ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。同人・出版活動の報告を含みます。

新刊『ある英国メイドの職場遍歴』 2016年夏コミ向け

久しぶりに更新します。コミケ88新刊『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』以来の新刊です。



今回の新刊は16ページの冊子(コピー誌ではなく、同人印刷所によるオフセット)で制作しました。久しぶりにイラストなし、情報のみです。委託できる本の形態ではないので、コミケでの頒布のみになります。原点回帰的に、ガチな英国メイド本ということにて、当日はよろしくお願いします。



タイトル:『ある英国メイドの職場遍歴』

著作:久我真樹、イラスト:なし

仕様:A5サイズ、16ページ

内容:テキスト

サークル:SPQRコミックマーケット90 3日目「西地区 "ね" 11a」」で頒布開始

価格:100円

Webコミケカタログ:https://webcatalog.circle.ms/Circle/12704964/

委託:なし



ここ数年、日本のメイドブーム関連の新刊と、池袋のメイド喫茶ワンダーパーラーカフェとのコラボ創作『屋根裏の少女たち Behind the green baize door』など、英国メイドの資料からは遠ざかっていたので、英国メイド関連同人誌制作のリハビリということにて。



今回の内容は、実在する英国メイド(コックに転身)、Jean Rennieの15箇所の職場経験と、それぞれの職場で出会った人たちのエピソードを書きながら、Jeanの人生を追いかける冊子になっています。



本当は他の使用人も主役として、彼らが働いた屋敷・同僚たちを描く本にしたかったのですが、Jeanの転職回数が多すぎて、今回、コミケ用に確保できた作業時間で終わりませんでした。冬はゲームキーパーの本も考えたいところではありますが、申し込むべきか考えているところです。ここ数年、仕事が忙しく……



とはいえ、英国メイド関連の研究を怠っているわけではなく、少しずつ資料も増やしています。たとえば、以下の画像の2冊は『英国メイドの世界』を書いていた当時、その存在だけを他の資料で知っていながら、入手できなかった本です。今は手元にあります。以下の画像の赤本は「愚痴が多い、失敗経験豊富な執事」Eric Horne(大好き)の2冊目。緑本は成功した執事W.Lanceleyの本です。







他にも間に合わなかった資料があります。『英国メイドの世界』を書いたときには伯爵家でゲームキーパーの息子として裏方事務をする人を紹介しましたが、刊行した後にそのお父さん(ヘッド・ゲームキーパー)の本を入手できたのです。そのお父さんの本は、別のゲームキーパーの本で、誤って人を撃ってしまったエピソードの参考文献として出てきたものでした。



で、その資料本はゲームキーパーが管理している猟鳥の数字や、領地内の狩猟エリア(猟場、beat)の地図とかもあって、面白いのです。



最後に、当日は売り子として、過去お世話になったメイドさんにまた来ていただけることになりました。



当日、お会いできれば幸いです。


既刊のリストを整理中

13冊目:2008/08/07 『英国メイドの世界』

14冊目:2008/12/07 『英国執事の流儀』

15冊目:2009/07/21 『英国執事の流儀』

16冊目:2009/12/04 『英国メイドの世界』ができるまで』

17冊目:2010/08/01 『英国メイドにまつわる7つの話と展望』

18冊目:2011/07/25 『英国メイドがいた時代』

19冊目:2011/12/16 『誰かの始まりは、他の誰かの始まりヴィクトリア朝の暮らし短編集・総集編』

20冊目:2012/08/25 『メイドイメージの大国ニッポン漫画・ラノベ編』

21冊目:2013/08/11 『メイドイメージの大国ニッポン新聞メディア編』

22冊目:2013/12/14 『メイド表現の語り手たち「私」の好きなメイドさん』

23冊目:2014/12/20 『屋根裏の少女たちBehind the green baize door』

24冊目:2015/08/08 『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』

コミケ88新刊『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』



24冊目の本です。夏コミ(コミケ88)の新刊は『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』と題して、1990年代以降のメイドブームが生じる土壌への考察として、メイドイメージとの接点を求めて、1970年代にさかのぼりました。具体的には下記3軸での考察を行いました。



