ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

コミックマーケット代表・米澤嘉博氏の葬儀へ参列

10/01に逝去された米澤氏の葬儀へ行って来ました。場所は麻布の善福寺。今から二十五年以上前、久我はあの辺りから少し離れた場所に住んでいたので、思い出深い場所でもあります。



寄り道がてら六本木で降りて、そこから、昔通った幼稚園の前を通りました。当時は今の身長の半分あったのか、あまり覚えていませんが、あの頃は長く思えた道のり、それに広かった道路の幅が、今はやけに狭く感じてしまいました。



それから、麻布十番へ。中央の太い通りには「米澤家」の札を持った方や、葬儀へ向かう喪服の方々が大勢いました。善福寺の入り口にはコミケのスタッフと思える方々が両側に立ち、片側では米澤氏の写真を大きく写したボードを持ち、もう片方ではDr.モロー氏のイラストが、出迎えてくれました。



今回は記帳と焼香だけで帰ろうと思って、記帳を済ませてから、焼香の列に並びました。ところが、すぐ目の前で焼香が打ち切られてしまいました。葬儀の準備が始まろうとしていたのです。そして、席が空いているという理由で、自覚もないまま会場の中にて、米澤氏の葬儀に参列することとなりました。



会場の様子を、書くつもりはありません。ただ、様々な方に囲まれて、また人と人とを繋ぎ、「居場所」を作った米澤氏を慕って、これだけ多くの方が集まったのはすごいと思います。世に対してきちんと説明してきたこと、好きだからで終わらず、「わからせようとしたこと」など、その意識は高いものでした。



自分は一度もお会いしたことがなく、お話したこともありませんが、氏が築かれた場所・機会であるコミックマーケットを、参加者の一人として受け継ぎ、広げていくのが、追悼になるのかと思いました。



マンガの神様・手塚治虫氏が「新しい世界を描き、夢を与えた」ならば、米澤氏は「居場所を作り、機会を与えた」と言えるかもしれません。コミケという場所が無ければ存在しなかった作品も数多くありますし、世に出ていなかった作家も、いたかもしれませんから。



焼香を済ませて、出棺を見送ることなく、会場を去りました。秋晴れの今日の日、もう一箇所、行く場所がありました。この近く、というほど近くではないですが、別のお寺に、祖父が眠っているのです。



二十年前に亡くなっていますが、祖父が築いたもので、残された多くの人々が生きていけた面もあり、不肖の孫としては、近くに寄ったならば、必ず顔を出すようにしています。



そういえば、いつも祖父の墓参りの日は、晴天です。前回行ったときも桜が咲いていました。墓の周囲に高い建物は無く、墓石の向こうをちょっと見上げれば青空が広がっていて、自分にとって墓の雰囲気は、いつも、明るいのです。



花を買って霊前に供え、手を合わせていて、ふと目の前に広がる青空を見上げたら、風に乗って空高く、鮮やかな色彩の風船が幾つも風に乗って流れていました。



それに見とれて祈りを忘れてしまった自分に苦笑しながらも、あの光景の美しさは目に焼きついて、忘れがたいものになりました。



そんなことがあってから、家に帰り、冬コミの準備を始めました。米澤氏のいない、年末のコミケ。出来る限りの力を込めて、いい同人誌を作って、コミケの素晴らしさや同人誌の魅力を伝える一翼を担えるよう、励んでいこうと、強く思いました。