ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。同人・出版活動の報告を含みます。

2017年の振り返りと2018年のロードマップ

はじめに

今年も恒例、これまでの活動を振り返ります。去年2017年には、振り返りをできていませんでした。



2年前:2015年の振り返り(2016/01/02)

3年前:2014年の振り返り(2015/01/01)

4年前:2013年の振り返り(2014/01/01)

5年前:2012年の振り返り(2013/01/01)


出来た事

1. 『日本のメイドカルチャー史』出版

ここ数年、振り返りに記していた最大級の課題が「日本のメイドブームに関する本を作る事」でした。それをようやく、2017年に『日本のメイドカルチャー史』星海社から出版する事で実現できました。



英国メイド研究から始まった私の研究活動が、様々なきっかけで「メイド研究」へと広がったここ数年の成果物として、日本のメイドブームを理解する上でもまとまった先行研究を作れたと思います。ただ、これは始まりの足場で、「メイドカルチャー全史」へ近づけるように、様々な人の言葉を集めていくのが次の課題です。


2. 『名探偵ポワロ』の同人誌を初めて作る&理想に近い同人誌

今年のほとんどの時間は出版の準備に使っていました。その出版が終わった後、ゆっくり休む予定が、コミケに申し込んでいたために、同人誌を作る必要がありました。申し込んだ時は『日本のメイドカルチャー史』を補完する内容で、裏話的なものを書こうと思っていたのですが、いざ作ろうと思った時、作りたいと思えたのは『名探偵ポワロ』の同人誌でした。



冬コミ新刊『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻



元々、同人サークル「制服学部メイドさん学科」の同人誌で公開されていた、ドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』に登場したメイドリストに刺激を受けて、2年前から資料の整備・準備を行っていたものですが、当時はリストだけのはずでした。しかし、ウメグラさんに参加いただく中で豊富な挿絵がある、ポワロの研究同人誌の企画へと生まれ変わりました。


得られた事

1. 『日本のメイドカルチャー史』出版時に武内崇さんのメイドイラストを帯に描いていただける

繰り返しとなりますが、私が大ファンの武内崇さんに、『日本のメイドカルチャー史』の帯に、「メイドのイラスト」を描いていただけました。オリジナルのメイドと、代表作となる『月姫』から「翡翠琥珀」です。





2017年はTYPE-MOONの公式サイトで、お正月に武内様の絵によるメイドセイバーの年賀状が公開されたり、8月にはメイド・オルタがFGOで実装されたり、明確に「武内さんとメイド」に関するトレンドが間近に感じられました。



人生で最大級の出来事でした。


2. NHKのラジオに呼ばれて壇蜜さんにお会いする

「メイドを知りたい」ということで、お声がけいただきました。詳細はNHKラジオ第1『DJ壇蜜のSM( Selected Music)』vol.2 8/17放送 21:05-21:55にメイド解説で出演予定に記載しました。



渋谷のNHKのスタジオに初めて入り、壇蜜さんのお隣に座り、反対側に番組ディレクターの方、そして壇蜜さんの向かいにNHK高市アナウンサーがいらっしゃいました。壇蜜さんがアンミラでのバイト経験があること、かなり「デ・ジ・キャラット」に詳しかったことなど、メイドブームへと繋がる接点に驚きました。



メイド研究をしていたら、2011年には水樹奈々さんに、2017年には壇蜜さんにお会いできました。メイド研究の可能性を感じ入る次第です。


2018年の抱負

冬コミ配布のペーパーに書きましたことを、少し膨らませつつ。時間はかかるものの、だいたい有言実行なので、きちんと形にしていく準備をしていきます。

執事本の出版 from 星海社(進捗:10%)

3冊目の本の出版が決まりました。『日本のメイドカルチャー史』を書いていた時に、同時期の執事ブームについても調べていました。ただ、メイドがメインだったのでバランスが崩れることと、調査不足の観点から掲載を見合わせました。その切り離したテーマが面白いということにて、星海社から出版の提案を受け、新書で作ることになりました。



『日本のメイドカルチャー史』と似たコンテクストを持ちつつ、異なる切り口で書きます。


メイドアワードの創設(進捗:まだ見えていない)

メイド作品を追いかけるのが物理的に無理な段階になったので、作品を表彰するアワードを創設して、メイド作品が集まる仕組みを作る。アワード自体は読者投票も取り入れる。



・主演メイド作品賞:メイドが主役の作品

・助演メイド作品賞:主役ではないメイドがいる作品

・ピンポイントメイド作品賞:単発でのメイド出演

メイド喫茶賞:作品内で出てくるメイド喫茶の描写からの表彰

・殿堂入り作品賞:『エマ』『シャーリー』『まほろまてぃっく』など

・新作品賞:その年に連載を開始、発売した作品のみ限定(続刊がその年に出ても対象外)

・審査員各賞



賞金は、私の自腹です。


メイドライブラリー公開(進捗:交渉中)

メイドブーム研究の時に集めた資料(漫画やラノベが大半。秋葉原系や、ゴスロリ関係の所有雑誌も含む)を公開できる場所を探しています。自分では読んでいない本が多くなっているので、死蔵させないためです。現在、興味を持ってくれている店舗があるので、話を詰めています。



※汚れてしまうことや紛失する可能性があることを前提に、超希少品は出せません。


インタビュー・対談(進捗:実施中)

当事者としてメイドブームを駆け抜けた方達に、話を伺う。話を聞いてみたいのはメイド喫茶の創業者、店員、表現者など様々にうかがいます。年明けに星海社の方で、1回目の対談が公開される予定です。


メイドコラムの寄稿の依頼(進捗:交渉中)

自分以外の詳しい人に、メイドブームの周辺領域を語っていただく計画を進めています。メイド喫茶全体、エロ漫画やニコニコ動画、pixiv、小説家になろうなどのCGMにおけるメイドの出現傾向など。既に周囲にお願いできそうな方が多いので、進行中で、3-4月に幾つか形をお見せできればと思っています。


同人誌即売会(進捗:交渉中)

メイドオンリーイベントを代表する「帝國メイド倶楽部」的なるものを考えています。以前、ちらっとつぶやいた時に、企画に興味を持った経験者の方からお声がけいただいたので、今、実現可能か相談しています。



メイド同人誌が読みたければ、メイド同人誌が集まる場を作れば良いのでは?との思いにて。



あと、個人的には、過去にメイドコスプレをされていた方に、その当時の衣装を着ていただきたいのです。日本のメイド服(コスプレ衣装)アーカイブということで、記念に残せないかと。100人ぐらい集まると素敵ですね(どんなお屋敷だろう……)


メイド喫茶とボコラボイベント(進捗:交渉中)

企画中です。公開できる段階になったら公開します(実施できるかは未定)。


ニュースサイトの創設(進捗:やる気が全て)

メイドアワードをやる前に、まずは企業が公開するメイドウェブ漫画作品などを集めてみたり、数万RTされるメイドイラストをアーカイブしたりと、メイドイメージにまつわる記録の散逸を防ぎつつ、メイドイメージへアクセスしやすい環境の整備を計画中です。


メイドメディアの創設(進捗:やる気が全て)

ここのみ、実現可能性やまだ何も見えていない「夢」です。ヴィクトリア朝をテーマとした創作メディアを作りたいです。創作プラットフォームを作り、メイド作品制作を大好きな作家の方たちに依頼してみたいです。


終わりに

これまでは基本的に「個人で完結する」ことがほとんどでした。今年は、「一緒に楽しんでいただける方」「私の活動と関連しそうな方」を巻き込みつつ、お力を借りながら、世界を広げていきます。



メイドブームを把握するには一人ではとても無理で、人の数だけ形もあります。できるだけ、後の人が研究しやすいように、何かを残していこうと思います。



それでは本年も宜しくお願いいたします。



お会いできる方はお会いできる時に。


2014年の振り返りと2015年のロードマップ

はじめに

今年も恒例、これまでの活動を振り返ります。



1年前:2014年の振り返り(2014/01/01)

2年前:2013年の振り返り(2014/01/01)

3年前:2012年の振り返り(2013/01/01)



とはいえ、毎年、真剣に振り返りすぎ、書くのも時間がかかる上、ここ数年は自分が描いた目標を達成できないことが多いので、今年は緩めに書きます。




以下、2015年の目標です。



1.体力回復・増強
まず体力をつけて、一日の時間を有効活用できるようにします。仕事の残業時間はベンチャー企業に勤めた頃に比べると遥かに少ないものの、仕事で求められるプレッシャーの増大もあってか、土日にぐったりすることも増えました。

そこで、大学まで続けていた自転車に乗る趣味を再開しようと思います。といっても、普通に自転車に乗るだけでロードバイク的なものではありません。去年の夏に軽井沢で20年ぶりに自転車に乗って気持ちよかったことも影響しています。

2.研究環境の物理的構築
とにかく、自室に本が多くなりすぎました。そこでトランクルームを借りたものの、今度は本が散逸し、不意に必要となる情報を引き出すのに時間がかかる環境に。今時点でも積んでいる本が増えたので、一度、すべての所持する本が本棚に格納できる環境を確保することにしました。

3.2014年の目標の実現
・興味が無い人が読んで理解できる「メイドイメージ」の集大成を作る
・現代の家事労働者との接点

4.世界を広げる
これは個人的なことですが、もう少し、今年は外に世界を広げます。この前、久しぶりに自分と同じ領域に強い興味を持つ人に出会い、会話をする楽しさを再確認したからです。そうした人々がいる場所へ、自分から出て行かなければ、と。ジェーン・オースティンの話を久しぶりにしたり、作品『モーリス』を口に出したりとしましたが、自分の周囲にはほとんどそういう会話を出来る人がいません。思えば、自分が接してきた作品群の感想を話し合える相手は、貴重です。オタク同士の会話が気持ちいい理由は分かりますし、そういうコミュニティを形成したいところです。

興味を持って作品・対象領域にはまり、幅を広げて時間を費やせば費やすほど、方向によっては、誰とも話せなくなることは面白い事象です。だからこそ、ほんのわずかでも共通点・重なり合って話し合える対象を持てていると、そのこと自体が嬉しく思えるのでしょう。

深めれば深めるほどに「誰とも話せなくなる」という描写は、『3月のライオン』での「全力を出して殴り合える」的な棋士同士の関係性に重なるものがあるかもしれません。深めれば深めるほど理解し合いたくないことに気がつきやすくなってしまうところもあるとは思いますが。

1.体力回復・増強:達成

2015年の課題として取り上げたのは今振り返ると2つで、1つ目が体力の低下でした。仕事に没頭して土日の活動がしにくい点もあり、これについては3月末に自転車を購入し、行動圏内にある多摩川サイクリングロードで走ったり、自転車通勤をするようになったりと、行動を変えました。



ただ、自転車に乗るのが意外と楽しすぎて、ついうっかり長距離を走り、ぐったりすることもありましたので、その辺りは毎日適度に使う方向で2016年は習慣化したいと思います。体力を取り戻すアクション全てが成功ではないですが、自分の行動を変えられた点ではプラスということで。


2.研究環境の物理的構築:達成

これまで本が増えすぎて、トランクルームに本を預けたり、押入れに本をしまっていたりしたので、本を探すのも一苦労でした。そこで、研究をするためだけの部屋を借りて、使う本は全て本棚に格納する環境を確保しました。この結果、本を探すことで生じる無駄な時間も減り、研究に専念する環境を確保しました。ついでに、自転車も外に置くのではなく、家の中におけるので、良いことばかりでした。



結果、同人誌は、コミケ88新刊『メイドイメージの大国ニッポン世界名作劇場・少女漫画から宮崎駿作品まで』を夏に刊行して、毎年同人誌を1冊以上作る活動は継続できましたし、少女漫画、世界名作劇場について自分が感じていたことを、データと作品をベースに論じることができました。



とはいえ、その他の領域についても調査を行っていたものの、遠大すぎるゴール設定に自分でとっかかりをつかめず(本来はGTD的にゴールを細切れにして目標を明確にし、かつ達成感を得るべき)、という状況に陥り、その他の領域はあまり進んでいません。


3.2014年の目標の実現:未達

「興味が無い人が読んで理解できるメイドイメージの集大成を作る」「現代の家事労働者との接点」については、未達です。前者はその道筋として夏に同人誌を作ったものの、まだ網羅的ではありません。後者はTwitterで時々つぶやいていますが、これも大きく進んでいません。



