が高くなりました。



この経験を元に、『とらのあな』に部数が出ず断られていた7巻の委託を、「執事喫茶のある池袋の店舗で再開して欲しい」と交渉したところ、成功しました。そして、委託した部数は完売しました。伝え方一つで、変わります。


4:「読んで欲しい」=「卑屈にならない」

同人活動で大切なのは、自分の作品の魅力を伝える「広報」力だと思います。飲食店と同じですが、「お口にあうかどうか……」と不安そうに言われるよりも、「美味しいですよ!」と笑顔で言われる方が、いいです。



実際に美味しくなければ、二度と足を運ばないだけですし、美味しくないものをさも美味しいように伝えるべきともいいません。ただ作品の産みの親が「美味しい!」と自信を持ち、愛せるものでなければ、読んでくれる方に失礼ではないでしょうか?



自分の作品の味方は、自分です。美味しい自信があるならば、相手に伝わるように伝えるのが良いです。


[4]「読まれて買われない理由」を把握する

さて、ようやく手に取ってもらえたとしても、そして読んでもらえたとしても買われないことは普通に起こります。こちらは「作品の質」や「相性」だと思われがちですし、その側面が非常に大きいですが、それだけではありません。久我のように既刊が多い長期で続けるサークル向けの視点ですが、ここに「買いやすさ」を考えるヒントがあります。



なぜ、読まれて買われないのか?



スペースに訪問された方は様々なヒントをくれています。そこに気づくと、改善の余地が様々に見えてきます。同人イベントに参加していると、購買パターンが見えてきます。リピーターの方は別として、久我のサークルに訪問した一見の方の行動はだいたい次のようになります。



■A:購入する場合
1:新刊を試し買いする。

2:一番古い巻(シリーズ物の1巻)を買う

3:全部買う



■B:購入しない場合
1:全部読んで、買わない

2:新刊だけを読んで買わない

3:一番古い巻(シリーズ物の1巻)だけを読んで買わない

4:めくって、すぐ去る



「購入する場合」については購入されているので(その購入行動にも学ぶ余地があり、なぜ買ったのかを把握するのも次に繋がるヒントですが)ここでは扱いません。



では「購入しない」場合、どこに改善の余地はあるでしょうか?


1:全部読んで、買わない

これは己の実力不足と相手とのニーズとのミスマッチ(内容の方向性、同人誌のレベル、予算、荷物の都合など)で、どうしようもありません。読んでいただいたことに感謝しましょう。



己の腕を磨くしかありません。


2:新刊だけを読んで買わない

自分にとって最新刊は常に最高傑作(自分が成長中という意味において、時間経過は味方する)との思いもあって、そこで評価を下されるのは、仕方がありません。久我は、「欲しいと思わない人に、無理に買って欲しい」とは望んでいません。しかし、もしかすると既刊にその方の琴線に触れるものがあるかもしれません。



その時、大切になってくるのが前述したディスプレイのわかりやすさ、です。目に入って判断してもらえ、かつその人にニーズがあるならば、それ以外にも手を伸ばしてもらえるでしょう。


3:一番古い巻(シリーズ物の1巻)だけを読んで買わない

これが、一番残念な結果です。そして、事実として、久我のサークルで一番起こった結果です。久我の本は資料本という性質上、頒布期間が長すぎ、また扱いたい題材を一度に作れないので毎回研究発表して、徐々に空白を埋めていくシリーズ物だったので、欠点がありました。



シリーズ物の体裁で売っているので、確かに普通に考えれば1巻を手にします。しかし、1巻は自分の実力が最も低かった時期の作品です。もしかすると新刊や、他の巻を読めば興味を持ってもらえたかもしれないのに、一番未熟な本を読んでそれがすべてだと判断されるのは、不本意です。1回のイベントで5〜10人ぐらい、いたと思います。母数と累積するその数を考えると、無視できない数字です。これを改善するため、伝え方を変える(各巻は独立しており、自分が必要なテーマを選んでもらう)方法を行い、そこそこ出たような気がします。



