ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

その4:1日目・日本発・ロンドン着

旅行前に

人生で初めての海外ひとり旅。学生を卒業してしまい、歳を重ねると、いろいろ失敗することや恥をかくことに抵抗があって、海外で冒険をする心持はどこにもありません。リスクを避け、面白さを優先せず、明日を考え、トラブル無く日本に戻ってきて会社に復帰することを念頭に、すべての行動が決まります。



前回の「バッキンガム宮殿事件」のような思い出話も、友人が一緒にいればこそ笑える話で、そういう点で今回のひとり旅は、すべて楽しさも不幸も自分で乗り越えなければならない、いい景色を見ても、感動しても、誰とも分かち合えないのです。



けれど自由に、思うままに動いて、どこまでも見たい場所・行きたい場所に行けるというそれを優先して、今回は旅を決断しました。イギリス関係の研究を自分なりにしていて、その感覚を実際に味わいたい、ロンドンを歩きたいとの気持ちは、堪えがたいほどに募りました。



英語も満足に喋れない、留学経験もゼロ。ただイギリスの小説と屋敷とメイドさん好きが高じて、イギリスをひとりで旅した記録になります。自分と同じように思っていて、どうしても行きたいのに踏み出せない人の手助けとなれば、幸いです。


旅の始まりは成田から




成田は大好きです。日常を離れられる、それも物理的に切り離される感覚がなんともいえません。携帯電話の通じない、完全に仕事から切り離された世界。あぁ、「外の国へ行くんだ」という、実感。



新宿から成田エクスプレスに乗り、一時間半ぐらい。降りる駅は終点ひとつ手前の第二ターミナル。毎回バスを使うか、鉄道を使うかで迷いますが、今のところ成田エクスプレスに乗る時間が好きなので、鉄道を選んでいます。



成田エクスプレスで新宿を出発してから、しばらく通る、山手線と同じ路線。山手線のプラットホームに立つ人たち、その中に普段は自分も混ざっている、そんな日常の自分から切り離されていく、遠ざかっていく、ひとつの儀式かもしれません。



成田の駅を降りて改札を出ると、パスポートの提示を求められ、ここを通過してから、航空会社の窓口へ向かいます。いろいろとお店はあるものの、今回は特に立ち寄りもせず、そのまま全日空のカウンターでトランクを預け、準備は万全です。



それから手荷物検査を受けて、出国審査を終えると、後は搭乗時間まで何もすることがありません。免税店でいろいろと買い物も出来ますが、今回は素直に搭乗口付近で待機しました。



備え付けのテレビから流れているのは、『三匹が斬る』……役所さんが輝いています。悪い旗本たちが左遷の憂き目にあい、任地へ移動中、その原因を作った領主の下へ意趣返しに乗り込む、という話でした。


機上の人

全日空、利用するのは初めてです。前回利用したヴァージンアトランティック航空同様、映像端末は個人ごとに割り振られています。席はやや空席が目立ち、久我の隣も空いていました。


隣の席が空いていたので、気兼ねなく寛げたものの、無理に隣の席に足を伸ばした結果、お尻にかかる負荷が高くなり、痺れました……首枕は持ち込みましたが、次に乗る時は長時間同じ姿勢でいるので、お尻に優しいクッションを持ち込もうかと真剣に考えました。



機中では本を読もうと思ったものの、そういう気分でもなく、映像端末で幾つか映画を見ました。



キングダム・オブ・ヘブン』:最初で止めました

奥様は魔女』:途中で飽きる

『ショーシャンクの空』:泣けました



周囲は学会関係者が多いのか、ノートパソコンを開いている日本人の人が多くいました。


ロンドン・ヒースロー空港

日本を発つこと十数時間、感動するにはあっけないほど簡単にヒースローに到着です。前回は到着までの時間をとても気にしましたが、今回は前日にほとんど寝ていなかったので、そこそこ眠っていたようで、気づいたら到着していました。



一年ぶりに降り立つロンドン。



窓の外から見える霧の都は晴れていて、飛行機から降りると、むしろ暑さを感じるほどでした。東京よりも、です。



初めてのひとり旅、少し不安はありましたが、前回来た時の景色や経路を覚えていたので、心細くはありません。現地の社員が迎えに来ている日本企業の人たちをちょっぴり羨ましく思いつつ、ヒースロー・エクスプレスへと向かいます。



イギリスの鉄道は、あっさり乗れます。



自販機でチケットを買い、誰もいない改札を通り、ホームでヒースロー・エクスプレスを待っていると、欧米系の外国の人(久我も外人でしたが)から、「パディントンはこれに乗ればいけるの?」と質問されました。



「そうですよ」と答えましたが、ロンドンっ子に見えるはずもなく、なんだったのでしょうか?(この後、2回ほど別の場所で外国の方に質問されました……何か地元っぽいものでもあったのでしょうか?)