(1)1970年代から始まる世界名作劇場シリーズのメイド出現リストや登場メイドの傾向の分析

(2)1970年代の少女漫画『ベルサイユのばら』『キャンディ・キャンディ』『風と木の詩』『はいからさんが通る』『バジル氏の優雅な生活』などに登場するメイドの制服や表現

(3)宮崎駿監督作品におけるドレス表現とメイドの親和性の考察



タイトル:『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』

著作:久我真樹、イラスト:さるまたくみ様、編集・本文デザイン:梅野隆児(umegrafix)様

仕様:A5サイズ、60ページ

内容:解説+イラスト16カット

サークル:SPQRコミックマーケット3日目西い40aで頒布開始

価格:500円

Webコミケカタログ:https://webcatalog.circle.ms/Circle/11919725

委託:とらのあなhttp://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/33/30/040030333040.html



内容説明:本書「はじめに」より



英国メイドを研究している立場ながらも、ここ数年の私の研究テーマは、「日本でメイドブームはどのように形成され、どのようにメイドイメージ(メイドという言葉を聞いて連想されるイメージ)が拡散していったのか」になっています。これまでに『メイドイメージの大国ニッポン』と題した2冊の同人誌シリーズで漫画やラノベで広がっていくメイドイメージを調査した「漫画・ラノベ編」と、新聞メディアで世間へと伝わっていくメイドの姿をまとめた「新聞メディア編」を発表しました。このほかに同人誌『メイドカフェ批評』へ寄稿した「雑誌メディア」の分析もしました。



そうした「様々なメディア」で表現されるメイドイメージに接していると、「メイド」という言葉は同じでも、種類が異なるメイドイメージの多さに驚かされます。どれだけ「メイド」を切り口として、多様な視点で語り尽くせるのか、その可能性の広がりが、私を捕らえて離さないメイド研究の魅力です。そんな私が今回テーマとする領域は、「どうして、メイドは日本で受容されたのだろうか」という疑問から始まります。職業としてメイド服を着たメイドは、少なくともメイドブーム以前の日本で、見慣れた存在ではありません。しかし、1976年生まれの私は、英国メイドの研究を始めたとき、メイドに「懐かしさ」を覚えました。



私が想起するクラシックなロングスカートのメイド服は懐古的な雰囲気を伴いました。100年ぐらい前の英国では、このようなメイドが100万人を超える労働人口として存在しましたから、メイドに「過去の時代」のイメージを持つのは当然です。しかし、「懐かしい」という気持ちは「昔、見慣れていた」「再会した」との心情へ繋がるものでしょう。他国の過去を「懐かしい」と思うのはおかしな話です。



そこで、掘り下げていくと、私が幼い頃にメイドと接していた記憶は、「メイドが登場した海外の児童文学や」、「児童文学をアニメ化した『世界名作劇場』シリーズ」だったと思い当たります。さらに、メイドを見たときに感じる懐かしさは、「メイド」という職業だけに由来しているわけでもありませんでした。100年以上前の時代を舞台とする児童文学の世界では、登場するキャラクターもロングメイド服を想起させるパフスリーブでスカートの裾が緩やかに広がるドレスを着たり、登場する子供たちがエプロンドレスを着たりと、メイド服と児童文学の世界の衣装のイメージには、強い重なりが見出せるからです。児童文学で言えば、小学校の頃、私は家にあった児童文学全集を読みふけっていたり、児童文学をアニメ化した『世界名作劇場』シリーズを見ていたりしました。最初に物語世界の生活描写に興味を持ったのが『若草物語』でした。失敗した料理のレシピや作品の時系列をまとめる。それが英国メイドの研究に至る原点のひとつでした。



そんな私にとって、メイドブームで見るメイドは「初めて見る姿」ではありませんでした。付け加えるならば、私と同じようなバックグラウンドの人間が一定数いることも、メイドブームを受け入れる土壌になったのではないかと考えました。ただ、実際にどれだけメイド的なイメージが『世界名作劇場』にあふれていたのかは正確に記憶していなかったので、原点回帰の意味で『世界名作劇場』を考察するのが1章目です。



「幼い頃に接した作品」をキーワードにすると、もうひとつ、避けて通れない道があります。それは「少女漫画」です。私の同人誌の読者の方から数年前に、「1970年代の少女漫画で大勢のメイドがいたのを思い出した」とうかがいました。その作品は『この娘に愛のおめぐみを』という、漫画家・おおやちきさんの短編作品でした。実際に作品を確認すると、なんと数十名のメイドが出ていました。