いずれにせよ、前者にここ数年取り組んでいて、それが出し切れていないのが原因だとわかっているので、そこにフォーカスします。


4.世界を広げる

広がっていません。引きこもっています。


仕事の影響

ここ数年、仕事は社会人人生の集大成というのか、いわゆる壮年期に経験すべきことを経験できる環境になっていると思えるほどリソースを使っています。運命的というのか、10年前に上司が病に倒れて入院、退社、その後の責任を背負って潰れかけるという体験が、似たような形で生じています。ただ10年前と違って2回目であることと、その時と違って自分の責任範囲も分散され、かつ率直に自分の状況を伝えて周囲の力を借りることができているので、前回とは違っています。



ただ、仕事のステージも10年前とは変わり、計画を言葉にして、様々な事業の方向をまとめる絵を描き、データを分析して認識を共有し、リソースを確保して結果を出すことにフォーカスする立場となっているので、日々、仕事に使うリソースが増えています。以前は職場を離れるとあまり仕事のことを考えずに済みましたが、資料を収集してそれを本にまとめて人に伝えたくなるのと同様に、職場での様々な情報をまとめ上げて形にすることが楽しく、そこに「創造力」がつぎ込まれています。



つまり、仕事のインプットが、研究のインプットを上回り、結果として研究が進んでいない状況です。とはいえ、2015年下期から人員も整いつつあり、2016年は入社して以来、最も人が多くなる環境になる見込みです。その分、責任も重くなりますし、結果を出せなければ身の振り方を考える状況ですが、子育てするような心で研究の優先度をあげ、育てたいと思います。


メイド研究 メイドブーム考察を完結させる

ここ数年、メイドブーム研究をしていますが、当初、自分で思い描いた分類軸はほとんど変化しておらず、今のトレンドによって新しい研究領域が増えることはほとんどなさそうに思えます。その点で、ある出来事を俯瞰してまとめるには、今が最も良い時期に思えます。



だいぶ資料自体は集まってきて、友人と話す中で2015年に進んでいることも多いと思う機会もありましたので、2016年は研究の集大成の年にする所存です。あと、仕事以外のアウトプットを増やしたいので、ブログの更新頻度も上げていこうかと。


2014年の振り返りと2015年のロードマップ

はじめに

今年も恒例、これまでの活動を振り返ります。



1年前:2013年の振り返り(2014/01/01)

2年前:2012年の振り返り(2013/01/01)



2013年は年初から自分が所属する組織・チームの立て直しに終始しつつも、「メイドイメージ研究」では一定の同人での発表を行えた年で、危ないバランスながらもそこそこ充実しており、2014年に行うべきことが明確でした。ところが、2014年はその延長で進もうと思ったものの、大きなプロジェクトや組織変更等の外的要因でなかなか安定せず、仕事の火消しに時間を費やしました。さらに、会社員人生で達成したいひとつの目標があり、半年以上、その目標達成に向けて動きました。



意識的に仕事を最優先し、ひとつずつ解決して安定稼働を目指す中で、様々な状況の改善も行われ、かつ半年を経て目標達成できたことも踏まえて、仕事の優先順位を下げる方向で動けるようになりました、というのが現在の状況ではあります。



そうした点で、同人活動で満たされていた部分までも仕事で満たされました。会社業務に費やした時間は、この3年間でいわゆる「1万時間の法則」を満たすぐらいになっていたので、当然、仕事以外のインプットは減り、その分、研究のアウトプットはプアになりました。その状況に焦りもあって、資料を買う頻度が異常に高くなるも、消化できず、家の中がカオスに。本棚の収納限界も超えて、トランクルームを借りるも、今度は必要な本が手元にない事態に。検索性と業務効率を高めるためには、広い空間の確保が必要です。



さらに、風邪を引きやすく、休日もぐったりしていた時間が多くなりました。以前は仕事が忙しくても同人活動を出来たのですが、四十も間近に迫る中で、体力低下が著しくなりました。そこで体力の安定を企図してトレーナーがつくジムに通いましたが、一年に一度は生じる腰痛で離脱を余儀なくされました。かつ、仕事で使う機会が増えた英会話の再開も仕事のピークと被って中座するなど、習い事はほぼ全滅でした。特に、『ダウントン・アビー』シーズン1放送の5月頃は、抱えていた業務上の課題が全方位で過去最大レベルの状況だったので、待ち望んでいたあのドラマをビッグウェーブに乗って楽しむ気力も、実況できる余力も生じませんでした。



とはいえ、2014年は残業時間は大幅に減り、求められる役割の変化と新しいことへの挑戦が増えて、そこにリソースが消費されたので疲れたともいえます。やりがいと達成感は凄まじく大きく、多分、人生でここまで充実できる機会はそうそうない状況です。



とは思うものの、11〜12月に同人活動とコラムを書くために時間を確保し、表現することの楽しさに回帰することで、「2015年もこの状況が続くのでは?」と危機感も強まりました。2013年に振り返った点と状況が変わっていない点で、ここで大きく行動を変える必要があると判断するに至った次第です。



まず、体力。そして出版の実現と、研究の充実を。



ということがありつつも、実は充実していたのではないか、というのが2014年でした。


2014年の出来事

1. ドラマ『名探偵ポワロ』が25年を経て完結

私が英国貴族の屋敷に興味を持った、つまりはこの道に踏み込む入り口となったのは、中学生の頃から見始めたドラマ『名探偵ポワロ』の影響です。そのポワロのドラマが、2014年に完結しました。『名探偵ポワロ』本放送が1989年で、25年を経過しました。ひとりの主演がドラマで「ポワロ」作品を演じ切るのは世界初の快挙です。



このポワロの感想は別の機会に書きますが、最終話『カーテン』を見終えた時、万感の思いがありました。そして、この『名探偵ポワロ』の最終シーズンはAmazon UKでDVDを購入しました。NHKの放送でドラマを見た中学生だった自分が、いろいろとあって英語DVDを見るようになったというのも、感慨深いことでした。



名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 5

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2. 『ダウントン・アビー』のシーズン1と2のNHK総合・地上波での放送

『Downton Abbey』(ダウントン・アビー)は「屋敷と使用人」の史上最高レベルの映像作品(2010/12/02)と、2010年の英国での放送開始から、相当、この作品には期待していました。



ただ、時間が経過しても、日本での放送が有料放送に限定されていたり、DVD化がされていなかったりと、同じ作品を楽しめる環境にある人が少なく、話題に出来ませんでした。しかし、2014年にNHKが地上波で放送を開始することとなり、期待が高まりました。



思えば、前述の『名探偵ポワロ』や『シャーロック・ホームズの冒険』、『高慢と偏見』、(アメリカではありますが)『大草原の小さな家』『ドクタークイン』など、100年以上前の時代を扱ったコスチューム・ドラマを、NHKは地上波で放送していました。初期のクラシックなメイド愛好者には、こうしたドラマを好む方が、或いはこうしたドラマの世界を好きだからこそ英国メイドに関心を広げた、との側面もあったことでしょう。



ダウントン・アビー』放送はそうした「地上波の英米クラシックドラマ」の黄金時代を再現し、あの時代に興味を持つ人が増えるきっかけになるのではないかと、期待しました。ただ、実際のところ、今時点では「日曜日の午後11時放送」と、翌日に会社がある人間には厳しい放送時間、登場人物の多さ、そして見る側にコンテクストの理解(英国の歴史や上流階級・屋敷のルール)を求める点で、それほど私の身近な周囲の人々(=メイドに興味が無い)にも、まだ届いていない印象です。



とはいえ、Twitterで呟くことで、少しずつ広げていけそうな実感もありますので、ここは来年も楽しんでみたいと思います。





ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館:シーズン1・2公式ガイド

ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館:シーズン1・2公式ガイド




3. 『英国メイドの世界』4周年&増刷決定(第六刷)

『英国メイドの世界』は絶版になることもなく、『英国メイドの世界』刊行から1周年を振り返る『英国メイドの世界』から2周年・振り返り途中、そして『英国メイドの世界』講談社から刊行して4周年&12月に重版・第六刷!に記した時を経て、4年間を無事に迎えることが出来ました。




英国メイド関連本が出た時に書店で一緒に並べて売ってもらえるポジションとしてウェブのように認識されていないように思えるのは残念ですが、著者が努力し続けることで自分の本の寿命を延ばし、埋没することなく生き続けた結果として、新しい読者の方々とも出会う機会を得るという結果を出せています。これは、当初思い描いた通りにできたことです。


4. 『シャーリー』が11年ぶりの新刊(2巻)&シャッツキステのイベントへ協力

森薫さんの新刊が『シャーリー』2巻である、ということで震撼しました。元々、『シャーリー』の「続編」は何度も雑誌で発表されており、都度、チェックはしていました。



メイドの神様が『シャーリー』を連れて帰ってきた!(2006/10/28)

森薫さんの『シャーリー』新作が『ハルタ』2014-MAYに掲載 メイドの神様が再降臨(2014/05/17)



それが一定のボリュームとなり、発表され、刊行されることは、非常に嬉しい出来事でした。その辺りの感想は『シャーリー』2巻・11年ぶりの新刊発売と、そこから思う自分のメイド研究活動(2014/09/13)に記しました。メイドスキーの最先端を突っ走っていた森薫さんが今もまだメイドを描き続けているその姿は「ライフワーク」であり、そこで表現される世界の広がりと深まりは、同じ時代にメイドを好きである自分にとって、刺激的でした。



ただ、そこに嬉しい出来事も重なりました。『英国メイドの世界』出版イベントを行った私設図書館「シャッツキステ」が、『シャーリー』2巻の刊行を記念して原画展を行うこと、その原画展に英国メイドにまつわる資料を「本棚」として提供して欲しいとの提案をいただいたのです。



シャッツキステの『シャーリー』2巻発売記念・森薫先生原画展に資料展示協力(2014/09/01)



間接的にせよ、森薫さんと場を同じく出来たのは、とても幸運なことでした。


4. ワンダーパーラーカフェのメイド部屋訪問&コラボ同人誌『屋根裏の少女たち』刊行

前述のように仕事が慌ただしい状況にあり、それが予見できていたがために、2014年夏コミには申し込みませんでした。新刊を作れる時間も、作りたい意欲もなかったためです。しかし、今までサークルを手伝ってくれていた友人が夏コミに参加し、会場でその手伝いをすることで熱気にふれ、「自分も創作をしたい」と思いました。



そんな折に、池袋の「ワンダーパーラーカフェ」からお声がけいただき、店長の鳥居さんが再現されようとした「メイド部屋」に接して、何か一緒に作りたいと思いました。



ワンダーパーラーによる「メイド部屋」再現の試みと訪問(2014年9月)


そして生まれたのが、冬コミ新刊『屋根裏の少女たち Behind the green baize door』(ワンダーパーラーカフェとのコラボ)告知でした。自身としては初の試みでしたが、創作を久しぶりに行いました。元々、創作をするために研究を始めたので、原点回帰にの創作に時間を使えたことで、随分と気持ちがすっきりしました。


5. 『ミステリマガジン』2015年2月号「ダウントン・アビー」特集に原稿寄稿・2年ぶり

そうして、同人活動に邁進している途中に、『ミステリマガジン』より「ダウントン・アビー」の特集を企画しており、使用人の解説記事の原稿依頼がありました。コミケの原稿で慌ただしい状況ではありましたが、とても面白い話だったので、すぐに引き受けて、原稿に取り組みました。



ミステリマガジン』2015年2月号「ダウントン・アビー特集」に寄稿しました



『ミステリマガジン』への寄稿は2度目で、前回は『ハヤカワミステリマガジン』2012年12月号にコラム「ゴシック小説の家事使用人からメイド喫茶へ」を寄稿しました。


6. コミケのサークル参加でメイドさんに売り子になっていただく(2年連続2回目)

2013年冬コミに引き続き、サークルスペースにメイドさんに売り子をしていただきました。今回はワンダーパーラカフェとのコラボもあったので、お願いしてみたところ、引き受けていただけました。こちらも大変、ありがたい経験になりました。


2014年に出来ていないこと

2013年に記したことと同じです。



・近代ヨーロッパにおける女性史の中での家事労働の研究

現代社会における家事労働者の境遇(たとえば家事労働者に関する国際労働基準とILOの活動

・『監獄の誕生 監視と処罰』からの家事使用人の考察

・『シャドウ・ワーク―生活のあり方を問う』からの派生

・家事労働に伴う偏見の形成について

・現代中国における家事労働者のあり方

・近代フランスの家事使用人の状況



かつ、「日本のメイドイメージ」の集大成となる本の刊行が出来ていません。これは、2015年の最優先課題です。


2015年のロードマップ

2015年の目標は、理想を実現するための手段を書くことにします。あまりに現実的で、目標と言えるか分かりませんが。


1.体力回復・増強

まず体力をつけて、一日の時間を有効活用できるようにします。仕事の残業時間はベンチャー企業に勤めた頃に比べると遥かに少ないものの、仕事で求められるプレッシャーの増大もあってか、土日にぐったりすることも増えました。