ロンドン

画像は去年の旅行で写したパディントン駅懐かしの、というほど親しんでもいませんが、パディントン駅に着くと感無量です。車中で車掌のチェックを受け、十五分ぐらいで到着します。パディントン駅は十九世紀の「鉄とガラス」の駅っぽさを残していて、個人的には気に入っている駅です。



ヒースロー・エクスプレスを降りて、ホームをまっすぐ進んでいくと、地下へ通じる回廊があり、そこを進むとすぐに地下鉄の駅があります。



前回と同じようにサークル線のホームへ移動しますが、ここは階段が多くて去年は苦戦しました。今年はトランクが小さいのでそれほど重くなく、道も分かっているので、それほど気になりませんでした。



しかし、何よりも暑いのです。



薄いジャケット、念の為、ウィンドブレーカーを羽織っていたのですが、流れる汗が止まりません。車内の人の中には半袖の人までいて、ロンドンはその頃の日本より遥かに暑く、これは予想外でした。


ホテルへの道で迷う


宿泊先のストラスモアホテルに近いGroucester Road駅は古い感じで雰囲気もありました。出口はひとつだけで迷うことなく、外に出られます。しかし、ここからが問題でした。駅前の地図を見ても、自分がどの方向を向いているのか、見当がつかないのです。



久我は「なんとなく勘で歩く」習性があるので、根拠も無く駅を出てから、右に歩き始めました。トランクを引きずりながら、でこぼこの地面を歩いている、しかも暑い、段々と暗くなってくる、駅から二分のはずなのに、まるで辿り着かない。



「なんとなく間違っている」気がしました。



ただ、来た道をそのまま引き返すのもしゃくなので、自分なりに勝手な解釈で方向に見当をつけて歩き出すと、目的地のホテル近くにあると言う「自然史博物館」を発見しました。これで一安心して、手元にあるホテルへの地図を参考に、「QUEENなんちゃら41」という地名目指して歩き始めます。



しかし、自然史博物館の横の通りを歩き、目的地の41番地の前に来ても、ホテルがありません。首を傾げつつ、手元の地図を見直すと、QUEENQUEENでも、名前が違っていました。



この通りは「QUEEN'S PLACE」、目的地は「QUEEN'S GAREDEN」でした。「そんなのわかるか!」と思いつつ、通りを少し戻っていくと、今度は「QUEEN'S MEWS」が……ややこしいです。その先へ行くと、ようやくQUEEN'S GARDENのエリアに着きました。



見上げる「ストラスモアホテル」。伯爵家のタウンハウスと言うので、期待大です。入り口はホテルと言うより、当時の邸宅らしくこじんまりしたものでした。




ストラスモアホテルにて



入り口は建物の右端にあり、やや手狭な印象です。階段を上がると短い廊下があり、正面にエレベーター、廊下は左へ曲がっています。道なりに進むと右側に上り階段、左側にホテルのバー、かつての応接室と思える広い立派な内装です。壁には幾つも肖像画が飾られていて、確かに普通のホテルではなく、かつての屋敷を改修したものだと実感できます。



その先にレストラン(かつてのダンスホール?)が見えますが、その手前にフロントがあります。フロントはとても狭い様子でしたが、HISで予約した紙を見せて、無事にチェックインできました。(カードの暗証番号を間違え、周章狼狽しましたが)



エレベーターを上がり、三階(実質四階)で降りた目の前の部屋が、今回の部屋でした。正直、「ちょっとやばいかも」と思いましたが、その予感は当たりました。



部屋は思ったよりも狭く、エレベーター前で人の通りもある場所で、値段相応の部屋に思えませんでした。さらに浴槽が無く、シャワーだけでした。部屋に備え付けの金庫もありません。