もうひとつ、ここで学んだことは「シリーズ物は買いにくい」ことです。総集編準備のため1〜4巻を廃刊にした後、内容としては独立している5巻以降が動きにくくなりました。「1巻(総集編)が出たら買います」と、直接言ってくれる読者の方もいました。確かに、9年間の活動で、数多く頒布できた上位の同人誌は2001年に作った「1巻」でした。このことから、「総集編を出したら、買いやすさが劇的に向上する」のではないかと、考えました。


4:めくって、すぐ去る

これは「文章サークル」以外の「歴史」でコミティアに参加した時、そこそこ見た行動です。「あ、文章か」という感じなのでしょう。マンガを求めているのに、文章に遭遇するのは、確かに嬉しくないでしょう。その点では手を伸ばす前に、「文章サークル」と分かるように示すのも、お互いにとっていいかもしれません。


自分の本を固定で買って下さる方の数を知る

そもそも的には、新刊頒布時にいつも来てくださる方の数はざっくりとでも把握するべきだと思います。「新刊下さい」とだけ言われる方、ですね。次第に増えていればサークルのファンが増えていることを意味しますし、減っているならば一過性のものや、期待を裏切る何かをやってしまったことになるでしょう。



ただ夏と冬や様々な要因で変動があるので、新刊の初動(久我の場合は必ずコミケでリリースなのでその時の新刊数字)を何回分かで平均したものでざっくり判断しています。



これが「流行」に左右されない自力だと思います。


[5]総集編部数決定のプロセスとその結果

以上の経験と、コミケでいつもご来訪いただける方々(リピーターと定義)をベースに、総集編の部数は算出しました。



1:リピーター(200〜250前後)

2:これまでの頒布数(1巻は最大700/イベント+委託含む)

3:「総集編」による新規効果(3年で300を想定)



1と2は重複するものの、3の強さを体感していたので、3年かければなんとか頒布しきれるだろうという計算の元、1,000部の印刷に踏み切りました。



以下はその結果分かったことです。


1:分厚いことの宣伝効果とイベント頒布の弱さ

コミケカタログより分厚い」「1キログラム」は結果論でしたが、宣伝効果になりましたし、スペースで訪問される方との間の楽しい話題になりました。目立つので、非常に強力な素材でした。



その一方で、「重いから買えない」と告げた方がかなりいたのも勉強になりました。確かに最初に買うと行動が制限されますし、明らかに手にしたバッグに入らないであろう方々もいました。これは意外な発見でした。



分厚さの評価は、本の質的な内容とは直接関係しません。同人は内容だけではなく、「本の情熱」「異質性」でも評価してもらえる余地があります。努力したところが評価されるのはアマチュアならではかもしれません。


2:言い切れる・わかりやすい

総集編だったので、内容がはっきりしています。「これ一冊でわかる」、という言い方をしたので、自信を持てました。すっきりと説明できました。わかりやすいので、買いやすかったのでしょう。


3:取り上げられる可能性が高まる

1と2などがあいまってか、アキバBlog様やティアズマガジンにて掲載される結果となり、一見の方に「気づいてもらえる」機会が増えました。その結果、3年間の予想が3ヶ月になる結果となりましたし、400部の増刷を行うことにも繋がりました。


4:限界を知る

今回の結果は、「総集編」独自のものとそれによる追い風が強く、決して自分のブランドが上がったものではありません。なので、次の冬コミで印刷した部数は控えめにしました。そして、その判断は正しいものでした。



自分の本がなぜ売れたのかを考えておくと、「次」の判断をする時に見誤りにくくなると思います。失敗が少なければ凹みにくく、同人活動の無理も生じません。自分のサークルは自分にとってはonlyですが、他の人からすればone of themです。忘れられることも多いでしょう。次に来てくれないのは残念ですが、一期一会で出会えた幸運に感謝して、それ以上を求めすぎないことも意識しています。


[終わりに]一番大切なのは試行錯誤・「考えて」「次に生かすこと」

以上、部数決定に際して「自分がいる場所を理解する」ことが大切だと書きました。ここまで観察されている方は少ないと思いますし、おかしいぐらいに同人活動を「考えて」していると自覚はあります。


伝えたいことは伝えられていますか?

なぜ本を作るのでしょうか?



