ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

英文学『我が子ゆえに』 トマス・ハーディ

イギリスの大作家トマス・ハーディの小説として有名なのは、『エマ ヴィクトリアンガイド』でも取り上げられている『テス』ですが、至高のメイドさん小説ならば、この『我が子ゆえに』(原題:The Son's Veto)を推薦します。



主人公はメイドのソフィ。彼女は牧師の元で働いていましたが、牧師は彼女に怪我をさせてしまい、そのことに責任を感じ、結婚という選択をします。



雇用者と被雇用者の関係、『エマ』のように身分違いの結婚は、牧師にひとつの選択を迫ります。それは、「自身の職業を捨てること」でした。



預かっている「教区」を売り、そのお金で、牧師はソフィを連れて、知り合いのいない街に引っ越します。そうでもしなければ結婚できない、結婚すべきではないと見ていた周囲の人々がいた、社会規範があったという事情が、描かれています。



ソフィの三つ編みに関する描写は、世界一です。