事前に確認しないのが悪いのですが……



さらに問題がもうひとつ、「窓が閉まらない」のです。ホテルに入ると窓は開けっ放しで、涼しい風が入ってきています。それは良いのですが、いざ窓を閉めようとすると、留め金が見当たりません。



迷った上(自己責任)、カードの番号を忘れて焦った上(自己責任)、部屋も思ったほどではなく(自己責任)、「窓も閉まらない」。海外に来た気持ちが台無しになりかけ、「部屋を変えて欲しい」と交渉しようとも考えたその時、ふと目を転じると謎の金具が。





これが留め金でした。



というふうに、自分に起因するトラブルですっかり気持ちが疲れ、予定した近所のV&Aへの訪問を取りやめ、近くのコンビニで買い物して、すぐに寝ました。眠りは深く、ロンドン一日目の夜は、あっさりと過ぎていきました。



果たしてロンドン旅行は無事に終われるのでしょうか?


その3:計画〜目的地と交通手段

目的地についてはその1に書きましたが、より細かいチューニングがいります。日程を組み、時間を無駄にしない為には意外と頭を使います。尚、この方式は久我の方式なので、他にもっと最適なものがあるかもしれません。ただ、この方法が自分にはいちばん(旅行前から)、楽しかったです。





予定を組む

目的地の列挙

最初に、行きたい場所、最寄の駅を列挙します。



V&A(徒歩)

アルバート像(徒歩)

Kensington Palace(徒歩)

Kensington Park&Hyde Park(徒歩)

大英博物館(Holborn)

Tate Britain(Pimlico)

Kenwood House(Hampstead)

Harrods(KnightsBridge)

Apslery House(Hyde Park Corner)

Greenwich(Greenwich)

Carlyle House(South Kensington)

Spencer House(Green Park)
Osterely Park(Osterely)


そしてこっそり、舞台巡礼。



Eaton Place 65(Sloane Square:ドラマ『Upstairs Downstairs』の撮影地)

Elicecomb Road 70(Charlton:『THE 1900 HOUSE』の撮影地)



上記のように列挙することで、「どことどこの駅が近い」のか、「どの路線とどの路線の乗継がいいのか」と、その日に行動する際の指針となるイメージが湧いてきます。そうすることで、その日、朝からどう移動すれば無駄が少ないのか、という組み合わせが見えてきます。


開館日時の準備

しかし、上記の予定だけでは駄目です。実際に「空いている時間」も考慮しなければなりません。ロンドンの観光スポットはだいたい10時以降に動き始め、遅くとも18時、早ければ16時で閉まります。



そこで久我が思ったのは、「交通で移動に時間のかかる場所は、朝の開館時間に行けばいい。そうすれば往路の時間は無駄にならない」と考えました。この候補はロンドン郊外にある、「Greenwich」「Osterly」「Kenwood」を訪問する時に思いつきましたが、「Osterly Park」は遅い時間、13時オープンということもあって、いろいろと調整は必要でした。



また、Spencer Houseは「日曜日のみ」「入場制限あり」、V&Aは「水曜日と最終金曜日は22時までオープン」という条件もありました。「その日しか駄目な場所」と、「普通の時間に行かなくてもいい場所」を知ることで、より観光に費やす時間を無駄にしなくなります。


ハロッズは日曜も営業中

デパートなどの閉店時間も18〜19時ということも当たり前のロンドンですが、Harrodsは前回訪問した時は「日曜日休み」だったとガイドにもあり、実際そうでしたが、今回、通り過ぎてみると、「クリスマスシーズンに向けて」、営業していました。その時に手元にある情報だけに頼らず、ネットなどで実際のサイトを訪れることを強くお勧めします。



Osterly Park訪問に利用しようとしていたPiccadelly線(ヒースローの往復に利用する人も使います)も改修工事などで時期によって封鎖されている、去年はあったQueen's Gate駅も来年まで閉まっているなど、いろいろと想定していないような状況も目白押しです。



さらに、訪問した時の週末、Bond Streetから乗り継ごうと思っていた地下鉄Center線はBond Streetで行き止まりになり、それより西のNotting Hill Gateまで辿り着けませんでした、という状況まで起こっていました。