イベントに参加したいだけならば、本を作る必要はありません。自分が作りたい、表現したい、そしてその表現の先には必ず読者がいます。読者がいなければ本は存在しないも同じです。久我の個人的な考え方では、伝えたい相手に伝えたいことが伝わらないものに、意味はありません。相手に応じて、相手に伝わるように、相手に理解できる言葉で、伝えるように工夫が必要になります。



大切なのは、プロセスではなく結果です。久我の考える同人誌においては「テーマが伝わる」「伝えたいことが、伝わる」ことが「結果」です。伝わるためには、まず読まれなければなりません。読まれるためには、読んでもらえる場所にいくしかありません。その工夫を惜しんでは、届きません。



訪問の絶対数はいかんともしがたい部分はありますが、少なくとも訪問した方にわかりやすく本の内容を伝えたり、なぜ買わなかったのかを考えて不具合と思える箇所を修正したりする改善の余地は残っています。



良い作品を作ろうと目指すことは絶対に必要ですが、頒布においても努力する余地はあるはずですし、自分もまだまだいっぱい改善する場所はあります。少なくとも、読者の反応を見る機会は同人イベントなればこそ、与えられています。なので、「売れた部数」ではなく、「手にした人」を見るのが、大切だと思うのです。



「売れない自分」だけを見て、ヒントを見逃すのはもったいないです。これが、伝えたいことです。


得ることを増やして楽しむ気持ちで続ける

ここまで書きましたが、これが正解かどうかは、わかりません。また、同人活動は努力をしたとしても伸びしろが大きいといえません。金銭で見れば、同じ時間と情熱を注ぐならば、仕事に費やした方が得られる金額は大きいでしょう。



なので、同人でしか得られない価値は何か、というのを明確にできず、自分で見つけられないと、生活の中での同人活動の優先順位が下がり、続かなくなる可能性が高くなります。同人は好きで続ける活動、好きでしか続かない活動ですが、その中で部数が気になるならば、どのポイントが問題なのかを把握し、考えていくことは大切だと思います。今出来なくても、続けることで生まれる価値はあるはずです。



ここまで長く活動を続けた末に1,000部を刷る「決心」をでき、それを頒布しきることもできました。それは、1桁しか部数が出なかった体験があっても、止めなかったからですし、学んできたからです。


相手を知り、己を知る

膨大な失敗に凹まずに続けてきて、今があります。創作自体にこのエネルギーを向けるべき、と思われるかもしれません。しかし、その創作が命を得た後、「読者に届くかどうか」まで含めて、同人ならば筆者が考えた方が、楽しいと思います。



親バカです。



届けたい人に届けられるかどうかは不確定要素ですが、「どれぐらいに届かず、また届けられたか」を知ることは参加すれば出来ることです。



部数を刷りすぎて失敗する人もいますが、同人活動を希望的観測だけで行うと、続かなくなったり、辛いことも増えていったりします。居場所を知ることで部数計算の精度も上がりますし、部数ばかりを気にして「訪問している方から教われること」を見落とすのはもったいないです。



同人活動、特にイベント参加はいろんなヒントがいっぱいで、自分が主体的になって試行錯誤できます。自分が置かれている現状を把握し、続けていく上での改善を行う余地があるのをここでお伝えし、活動が少しでも続けやすくなる方が増えるといいなぁと願います。



この辺の話はネットではほとんど見ないので、何かが誰かの役に立てばいいなと思い、書きました。自分の作品に圧倒的な力があれば気にしなくて良いんですが、そうでもないので水面下で一生懸命努力しています。



何かしら同人活動を長く続けている方には、それぞれ「流儀」があるとも思うのです。才能だけではなく、「作品を生み出し続ける環境を作る努力」をしているはずで、そういうのを取材した同人誌を読んでみたいですね。



そういえば偶然ですが、前回は「印刷部数が実際よりも足りなくて困った人向け」で、今回は「印刷部数が想定よりも多すぎて困った人向け」となりました。


『英国メイドの世界』の今

講談社からの出版が決まりました。



行動の結果に出会った縁(2009/11/14)

『英国メイドの世界』、講談社BOXから出版・刊行予定は2010/11/11(2010/11/02)


