ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

その2:計画〜ではどうやって?



ハイドパークのサーペンタイン池



行きたい場所は決まったものの、どうやって行くのか? 前回の旅行では「大英博物館の近く」のホテルを選びたかったものの、ツアーでは完全な指定が難しかったこともあり、「飛行機+ホテル」で選びました。今回は「ひとり旅」なので、さらにツアー参加の障壁は高いです。(ひとり旅追加料金)



おまけに今回は、前回あまり見れなかった「ヴィクトリア&アルバート博物館」から歩いていける距離、「サウス・ケンジントン」辺りを検討していました。なので、今回も飛行機とホテルで予約することに決めました。


飛行機を予約する

値段を比較する

交通費とホテル代がかなり高いかなと思っていましたが、実際調べてみると(数時間使いました……)、当時売っていたHISのバーゲン格安59,800円でも、テロや石油高騰の影響で、値段に2万円近く上乗せされ、実質8万円ぐらいします。直行便で航空会社が指定できないのは仕方ないとして、帰りの便が確保できなかったので、他のチケットを探しました。



いろいろと他の会社やチケットを見ていても、バーゲン以外の相場は諸々込みで10〜11万円、すると、国内会社で「便指定」「席指定」「早割」した値段と、せいぜい1万円ぐらいしか変わりません。


滞在時間から考える

また、さらに調べてみると、国内・全日空の飛行機はロンドン発が19:00で、ロンドン滞在が長く出来るとわかりました。前に使ったヴァージンアトランティックは11:00出発なので、最終日は何も出来ませんでした。



なので今回は普通に全日空で出かけました。



とはいえ、飛行機は「航空会社未定」で買っても、変なことにはなりません。イギリス行きの直行便に限れば、「日本航空」「全日空」「ヴァージンアトランティック航空」「ブリティッシュ航空」の四便しか就航していません(はずです)。前回使ったのはこのチケットで、結局、「ヴァージンアトランティック」になりましたが、特に不自由しませんでした。ただ、前述のようにヨーロッパ系は帰りの出発時間が11:00と早いようなので、帰りの便からどうするか決めるのもいいかもしれません。


席指定のメリット

今回は長時間・一人旅なので出入りがしやすい「通路側」を確保しました。この場合も、出入りの影響度合いを考え、窓際3列ではなく、中央4列を選びました。理由としては窓際3列の通路側では2人の出入りの影響を受けますが、中央だと両側に通路があるので、実質、一人だけの影響で済むからです。



前回、行きは友人たちと同じ並びで出入りに不自由しませんでしたが、帰りは知らない人と隣で、しかも窓際。疲れました。



今回はひとり旅。



長時間のフライトなので、トイレに行ったり、少しでも動きが取れないと、かなり疲労が蓄積します。どこでもぐっすり眠れる方ではないので、そういう細かいところで調整できて、席指定での予約は次回以降も使うと思います。



また、指定するケースでは、席の番号が前の方の数字で、指定できない場合よりも明らかにいい場所です。仕切りとなる列によっては、前のスペースが広かったり、後ろに何も無かったりと、ほんのわずかですが快適さを得ることも出来ます。


ホテル指定

目的に応じて

ホテルについては、B&Bではなく、さらにあまり安いホテルですと色々とトラブルもあるかもしれないので、普通のホテルで探しました。前回利用したボニントン・ホテルは清掃・お風呂・食事、すべての面で値段以上の効果が得られましたが、今回はサウス・ケンジントン辺り、と決めていました。



今回のように行く場所が明確な場合、どのような経路で地下鉄を使えばいいかまでデザインできます。そこから最適なスケジュールを、地下鉄の経路まで含めて組み上げるのがひとつの楽しみにもなります。



ロンドンの地下鉄は前回利用した経験では、「意外と遅延もある」「でも乗り継ぎ・他の路線でカバーできる」ので、「なるべく幾つもの路線が止まる駅」を選びました。V&Aに近いと言う理由だけではなく、そうした乗り継ぎ・便利路線が幾つも止まる、ヒースロー・エクスプレスのパディントン駅から近い、そして、ロンドン中心からちょっと遠い「Osterely Park」までも直通・電車で20分と言うのも考慮しました。


食費を削って予算を捻出

前回は三人で行ったので部屋料金を安く出来ましたが、今回はどの道一人です。しかし、一人である以上、あまり食事やお茶にお金を使う必要はありません。(一人ではレストランに入りにくいですし、個人的に、美味しいもの・雰囲気のある店は仲間と行きたい)



