ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

テレビ東京『美の巨人たち』〜ウィリアム・ホガース

毎週土曜日に放送している美術系番組で、この前、イギリスの画家ホガースの特集がありました。ホガースの絵画は、イギリスの生活史を勉強する人には馴染み深いと思います。『路地裏の大英帝国』の表紙は「ジン横丁」、ジンを飲んでいる人々がどれだけ堕落していくかを描いたもので、連作に「ビール横丁」があり、そちらでは健康的で健やかな人々と街が描かれていた、と思います。



路地裏の大英帝国―イギリス都市生活史 (平凡社ライブラリー)



赤ん坊が落ちていますね、酔っ払った母の手から。



2週連続放送で、今週も放送します。それで初めて知ったのですが、ホガースの父はディケンズの父のように、「債務者監獄」に入っていたとのことです。ディケンズの『リトル・ドリット』は正にこの債務者監獄に収監された父と、そこで暮らす娘と言う話でしたが、イギリスを代表する画家と作家が、世紀は違えど、似た経歴をしていたのは興味深いです。



ディケンズが社会問題に積極的であったように、ホガースもそれは同じでした。風刺精神のみを今回の番組では取り上げていますが、過去に日記で紹介したFoundling Hospitalという孤児院、作曲家のハイドン、そして画家のホガースが財政的な支援をしていました。



メイドさんを育てた音楽『メサイア』



実は去年のロンドン旅行でここを訪問してきましたが、ホガースが描いたという陶器や様々な美術品が陳列され、またソファに腰掛けて、ハイドンが作曲した演奏を聴ける(録音されたものですが)という穴場でしたが、現在も様々に活動しているそうです。



風刺精神のみではなく、孤児へ向けたホガースの優しい眼差しがあったことを、テレビを見た後でも、今週のテレビを見る前にでも、そのことを知っていただければと思います。


美の巨人たち:公式