コミケの週なので最後の準備を始める

というところで宅急便搬入の後は、提出物の準備が最後に来ます。事前に出来るものは事前にやっておくと、当日慌てないで済みます。以下に記すものは最低限です。


提出物

・見本誌
コミケで頒布する新刊(正確にはこれまでコミケの準備会に提出していない頒布物)を提出するために1部ずつ用意します。



・見本誌票
提出する見本誌1冊につきシールを1枚貼ります。申込書についているので前回のを使うか、当日買って貼ることになります。当日、サークル受付窓口でもくれます。



・参加登録カード
捺印がいります。代表者の署名や受付番号などが必要です。



記入する際にも注意があります。「鉛筆不可」「黒ボールペン限定(青ボールペンで過去に書いて書き直しを求められました)」なのです。


それ以外

・テーブルに敷く布
あった方が本が汚れませんし、見栄えもよくなります。何よりも、机の下に置く荷物を隠せます。あんまり長いと消防法の関係で怒られたと思います。



・宅急便搬入の伝票
これがないと引き取りの時に困りますし、時間もかかります。



・値札
同人誌は値段が見えるところにないと、買いにくいです。



・お釣り
たとえば500円の本しか売ってないならば、100円玉をお釣りで出す可能性はありません。自分の同人誌の組み合わせから、いらない硬貨は削り(重いので)、最も無くなりそうなものを多めに用意しましょう。



サークル主ならばその日の財布のお札をすべて1000+5000円札にしておくと、万が一1万円札が来ても慌てずに対応できます。自分で買い物をするときも便利です。


当日

・健康
これがないと始まりません。ちなみに久我はいつも遠足前のように、前日はほとんど眠れません。しかし、目を閉じて寝転がって音楽を聴いて静かにしているだけでも、最低限身体が休まるのか、当日、眠気には襲われていません。



・大き目のポリ袋
ダンボールに同人誌を詰めるとき、これで包んでから入れておくと、雨にも耐性がつきます。通常の耐久力のダンボールならば弱い雨には耐えてくれますが、過信せず、準備した方が安全です。



・買い物:次回申し込み書
冬に申し込む方は忘れずに。申し込みまで間が無く、この機会を逃すと通販も出来ません。



来年のコミケットスペシャルの情報も出るはずなので、興味ある方は会場で忘れないように気をつけましょう。


同人誌を1トン刷る〜印刷所を活用した同人活動

時間が出来たので、まとめてみました。



コミケカタログより分厚い『英国メイドの世界』



同人誌『英国メイドの世界』は去年八月に新刊の頒布を始めてから3ヶ月で完売しました。何部刷ったのかと聞かれることもありましたが、1冊1キロあるこの本を、初版で1000部刷りました。



合計、1トン(ダンボール50箱)です。





普通に考えればありえない物量ですが、その決断を行えた理由のひとつは、印刷所の提供する幾つかのサービスのおかげです。



久我は数年前からサンライズ・パブリケーションを利用しています。他の印刷所でも同様のサービスはあると思いますが、知っている・知らないで活動に費やす時間や考え方も変わってきますので、実例を交えてご紹介します。



このノウハウが無ければ、『英国メイドの世界』を印刷しようと思わず、現在の値段で提供することも、一定量を供給することも出来ませんでした。八年間の同人活動の集大成としての総集編は、「資料のレベル」だけではなく、「同人誌を作る・同人活動を続けるノウハウの集大成」でもありました。



尚、こちらのノウハウは、あくまでも一冊の同人誌を「数年と言う長い期間で、数百部売れると見込めるサークル」か、「あと100部刷っておけばよかった」と思ったことがあるサークルに向けてのものです。「1000部刷って短期で売りきる」ノウハウでもないので、ご注意下さい。



同人誌を制作されたことが無い方には制作の舞台背景として、お楽しみいただければ幸いです。或いは、どれだけ再版が難しいかもということも感じていただければと思います。



そもそも「なんで、二次創作でもなく、マンガでもないのに1000部の同人誌を刷ろうと思ったのか」については、後日、お話します。(2009/08/29同人誌1トンを刷った経緯と部数決定のプロセスを書きました)


目次

■[サービス]1:在庫預かり

■[サービス]2:廃棄処分

■[サービス]3:宅急便搬出を最も容易に行う(1との組み合わせ)