そこで、大学まで続けていた自転車に乗る趣味を再開しようと思います。といっても、普通に自転車に乗るだけでロードバイク的なものではありません。去年の夏に軽井沢で20年ぶりに自転車に乗って気持ちよかったことも影響しています。


2.研究環境の物理的構築

とにかく、自室に本が多くなりすぎました。そこでトランクルームを借りたものの、今度は本が散逸し、不意に必要となる情報を引き出すのに時間がかかる環境に。今時点でも積んでいる本が増えたので、一度、すべての所持する本が本棚に格納できる環境を確保することにしました。


3.2014年の目標の実現

・興味が無い人が読んで理解できる「メイドイメージ」の集大成を作る
・現代の家事労働者との接点

4.世界を広げる

これは個人的なことですが、もう少し、今年は外に世界を広げます。この前、久しぶりに自分と同じ領域に強い興味を持つ人に出会い、会話をする楽しさを再確認したからです。そうした人々がいる場所へ、自分から出て行かなければ、と。ジェーン・オースティンの話を久しぶりにしたり、作品『モーリス』を口に出したりとしましたが、自分の周囲にはほとんどそういう会話を出来る人がいません。思えば、自分が接してきた作品群の感想を話し合える相手は、貴重です。オタク同士の会話が気持ちいい理由は分かりますし、そういうコミュニティを形成したいところです。



興味を持って作品・対象領域にはまり、幅を広げて時間を費やせば費やすほど、方向によっては、誰とも話せなくなることは面白い事象です。だからこそ、ほんのわずかでも共通点・重なり合って話し合える対象を持てていると、そのこと自体が嬉しく思えるのでしょう。



深めれば深めるほどに「誰とも話せなくなる」という描写は、『3月のライオン』での「全力を出して殴り合える」的な棋士同士の関係性に重なるものがあるかもしれません。深めれば深めるほど理解し合いたくないことに気がつきやすくなってしまうところもあるとは思いますが。


終わりに

まず、アウトプットを行えるための「自分自身の環境を整える」、そのことがすべてです。



本年も、よろしくお願いいたします。


2013年の振り返りと2014年のロードマップ

はじめに

毎年、年末年始には振り返りを行っています。1年前の2012年の振り返り(2013/01/01)を読み返していると、2013年年初に振り返ったことと同じ構造が続いてしまっています。



結論から言えば、仕事に時間を使いすぎました。2012年と同様に仕事が面白く、そこで求められた役割を果たす自分に充実感を覚えました。そのため、私は転職してからほとんどゲームをしていません。ゲームを行うのと同じような「数字が変化する楽しさ」の中にいるからです。会社のリソースの使い方を学び、最大限に結果を出す手段を講じる。あるいは、MMORPGのように協力していける人々と繋がって行動する。そうしたプロセスには「状況把握のための情報のインプット」と、「行動に移すためのアウトプット」が繋がっているため、私は同人活動やプライベートで使うべきクリエイティビティも、仕事に向けているような状況です。



この楽しさが、研究活動に優先している点では、「時間を使いすぎる」というのは「その時間を使うことを優先した自分の意思の結果」ですが、業務における達成感や満足感が、最初から自分の願ったものであるかはまた難しいところで、さながら中毒性があるゲームに夢中になっているようでもありますし、数年先を考えた時に必要なスキルを身につける時間や、衰えつつある体力を鍛えるといった根本的な課題に取り組めていないなど、主体性を発揮できていない点も様々に有ります。



2013年は同僚が増えたり、役割が変わったりと、自分自身に求められる環境も変わってきていますが、数年後に至る道筋として2013年に何を出来て、それが数年後に歩いていたい道筋に繋がっているのかを、ここで再確認したいと思います。



本当に、2013年の年始に行った分析から、進化していないといえば進化していないのですよね。しかし、それでも2013年はかなり大きな出来事に遭遇していますので、振り返りましょう。



2013年の出来事

1. 『月夜のサアカス』の閉店と、書棚公開・家事使用人勉強会の終了

2012年04月より秋葉原のカフェ『月夜のサアカス』で蔵書を一部公開(2012/02/27)

秋葉原のカフェ『月夜のサアカス』での蔵書公開とタイトル一覧(169+2種)(2012/03/31)

家事使用人勉強会の始まり(2012/06/09)



上記3点について言及しておりました秋葉原のカフェ『月夜のサアカス』は、2013年5月末で閉店いたしました。店長のはるきさんの体調不良が理由となります。私にとって『月夜のサアカス』は最も通ったカフェのひとつで、食事もおいしく、私にとって多くの出会いを与えてくれた場所でした。



ほとんどメイド喫茶に通ったことが無い私にとっては、初めて経験する「閉店」でした(シャッツキステの場合は「第二章」が約束されていた)。



そうしたこともありつつ、私自身のコミットも十分出来なかったこともあり、一旦、「書棚公開」「家事使用人勉強会」という試みも、継続を考えず、終了としました。実際に私の時間を取れなかったこともありますし、私自身がしっかりと勉強できていない現状もあったためです。「勉強会」とは準備に時間もかかりますし、何を学ぶかも明確でなければなりません。その点で、私自身、何を学びたかったのか、というところでの設計にも課題がありました。



このあたりの気持ちを書いたテキストを公開し損ねていますので、近いうちにブログに掲載します。


2. 『英国メイドの世界』3周年&電子書籍版の刊行

『英国メイドの世界』は絶版になることもなく、『英国メイドの世界』刊行から1周年を振り返る『英国メイドの世界』から2周年・振り返り途中に記した時を経て、3年間を無事に迎えることが出来ました。




英国メイド関連本が出た時に書店で一緒に並べて売ってもらえるポジションとしてウェブのように認識されていないように思えるのは残念ですが、著者が努力し続けることで自分の本の寿命を延ばし、埋没することなく生き続けた結果として、新しい読者の方々とも出会う機会を得るという結果を出せています。これは、当初思い描いた通りにできたことです。



2012年に記した課題は継続していますし、私自身の活動がこの領域で大きく広がっていないので現状維持もしくは後退も見られる状況ではありますが、講談社BOX編集部の方のご尽力もあって、裾野を広げる意味で「電子書籍版」の刊行を行えました。







『英国メイドの世界 エッセンシャル版 屋敷で働くメイドの仕事・エピソード集』2013/04/26(金)発売・配信開始と電子書籍化の意図(2013/04/26)


3. 同人誌『メイドカフェ批評』へのゲスト原稿寄稿で雑誌メディアを整理

2013年の研究領域は、主にこちらの「メイドイメージ」でした。『英国メイドの世界』を刊行した2010年末から、「日本における」メイドを様々に照らすことが自分の中心課題となりました。そのテーマの一つが、「メイドイメージはどのように語られて、世の中に広がったのか」です。そこで取り組んだのが、雑誌記事の発掘です。



メイドイメージを映し出す雑誌・新聞記事の調査(2013/07/21)



そのきっかけをくれたのが、2010年11月に行ったメイド図書館シャッツキステでの出版記念コラボイベント(2010/11/29)などを通じて縁があった、たかとらさんでした。メイド喫茶のデータベース化を行い、メイド喫茶のあり方を客観的に考えようとするたかとらさんの距離感は、私にとっては学ぶべきものが多くあり、「全体像を把握しようとする試み」は、自分との重なりを感じました。そのたかとらさんが、本格的な批評同人誌を作るというので、私も参加させていただきました。



それが、2013年夏に刊行された『メイドカフェ批評』です。



私はその本に向けて、自分の中で資料だけ集めて体系か出来ていなかった「雑誌メディア」におけるメイド喫茶の変遷を取りまとめました。最終的に私はメイド喫茶の常連になる要素を自分に見出せませんでしたが「日本のメイドイメージ」を総合的に知るための資料が存在しなかったことと、メイドブームの中核となったメイド喫茶があったことで出版できたり、読者の方と知り合えたりしたこともあって、恩返しのつもりでこの領域を広げました。



私の結論は同書の「メディアが伝えるメイドイメージ 誰がメイドを語るのか?」に記載してあります。『メイドカフェ批評』の委託販売状況に委託先が記されていますので、興味のある方は是非、お読み下さい。


4. 同人誌『メイドイメージの大国ニッポン 新聞メディア編』刊行


いろいろな経緯もありつつ、私はここ数年でメイドブーム考察を始めました。第1期「日本のメイドさん」確立へ第2期制服ブームから派生したメイド服リアル化・「コスプレ」喫茶成立までで記したように、wikipedia以外のまとまったテキストを残し、かつ、自分を育み、またメイドジャンルにとっては欠かせない存在である「同人」のコンテクストを伝えたいとの意志があるからです。



そうしたブームの可視化の理解をしようとした際に、作品数とその時代に見られた傾向を把握しようとして作ったのが、新刊『メイドイメージの大国ニッポン 漫画・ラノベ編』です。同書で最も伝えたいことは、「メイドが登場する作品はブーム時にピークを迎えたのではなく、ブーム以降も増え続けており、作品として安定供給されるに至っている」点です。



ただ、メイドブームとはコンテンツ軸だけのものではありません。世の中にメイドブームを巻き起こしたのはメイド喫茶ブームであり、メディアにおける広範な露出です。その点も踏まえ、メイド喫茶に関する理解を深めるべく、2012年は様々な研究や調査を行いました。その成果は2013年中にお見せします。



2013年1月に上記のように記した私にとって、「マスメディア」は研究すべき領域でした。雑誌を書いたので、次は新聞ということで『メイドイメージの大国ニッポン 新聞メディア編』(2013/07/31)を刊行しました。こちらは『メイドカフェ批評』へ寄稿した内容の姉妹編ということで、「雑誌よりも報道範囲に制約が大きく」「地方版の存在で報道内容がより多様」となる新聞紙において、メイドイメージがどのような分類軸で拡散していったのかを整理したものです。



雑誌と新聞の調査を通じて、私は「メイドイメージ」は日本においてブームを経て、日常化したとの結論に至りました。日常化との言葉の使い方は難しいのですが、ブームのような盛り上がりも無く、強いて取り上げることも無く、いわば空気化したともいえるかもしれません。比喩として適切か分かりませんが、「ファミレス」も「コーヒー」も登場した当初は珍しいものでした。それが今では当たり前に存在するものとなっています。「メイド」はコンテンツとして同じ状況なのではないかと。



より正確に言えば、「メイド」の言葉が内包するイメージは見るものによって異なる多義性を持ち、ただ「メイド服」と認識される象徴性によって外部からは「ひとつ」に見えていますし、そのことがメイドが何度ものブームを経て生き残れた要因に思えますが、様々に描かれるメイドイメージを整理するための道筋は、ほぼ整えられたと思います。



尚、テレビについては様々な権利関係もあってアーカイブされた情報へ接することが一般人には難しく、現時点では保留しています。テレビメディアの影響の大きさこそが「メイドブーム」の爆発的な波及効果を生み出したとも考えられますが、その領域については別の方に委ねたいと思います。



[特集]メイド喫茶ブームとメディア露出に一部を記しています。


5. 同人誌『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』刊行

こうした活動の帰結として、私は様々な領域の方に出会い、その方たちの表現に接する機会を持ち、魅力を覚えていました。私のように「メイドイメージ全体」への情熱を注いでいる人間も珍しいことでしょう。そうであればこそ、「メイド」の一言が多義性を持つそのこと自体を、本として刊行できれば、「メイドブーム」の一端を伝えることが出来るのではないかと、考えました。



そして作り上げたのが、実に19名の方たちにご参加いただけた『メイド表現の語り手たち 「私」の好きなメイドさん』(2013/12/14)です。この本は語り手の方たちの目に映るメイドの魅力を語っていただく本の後世をしています。その帰結として、多義性を持つ「メイド」の姿が浮かび上がるものとなっていますし、どのようなメイドにまつわる表現活動が存在しえるのかの一端を切り取ったものともいえますし、「多くの方にご参加いただく本を作る」ことは、私にとって数年来、同人で実現したい一つの目標でもありました。