1970年代の少女漫画で言えば、私自身、子供の頃にアニメ『はいからさんが通る』でメイドを見た記憶がありました。さらに、秋葉原にあったカフェ『月夜のサアカス』で手にした漫画『風と木の詩』で、メイド服を着た侍女アデルを発見しました。そんな偶発的な出会いから、なぜ今になって、それも1970年代の作品を同人誌のテーマとして調べようと思ったかといえば、子供の頃に見たアニメ『ベルサイユのばら』の再放送を、NHKで2015年に見たことがきっかけです。主役のオスカルは屋敷に住み、ばあやがいて、ばあやの孫アンドレも「使用人」に囲まれていました。今まで、そういう目でこの作品を見たことがなかったので、もしかすると他の作品もそうでは、と考えました。



そして、数年前に倉敷で訪問した「いがらしゆみこ美術館」を思い出しました。『キャンディ・キャンディ』のマンガを描かれたいがらしゆみこさんの作品には、世界名作劇場シリーズに似た時代背景の欧米的作品(『ジョージィ!』『メイミー・エンジェル』)や、『赤毛のアン』のコミカライズ作品など、様々なフリルやエプロンドレスの衣装が出現していました。『ベルサイユのばら』に触発され、今年、『キャンディ・キャンディ』のマンガを読み、キャンディが屋敷の下働きとして「メイド」の役割を担わされていたことも知りました。
風と木の詩』『ベルサイユのばら』『キャンディ・キャンディ』という社会的に大きな影響を与えた作品にメイドがいた、それは私にとって発見でした。これまでの15年以上のメイド研究で、誰かから教わったことがなかったからです。作品に接した方が多くいたとしても、それぐらいメイドは目立たなかったことは、ブーム以前のメイドのあり方を指し示す事例になるかもしれません。



私は「メイドイメージの原点は1970年代にあった」というつもりはなく、その頃から「メイドは自然に作品に登場していた」し、「メイドが登場しやすい時代背景を舞台とする作品が1970年代に目立った」ことが論じられるのではないかと考え、「1970年代の代表的少女漫画に、メイドは普通に出ているのでは?」と調査をしました。



最後に本書のもう一つのテーマが、「宮崎駿監督作品」(高畑勲監督作品を含む)のイメージと、メイドイメージの重なりです。これまで上げてきた児童文学や世界名作劇場シリーズの雰囲気に、宮崎駿監督の作品やスタジオジブリ作品は世界設定や衣装描写が重なるため、本書ではその共通項を考察します。



以前から、私は宮崎駿監督作品とメイド(家事使用人というより、メイドを連想させるパフスリーブのドレス、時々エプロン)の関連性を考えていました。その考えが結晶化したのは、『風立ちぬ』のキービジュアルとして、ヒロイン菜穂子が軽井沢の丘で絵を描く姿を見た時でした。戦前の日本人である彼女は、宮崎駿監督作品の他のヒロインのような裾が長いドレスに、エプロンをつけていたのです。



宮崎駿監督はこの衣装が好きなのではないか、もしそうだとして作品でどのように描かれ、他の監督によるジブリ作品にどのように受け継がれているのかと考えました。多分、このような視点での研究は私しかしなさそうなので、今回、行いました。とはいえ、この視点はメイドイメージ研究から外れるわけではありません。『エマ』『シャーリー』の英国メイドマンガで知られる森薫さんが、宮崎駿監督作品のキャラクターに刺激を受けていることは、有名な話だからです。



派生して「メイド服として認識される要素」となる「ドレス」「エプロン」「頭の装飾」という記号に分解していくと、特に「ドレス」について、私たちは宮崎駿監督作品で数多く接しています。日本を代表するアニメ作品で描かれ続けた「ドレス」を魅力的に思えるならば、同じシルエットを持つメイド服を受け入れることに抵抗感も少ないのではないか、むしろ魅力を感じるのではないか、と思いました。