ロンドンの食事はまともにやろうとすると高くなるので、今回は食費、そして帰りの荷物の重荷になる書籍購入費を徹底的に抑えて予算を確保する計画でした。ホテルの朝食で満足して、残りは適当と言う計画でしたが、これは失敗します……



また、前回は意外と交通費や諸々のお金が高くなっていましたが(前回のチケットについて)、今回はほとんど地下鉄で済むこと、入場料無料の場所が多いこと、使うだろうと思って入っていた英国National Trustの会員証がある(会員は入場無料:元は取れませんが)ことなど、その分をホテル代に使ってもいいかなと、考えました。


タウンハウスに泊まってみたい

泊まってみたかったのは、イギリスのドラマに出てくるような、上流階級の人たちが過去に住んでいた、ロンドン滞在時の邸宅、「タウンハウス」です。見つけたホテルはGoogleで褒められていたものですが、日本人がコメントしていたのは2件程度、というマイナーなホテルでした。



リスキーではありますが、サウス・ケンジントン駅のすぐ隣り、停車する地下鉄もまったく同じ、Groucester Roadから2分、自然史博物館には1分、V&Aにも3分ぐらいといういい場所にあったホテル、「THE GRANGE STRATHMORE HOTEL」に決めました。



ここは、エリザベス皇太后の父親であるストラスモア伯爵のタウンハウスだった、という設定なのです。建物や設備が古いかも知れず、リスクはありましたが、見つけたのは偶然なので、いい出会いであって欲しいです。(実際の感想は後日の旅行記で……)



料金は1泊でかなりの額でしたが、どの道、一人部屋でのホテルは同じようなものです。滞在期間のうち2日は半額になることもあって、今回は「貴族のタウンハウスってどんなものなの?」と知りたいことを優先し、ここにしました。



予算的にはかなり高めになりましたが、「ひとり旅」「安全」「快適」「雰囲気」「時間を無駄にしない」と言う点で、出費に踏み切りました。実際のところは、使うはずだった代休がいつの間にか精算されて残業代になっていたので、気が大きくなっていただけですが。



次回はスケジュールと、交通手段の話をします。多分、この時間が最も楽しかったかもしれません。ある意味、それは面白いゲームで、ゲームを離れた時間も「次はどうしよう」「どういう行動をしようか」と考える時間に似て、想像の翼が自由に広がり、さながら旅をしているようでした。



現在はGoogle Mapという強い味方もあって、行き先の地図まで簡単に入手できてしまうのですから……





ハイドパーク・秋のロットン・ロウ

その1:計画〜どこに行きたい?

背景

友人たちと今年もどこか海外に行こうと話していましたが、都合がつかず、国内で一生懸命探したのですが、素晴らしいところはいっぱいあっても、心の底から行きたい場所がありませんでした。今行きたいところは、イギリスしかないのです。


ロンドン

次にイギリスに行く時は、カントリーハウス(それもロンドンを遠く離れたところ)に行くと決めていましたが、滞在期間が長く確保できなかったので、今回は前回の旅行で行けなかったところ、ロンドン中心にしました。



イギリスでの鉄道旅行、というか、カントリーハウスを本格的に訪れるには、ロンドンを拠点にすると不便すぎました。それぐらい不便なところにある=広大な領地に囲まれている、となるのですが。



ちょうどそのタイミングで、百年前の英国に滞在した画家・牧野義雄を知りました。彼の本を読んだのも何かの縁だと思いつつ、その描いた光景を幾つか、現地で見たいと思いました。好きな作家・司馬遼太郎さんの作品『坂の上の雲』で描かれた日露戦争、去年は開戦百周年、今年は終結の百年後で、一世紀前にロンドンに滞在した日本人の気持ちを少しでも感じたいと。



ちょうど今回はひとり旅、日本人としてロンドンを見る、百年前の人と同じ視点ではないものの、彼らと同じような感覚で見れたら、と思いました。



また、最近書こうとした小説では、百年前のロンドンではなく、現代のロンドンで、少し都市から離れた住宅街(『ハリー・ポッター』のハリーの叔父さんの家ほど新しくは無いですが)を舞台にしようと思っており、その辺りで石造りの住宅街を歩きたいと、考えました。



これだけ「行きたい」と強く思い描けてしまった以上、行くしかありません。前回同様、航空機とホテルだけ手配しました。(現地でのB&Bも考えましたが、英語スキルが低く、起こりえるトラブルを楽しむ時間・余裕が無いので、普通に)。