この点で、2013年に行えた同人活動は、制限時間がある中で望みえる最高の成果を出せたと振り返ることができるものです。社畜化が著しく進む中、どうしてこれだけのアウトプットを出せたかといえば、これまでの蓄積(2012年を準備期間としていた)や、ゲストの方たちにご参加いただけた運と縁に恵まれた結果ともいえます。


6. コミケのサークル参加でメイドさんに売り子になっていただく

2013年冬コミでは、サークルでの参加から初めて、サークルスペースにメイドさんたちに売り子をしていただきました。いずれも私の同人活動をご存知の方たちで、安心して一緒にスペースに立つことが出来ました。年初に表明した形とは若干異なりましたが(私の執事コスプレは実現せず)、同人活動で実現したかったことがひとつ叶いましたので、私としては満足です。


2013年に出来ていないこと

ここ数年、いくつか方向性を広げようとして実現できていないことは、以下の通りです。



・近代ヨーロッパにおける女性史の中での家事労働の研究

現代社会における家事労働者の境遇(たとえば家事労働者に関する国際労働基準とILOの活動

・『監獄の誕生 監視と処罰』からの家事使用人の考察

・『シャドウ・ワーク―生活のあり方を問う』からの派生

・家事労働に伴う偏見の形成について

・現代中国における家事労働者のあり方

・近代フランスの家事使用人の状況


2014年のロードマップ

鉄は熱いうちに打つ、ということで2014年のロードマップを書きます。というより、ここ数年来したかったことの表明です。2013年には2013年は同人だからできること、商業だからできることを(2013/01/02)という振り返りをしましたが、いろいろと環境や自分の中での優先順位も変わっているので、そこは目標を絞ります。


1.英国メイド資料はすべてウェブ公開するプラットフォーム作り

何か創作をするのに自分で英語資料を集める時代を終わらせたい、との想いはずっとあります。『英国メイドの世界』はメイド界の「高速道路」を目指すとの表明をしましたし、そもそも自分が『英国メイドの世界』を含めて同人誌での研究活動を始めたのは「創作」をするためでした。現実には創作になかなか辿りつけていないのですが、もっと数多くの創作を生み出しやすい環境を作る手助けができないかと、考えています。



そもそも、メイド関係の資料を個人で集めすぎて、場所が逼迫していますし、私が活用していない資料も山ほどあるので、宝の持ち腐れでも有ります。2012年04月より秋葉原のカフェ『月夜のサアカス』で蔵書を一部公開(2012/02/27)を行ったのもそうした点の取り組みの一環でしたが、別の形での具体化を考えたいところです。



特に、英国の取り組みやGoogle Booksのおかげで、ウェブで接する資料自体は増加しています。こうした資料を編集できる場を設けたいと常々思っているものの、自分の時間を使ったり、人にお願いしたりするとなると、活動資金が必要です。過去にあっては「出版が当たったら、その費用に当てよう」と思っていましたが、そういうわけにも行かなかった現実を鑑みつつ、社会に対して価値を帰せる形でかつ持続可能なプラットフォームを作れないか、検討したいと思います。



お金持ちであれば、道楽のようにできるのですが、なかなか今の立場ではそうも行きません。英国大使館の支援、または石油王のオイルマネーが欲しいです、という冗談はさておき、メイド関連の資料をどのようにアーカイブ化するかは課題です。


2.興味が無い人が読んで理解できる「メイドイメージ」の集大成を作る

私個人の見解でいえば、メイドブームはその渦中にある語り手が少なかったように思います。なぜならば、雑誌メディアで語り手の軸となった森永卓郎さん自身が「萌え」ではなく「女の子と話す楽しさ」を魅力として捉えており、また外で語られる時に参考として目に入る文献があまりに少ないのではないか、と考えられるからです。以下、『メイドカフェ批評』に私が寄稿した原稿です。




 メイドカフェブームは、様々なメイドイメージの相乗りで、その消費のされ方も変化を遂げています。その全体像はとても見えにくく、私が描き得たのはあくまでも大宅壮一図書館でアーカイブされている雑誌記事に留まります。刊行されている書籍類も網羅できているわけではありません。雑誌記事は「雑誌」という媒体の性質のためか、比較的印象論だけで語る記事は少なく、メイド喫茶を記事とする際にはきちんと訪問する方が多かったのが印象的です。
 しかし、雑誌でこれだけ語られていても、全体像は見えにくく、参照されにくいと感じています。「メイドカフェが好きな人による、メイドカフェを外に伝える言葉」の少なさが気になるからです。
 雑誌記事上で継続してメイド喫茶を語っていたのは森永卓郎さんだけでした。しかし、森永さんは今回の記事を通じて、『私は萌えになりきれないんです。メイド喫茶も関係性を持ちたいとかではなく、ただ話をして楽しいから好きなんですよね』(『SPA!』2005.07.12/24-29)と語り、語り手として偏りがあると感じました。
 また、「メイド服とゴスロリ」の関係性を求め、私はゴシックやゴスロリ関係で出版された研究書を三冊読みましたが(『テクノ・ゴシック』『ゴシック・ハート』『死想の血統』)、いずれもメイドカフェに言及する際、メイドカフェ側の参考文献を挙げずに語っていました。参考文献に挙げる本が無かったのかもしれませんし、目に入らなかったかのかもしれませんが、自身の専門領域ではない事項を語る人々が、参考文献を挙げられない点は、不思議に思えました。
 私自身が外部から「参照されるテキスト」を作れるか、あるいは作るのに適した人物かはさておき、メイドカフェを愛好されるたかとらさんから、外の世界に対しての強度を持つ「メイドカフェ批評」の場が作られたことを、私は嬉しく思います。
 私自身は「メイドイメージの研究」の一環として、今回、メイドカフェに関するテキストを書きました。ある程度、私の責務は果たせたと思うので、後はメイドカフェを愛し、その魅力を伝えたいと強く願う方々に任せ、もうしばらくしたところで、英国メイド研究に戻りたいと思います。
上記は「メイドカフェ」についての言及ですが、「メイドブーム」自体もメイドが持つ多義性ゆえに複雑な構造をしているため、なかなか全体像が捉えにくいのも確かです。私自身、[特集]第1期メイドブーム「日本のメイドさん」確立へ(1990年代)[特集]第2期メイドブーム〜制服ブームから派生したメイド服リアル化・「コスプレ」喫茶成立まで(1990年代)において可視化を試みたり、前述した様々な同人誌を作ることで全体像の把握を試みていますが、最近読んだテキストに、自戒の念を抱かされました。




ベゾスによると、講釈の誤りとは2007年に出版されたナシーム・ニコラス・タレブの『ブラック・スワン』に登場する言葉で、複雑な現実にはなにかと講釈を並べ、耳当たりはいいが簡略化しすぎた話にしてしまう人間の性質を指す。タレブはまた、人間は脳の限界により、関係のない事実や出来事のあいだに因果関係を見いだし、わかりやすい講釈をこしらえてしまう傾向があると言う。そのように講釈を並べることで、人間は、現実世界の偶然性や経験という混沌、物事の成否にかかわる運・不運といういとわしい要素から目を背けるのだ。

【書評】『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』からの引用



出来るだけ誠実に対象と向き合い、どのような論拠で結論に至ったかを書くことで、こうした「講釈の誤り」を避けたいとは思いつつも、私という人間の視点で作る点ではどうしても偏りも出るでしょう。とはいえ、何かしらの叩き台を作ることで、今自分が出せない答えも他の誰かに繋がっていくことで答えに近づくことは出来ると考え、一つの形に結実させるつもりです。


3.現代の家事労働者との接点

今年2014年は、第一次世界大戦から一世紀が経過します。英国では『Downton Abbey』を始めとして様々に家事使用人へ注目が集まっている中で、「過去の暮らし」へ目が向くのは当然でありつつ、「なぜ、家事使用人の雇用が衰退していったのか」「それが現代にどう繋がっているのか」を理解することは大切に思えます。



長期的にも、少子高齢化を迎える日本にあって、介護領域での海外からの労働者受け入れは進みつつあり、待機児童の問題もかんがみるに、もしかすると育児領域でもメイドを受け入れていく時代が来るかもしれません。あるいは、海外からの移民受け入れが難しいとしても、こうした「家庭領域で働く」機械が広がっていくとして、それに伴う「構造的な大変さ」(雇う側も雇われる側も)は、なかなか体験しなければ理解しがたいことです。



とはいえ、人は過去の歴史や他者の経験に学ぶことが出来ます。私個人としては、家事領域での家事労働者受け入れを行っている他国の事例や、英国だけではなく過去の日本で女中を雇用した人々の視点も交えて、「家で人を雇い、家事をしてもらうことには技術・経験が必要」だということを伝えられるようになりたいと思っています。



さらに言えば、家事領域について近代から形成されている視点についても、明確に出来ればと考えています。


終わりに

ロードマップはあまり具体的になっていませんし、同人活動への言及をできていませんが、まずは「時間を作る」ことを最優先にして、少しずつ前に進み、途中途中でこまめにブログを書くことでご報告できればと思います。



本年も、よろしくお願いいたします。


2013年は同人だからできること、商業だからできることを

例によって元日には2012年の振り返りを記し、2013年に向けた抱負を書くための情報整理を行いました。そこで明確になったのは、2012年に行いたかったことは、仕事の優先度を高めてしまったために、十分に時間を取れませんでした。



その点で、2013年の課題は、2012年までに積み重ねてきたことを結実させ、ひとつずつ形にする、それに尽きます。正直なところ、2012年の年始の方が軸がぶれておらず、方針を大きく変更することはありません。というか、同一人物なのかと思えるぐらい、風呂敷を広げていますね(笑)



2012年はメイドジャンルを繋いで描き、10年後にも残るものを(2012/01/02)



設計がしっかりしていたおかげで、2012年に書いた方針はこれからの5年ぐらいの指針にも出来そうです。その方針を、昨年の自分の言葉から引用します。




2012年の方針の核は、「自分だけでは出来ないことを実現するために、同じ目標を持つ・同じ方向を向く人に出会って一緒に何かをする」と、「自分のテーマ領域を広げて、非サブカルチャー以外との接点を作っていく」ことを挙げます。



前提として、「自分の好きを表現し、かつ好きを表現する人たちにとって心地よい環境作りに寄与できることを探す」ことがあります。私も周辺環境・ジャンルに育てられた恩義があるので、作品を出すこと以外で返せるものがあるならば、積極的に返すつもりです。


1. 同人活動を広げる

1-1.メイド総合同人誌(または表現の場)の構築

2012年の抱負で記したように、「メイドを横断的に扱う『雑誌的な表現の場』を作りたい」かつ、「メイドが好きな人のための本」だけではなく、「読んだ人がメイドを好きになる本」です。



そこで、コミケ83(冬コミ)ではこれまでにご縁があった方々に、「同人誌のイラストを是非描いていただけませんか?」とお声掛けしました。これまでに表紙や挿絵をお願いした方々も含めて、どれぐらいご参加いただけるか分かりませんが、日本におけるメイドの多様性を示す上で、「メイドを書きたい」と思う創作者の方たちにとっての表現の場を作りたいと思います。



昨年記したように、「英国メイド」に限るつもりはありません。「日本におけるメイド表現の多様性」を10年後に残す意味でも、幅広く考えています。こちらは1月中に企画をまとめて、冬コミを目指したいと思います。


1-2.英国家事使用人関係は2013年後半から 『階下で出会った人々』と貴族の生活

これらは2011年から予定していた同人誌ですが、2012年は「日本のメイド」研究を優先した関係で英国研究の優先度が下がりました。[参考資料]英国メイドの世界(著者による紹介)の後半に私が資料から登場させた家事使用人の人名リストをあげた人々の人生模様を、職種を軸とするのではなく、個人と軸として見たいとの気持ちがあります。



情報は集まっているのですが、アウトプットする機会を逃しています。



その一方で、冬コミで質問を受けたのが「貴族の生活」についての発表です。ただ、この領域は私以外の方が出版してくれそうな雰囲気もあると思うので、当面は時間を使うことを保留します。2014年になった時点で特にその気配が感じられなければ、或いは、刊行された本が私の知りたい情報を載せていないならば、その方面での発表は実現に向けて動かしていきます。


1-3.同人ノウハウ本の作成

これも去年と同じですが、同人活動を続ける技術論を展開したいと思います。同人活動を続けるためのノウハウを考える(2011/09/01)に詳細を記したように、私が蓄積してきたノウハウを公開することで、同人活動を楽しまれる方にお役に立ちたいと考えています。