事前に調べられることは調べておく、その上で、交通手段は代替できるように地下鉄地図を読みなれておくことは、時間を無駄にしない、トラブルに対応する意味でも大変重要になります。



とはいえ、一回行けば、すぐ覚えられますので、心配することもありません。

実際のスケジュール

では、久我の予定スケジュールがどうだったか、記しておきます。尚、この予定を実施するには体力が必要です。ちなみに、これを完成させるのに6時間以上は使っています。分かる人に分かるように言うと、MTGでデッキを組むようなものです。




■日程表
【1日目・(水)】
08:04 新宿着:NEX
09:40 成田空港到着
11:40 全日空NH便にて東京 (成田空港)を出発
15:55 ロンドン (ヒースロー空港)へ到着
   →HEX購入15£
17:30 パディントン到着
   →地下鉄・Cricle/District Groucester Road:Zone1:1.6£
18:00 チェックイン
19:00 V&Aに行く&適当に食事
21:00 寝る


【2日目(木)】
08:00 出発
    地下鉄Groucester Road To Leicester Square:Piccadily
       Leicester Square To Euston To Camden Town To Hampstead
09:00 Hampstead到着・Heathを歩く。
10:00 Kenwood House:無料
   地下鉄Victoria To Pimlico:Victoria
   Vaxhall橋を見ること。
12:30 ミルバンクなど・補給
13:00 テート・ブリテン:無料
   地下鉄Pimlico To Green Park:Jubilee
      Green Park To Hyde Park:Piccadelliy
15:00 Apslery House:行ければレベル。
18:00 ハロッズ(〜19:00)


【3日目(金)】
08:30 地下鉄Vicotoria To Embankment:Circle/District
    地下鉄Embankment To Charring Cross
    国鉄Charring Cross To CHARLTON
10:00 Elisecombe Road70:「THE 1900 HOUSE」
10:30 国鉄CHARLTON To Greenwich
11:00 グリニッジ(午後に海軍大学):遠いところは朝に:Zone2?
    カティサーク号のみ有料:4£
16:00 チャリング・クロス(午後)古本街とか?
17:00〜V&Aで総仕上げ


【4日目(土)】:カントリーハウス巡り
08:00 アルバート像&アルバートホール&ケンジントンパーク
10:00 ケンジントン宮殿
12:00 カーライルの家:無料
13:00 Osterly Park(アダム):無料
16:00 離脱


【最終日(日)】
08:30 チェックアウト
    ホテルに荷物預ける。
   地下鉄Gloucester Road To Sloane Square:Circle/District
09:30 ☆Eaton Place (1)65 (UpstairsDownStairs)
    Belgrave Square見物
    Victoria To GreenPark:ペルメル
10:30 Spencer House
13:00 GreenPark
15:00 荷物引き取る
16:00 ヒースローへ行ける?
16:30 チェックイン
19:00 ロンドンを出発

ががが、ここまで準備したものの、実際は色々と変更もありました。さらに舞台巡礼は二箇所とも失敗する、というアクシデントが……イギリスの番地は覚えられません。


現地の地図・交通情報・情報

・便利情報:英国政府観光庁

・旅先の地図確認:Google Map

・地下鉄の経路・時刻・バスもあり:London Underground

・鉄道:National Rail/鉄道地図

・服装選びの参考に:goo天気/ロンドン

・検索してたら出てきました(すごい便利そう):(・∀・)お役立ちイギリスリンク集(゚∀゚ )



と前置きが長くなったので、次回より旅行記を始めます。

その2:計画〜ではどうやって?



ハイドパークのサーペンタイン池



行きたい場所は決まったものの、どうやって行くのか? 前回の旅行では「大英博物館の近く」のホテルを選びたかったものの、ツアーでは完全な指定が難しかったこともあり、「飛行機+ホテル」で選びました。今回は「ひとり旅」なので、さらにツアー参加の障壁は高いです。(ひとり旅追加料金)



おまけに今回は、前回あまり見れなかった「ヴィクトリア&アルバート博物館」から歩いていける距離、「サウス・ケンジントン」辺りを検討していました。なので、今回も飛行機とホテルで予約することに決めました。


