ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

『ハウルの動く城』

友人たちと見てきました。「ハウルの声が意外にあっている」「いつもの斜に構えた感じが無かった」のが意外でしたし、配役を知らなかった友人は最後まで気づきませんでした。映画そのものはストーリーがよくわからず、感情移入も出来ず、エピソードを詰め込みすぎた感じがしました。キャラクターとストーリーのバランスが悪く、台詞が唐突過ぎて軽かったのが、もったいないです。



キスの雨もどうかと思います。



ただ、自分は背景世界が綺麗ならば80点をあげます。なので、今回の作品は大好きです。「ベーコンと卵を焼く描写」「それを食べるところ」「台所兼食堂を舞台に」「港町の店で野菜や魚を買出し」する風景は、いわゆるファンタジー的な「近代ヨーロッパ」の姿であり、家具や調理器具、室内のレイアウト、街の風景が非常に心地よかったです。『ラピュタ』や『魔女の宅急便』のような、さすが宮崎作品という描き方です。



その上で、必ず主人公のソフィは走るとき「スカートの裾を持つ」描写を忘れず、ドロワーズ森薫先生が涙を流しそうなほど随所に描かれていました。またカフェではメイド的エプロンをつけた女性も出てきています。19世紀・ヨーロッパ(華やかなイメージの方)の街並みが素晴らしかったです。



そして、久々の「宮崎ヒロイン」でした。前向きな姿勢、アクション、走るときはスカートを持つ(繰り返しですが、重要です)、料理が上手、掃除が好き、一途である。そんなクラリスやシータ、ハドソン夫人を髣髴とさせるヒロイン像で、個人的には大満足でした。『もののけ姫』と同じく、「この人は島本須美さんが忘れられないのでは」と思えた、ソフィの声ですね。



いろいろと『天空の城ラピュタ』を思わせるような描写もあり、宮崎作品が描き出す「ヒロイン」と「生活の匂い」「街並み」が大好きな人には、向いているのではないでしょうか。映画全体としてみれば「名作」ではなく、記憶には残らないと思いますが、用意された「箱庭」には、ただ感嘆するだけです。生活観を重視しつつ、キャラを絡ませて膨らませていくような、全13回シリーズぐらいで見たかったですね……



資料本作成で知りたかった、再現したかった憧れの風景に宮崎アニメがあります。その点で今回は幸せでした。



また、予告編では『ピーターパン』の原作者の映画(ジョニー・デップ主演。顔に気づきませんでしたが)や、『オペラ座の怪人』など、19世紀?の華やかな衣装・生活を楽しめる映画が近々公開されるそうで、とても楽しみにしています。久々に、映画のシーズンがやってきました。