2012年末の冬コミでは、『黒子のバスケ』作品への脅迫があり、その脅迫への対応として同作品のサークル参加を会場や警備側から要請される事態が生じました。コミケ自体が巨大化し、過渡期を迎えていると思いつつ、私はコミケの運営側ではありませんし、主体的にかかわっていく方法も分かりませんし、そのための時間も作れません。



私に表現を続ける場を与えてくれたコミケに対して私が出来ることは何かと考えると、それは「自分のサークルがきっかけで同人文化に興味を持つ方を一人でも増えていく」ことであり、「同人サークルの楽しさを伝えることを通じて、表現する側に回る方が増えること」であり、さらに言えば、表現を続ける方が続けやすいために何が必要かを考え続け、発表し続けることだと思っています。



同人誌即売会で得られる「創作を続けやすい環境」(2010/04/17)で書いたように言語化をするのもその一環です。



最も大切なのは、コミケには「好きを表現する」「共有する」場が形成されていることです。日常を生きていて、何か好きなことについて力説する、共有したい、伝えたいと思う方々と愛することは稀です。日常と言ってもだいたいは会社に時間を費やしますし、会社の中ではそうした自己表現は無用かもしれませんが、自分が生きる時間にあって触れる機会が少ない「好きのエネルギー」が発露される場は、大切に思えるのです。



そういう意味で、それらが時として表現される、シャッツキステや月夜のサアカスと言った喫茶でのイベントは好きなのです。


1-4.執事のコスプレとメイドさん売り子の起用

なんとなく2012年年末に「サークル参加で、メイドさんの売り子を起用したい」と呟いていたところ、いろいろとあって、なぜか執事の格好をすることと相成りました。また、メイドさんの売り子起用もやってみたいと立候補して下さる方や、もしかするとお願いできるかもという伝手も見えるなど、大きな流れに飲み込まれてしまいましたので、飛び込むことにしました。



























夏場は無理かもしれませんので、現実的には冬でしょうか……転職後に増加した体重を落とすダイエットも開始し、無様をさらさずに済むような、おもてなしの準備をしたいと思います。



午前中は午前服で、午後は午後服というような売り子のメイドさんの服装の変化が出来たら神ですね……


2.境界線を広げる

2-1.商業出版企画の完遂と出版の実現(企画自体は通っています)

書きます。3月までにまとめ、7月の刊行を目指します。



最優先課題です。


2-2.創作への応募

保留します。


2-3.中高生に届くようための図書館への寄付はできるのか?

考えます。もう一冊出せてからでしょうか。


3. ジャンルの安定化のための振り返りと繋がりの軸として

正直なところ、2012年の抱負から先に進んでいる部分が少ないので、またしても去年からの引用です。去年はいったい何があったのかと思うぐらいに、堅牢な言葉を作れています。




2010年の出版以降、とにかく「日本のメイドについてどう思う?」「英国メイドとの違いは?」と聞かれました。さらに出版したことで多様な情報が集まりやすくなってきたこともあって、2010年からライフワーク的に日本のメイドブームについての考察や情報の整理を始めました。



考察も大切ですが、まずデータを収集すること。そこを軸に可視化を行いつつ、「一緒に取り組んだら面白い人」を探し、コラボできる余地を探していきます。2010年の出版時には秋葉原のメイド図書館『シャッツキステ』とコラボを行いました。同じように、2012年は繋がりを広げていくつもりです。



メイド喫茶に初めて行ってみたい人向けに、英国メイド研究者が書いてみるもその一環と言えば一環で、これは「あくまでも一部にすぎないメイド喫茶の形態が、すべてのように伝わること」へのカウンターのようなもので、私から私が好きな「表現」を行う方への援護射撃になればとの気持ちがありました。



3-1. リアルの場で図書公開を行い、学びたい人の場とする

『月夜のサアカス』で実現中です。



秋葉原のカフェ『月夜のサアカス』での蔵書公開とタイトル一覧(169+2種)(2012/03/31)


3-2. 学びの機会を増やし、かつ自分が学んだことを伝えていく

こちらはメイド研究をされている方々と交流を深め、自分自身が持つ情報を伝えていき、また学ぶ機会を増やします。冬コミの場にてお話をすることもできましたので、1月中旬以降にコンタクトを取って、実際のアクションにしたいと思います。


4. 「メイド以外」の人々と出会い、学び、「通じる言葉・概念」にする

昨年書いた言葉がそのまま当てはまりますので、強いて書きませんが、自分にプレッシャーをかける意味で、以下を購入し、正月から読み始めています。



監獄の誕生―監視と処罰

監獄の誕生―監視と処罰




終わりに

ここでも去年の言葉を引用しましょう。色あせない強度を持つ言葉で、何があったのでしょう、自分。あるいは、この一年で成長していないこと、劣化していることに強い危機感を覚えます。


とても盛りだくさんですが、「今年1年ですべてやろうとは思わない」「私だけでやろうとしない」ことをキーワードに、今年は活動を楽しみ、深め、より多くの人に関心を持ってもらえるような伝え方を模索していきます。会社勤めでの経験も新しいステージに入っており、仕事とのバランスをどのようにするかも課題に上がってきますが、今年はこうした目標を描くこと、スケジュール管理を行って具体化することでプライオリティを下げずにいきます。



メイドへの関心を持っていただくのも大切ですし、私の生き方や在り方を軸にメイドに興味を持っていただくことも出来るのではないかと思いつつ、水樹奈々さんのラジオで「メイドは人生」と言った手前、「人生」としてしっかり向き合っていきます。



これが全部できたら、相当、すごい人間ですね。でも、一人で出来るわけがありませんし、すごい人間になろうとも思いません。半ば誇大妄想的かもしれません。しかし、ここに描き出した「夢」を共有し、響いて受け止めて下さる方が一人でも増えれば、「世界」を見る目を変えられるとの希望があります。



見守っていただければ、そして一緒に楽しんでいただければ、幸いです。



今年強いて付け加えるならば、次の言葉に集約できるでしょう。







本年もよろしくお願いいたします。


2012年の振り返り 働くことと向き合うことを優先した1年間

振り返りを踏まえた2013年の目標・展望は明日に更新します。客観的に見て、2012年の振り返りで考えていた事項で2012年に取り入れられた物が少ない、というのが結論になりそうです。



2011年の振り返り(2012/01/01)



では、なぜ少ないかと言えば、仕事に時間を割きすぎてしまったからです。そこで少し、自分が仕事優先になってしまった構造を振り返りたいと思います。


前段:メイド研究は「仕事の研究」であるとの考え方

私がメイド研究の面白さにどっぷりと浸かり始めたのは、「会社人として屋敷の職場を見る」視点からでした。数多くのメイドの手記や執事の自伝を読んでいると、「このメイドとは一緒に仕事をしたくない」「この執事は数字に強いし、ビジネスセンスがある」「こういう主人の下では確かに仕事はやりにくい」といった情報に接します。



その点で、私は英国における家事使用人を「組織で働く、自分自身の先輩」として捉えています。この観点で見ると、「多くのメイドが働いて1〜2年で職場を離れて転職する(労働条件が悪すぎるので)」、「裕福な屋敷の上級使用人のポストは数が少なく、かつ離職者が少ないので就業が難しい」(上が詰まっていて昇進できない事情も、中途採用で良いポジションが空きにくいことなど)で、重なりを見出せましたし、労働環境を巡る労使の関係性は、「2つの使用人問題」を巡る19世紀末時点での女主人の見解(2011/06/26)にも記しました。



もうひとつ気になったのが、「自発的に仕事を行い、規律を持って働く家事使用人」と、「主人に反発し、辞めてしまう家事使用人」の差でした。だいたいにおいて人は働かなければ生きていけませんが、その働く環境は自分の意志で選べます。時代や環境で働ける職場の数や質に制約を受け、必ずしも自分の希望が反映されるとは限りませんが、「給与がいい待遇」「一緒に働ける仲間がいる」「主人から尊重されている」環境というのは、離職率が低い傾向を示しています。そして、仕事に粉骨砕身する「忠誠心の発露」を見ることもできます。



勤め先への忠誠心、仕事へのめりこんでいく感覚を「社畜」というならば、そうした構造は過去にも見出すことは出来ます。



という背景で、私は「仕事をすること=メイド研究を深めること」と1つの線で結んでいました。しかし、結んでしまったが故に、どこかで「仕事だけをやっていても、メイド研究に繋がる」との言い訳を作ってしまったかもしれません。それが、2012年のメイド研究に時間を避けなかった理由づけになるかもしれません。


私が自発的に社畜化した条件を考える

ここで、私の振り返りです。2012年は2011年に比べると転職で労働条件が改善したものの、仕事に時間を費やし、休日出勤や休日にノートPCから仕事をする機会が増えすぎました。今では進んで休日出勤しますし、そのことに苦痛は感じないほど「社畜」化が進み、その反動として研究活動に費やす時間が激減しました。



「私は自分を客観的に見ることができる」との有名な発言を愛好する私は(客観的に見ることと振舞うことは別、という言葉も聞こえてきますが)、なぜ自分が社畜化していくのかを構造的に捉え、2013年は少し異なるアプローチをしようと思う次第です。


1.アクションの結果が可視化される

私の仕事は広義でのウェブプロデューサーで、ウェブサイトにおける事業の企画・制作・運用、及びその事業部内での環境整備などを行っています。ウェブとそのサービスを通じた事業では様々な結果がデータ化されやすく、アクションした結果がダイレクトに数字に反映されやすい傾向があります。



こうした「アクション→結果」の見えやすさは魅力的で、ゲーム的構造を備えているように考えます。ゲームでは費やした時間の分だけ、能力が上がったり、財産やアイテムが増えたり、称号を得たりと、結果が可視化されます。現実における資格制度や受験勉強・学歴に似たものもあるかもしれません。しかし、ゲームの世界ではその結果が出るまでの時間が極めて短く、「アクション→結果」のループに中毒性を持たせられます。


2.結果の可視化で未来を変える・計画を作る楽しさ

結果によって、次のアクションも見えてしまう場合、ゲーム中毒のように、時間を投じたくなります。現在の仕事では、「現在の数字を見て、次に何をしたいのか」をどこまでも考えられます。数字を見る角度を切り替えたり、他の事業部と比較したり、広告予算の獲得などで条件を変えたり、自分たちの事業の成果を引き上げていくパラメータを探し、費用対効果が高いものにリソースを割り振り、無用なコストを削りつつ、収益化を図っていく計画を作ることは、「どのようにレベルを上げてゲームをクリアするか」を考える楽しさに通じています。



目の前に提示された問題を見た場合、解決するしかありません。私は難しい課題を達成する「課題達成型」というより、現在の事業部が抱える問題点を把握して1つずつ解決していく「問題解決型」のタイプで、そこに達成感を感じるが故に、問題の把握に繋がる「数字化」と、その問題を解決するための「計画作り」が大好きです。



その上で、自分の役割に課せられた業務を遂行するには、全体の情報を収集し、事業部の向かう方向と課題を把握し、現場の要望を聞き、取りまとめる必要があります。関係者にも情報を共有してどこに向かっているのか、どういう基準で動いているのかを提示することで、より効率的なコミュニケーションを行いたいとの気持ちもあります。そのためには情報を整備し、分かりやすく伝えられるドキュメント化が必須です。すべての人間に会議の場で語りかけることは非合理ですし、時間も無限にあるわけではないからです。

3.「誰も手を付けていない」が故に、「誰がやっても成果を出せる」

私の事業部で行っている領域では、手がついていないものが多々あります。言い換えれば、社員が時間を投じて手を付ければ、それが成果になりやすいものが残されています。しかし、こなせる業務の量に上限があり、社員数というリソースに制約がある中で、すべての案件を行うことは出来ません。



結果を出して数字を変化させたい、となると労働時間を増やすしかありません。それも、前述した1と2の楽しさを知っていると、会社や上司に命じられるわけではなく、自発的に動いてしまうのです。



ただ、こうした「自発的」労働がリソース不足を隠し、本来的に必要な雇用が生まれる機会を損ねるとも思う次第です。私の現状に関して言えば、純粋に欠員が出ている状況の影響を最小化する暫定措置と割り切っています。


4.1〜3をまとめると「メイド研究」も「今の仕事の取り組み方」も似ている

2で言及したドキュメント化の作業は、私が『英国メイドの世界』や同人誌における表現で行ってきたプロセスに相似しています。情報を形にしていく楽しさを感じればこそ、その作業は「モノづくり」の満足感をもたらし、私が研究で得ていた満足感に代替してしまっているのではないかと。