■終わりに


■[サービス]1:在庫預かり

サンライズパブリケーションは、月額315円でダンボール一箱分を預かってくれます。


○メリット1:自宅の場所を取らない

同人活動で最も辛いのは、在庫の山と暮らすことです。かつて自室にはダンボールがかなりの数、積んでありました。在庫が多いと、心が凹みます。マイナージャンルなので、コミケぐらいでしか在庫は減りません。



日々の生活に同人活動がマイナスの影響を及ぼすのは、あまりいいことではありません。一時期はトランクルームを借りることも検討しましたが、月額で結構な額になりますし、そこに運び込んだり、持ち出したりするのも大変です。



そこで使ったのが、このサービスです。ダンボール一箱を月額315円で預かってくれます。



『英国メイドの世界』は初版1000冊刷りました。1トンで、ダンボール50箱分です。こんなものは到底、自宅に置けません。印刷所の在庫預かりサービスが無ければ、絶対に印刷しようと思いませんでした。



「在庫預かり」と言う選択肢を知ることで、広がる可能性もあるのです。最初の半年で500冊、残り500冊は2〜3年で頒布するという予定を描けたのも、まず場所が確保できていたからです。


○メリット2:家やイベント会場から在庫を印刷所へ送る

最近見つけた方法です。



在庫預かりは「新刊を刷った場合のみ」だと思い込んでいましたが、聞いてみると「既刊でもOK」とのことでした。但し、前提条件は「箱単位での出荷」です。在庫の移動は箱単位になり、新刊と異なり、「冊数」指定が出来なくなります。



しかし、これで家にある在庫も預かってもらえます。



何もこれは、「家→印刷所」に限定する必要はありません。これによって、「会場で完売するリスク」を大幅に削減できる運用が出来ます。「イベントに大量に持ち込む→余る→家に持ち帰る→在庫の山」になるのが嫌でしたが、会場から印刷所に持ち込んでもらった分を、そのまま「印刷所に送り返して、預かってもらう」ことが出来ると、心の余裕が違います。



自宅で一切の在庫を持たずに、同人活動を行うことも可能になります。



ただ、こちらの管理は繰り返しですが「箱単位」なので、柔軟な運用が難しく、コストが見合わない場合もあります。自宅に送ることもあります。



完売するかもしれない、でも大量に持ち込むのは怖い、と思う場合にはこの選択肢は有効な手段になります。負担するのは送料だけです。詳細は印刷所にご相談下さい。


○メリット3:コストを抑える

同人活動を続けていくに際して必要なのは、「時間」「情熱」、そして「お金」です。前者ふたつは気合でなんとかいけますが、「お金」に関して外部に印刷と言う仕事を頼む以上、自分だけで完結しません。



個人的には「無理なく同人活動を続けられるよう」「次に本を刷れるだけの利益は確保したい」、と思っています。値段設定と部数がどれだけ出るかは経験を重ねても回答がなく、直感を信じるしかありません。



しかし、本の性質で、わかったこともあります。



久我のジャンルは「資料本」なので、人気や流行、時間の経過にあまり左右されません。2001年に作った1巻は5年という長期間で700部を頒布できました。現在『とらのあな』で再委託してもらっている5巻も2005年08月初版と、委託本としては長持ちしている部類に入ります。



同人誌1〜2巻の頃は、「どれだけ売れるか」まったくわからずに印刷を繰り返し、完売しても赤字という状況が続けて起こりました。100部の頃は、刷って完売しても、利益はありませんでした。



1巻:100部→100部→100部→100部→200部→100部:700部

2巻:100部→100部→150部→200部→100部:750部(一部劣化で廃棄)



自転車操業でした。しかし、そうした繰り返しの末に、「だいたい2〜3年で無くなる最大数」がわかってきました。経験的にここ最近は、「確信があれば700部」「最低で400部」と、最初に刷る部数の感覚を掴むことで、コストを抑えることが出来るようになりました。



だいたいコミケではリピーターの方が150〜200人ぐらいおりますので、初動+委託+数年、という目算で最大700部を目指すことになります。



同人誌は100部印刷数を増やすだけで、コストを劇的に下げられます。



当然、売れ残るリスクも高くなるので、自分のジャンルと本を経験で見極めるしかありませんが、「在庫預かり」によって「印刷部数増による、在庫を置く場所」という心配を解消できます。