飛行機を予約する

値段を比較する

交通費とホテル代がかなり高いかなと思っていましたが、実際調べてみると(数時間使いました……)、当時売っていたHISのバーゲン格安59,800円でも、テロや石油高騰の影響で、値段に2万円近く上乗せされ、実質8万円ぐらいします。直行便で航空会社が指定できないのは仕方ないとして、帰りの便が確保できなかったので、他のチケットを探しました。



いろいろと他の会社やチケットを見ていても、バーゲン以外の相場は諸々込みで10〜11万円、すると、国内会社で「便指定」「席指定」「早割」した値段と、せいぜい1万円ぐらいしか変わりません。


滞在時間から考える

また、さらに調べてみると、国内・全日空の飛行機はロンドン発が19:00で、ロンドン滞在が長く出来るとわかりました。前に使ったヴァージンアトランティックは11:00出発なので、最終日は何も出来ませんでした。



なので今回は普通に全日空で出かけました。



とはいえ、飛行機は「航空会社未定」で買っても、変なことにはなりません。イギリス行きの直行便に限れば、「日本航空」「全日空」「ヴァージンアトランティック航空」「ブリティッシュ航空」の四便しか就航していません(はずです)。前回使ったのはこのチケットで、結局、「ヴァージンアトランティック」になりましたが、特に不自由しませんでした。ただ、前述のようにヨーロッパ系は帰りの出発時間が11:00と早いようなので、帰りの便からどうするか決めるのもいいかもしれません。


席指定のメリット

今回は長時間・一人旅なので出入りがしやすい「通路側」を確保しました。この場合も、出入りの影響度合いを考え、窓際3列ではなく、中央4列を選びました。理由としては窓際3列の通路側では2人の出入りの影響を受けますが、中央だと両側に通路があるので、実質、一人だけの影響で済むからです。



前回、行きは友人たちと同じ並びで出入りに不自由しませんでしたが、帰りは知らない人と隣で、しかも窓際。疲れました。



今回はひとり旅。



長時間のフライトなので、トイレに行ったり、少しでも動きが取れないと、かなり疲労が蓄積します。どこでもぐっすり眠れる方ではないので、そういう細かいところで調整できて、席指定での予約は次回以降も使うと思います。



また、指定するケースでは、席の番号が前の方の数字で、指定できない場合よりも明らかにいい場所です。仕切りとなる列によっては、前のスペースが広かったり、後ろに何も無かったりと、ほんのわずかですが快適さを得ることも出来ます。


ホテル指定

目的に応じて

ホテルについては、B&Bではなく、さらにあまり安いホテルですと色々とトラブルもあるかもしれないので、普通のホテルで探しました。前回利用したボニントン・ホテルは清掃・お風呂・食事、すべての面で値段以上の効果が得られましたが、今回はサウス・ケンジントン辺り、と決めていました。



今回のように行く場所が明確な場合、どのような経路で地下鉄を使えばいいかまでデザインできます。そこから最適なスケジュールを、地下鉄の経路まで含めて組み上げるのがひとつの楽しみにもなります。



ロンドンの地下鉄は前回利用した経験では、「意外と遅延もある」「でも乗り継ぎ・他の路線でカバーできる」ので、「なるべく幾つもの路線が止まる駅」を選びました。V&Aに近いと言う理由だけではなく、そうした乗り継ぎ・便利路線が幾つも止まる、ヒースロー・エクスプレスのパディントン駅から近い、そして、ロンドン中心からちょっと遠い「Osterely Park」までも直通・電車で20分と言うのも考慮しました。


食費を削って予算を捻出

前回は三人で行ったので部屋料金を安く出来ましたが、今回はどの道一人です。しかし、一人である以上、あまり食事やお茶にお金を使う必要はありません。(一人ではレストランに入りにくいですし、個人的に、美味しいもの・雰囲気のある店は仲間と行きたい)



ロンドンの食事はまともにやろうとすると高くなるので、今回は食費、そして帰りの荷物の重荷になる書籍購入費を徹底的に抑えて予算を確保する計画でした。ホテルの朝食で満足して、残りは適当と言う計画でしたが、これは失敗します……



また、前回は意外と交通費や諸々のお金が高くなっていましたが(前回のチケットについて)、今回はほとんど地下鉄で済むこと、入場料無料の場所が多いこと、使うだろうと思って入っていた英国National Trustの会員証がある(会員は入場無料:元は取れませんが)ことなど、その分をホテル代に使ってもいいかなと、考えました。