そして次回は、絶対にカントリーハウスに「泊まって」来ます。ただのんびりするだけの時間を、階段の上と下を体感するために。


テーマ

その1:ロバート・アダムの旅

ロンドンから片道1時間以内で訪問できる、大好きな(唯一の)十八世紀の建築家ロバート・アダムが関わった屋敷を訪問する。その目標は、前回の旅行では果たせませんでした。前回の準備を掘り起こして、準備は万端のはずでしたが、それが裏目に出て、泣きそうな事件がありました……



 ■1:Kenwood House

 ■2:Apsley House

 ■3:Osterlery Park


その2:英国美術に触れる〜テート・ブリテン

 ■1:ジョン・エヴァレット・ミレイのオフィーリアが見たい。

 『ヴィクトリア朝万華鏡』に掲載されていた、オフィーリアの描写が鮮烈で忘れられず、実物を見たいと思っていました。また、個人的にですがミレイの描く女性像は好みな感じなので、この絵画のある「テート・ブリテン」(ミルバンク)は外せませんでした。



 ■2:イギリス画家の作品を中心にする。

 コートルード美術館やナショナル・ギャラリーはヨーロッパの他の国の絵画も多くありますが、今回はイギリス絵画を見たかったので、「テート・ブリテン」だけで十分かなと思いました。



 ■3:ついでにミルバンク

 サラ・ウォーターズ『半身』の舞台となった、当時のミルバンク刑務所のあった界隈も歩いてみたかったので、「テート・ブリテン」は最適でした。さらに、牧野義雄が描いたヴォクソール橋も行く途中にあるようなので、いいこと尽くめに思えました。


その3:英国海軍・グリニッジ

 ■1:旧英国海軍大学

 ■2:国立海洋博物館

 ■3:カティ・サーク号

 ■4:旧王立天文台

 ■5:クィーンズハウス



同人誌で登場させている公爵家は、海軍と深い関わりを持つ設定で、領地のひとつは広大な港町をイメージしていました(パーラーメイドが登場した方の屋敷のある港湾都市)。久我の好きな風景としてあるのは、本来的には「宮崎駿」作品『天空の城ラピュタ』『紅の豚』『魔女の宅急便』ですが、そうしたイメージと海軍大学のある都市をうまくブレンドできればと、グリニッジを選びました。



前回赴いたバースに続き、何気に世界遺産らしいです。



ちなみに、今年は日露戦争終結百年後であると同時に、トラファルガーの海戦二百年後でもあるそうで、英国では久我が渡英する少し前に、関連イベントが開催されたようです。それを見れる時期に渡英できていたら、話は出来すぎですね。


前奏、ということで



ホテルの窓から、朝の光景。



きっと、煙突下の一番上の窓辺りにメイドさんが寝ていたのでしょうね。メイドさん関連本では必須の英語atticです。滞在した頃は晴天が続き、夜明けも昼間の空の色も鮮やかでした。霧を見れないかなぁと滞在前は期待したのですが、日本よりいい天気でした。



旅行記の更新も仕事の合間を縫って、行おうかとは思います。滞在期間が短かかったので、大きなカントリーハウスに行けませんでしたが、前回諦めたところを中心に、屋敷を攻めてきました。メインテーマは「ロバート・アダム」で、☆印のところが、アダムが関わった屋敷です。



Kenwood House☆

Apsley House☆

Queen's House

Kensington Palace

Osterlery Park☆

Spencer House




英国貴族の邸宅 (ショトル・ミュージアム)

英国貴族の邸宅 (ショトル・ミュージアム)



アダムの屋敷を知ったのは、この本のおかげです。中世の屋敷は木や石が目立ち、幽霊が出そうで、ヴィクトリア朝のゴシックは重苦しい感じがあります。アダムの「新古典様式」は、個人的に、最も色彩が豊かでわかりやすい屋敷のデザインをしていると思います。大好きな建築家と言えます。ロンドン近郊ではSyon Houseもアダムの手が入っていますが、今回は時間的にあきらめました。



前回の旅行記も完結してないですが、きちんとした「読めるレベル」、そして「役立つレベル」で、旅行記を書いてみたいとも思います。久我は英国マニアではないですし、紅茶の好みも特に無く、初心者のままで、英語も微妙なレベルです。多分、最も多くの人に近しいポジションにいます。知りたいと思うこと、疑問に思ったことがそのまま、他の人にも当てはまる可能性が高いです。



興味があっても行く契機が無い人に向けて、その中にメイドやヴィクトリア朝を織り交ぜれば、いいものが書けそうな気がします。ということで、前回の旅行を含め、ネットで旅行記を書こうかと思います。一応、久我の前回の旅行記を読んで、イギリスに行ったと言って下さった方がコミケ会場でいらっしゃったので、その言葉を信じて……