ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

白洲次郎の流儀

白洲次郎の流儀 (とんぼの本)



それだけではつまらないので、何度か書店で物色していたところに、この本を見つけました。本当にきちんとした本は、関係者に取材をして、想像ではなく、事実を書く、という好対照な本です。



スーツやジャケット、ウィスキー、自動車、生活道具の豊富な写真は、見ているだけで楽しいです。それだけではなく、白洲正子や娘など関係者の言葉で構成されていて、彼らの記憶の中にいる白洲次郎は生き生きと輝いています。



その上、友人であった貴族とのエピソードや、カントリーハウスについての言及もあり、第一次世界大戦後のイギリス、ヨーロッパという生活世界が、白洲次郎という人を通じて描かれています。どちらかというと、その反骨精神・人物にスポットが当たりがちですが、ライフスタイルという観点で、イギリスとの接点があったのは驚きであり、意外でした。



友人のおかげで、イギリスと白洲次郎の意外な関係を知り、白洲次郎という人をもっと知りたくなりました。値段的にも良心的で、フルカラーに近い内容でありながら1400円とお買い得です。イギリス的なライフスタイルに興味がある人にもオススメできます。



前者の本は「イギリス=尊い」「日本=情けない」ような筆者のテイストがあり、その引き合いに白洲次郎を使っていますが、この本にはそんなニュアンスはありません。生活を楽しもうとする、ひとりの日本人がいるだけだと思います。