そして3の「目の前に広がる課題」は、私にとってのメイド研究が、ある意味、そうした領域であることを再認識させてくれます。私が研究を始めた当初では日本には大学の分野で専門研究者がおらず(専門家は今も不在と思いますが)、英書まで含めて大規模に研究する人は極めて限られ、かつ私が欲しい切り口で情報を提供する人に至っては皆無だったので、「私が行うこと=誰がやっても成果を出せる」状況だったように思います。



そこで求められたのは、そのことに時間を費やすか、否かだけでした。



その時間を私は可能な限り捻出しました。現在の会社での休日出勤や経験がスキル向上や給与評価の成果に繋がるように、研究にあって私は「英書を読む」「情報をまとめる」「誰にでも伝わる文章を書く」「世界を広げる」経験を積めると考えて、優先しましたし、ある意味で未知を既知にして人に伝えていくプロセスは楽しかったです。



趣味的なものと業務を同列に論じられませんし、会社の場合は現場リソースを少なくして、「自分が何とかしなければならない」「自分が何とかすることに意味がある」と責任感や思い込みを引き出し、「自発的労働」をさせる構造(ベンチャー企業に見られる)もあります。



何より、「私が本当に行いたかったことなのか?」は常に自問しています。目の前の問題を解決できることと、自分が解決したい問題を解決したいことはまったく別のものだからです。この辺は「やりがいの搾取」に通じるところなので、ここ数年の課題ですが、深める機会を逸しています。


思考に影響を与える「給与支払いのスケジュール化」と「ゲームの類似」

このように「仕事人間化」していく自分を相対的に見ようとする試みは仕事中毒の解毒作用を持っていると考えますが、自分が置かれる構造を言葉にしようと思うのも、過去の家事使用人と現代の自分を通じて、「働く」ことを見直すきっかけになっています(というぐらいにすべてを結び付けようとするところが自分の長所でもあり短所でもあり、会社に限らず、メイド研究もすべてに結び付けようとしている点では、どこか壊れているか、意図的に螺子を外そうとしているところかもしれません)。



さて、労働においてゲームの比喩を考えた際、そもそも私と会社との関係がゲーム的なところもあるのだなぁと思う点がありました。それは、一定期間で支払われる給与の存在です。私は出版準備のため、会社を辞めました。半年のつもりが2年間と長引いたことで収入が途絶する期間もあり、その状況が「回復魔法のない日々」「毒の沼地を歩く気分」にも感じられましたが、一定期間で給与が振り込まれるシステムは、よくできているなぁと感心しました。



私が勤めたいくつかの企業では毎月25日に給料を支払ってくれます。派遣社員として働いた際は月の半ばと月末が締日で、2週間後ぐらいに支払いを受けました。こうした給与が支払われることを前提に、たとえば買い物の計画を立てたり貯金をしたり、家賃を支払うことを私は当たり前に受け入れています。



今、1か月分の給与で買える商品があったとして、それをすぐに買えない場合でも、何度かの給料日を経て貯金して、入手することもできるでしょう。旅行の計画を立てるのもそうですが、計画を考えること自体は楽しいものです。



この「一定周期に数字が増加し、それを消費して行動する形式」は、ゲームに類似しています。2011年に私は『ブラウザ三国志』というゲームに時間を投じました。『ブラウザ三国志』では内政を行って国力を上げます。国力を上げるには領地の拡張が必須で、その結果として戦争が生じるので、優秀な武将を育てたり、兵を増強したりする必要がありました。



このゲームでは開発した土地から資源が算出され、リアルタイムで増加します。開発力を上げるにはこの資源を投じなければならず、「資源Aの数字が貯まったら、Bを開発する」といった計算を行えます。「何かのリソースが貯まるのを待って(給料日を待って)」何かの計画を立てる楽しさこそが、賃金労働の要素とすれば、その構造は家事使用人がいた時代にも成立していますし、それ以前からもあったでしょう。



家事使用人も、奉公人から賃金労働者へ大きく移行した職業です。古くは衣食住の保証で無償労働だった時代から、1年契約、四半期、そして時を経て月単位の賃金支払いへ移ったりしますが、フルタイムでの雇用が難しくなると時給での概念が見られました。賃金の支払い形態と貯金、そしてそれらによる消費への影響度合いもテーマとしては面白そうですし、既に研究もあることでしょう。



その辺りを深めたいなぁと思えた1年でした。


2012年の出来事

さて、長くなりましたが、2012年にあった研究軸の出来事です。


1. 『月夜のサアカス』で書棚公開&家事使用人勉強会

元々、私は自分一人で研究を完結できるとは思っていませんし、特定の人間だけが情報にアクセスできる環境もあまりいいと思っていません。その情報を得る人が広がっていくことで表現者が増加し、表現者が増えることでその領域に関心を持つ人が増えることを理想としています。



そこで私が所有する本を公開して参照できる「公開図書館」のようなものにあこがれを抱き、その願望をTwitterで呟いたところ、たまたま秋葉原のカフェ『月夜のサアカス』オーナーのはるきさんの目に留まり、お声掛けいただくことで実現しました。



2012年04月より秋葉原のカフェ『月夜のサアカス』で蔵書を一部公開(2012/02/27)

秋葉原のカフェ『月夜のサアカス』での蔵書公開とタイトル一覧(169+2種)(2012/03/31)



蔵書を公開するだけではなく、家事使用人勉強会の始まり(2012/06/09)と、勉強会への参加をカフェにおいて始めました。



ただ、現在は仕事があまりにも忙しすぎるために十分な時間確保が出来ず、2回目の時期については決まっておりませんし、私がどこまでかかわれるかも難しくなっています。そもそも的に私自身はいまだ学ぶ立場に過ぎず、その点では学ぶ時間の確保が最優先となるためです。


2. 『英国メイドの世界』2周年&第5刷刊行


『英国メイドの世界』は絶版になることもなく、『英国メイドの世界』刊行から1周年を振り返るに書いたように、1年間を無事に迎えることが出来ました。



英国メイド関連本が出た時に書店で一緒に並べて売ってもらえるポジションとしてウェブのように認識されていないように思えるのは残念ですが、著者が努力し続けることで自分の本の寿命を延ばし、埋没することなく生き続けた結果として、新しい読者の方々とも出会う機会を得るという結果を出せています。これは、当初思い描いた通りにできたことです。



2012年は次のように書きましたが、その後、あまり大きなアクションは取れませんでした。その中での成果は、第5版を刊行するに至れたことです。今でも絶版にならずに書店で販売していただけているのは、有難いことです。






3. 同人誌『メイドイメージの大国ニッポン 漫画・ラノベ編』刊行

いろいろな経緯もありつつ、私はここ数年でメイドブーム考察を始めました。第1期「日本のメイドさん」確立へ第2期制服ブームから派生したメイド服リアル化・「コスプレ」喫茶成立までで記したように、wikipedia以外のまとまったテキストを残し、かつ、自分を育み、またメイドジャンルにとっては欠かせない存在である「同人」のコンテクストを伝えたいとの意志があるからです。



そうしたブームの可視化の理解をしようとした際に、作品数とその時代に見られた傾向を把握しようとして作ったのが、新刊『メイドイメージの大国ニッポン 漫画・ラノベ編』です。同書で最も伝えたいことは、「メイドが登場する作品はブーム時にピークを迎えたのではなく、ブーム以降も増え続けており、作品として安定供給されるに至っている」点です。



ただ、メイドブームとはコンテンツ軸だけのものではありません。世の中にメイドブームを巻き起こしたのはメイド喫茶ブームであり、メディアにおける広範な露出です。その点も踏まえ、メイド喫茶に関する理解を深めるべく、2012年は様々な研究や調査を行いました。その成果は2013年中にお見せします。


4. 『ハヤカワミステリマガジン』に寄稿

メディア関係では、タイトルの通り、2012年12月号にコラム「ゴシック小説の家事使用人からメイド喫茶へ」を寄稿(2012/10/26)しました。元々は「ゴシックと家事使用人」というテーマでいただきましたが、メイド喫茶に見られる表現様式と、ゴシック小説の初期に建物へと向けられた世界観の表現とを比較対象として取り上げました。



また、これまでに私は何冊かゴシックに関する研究本を読みましたが、その多くがメイド喫茶における「メイド服」や「メイドの存在」を言及する際に、「メイド喫茶サイド」からの参考文献を一切提示していないことに疑問を覚えていました。参考文献を挙げずに語ることに対してよりも、そうした方々の目に入るだけの強度を持つメイド喫茶側から「外の世界」に向けた情報があってもいいのではないかと。



私自身はメイド喫茶の専門家ではないので、書ける範囲に限界はありますが、私なりのメイド喫茶論のひとつになります。とはいえ、これは「見たい現実を見た=メイド喫茶における現実の一側面」を切り取ったにすぎません。メイド喫茶については「気持ち悪い」と評されることもあります。その「気持ち悪い」との認識がどこから生まれるのかの考察は、また別の機会に発表したいと思います。


昨年言及したメイド研究にまつわるキーワードで進んでいないものをメモ

振り返りとして、2012年に書いたキーワードのうち、以下は進んでいません。これが仕事を優先した結果に設けられた、私の限界でした。この課題と取り組むことはライフワークとしたいので、働き方を変えていくのが2013年の私の急務です。


1.労働条件


同時に、「就業環境の不安定さ」や「正社員は待遇が安定する代わりに長時間労働」「一般派遣社員は時間の都合は聞くけど、待遇は不安定。正社員よりも責任はないけれども、正社員と同じ労働をしても給与は安い」ことから同一労働・同一待遇との言葉を知り、同時に、そもそも正規雇用にあっても私生活を犠牲にする働き方に疑問を持ちました。仮に残業時間を相当減らせば育児に従事しやすくなる時間も出来ます。



そういったところからワークライフバランスや働き方、現代の労働環境、そしてメイドをソリューションとする現代事情に関心が向かいました。『英国メイドがいた時代』は『英国メイドの世界』と言う出版経験を積まなければ作れなかったと同時に、私自身がそれまでの職種にいただけでは得られなかった視点や感情をベースとしています。



自分を取り巻く労働環境で成立する「ルール」や「評価基準」がなぜ成立しているのか、どうしたら変えられるのか。そもそも、理想の形はどういうものなのか、との考えも生じました。相当自由度が低く、私はただ運と縁に恵まれて生き延びただけにも思えます。だからこそ、この空気のようなものを変えたいと感じています。



「働いていること」への価値観についても、「家事」についての価値観についても問い直すことは多々ありますが、その辺りはまた後日に広げます。


2.グローバリゼーション


2011年のメイド研究におけるテーマの一つは、グローバリゼーションでした。この視点は元々自覚していたもので、現代英国の格差を照らし、現代日本の労働環境も相対化する『英国メイドがいた時代』『英国メイドがいた時代』が繋がっていくテーマの補足に記してきました。



身近なところで、私が英会話学校で出会ったフィリピンの先生との会話も、グローバリゼーションへの関心を強めました。(メイドの可能性を広げて「接点」を響かせる参照)。さながら大企業と中小企業で給与のベースや福利厚生が違うように、さながら正社員と一般派遣社員と言う境遇で給与に差があるように、生まれる国や環境が違うだけでも通貨価値は異なります。日本で稼いだ給与を現地での教育機会改善に使うという先生の活動に感銘を受けましたし、この構造が持続しえる理由にも興味を持ちました。



社会全体で幅広くメイド雇用が成立するには、低賃金で働く人々が必要で、その状況は低賃金でも働かざるを得ないためにその環境を受け入れる人々が多数いることを前提とします。日本や現在の先進国では産業構造が変化し、経済発展による中産階級の増加に伴ってある程度格差は縮小し、メイド雇用を前提とする社会は崩れていきましたが、日本でも格差が広がり、教育の機会や就業の機会にも格差が見られ始めています。



こうした「グローバリゼーション」は私が派遣で出向いた企業に外資系があったことも影響しています。私のメイド研究のテーマに「グローバリゼーション」があるが故に、私はなおのこと、一度は外資系企業の当事者として現在の状況を経験したい、梅田望夫さん的に言えば「見晴らしのいい場所」に立ちたいとも思いました。長期的に、何ができるかを考えるためにです。


3. 「なぜ今の時代、『英国メイド』なのか」の答えを出す


最後は、文中で少しだけ触れた東日本大震災です。



私が震災後にできたことは献血、募金、津波に遭った宮城県でのボランティア活動(清掃活動)と短期的で限られたものでしたが、震災の直後、歴史を学ぶ立場として出来ることに記したように、自身の専門領域の知識や視点を提供されている方々の活動を知り、自分にも出来ることを広げたいと考えました。