自分の中で「時間が経っても頒布できるのがわかっている」ならば、このサービスは強力な味方です。コストが下がれば、無理なく同人活動も続けられますし、「絶版になりました」と言うことなく、より多くの読者に会うことも出来ます。



勿論、数字の読みが外れることも多いです。その場合は預けた費用がかさんでしまいます。「自分の同人誌の傾向」を深く知らなければ選べない選択肢ですが、「赤字だけど再版しないといけない」「200部刷りたいけど、場所が無いから100部」という連鎖に苦しむ方には、倉庫利用は解決策のひとつになりえると思います。


○メリット4:本の品質を保ち、寿命を延ばす

上記のように「自分の本の寿命が長い」事に気づいた久我は、当初、余った部数の多くを自宅で管理していました。しかし、梅雨の時期、湿度管理の重要性に気づかず、累計で百冊以上の本を廃棄する羽目に陥りました。



印刷所の場合はその点、少なくとも自宅よりも本の管理に適している環境です。預けている本で品質劣化が起こったことはまだありません。


■[サービス]2:在庫処分

印刷所で刷ったものを含む同人誌の処分を、行ってくれます。お金はかかります(処分費用+印刷所への送料)が、個人では作業負担になることもやってくれるのです。先述の「駄目にしてしまった本」も、印刷所で処分してもらいました。



今後、何かの機会に同人活動を辞める場合も、来るでしょう。その時、こうしたサービスは後顧の憂いを無くしてくれます。



なるべく「在庫預かり」とは組み合わせたく手段ですが、数年経ってもまったく在庫が動かなければ、処分することになるでしょう……


■[サービス]3:宅急便搬出を最も容易に行える

これも重要な要素です。



同人活動で一度覚えると止められないのが、宅急便搬入です。この宅急便搬入を、もっと楽に行える技術があります。これこそが、今回ご紹介したい「魔法のアイテム」的なものです。



元々、「印刷所で刷った新刊を、コミケに搬入してもらう」こと自体は以前からやってもらっていましたが、「■1:在庫預かり」と組み合わせると、同人活動が非常に楽になるのです。



メリットは「作業時間・拘束時間」が劇的に減ることです。



久我が『とらのあな』への委託をある程度スムーズに行えているのは、『英国メイドの世界』を、印刷所に預けているからです。例えば『英国メイドの世界』100冊=ダンボール5箱=100kgを自宅で管理し、送付するのは現実的でしょうか? 搬出を自宅で行う場合、次の作業が必要です。



●1:ダンボール5箱を自宅に置かなければならない

→部屋が狭くなる



●2:送付する場合

→納品書を準備する

ダンボールに梱包する

→宅急便の会社に自宅へ来てもらう手配(ネットか電話で予約)

→引き取り時、自宅にいなければならない

→玄関まで運ぶ(100kgありますよ……)

→送付状を5枚書く(作業)

→引取りに来てくれるので待機・来たら渡す(時間的制約)

→支払いをする



●3:運送の方に申し訳ない気持ちになる(100kgですから)



社会人をしながらの同人活動のうち、辛いのは「その時間、自宅にいなければならないこと」ですし、他にも様々な作業が生じます。



しかし、在庫を印刷所に預けることで、一気に解決します。



●1:印刷所に連絡する

●2:納品書を『とらのあな』へ郵送する

●3:印刷所に月末の在庫管理費・送料実費を支払う



「印刷所に、『とらのあな』の物流センターへ5箱送付してください」と連絡するだけで、作業が終了します。元々、印刷所は搬入・搬出のプロでもあるので、業務として成立していますし、宅配業者も連日配送しているはずです。「個人→宅配業者」というものよりも「会社→宅配業者」の関係の方が、扱う金額が大きいので重要性は高いはずですし、嫌な顔もされにくいでしょう。



コミケや他のイベントに参加する場合も、同様です。



「新刊」の時の便利さを、「新刊でなくなってからも利用できる」のが、この組み合わせのメリットです。とはいえ、「箱単位」(1箱1種類=少部数を動かせない)で動かすので、これも限定的な選択肢ではありますが。


