4巻では筆が走っていた森薫先生の勢いにつられて一気に読みましたが、今回は「描いていて本当に楽しいんだろうなぁ」と、自分の美しいと思うもの、描きたいものを描く、それが随所から伝わってきていました。
ヴィクトリア朝でも、メイドでも、それらが個々の要素としてあるのではなく、人物と風景がなじんでいる、物語と調和した、ひとつの完成した姿があります。小説に感じた違和感が、一気に洗い流されました。
もはや人物を描くだけで、意識せずとも自然にヴィクトリア朝という背景世界を伝えられるレベルに達している、そう感じた5巻です。当たり前のように風景に調和して、当たり前のように価値観を再現する。憧れる境地ですね。
特に今回は、「エマが綺麗だなぁ」と思えるような描写も多く、いい表情ばかりです。P.076からの、エマがメイドの制服に着替えていくシーンも、素晴らしいです。普通だったら、逆の描写ですよね。
物語は佳境に入りつつありますが(髭親父も登場)、このテンポで最後まで描ききって欲しいものです。
個人的なお気に入りは、裏表紙です。
キッチンの様子、生活の風景。
初めから「名作」だったわけではないと思いますが、筆者の成長と共に作品も「名作」になっていった、作品ではないでしょうか。そうした経過を、何年間も楽しめる時間をもらえたことが、ただ嬉しいです。
コミックスの『エマ』は、こういうところも含めて、『エマ』なのです。次はどんな驚きを、楽しみをくれるのでしょうか?
『エマ』の世界に興味のある方には、こちらの本/音楽/映像をオススメ中です。
p3**[映画・ドラマ]映画『復活』
国はロシアですが、「メイドと貴族の恋」という話がありました。詳しい感想はhttp://spqr.sakura.ne.jp/data/movie_other_j/resurrezione.shtmlに書いていますが、これはやや特殊なケースだとは思います。ものの本によるとトルストイは200人以上私生児がいたとか……
久我がヴィクトリア朝に興味を持つ経緯は様々にありましたが、『世界名作劇場』→『若草物語』→『クリスティ』→ドストエフスキーなどロシア文学、というところから、その時代に共通する生活風景に興味があった、というのが強いです。
そういえば学生時代にサークル誌を作ろうと言うことになって、「『若草物語』の生活風景」を研究することにしました。大学に入ってから『続若草物語』を読み、ベスの姿に涙したのが発端です。その時、資料を探しましたがほとんど無かったので、小説本文の中から物語の構図や時系列、食べ物、衣装、人物関係を勉強しました。ライムの話や友人をもてなそうとしたときの失敗した料理とかが、かなり記憶に残っていました。
その時に「あれ? お父さん、働いていないじゃん」と気づいたのですが、多分それが今の同人誌の源流なのでしょうね。欲しいと思うものがそんなに世間の需要に無いので、自分で調べる、ということがよくあります。大学での専攻は文学ではなく、経済学でしたが、自発的に勉強らしいものをしたのは、それぐらいだったかもしれません。
トルストイ関連では、友人が身悶えしたという(子供時代、というときに感じるあの感覚)『幼年時代』『少年時代』『青年時代』も貴族というか金持ちの坊ちゃんの教育事情が書かれていました。今読み直すと、もしかしたらもっと読み取れる情報があるかもしれません。
『帝國メイド倶楽部六』当選したっぽいです
今日、受付確認のメールが来ました。抽選の話は一切記載されておらず、申し込み段階では先着順だったんでしょうか? ひとまず、あとはスペース番号をお知らせします、という内容だったので、当選だと思います。
新刊は、さすがにそろそろ何かを出したいところですが……考えます。先に絵だけでもお願いしておきますか、というところです。