タウンハウスに泊まってみたい

泊まってみたかったのは、イギリスのドラマに出てくるような、上流階級の人たちが過去に住んでいた、ロンドン滞在時の邸宅、「タウンハウス」です。見つけたホテルはGoogleで褒められていたものですが、日本人がコメントしていたのは2件程度、というマイナーなホテルでした。



リスキーではありますが、サウス・ケンジントン駅のすぐ隣り、停車する地下鉄もまったく同じ、Groucester Roadから2分、自然史博物館には1分、V&Aにも3分ぐらいといういい場所にあったホテル、「THE GRANGE STRATHMORE HOTEL」に決めました。



ここは、エリザベス皇太后の父親であるストラスモア伯爵のタウンハウスだった、という設定なのです。建物や設備が古いかも知れず、リスクはありましたが、見つけたのは偶然なので、いい出会いであって欲しいです。(実際の感想は後日の旅行記で……)



料金は1泊でかなりの額でしたが、どの道、一人部屋でのホテルは同じようなものです。滞在期間のうち2日は半額になることもあって、今回は「貴族のタウンハウスってどんなものなの?」と知りたいことを優先し、ここにしました。



予算的にはかなり高めになりましたが、「ひとり旅」「安全」「快適」「雰囲気」「時間を無駄にしない」と言う点で、出費に踏み切りました。実際のところは、使うはずだった代休がいつの間にか精算されて残業代になっていたので、気が大きくなっていただけですが。



次回はスケジュールと、交通手段の話をします。多分、この時間が最も楽しかったかもしれません。ある意味、それは面白いゲームで、ゲームを離れた時間も「次はどうしよう」「どういう行動をしようか」と考える時間に似て、想像の翼が自由に広がり、さながら旅をしているようでした。



現在はGoogle Mapという強い味方もあって、行き先の地図まで簡単に入手できてしまうのですから……





ハイドパーク・秋のロットン・ロウ

その1:計画〜どこに行きたい?

背景

友人たちと今年もどこか海外に行こうと話していましたが、都合がつかず、国内で一生懸命探したのですが、素晴らしいところはいっぱいあっても、心の底から行きたい場所がありませんでした。今行きたいところは、イギリスしかないのです。


ロンドン

次にイギリスに行く時は、カントリーハウス(それもロンドンを遠く離れたところ)に行くと決めていましたが、滞在期間が長く確保できなかったので、今回は前回の旅行で行けなかったところ、ロンドン中心にしました。



イギリスでの鉄道旅行、というか、カントリーハウスを本格的に訪れるには、ロンドンを拠点にすると不便すぎました。それぐらい不便なところにある=広大な領地に囲まれている、となるのですが。



ちょうどそのタイミングで、百年前の英国に滞在した画家・牧野義雄を知りました。彼の本を読んだのも何かの縁だと思いつつ、その描いた光景を幾つか、現地で見たいと思いました。好きな作家・司馬遼太郎さんの作品『坂の上の雲』で描かれた日露戦争、去年は開戦百周年、今年は終結の百年後で、一世紀前にロンドンに滞在した日本人の気持ちを少しでも感じたいと。



ちょうど今回はひとり旅、日本人としてロンドンを見る、百年前の人と同じ視点ではないものの、彼らと同じような感覚で見れたら、と思いました。



また、最近書こうとした小説では、百年前のロンドンではなく、現代のロンドンで、少し都市から離れた住宅街(『ハリー・ポッター』のハリーの叔父さんの家ほど新しくは無いですが)を舞台にしようと思っており、その辺りで石造りの住宅街を歩きたいと、考えました。



これだけ「行きたい」と強く思い描けてしまった以上、行くしかありません。前回同様、航空機とホテルだけ手配しました。(現地でのB&Bも考えましたが、英語スキルが低く、起こりえるトラブルを楽しむ時間・余裕が無いので、普通に)。



そして次回は、絶対にカントリーハウスに「泊まって」来ます。ただのんびりするだけの時間を、階段の上と下を体感するために。


テーマ

その1:ロバート・アダムの旅

ロンドンから片道1時間以内で訪問できる、大好きな(唯一の)十八世紀の建築家ロバート・アダムが関わった屋敷を訪問する。その目標は、前回の旅行では果たせませんでした。前回の準備を掘り起こして、準備は万端のはずでしたが、それが裏目に出て、泣きそうな事件がありました……