そもそも現代にあって、「ただメイドが好きだから」と言う理由だけで自分がメイドの研究をしていても、社会から遊離しているようでもありますし、同時代性を欠くように思えました。私はそれを本業として食べる立場ではなく、組織に属して働く境遇にあります。その「私」がなぜ研究するのかは常に自問自答しています。



そこで、私は現代人が興味を持つような転職やキャリアアップを軸としたコンテクストを作ったり、現代の労働環境を相対化する視点としたり、更には現代に続く雇用を通じて育児環境や社会福祉にもテーマを広げたりしたつもりです。



そしてこの震災に際して私が感じたのは、「今のままの経済発展、豊かな暮らしは続かない」との想いでした。『英国メイドの世界』で「コンテンツとしてまとまった本文から若干乖離したことで没にしたあとがき」があります。そこに、私の2010年時点の気持ちがありましたので、掲載します。




○2・家事使用人/家事手伝いの歴史が伝えること
 近世を起点とした家事使用人の歴史の帰結を追いかけた本章では、家事使用人の時代の終わりを扱ったその先で、いつのまにか現代へと繋がりました。執事やメイドの姿は歴史の表舞台から消えましたが、誰かが家事を担う役割自体は残り、将来に渡って続きます。
家事使用人という一つの職業集団が生まれ、最盛期を迎えて、衰退する。この歴史や職業が直面した構造的問題は、多くの示唆に富んでいます。



■1・家事を巡る消費の側面と同時代性

 イギリスでは、消費が数多く生まれました。家庭で担った生産は商品革命の進化で外部に委ねられ、新しい製品が家に入り込んできた結果として家事の手間が増え、その解決策として使用人は消費されました。メイドがいなければ、家事は大変な作業でした。
たとえばクルマは今の私たちの暮らしに欠かせない重要な存在ですが、クルマを使った生活自体は新しいものです。メイドを前提とした暮らしは供給不足で変化を余儀なくされましたが、私たちが当たり前に思う「今の社会の便利な何か」は将来、環境や資源の問題で姿を消すかもしれません。生活様式の変更を迫る「使用人問題」は、決して私たちにとって他人事ではないものです。



 家事使用人職が衰退した一方、家事手伝いの仕事はイギリスでリバイバルし、時間をお金で買う形での消費を生み出しています。そして日本国外では、今も家事を手伝うメイドは同時代的存在であり続け、都市部を中心に発展したラテンアメリカや中国などでは、メイドとして働く人々が増加しました。たとえば香港では国内で完結せず、海外からメイドを雇用しています。



 高齢化社会の日本では介護領域で求人がありながら国内で需要を満たせず、海外からの人員受け入れが進んでいます。歴史は繰り返さないとしても、似た構造は出現しています。



■2・物の見方や価値観の基盤

 古代ローマユリウス・カエサルは『人は見たい現実を見る』と言いました。この言葉は「人は見たい価値観で物を見る」と言い換えられるでしょう。使用人問題は、使用人を必要とする生活や、使用人を見る価値観の変化を雇用主に迫るものでした。



 心理学者Violet Firthは使用人問題解決のためにプロパガンダの重要性を訴えました。使用人への偏見、使用人を必要とする生活の歴史は短いものに過ぎないとして、その見方を捨てれば問題は解決すると彼女は主張しました。



 物を見る価値観の影響は、使用人の歴史につきまといます。



 「働くことは神聖」とする考え方や「家庭は神聖」とした価値観は産業革命期のイギリスで普及し、ヴィクトリア朝以降に強い影響力を及ぼしました。「男性が働き、女性は家で有閑化する」ことを尊重した環境では中流階級の女性の就業が好まれませんでしたが、女性の社会進出が進み、使用人雇用が難しくなると、価値観は変容しました。



 何かの価値観が社会で支持されるには理由があるからで、環境が変われば「それまでの伝統」は変化します。それを再確認することは歴史を学ぶ立場として有益で、過去の影響を受けて構築された現代を見る視点として役立ちます。



■3・ある社会で人が「働く」ことへの問いかけ

 使用人が働いた環境は、ある一時代の人の働き方を照らす良質の題材です。使用人問題は、人が働く上で問題となる労働条件を明確にしつつ、政府報告書で答えが見えながら解決されなかったことで、雇用主と被雇用者を巡る労働問題の根深さを物語ります。



 現代の日本人はメイドの問題を、過去の問題とはできません。一例として、労働時間の法的上限を定めた国際労働機関ILOの条約(8時間労働制:第1号や第8号など)を日本は批准していません。日本の労働基準法の法定労働時間は、労使協定(36協定)で上限を引き上げられます。運用や給与や環境で同一でないにせよ、過労死は問題化していますし、労働時間の実質的に上限が無いことは過去のメイドと似た境遇にある姿を示しています。



 もちろん、「働くこと」で見えてくるのはマイナスだけではありません。



 求人広告や人材バンクがあった求人市場は現代的ですし、スキルを磨き、キャリアを重ねるような、人が生きるために働く中で感じる悩みは時代を超えます。



 限られた環境で自分の仕事に責任を持ち、主体的に働いた使用人たちの声や、仕事に生きがいを見出した人たち、戦略的にキャリアを築き上げていった使用人たちの生き方は、社会で働いた「先輩」として、働く自分を見直すヒントがあふれています。



 19世紀初頭のある執事は自分が得た職務経験から、若い男性使用人のために『The footman's directory and butler's rememberancer』という書籍を刊行しました。そこには使用人としての仕事の技術だけではなく、「働く上で、同僚とうまくやる方法」や「執事になった時に大切なこと」まで掲載されていて、ビジネス本に類似した鋭い洞察や、誰かの役に立つために自分の知識を伝える想いが込められています。





私がこの当時想定していたのは、「そのうち、クルマ社会が無くなるのではないか」とのものでした。今、そうした仮定を聞いても「ありえない」と思ったり、「そこで生じる不便さはどうするのか」との反論も出てきたりするでしょう。しかし、過去にあって「メイド・家事使用人」は一部の人々にとって、クルマと似た存在でした。その雇用が難しくなって雇えなくなった場合に、人々の意識は切り替わりました。



「具体的に生活を変える」というのがどういうことか、その経験は過去の歴史の中に見出すことができます。震災の余波による原子力災害にあって、原子力発電が供給してきた「電気」とどう向き合うのかも、「寸断されたインフラ」や「計画停電」によって身近なものとなってきました。この方面の情報収集や学習を適切に行えていないので今時点で私に回答はありませんが、「現代の当り前は、過去にあって当たり前ではない」ということへの自覚や、なぜ自分がそう思うのか根拠を探すこと、そして「好きなようにルールは変えられる」との気持ちが強まりました。



私が尊敬する、1920年代の家事使用人問題の研究者Violet Firthは、こうも言いました。




『生活の一部を変えたら、結局すべてが変わります。(中略)思い込みを捨てることです。生活様式は変えられます。調査の証言者は遅い時間の夕食は必須といいました。しかし、歴史を学べば遅い時間の夕食は最近の習慣で、それゆえ英国人種は遥か昔から、必要性なしで存在していた。使用人問題の議論すべてで、人々は私たちの社会習慣が自然界の法則のように、変更できないと見なすけれども、新しい習慣に適応できなければ人類は絶滅していた。事実として、それらは単なる「習慣」の過ぎません』
(『THE PSYCOLOGY OF THE SERVANT PROBLEM』P.89)

今日は振り返りまで

というところで、これらを踏まえて2013年の目標を書きます。


番外編

2012年時点の目標の達成具合

活動領域 項目 詳細 結果 結果の詳細・変更点
1. 同人活動を広げる 1-1.メイド総合同人誌(または表現の場)の構築 『雑誌的な表現の場』を作りたい。
・「読んだ人がメイドを好きになる本」。
・「メイドを書きたい」と思う創作者の方たちにとっての表現の場
未達成 ・2012年冬コミで実現に向けて一歩を踏み出す。
・2013年の夏か冬に実現するように動きます。
1-2. 『階下で出会った人々』の刊行 家事使用人全般で個人にフォーカスしたエピソード集。 未達成 ・2013年夏を目標。
1-3.同人ノウハウ本の作成 ・継続性を担保する運用ノウハウ。

・意志に依らず、システムとしての環境確保論。

未達成 ・2013年冬ですか?
2.境界線を広げる 2-1.商業出版企画の完遂と出版の実現 ・メイドに関する本 途上(10%以下) ・業務が多忙すぎ、まとめきれなかった。
・半年以内に刊行できるようにするため、3月までに集中する。
2-2.創作への応募 ・メイド作品を、「社会人」か「中学生」向けに書く。 未達成 ・考えます。
2-3.中高生に届けるための図書館への寄付 ・『英国メイドの世界』を毎月図書館に自腹で寄付。 未達成 ・実施に向けて再考。
3. ジャンルの安定化のための活動 3-1. リアルの場で図書公開を行い、学びたい人の場とする ・蔵書公開 達成 ・『月夜のサアカス』で実施中。
3-2. 学びの機会を増やし、かつ自分が学んだことを伝えていく ・同じジャンルの研究者の方との学びの場。

・関心を持ってもらう場の創出。
部分的達成 ・勉強会の形で場の創出は部分達成。

・研究者の方とは2013年に実現に向けて動く。
3-3. 「メイド以外」の人々と出会い、学び、「通じる言葉・概念」にする ・メイドで語りえる領域を広げること。
・メイドの話を、メイドに興味が無い人にも伝えられる強度にする。
部分的達成 ・『ミステリマガジン』での寄稿はこのアクションに含む。

・出版か、原稿の形で、この領域を2013年中に形にする。

2012年はメイドジャンルを繋いで描き、10年後にも残るものを

元日にコミックマーケット81・サークル参加無事終了と振り返り2011年の振り返りを記して、2011年にできなかったことや、したかったことを整理しました。



2012年の方針の核は、「自分だけでは出来ないことを実現するために、同じ目標を持つ・同じ方向を向く人に出会って一緒に何かをする」と、「自分のテーマ領域を広げて、非サブカルチャー以外との接点を作っていく」ことを挙げます。



前提として、「自分の好きを表現し、かつ好きを表現する人たちにとって心地よい環境作りに寄与できることを探す」ことがあります。私も周辺環境・ジャンルに育てられた恩義があるので、作品を出すこと以外で返せるものがあるならば、積極的に返すつもりです。


1. 同人活動を広げる

1-1.メイド総合同人誌(または表現の場)の構築

2011年の同人活動は個人で出来ることはだいたいにおいて実現できたと思います。ただ、個人で出来ることの限界も感じていますし、私が活動のベースでしてきた同人の世界にあっても創作メイドジャンルは数年前に比べると数が減っています。とはいえ、私は『英国メイドの世界』を刊行することで、メイド創作のインフラたることを志しましたし、実際にメイド作品が商業で生まれているのも目の当たりにしました。



そこで、「メイドを横断的に扱う『雑誌的な表現の場』を作りたいと考えました。どのような形で進めるか、まだ決めていませんが、私の知人の方や私の活動に興味を持つ方々にお声掛けをして、表現活動にプラスとなる「構造」を設計したいです。



私が目指すのは「メイドが好きな人のための本」だけではなく、「読んだ人がメイドを好きになる本」ですし、「メイドを書きたい」と思う創作者の方たちにとっての表現の場、そして「この人のメイド作品を読みたい」という私の気持ちを満たす場にしたいです。



ここで私は、「英国メイド」に限るつもりはありません。「日本におけるメイド表現の多様性」を10年後に残す意味でも、幅広く考えたいと思います。今時点ではまだ構想段階ですが、少しずつ準備を始めます。


1-2.『階下で出会った人々』の刊行

これは2011年に刊行を予定していた同人誌の刊行です。[参考資料]英国メイドの世界(著者による紹介)の後半に私が資料から登場させた家事使用人の人名リストをあげていますが、彼らが出会った人々も含めると相当な数の家事使用人のエピソードがあります。



『英国執事の流儀』で7人の執事の職場遍歴やキャリアの変遷を描いたのと同じ密度で、家事使用人の中から魅力ある人々を紹介しようという企画となります。過去と比べた最近の同人活動の気持ち的な変化には、「この人を是非、知って欲しい」と言う情熱の欠如も挙げられます。この人を伝えたくてしょうがない、だから同人誌を作るというフローがかつては存在しました。その気持ちを、取り戻そうと思います。