終わりに

実感が無くなっていくのも事実

便利すぎる反面、「実在する本を頒布している実感が無くなる」のも事実です。今回の『とらのあな』への委託も、連絡ひとつで本が印刷所からイベント会場や委託先に送られることも、自分の手を介さずに「数だけ動いている」感覚があります。



自分の家に在庫が無いことで「リアリティ」が消えてしまうのも事実です。



すべて自分で行ってこそ、同人活動と考える方もいるかもしれません。



こうしたことを行うかは、「何を大切にしているか」「どこでの体験を重要視するか」によると思います。久我は「いい物を作ることに苦労したい」ですが、「他で楽できるならば、楽をしたい」です。


続けていくコツ

こうしたプロセスには、勿論、相応のコストが必要になります。しかし、そこは考え方次第です。社会人として趣味を続けていく中で、久我は純粋に同人活動出来る(モノを作る時間)を確保することが最優先だと思っています。



同人誌で「稼ぐ」ことは難しく、自分程度の同人レベルでは、普通に同じ時間を働いた方がお金になります。それでも自分が続けるのは、表現したいことがあり、読者に出会い、自分が価値あると信じるものを伝え、楽しんでもらいたいからです。伝えたことが跳ね返って、自分が学び、成長することも出来ます。



何よりも、好きだから続いています。



「好き」に同じ時間を使うならば有意義に使いたいですし、「好きでい続ける」には、「何が好きなのか」を明確にし、選択と集中を行い、余分な物を省いて、「好き」を続ける時間を確保することが重要になってきます。



全部は選べません。



そこそこのコストで時間と作業負荷を代替出来るならば、アウトソーシングして「創作以外の時間」を効率化していくこと、それが自分にとっては「楽しく」続けていくコツで、無理なく続ける技術です。


絶対はないが、プロに任せる

何よりも、「自分は、ミスをする」「忘れっぽい」人間でもあるので、出来るだけ「外部の信頼できるリソースを使う」ことで、精度を高めたいと思っています。



人間のやることなので絶対確実はありません。印刷所にお願いしてもミスは起こりえるかもしれません。しかし、だからといって自分で出来ることには限界もありますし、同じように、絶対ではありません。むしろ、自分の方がミスをする可能性が高いです。



少なくとも利用してから、一度も、今利用している印刷所でミスはありません。



ミスをしないように、印刷所が自分をコントロールしてくれてもいます。そこは、印刷所のノウハウや知見になるのでしょう。数多くの個人を相手にしている分、久我が持つ経験など、印刷所に比較すれば、小さなものです。



そこに至るまでには印刷所との信頼関係も必須です。印刷所からのアドバイスを素直に受け入れる、無理なことはお願いしないとか、忙しい時期には気をつけるとかの配慮も必要になってきます。こういう点で、同人活動から学ぶことも多くあります。



他にも幾つかノウハウはありますが、それは印刷所とのコミュニケーションの中で見つけられるものです。同人活動を支えてくれる印刷所に相談する(無理やわがままを押し通すことではありません)ことで、より同人活動が行いやすくなり、行いやすくなるから次の新刊の印刷が出来、印刷所も得をする、という循環も出来てくると思います。



『英国メイドの世界』は数年間で頒布の予定だったところ、幸いにも短期間で完売しました。このレベルの本は自分の同人活動で一度出来ればいい方で、二度は無いでしょう。しかし、その一度で勝負出来たのは、紛れも無く印刷所のおかげです。



以上、長々と文章を連ねましたが、『英国メイドの世界』はこのような背景で生まれました。「完売して、いろいろと心苦しい」「搬入が辛い」という同人サークルにとって、参考になるところがあれば幸いです。


取り上げていただいたサイト

駄文にゅうす

2009/03/19に取り上げていただいてから、この記事に人が集まっています。



以前から何度か、取り上げてもらっています。

ありがとうございます。


『英国メイドの世界』頒布履歴

コミティア86・『英国メイドの世界』完売(初版完売・2008/11/16)

『英国メイドの世界』1.4トン頒布・完全終了(増刷400部完売・2009/05/09)


追記講談社から2010年11月に出版しています。

制作話:出版社から出ることで同人誌はどう変わったか?



英国メイドの世界

英国メイドの世界