現代日本ではパーティーやウェディングなどの機会にしか着られない「ドレス」の非日常性、ハレの舞台の憧れの衣装という特殊性も鑑みつつ、メイドイメージの構成要素を考察します。日本の1990年代から始まるメイドブーム以前に、メイドイメージを広げる役割を果たした諸作品を巡る旅へ、一緒に参りましょう。



久我真樹



補足

夏コミ当選(コミケ88)&新刊作成中(世界名作劇場・少女マンガ・宮崎駿監督作品)

近況

実に半年ぶりのブログ記載です。あれからいろいろとあって、年初予定の研究環境の確保と、自転車の購入は3月末までに完了しました。しかし、自転車にはまってしまい、クロスバイクと通勤用の折りたたみ自転車を買い、天気が良いと自転車に乗りたい、天気が悪いと悲しい気持ちになり、天気予報を毎日確認する暮らしになりました。



その一方、会社の仕事が去年以上に密度が高く、残業時間は減っているものの、集中力とアウトプットのリソースの多くを投入する結果になり、忙しい状況が続いています。


コミケ当選情報

サークル「SPQR」として、コミケ88の3日目(日) 西地区“い”ブロック−40a にて参加してきます。西の参加は久しぶりですね。



https://webcatalog.circle.ms/Circle/11919725


新刊進捗:世界名作劇場シリーズと少女マンガ、宮崎駿監督作品の系譜

twitter:617253135736647681:detail

ポルフィ

家事使用人

新刊『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』、委託開始

冬コミ新刊『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』の委託を、COMIC ZINとらのあなで開始しました。



COMIC ZIN

とらのあな



幸いなことに、今現在はCOMIC ZIN秋葉原店では、全年齢向け同人誌を取り扱っている2F、入り口入ってすぐに平積みされています。


『英国メイドがいた時代』をパブーで公開中

2011年夏の新刊『英国メイドがいた時代』電子書籍化(PDF)して、パブーで公開し始めました。




  • 英国メイドがいた時代
  • 久我真樹
  • 500円(税込)
  • 英国のメイド雇用衰退の歴史を解説します。「メイドの時代」が形を変えて復活した現代英国事情も扱います。『英国メイドの世界』の「続き」の位置づけです。『英国メイドがいた時代』が繋がっていくテーマの補足(http://d.hatena.ne.jp/spqr/20110806/p1)も合わせてご参照ください。




現代英国の格差を照らし、現代日本の労働環境も相対化する『英国メイドがいた時代』(2011/08/13)

『英国メイドがいた時代』が繋がっていくテーマの補足(2011/08/06)

「2つの使用人問題」を巡る19世紀末時点での女主人の見解(2011/06/26)



上記で書いたように、この『英国メイドがいた時代』は労働環境を軸に扱っています。これは私の会社勤務の体験や、子どもが生まれて育児環境を考える友人や知人にも通じていく、自分にとって重要な視点です。今日も少し、Twitter上でつぶやきました。



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終わった時代を終わった時代として楽しみつつ、現代を生きる人にとってどう繋がるか、というところは物を伝える立場として、忘れたくない視点ではあります。


『英国メイドがいた時代』無事印刷完了&とらのあなでの通販予約開始

この夏の新刊、『英国メイドがいた時代』が無事に刷り上がりました。今回は1年ぶりぐらいで委託を再開し、「とらのあな」「COMIC ZIN」にて扱っていただけることとなりました。



誰もが毎年2回のコミケに参加できるわけでもなく、今までもサポート的に利用していました。今のところ、「とらのあな」サイト上でのデータ反映を確認し、英国メイドがいた時代のリンクから予約ができます。発売はコミケに私が直接参加する08/14(日)からとなります。



昨日は結構青かったのですが、少しずつ在庫が減っていてホッとしております。ウェブ在庫は少なめなのかな? 以前の同人版『英国メイドの世界』の在庫不足の影響で、サークルSPQRの本をチェック対象にして下さった方がいらっしゃるのかなとも思います。



電子書籍化については、もう少し考えてからにします。同人版とは違ったコンテクストで受け止められる可能性(同人活動や私の出版活動を今まで知らず、いきなりこの本を読む可能性がある読者の方と出会う機会)があると思うので、必要なところは少し丁寧に補足するつもりです。



英国メイドがいた時代



新刊『英国メイドがいた時代』