 ■1:Kenwood House

 ■2:Apsley House

 ■3:Osterlery Park


その2:英国美術に触れる〜テート・ブリテン

 ■1:ジョン・エヴァレット・ミレイのオフィーリアが見たい。

 『ヴィクトリア朝万華鏡』に掲載されていた、オフィーリアの描写が鮮烈で忘れられず、実物を見たいと思っていました。また、個人的にですがミレイの描く女性像は好みな感じなので、この絵画のある「テート・ブリテン」(ミルバンク)は外せませんでした。



 ■2:イギリス画家の作品を中心にする。

 コートルード美術館やナショナル・ギャラリーはヨーロッパの他の国の絵画も多くありますが、今回はイギリス絵画を見たかったので、「テート・ブリテン」だけで十分かなと思いました。



 ■3:ついでにミルバンク

 サラ・ウォーターズ『半身』の舞台となった、当時のミルバンク刑務所のあった界隈も歩いてみたかったので、「テート・ブリテン」は最適でした。さらに、牧野義雄が描いたヴォクソール橋も行く途中にあるようなので、いいこと尽くめに思えました。


その3:英国海軍・グリニッジ

 ■1:旧英国海軍大学

 ■2:国立海洋博物館

 ■3:カティ・サーク号

 ■4:旧王立天文台

 ■5:クィーンズハウス



同人誌で登場させている公爵家は、海軍と深い関わりを持つ設定で、領地のひとつは広大な港町をイメージしていました(パーラーメイドが登場した方の屋敷のある港湾都市)。久我の好きな風景としてあるのは、本来的には「宮崎駿」作品『天空の城ラピュタ』『紅の豚』『魔女の宅急便』ですが、そうしたイメージと海軍大学のある都市をうまくブレンドできればと、グリニッジを選びました。



前回赴いたバースに続き、何気に世界遺産らしいです。



ちなみに、今年は日露戦争終結百年後であると同時に、トラファルガーの海戦二百年後でもあるそうで、英国では久我が渡英する少し前に、関連イベントが開催されたようです。それを見れる時期に渡英できていたら、話は出来すぎですね。


前奏、ということで



ホテルの窓から、朝の光景。



きっと、煙突下の一番上の窓辺りにメイドさんが寝ていたのでしょうね。メイドさん関連本では必須の英語atticです。滞在した頃は晴天が続き、夜明けも昼間の空の色も鮮やかでした。霧を見れないかなぁと滞在前は期待したのですが、日本よりいい天気でした。



旅行記の更新も仕事の合間を縫って、行おうかとは思います。滞在期間が短かかったので、大きなカントリーハウスに行けませんでしたが、前回諦めたところを中心に、屋敷を攻めてきました。メインテーマは「ロバート・アダム」で、☆印のところが、アダムが関わった屋敷です。



Kenwood House☆

Apsley House☆

Queen's House

Kensington Palace

Osterlery Park☆

Spencer House




英国貴族の邸宅 (ショトル・ミュージアム)

英国貴族の邸宅 (ショトル・ミュージアム)



アダムの屋敷を知ったのは、この本のおかげです。中世の屋敷は木や石が目立ち、幽霊が出そうで、ヴィクトリア朝のゴシックは重苦しい感じがあります。アダムの「新古典様式」は、個人的に、最も色彩が豊かでわかりやすい屋敷のデザインをしていると思います。大好きな建築家と言えます。ロンドン近郊ではSyon Houseもアダムの手が入っていますが、今回は時間的にあきらめました。



前回の旅行記も完結してないですが、きちんとした「読めるレベル」、そして「役立つレベル」で、旅行記を書いてみたいとも思います。久我は英国マニアではないですし、紅茶の好みも特に無く、初心者のままで、英語も微妙なレベルです。多分、最も多くの人に近しいポジションにいます。知りたいと思うこと、疑問に思ったことがそのまま、他の人にも当てはまる可能性が高いです。