1-3.同人ノウハウ本の作成

私は「好きを続ける」ことを好んでいますし、他に職業を持つ人がプロの作家と同じスペースに並んで戦うことができる「同人の場」を好んでいます。アマチュアにはアマチュアにしかできないことがあります。ただ、働きながらの同人活動は障壁が高く、特に家族を持つと、家族の理解なしでの継続は困難になるでしょう。



同人活動を続けるためのノウハウを考える(2011/09/01)に詳細は書きました。この話をどう動かすかは時間配分と優先順位の判断が必要ですが、私が10年以上同人誌の刊行を続けられたノウハウを開示しつつ、他のサークルの方々のノウハウも集められるような場としたいです。



私が主催する必要もありませんが、とにかく「同人誌を作るテクニック」は多々あっても、「同人活動を続ける方法論」が少ないです。私は創作ジャンル・メイド資料本というニッチ領域にあって、オリジナリティを追求する中で活動を10年以上続け、かつ同人誌の頒布部数でも累計1.2万部ぐらいは出しているので、経験に基づく話も出来ます。壁サークルになれなくとも、ある程度の規模で活動するサークルにとって有益な情報を出せると思います。


2.境界線を広げる

2-1.商業出版企画の完遂と出版の実現(企画自体は通っています)

今年は2009年ぐらいから温めていたメイドにまつわる企画を、商業出版する予定です。企画自体の承認は出ていますが、私にとっても挑戦となる領域が多く、非常に難易度が高く、なかなか進められていませんでしたが、今年はこれを最優先事項として出版にこぎつける所存です。



私の原稿ができておらず、また出版できるクオリティに出来るかというところもあるので、内容と出版社はある程度固まってから公開を行いますが、とにかく「メイドの概念を、今メディアで伝わる一部の物からより広範・総合的に見たものへと切り替える」という、2011年目標の一環の活動となります。



「メイドに興味があり、積極的に情報を得る人」だけではなく、ここでも「メイドに興味はないが、興味を持ちえる人」を対象に、「この本をきっかけにメイドジャンルに接していく」人を増やすことを目標としています。


2-2.創作への応募

『英国メイドの世界』を刊行した折、元同僚と元職場の社長の2名に言われたのが「物語にした方が資料本よりも伝わりやすく、すそ野が広がるのでは?」との言葉でした。元々、私の同人活動は「イメージさせる短編小説+英書に基づく解説」で構成されていましたが、その辺りの創作の部分を、より特化させて切り離し、世に伝わる形にしたいとも考えました。



2011年冬コミ新刊『誰かの始まりは、他の誰かの始まり ヴィクトリア朝の暮らし短編集・総集編』で創作11年の振り返りを行いつつ、今の自分ならば何が書けるのかという試みも行いました。メイドウ創作を行う楽しさも思い出しましたし、書きたい作品もいくつか思い浮かびました。



そこで、定常的にメイド創作を書けるようにスケジュールを決めつつ、どこかの創作小説の大賞に応募してみるつもりです。ターゲット読者は、「境界線を広げる」観点で2系統考えていて、「社会人向け」か「中高生向け」です。


2-3.中高生に届くようための図書館への寄付はできるのか?

『英国メイドの世界』を毎月10冊ずつ中学校や高校に寄付できないか、という試みです。目的としては学校図書館に接点を持ち、興味を持ってもらうための試みです。ある種、「仕事図鑑」「働くこととは何か?」との具体的な事例でもあり、歴史に興味を持ってもらう入り口にもなりやすいと考えています。



本の単価が中高生のお小遣い的には高いですし、図書館予算的にも厳しいかもしれませんので、そこは自腹で月3万円以内(約10冊)の予算で未来への投資としていくのも悪くないかなぁと思っています。



ただ、希望者を募り、配送する手間を簡単にする具体的アイデアはありません。Amazonのwishlistかなぁと思っていますが、出版社にも面倒をかけず、受け取る人も楽をできる方法を3月までに考えます。


3. ジャンルの安定化のための振り返りと繋がりの軸として

2010年の出版以降、とにかく「日本のメイドについてどう思う?」「英国メイドとの違いは?」と聞かれました。さらに出版したことで多様な情報が集まりやすくなってきたこともあって、2010年からライフワーク的に日本のメイドブームについての考察や情報の整理を始めました。



考察も大切ですが、まずデータを収集すること。そこを軸に可視化を行いつつ、「一緒に取り組んだら面白い人」を探し、コラボできる余地を探していきます。2010年の出版時には秋葉原のメイド図書館『シャッツキステ』とコラボを行いました。同じように、2012年は繋がりを広げていくつもりです。



メイド喫茶に初めて行ってみたい人向けに、英国メイド研究者が書いてみるもその一環と言えば一環で、これは「あくまでも一部にすぎないメイド喫茶の形態が、すべてのように伝わること」へのカウンターのようなもので、私から私が好きな「表現」を行う方への援護射撃になればとの気持ちがありました。


3-1. リアルの場で図書公開を行い、学びたい人の場とする

何度か呟いているのですが、正直なところ、私の家にある蔵書で私が読んでいないものは多々あります。常に全部を必要としているわけではありません。それに本は読み手によって何が響くかも違っており、私の家にあるだけでは世の中の役に立ちません。



そこで、2009年には「図書館的なことをしたい」と書き、2010年には一時的にシャッツキステとの出版イベントの中で5日間蔵書の公開を行いましたが、2012年はお声掛けいただいたとある場所で、定常的・長期的に私の蔵書の公開を行います。ここでは、メイド関連本(+ヴィクトリア朝や、広義のメイドも含めて)を読みたい方に向けて提供し、機会を創出することにしました。



具体的な話は公開可能な時期に行います。


3-2. 学びの機会を増やし、かつ自分が学んだことを伝えていく

メイドブームと並行する形で、むしろメイドブームよりも強固でかつメイドブームと混在して目立っていないかもしれない「カフェ文化」や服飾について、もう少し学ぶ機会を増やしたいと思います。実は私の同人誌の読者の中に、教えを乞いたい方たちがいたことも判明しましたので、その辺りを楽しもうと思います。



同時に、私だけでは「英国メイド」の領域についても学びきれるものではなく、また日本の「メイドブーム」も照らしえるものではないので、研究会的に相互に学びあう事、伝え合う事で広げられる場を作りたいと思っています。そのフックとして「リアルの場での図書公開」と重ねていくつもりですが、私が学んできたことを伝えつつ、その先を目指して欲しいと思います。その気持ちは、『英国メイドがいた時代』に記しましたので、そこから引用を。




 メイドがいない社会は格差が少なく、相対的に豊かさを持ちます。現代日本は格差が広がっているとはいえ、まだメイドが普遍的ではない状況に留まり、だからこそ、漫画やアニメ、メイド喫茶に代表される「メイドさん」が育まれたように思います。



 日本のようにメイドがサブカルチャーで当たり前になる環境は稀です。私は、その日本でのメイドイメージの広がりと多様性に強い関心を持っています。



 日本で成立した様々なメイドイメージと、同人を母体として研究が進んだ歴史的な英国メイド、そして海外で広く雇用される家事労働者のメイドを、今後、比較研究していくつもりです。



 明らかに個人で出来る領域を超えていますし、どこまで出来るかはわかりませんが、「日本で行われてきたメイド研究」がどこまで広がるか、いわば私は今、「本棚」を拡張しているようなところです。この本棚に収まる本を作るのは私である必要はありません。目的としては、そこに「本が入るスペースがある」ことを示したいと思っています。
 メイド研究は同時代性を持ち、ここからの10年、もっと広げられるはずです。

4. 「メイド以外」の人々と出会い、学び、「通じる言葉・概念」にする

最後は「メイド」以外のフォーカスをしたもので、世の中により届く・伝えられる言葉を持つにはどうしたらいいかという接点作りになります。そもそもこれからの時代を生きていく立場として、私は「近代の価値観」に興味を持ちましたし、ここ数年、岡田斗司夫さんの在り方に興味を持っていました。



2011年は自分のことで手いっぱいで足場の構築に終始しましたが、2010年の振り返りで描いた軸を深化させるつもりです。これもまた2010年を振り返る&2011年への抱負から引用します。



3位:学びの機会と現代性を得る

今年は4つ、大きな視点を得ました。



ひとつは岡田斗司夫さんの活動への興味です。オタキングex立ち上げをリアルタイムで見ましたし、語られるビジョンの視点は非常に高く、自分が問題に思うことの解決策も提示されていました。まだ自分の足元が固まっていないので参加はしていませんが、この時に、岡田さんの著書『ぼくたちの洗脳社会』で紹介されたアルビン・トフラーの『第三の波』を通じて、当時疑問に思っていた「近代の特徴・家事使用人への影響」についての考察を深める機会を得ました。



2つ目は年末に刊行された『まおゆう』を通じて、今まで読んでいなかった『銃・病原菌・鉄』や、『英国メイドの世界』執筆に関連して、近代関連の知識を網羅的に広げるきっかけのひとつにしました。『まおゆう』の行間を勝手に読んだ部分もありますが、非常に刺激的でした。(『まおゆう』刊行を記念して、振り返る「近代」関連の書籍) 作品自体、時間を忘れて読みました。



3つめは、フーコーとの考え方との出会いです。19世紀に規律重視・時間厳守・役割分担・マニュアル化が進む家事使用人の状況を見て、アルビン・トフラーの『第三の波』だけではどうも埋め切れませんでした。「その根幹は何か?」と考えていたとき、英国留学経験者の方(社会学・哲学)と出会い、フーコーの『監獄の誕生』が良いとレコメンドされました。



フーコーとの出会いは私には衝撃的でした。その上、今まで読んでいた家事使用人の本では一度もフーコーの名前を見たことがなかったのですが、昨年末に読んだある本で、初めてフーコーの名前を見ました。最高のタイミングで、繋がったと思います。彼が描き出す近代人のモデルは今後の財産になったと思いますし、この辺りの話は、『まおゆう』の登場人物「メイド姉」に繋がるかもしれません。



最後が、やはり今年お会いした別の方とのお話を通じて、「世界のメイド」への視点を広げたことです。当初は「世界のメイド服」的な意味合いでしたが、メイド事情を調べていくと、雇用に見られる構造に気づきました。また、グローバリゼーションと移民、そして資源の減少による生活の変化にどう向き合うかというところが、20世紀前半の英国メイド事情とも重なり、私がこれまで扱ってきた事象が現代性を帯びているのを確認できました。(2010年『ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん』アクセスランキング・ベスト10の1位に記載)



こうした問題意識は、私が尊敬する川北稔先生の著書とも重なり、『イギリス近代史講義』〜現代を照らす一冊(2010/12/15)に記しました。



私自身はその他でもミヒャエル・エンデの本で知った地域通貨の概念へ関心を持ちましたし、岡田さんの評価経済の話を生き方を模索される玉置沙由里さんのMG(X)への出資をしました。他に、今年は仕事での必要性もありますが、Skypeを活用したフィリピンの英会話教室を利用して英会話と、フィリピンの歴史についても学ぼうと思っています。



こうした領域は「特にメイドと接点が無い」ように見えますが、現代を生きることを考えるところで、重なりもあります。『英国メイドがいた時代』が繋がっていくテーマの補足で描いたように、「1.ワーキング・プアと新自由主義」「2.近代世界システムと家事労働(ジェンダーフェミニズムの観点)」「3.移民事情と現代日本」と家事使用人の歴史・家事労働者の境遇は無縁ではないからです。


終わりに

とても盛りだくさんですが、「今年1年ですべてやろうとは思わない」「私だけでやろうとしない」ことをキーワードに、今年は活動を楽しみ、深め、より多くの人に関心を持ってもらえるような伝え方を模索していきます。会社勤めでの経験も新しいステージに入っており、仕事とのバランスをどのようにするかも課題に上がってきますが、今年はこうした目標を描くこと、スケジュール管理を行って具体化することでプライオリティを下げずにいきます。



メイドへの関心を持っていただくのも大切ですし、私の生き方や在り方を軸にメイドに興味を持っていただくことも出来るのではないかと思いつつ、水樹奈々さんのラジオで「メイドは人生」と言った手前、「人生」としてしっかり向き合っていきます。



これが全部できたら、相当、すごい人間ですね。でも、一人で出来るわけがありませんし、すごい人間になろうとも思いません。半ば誇大妄想的かもしれません。しかし、ここに描き出した「夢」を共有し、響いて受け止めて下さる方が一人でも増えれば、「世界」を見る目を変えられるとの希望があります。



見守っていただければ、そして一緒に楽しんでいただければ、幸いです。