興味があっても行く契機が無い人に向けて、その中にメイドやヴィクトリア朝を織り交ぜれば、いいものが書けそうな気がします。ということで、前回の旅行を含め、ネットで旅行記を書こうかと思います。一応、久我の前回の旅行記を読んで、イギリスに行ったと言って下さった方がコミケ会場でいらっしゃったので、その言葉を信じて……


再び渡英

もうそろそろ、というにはシーズンもぎりぎりですが、今年も行ってきます。まだ準備が終わっていませんが、今年のテーマは『ロバート・アダム』&聖地巡礼『エマ』ではなく、もっとマイナー)です。去年は紳士を連れて行きましたが、今年は連れて行きません。



夜は出歩かない方なので、ある種、創作のための缶詰でもあります。

番外編、或いは本編

イギリスといえば?

我々の年代にとって、イギリスといえば「ロビンマスク」です。ロンドンの観光名所「タワーブリッジ」を必殺技にする、イギリスきっての超人です。



ところが、イギリスに行くと決まった時、友人二人は口を揃え、こう言うのです。



「イギリスといえば、ネプチューンマン



ネプチューンマンがケンカマンだった頃、絶望して、テームズ河(原文ママ)に飛び込んだこと、川底でビッグ・ザ・武道に出会い、そこでネプチューンマンになったこと……久我は言われるまで、すっかり忘れていました。



そんなある日、友人がヤフオクネプチューンマンのフィギュアを見つけました。



「6000円か、高いよね」

「そういえばそんなフィギュアがどこかで売っていたっけ……」



運よく、ヨドバシカメラにいたネプチューンマンのフィギュアを入手。店にはビッグ・ザ・武道もいたのですが、サイズも値段も本当にビッグだったので、止む無くあきらめました。



そして、我々はネプチューンマンと共に祖国イギリスに渡りました。



麗しのテームズ

ちょうどその日の午前中は市内観光のオプショナルツアーを利用していました。ロンドンの名所をあちこち見学できるコースで、テームズ河に行く準備は整っていました。観光バスを下り、テームズ河をはさんで、対岸の国会議事堂を見ることに。



タワーブリッジの上で撮影する話もありましたが、さすがにそれはやりすぎだろうと(英国に持ち込んだ時点で既にやりすぎですが)思いとどまりましたが、最も美しく撮影できた国会議事堂の写真が、これだけというのが泣けます。しかも、よく見ると、ウェストミンスター大聖堂の二本の尖塔まで綺麗に写っているではないですか。



しかし、悲しい話が、この後に続くのです。



悲しみのバッキンガム宮殿

撮影を終えた満足感に浸りながら、その後、バッキンガム宮殿へ向かいました。ちょうど時期がよかったので、宮殿内部が公開されていました。



チケットを買い、いよいよ宮殿内部へ、と思ったその時。



エックス線で手荷物をスキャンされた久我を、受付係の妙齢の美しいイギリス女性(金髪・青い目・『ハリー・ポッター』に似た制服着用)が、呼び止めました。



荷物の中身を確認したい、というのです。



特に見られて困る荷物なんて入っていない、と思ったものの、即座にカバンの中身に気づき、動揺します。



見て欲しくはない、見ないでくれ、……しかし、その願いは当たり前ですが、空しく潰えました。



若いお姉さんはカバンの中を丁寧に調べ、布袋の中に入っていたネプチューンマン様を見つました。その手は止まり、久我の顔を見てから、しばしうつむいて。



ぷっ。


笑っていました。



もはや、どうにもなりません。



荷物検査は念の為、もう一度、行われました。お姉さんはもう一度、控えめに袋の中身を見て、かすかに微笑み、鞄を返してくれました。



イギリスで見た、最高の笑顔でした。



悪夢再び?

それから別の日に、アスコット競馬場へ行きました。



友人は「もう一度、ネプチューンマン様を連れて行こう!」と言っていましたが、結局、ホテルに残留させました。その日、アスコット競馬場の入り口では、宮殿にいたお姉さんとは正反対の、屈強な警察官が荷物検査をしていました。今思い出しても、あのときの決断は正しかったと、思うのです……



こんな感じで、友人もこっそりコミックス『シャーリー』をイギリスに持ち込んだり、裏では楽しんでいました。



キン肉マン』を知らない方には、ごめんなさい。

ということで、旅行記は通常版に戻ります。