今週より、久我の中で「執事週間」が始まりました。執事資料をひたすら読んでいます。
映画・小説『日の名残』も執事としての仕事内容が豊富ですし、多くを学びましたが、あくまでもフィクションです。知識は断片的なもので、必ずしも「参考文献」としての要素をすべて満たすものではありません。その視点や示唆、心理描写は卓越していますが、やはり実際に働いた人の言葉、仕事内容などから学ぶのが適切でしょう。
ということで、久しぶりに執事の資料がどこにあるのか、整理しました。
『ヴィクトリアン・サーヴァント』
『THE SERVANTS' HALL』
『COUNTRY HOUSE LIFE』
『NOT IN FRONT OF SERVANTS』
『THE COMPLETE SERVANT』
『FLUNKEYS AND SCULLIONS』
『KEEPING THEIR PLACE』
『DUTIES OF THE SERVANTS』
『A Country House at Work』
『ROSE:MY LIFE IN SERVICE』
『GENTLEMEN'S GENTLEMEN』
『Of Carriages and Kings』
『BELOW STAIRS IN THE GREAT COUNTRY HOUSE』
『LIFE BELOW STAIRS』
単純にリストアップすると、これだけの資料本がありますが、「執事」の詳細について扱っている本は極めて限られています。その中で最も参考になるのは、実在した執事の言葉です。中でも、最も学ぶことが多いのは、当代随一、『Lord』とまで呼ばれたアスター家の執事Edwin Leeです。
同人誌7巻『忠実な使用人』にて取り上げた執事で、詳細はそちらに譲りますが、上級使用人の改訂版を作成するに当たって、彼の存在を知りえたのは幸運でした。執事の必要要件に、「調整能力」が必要なのは、彼から知りました。
ひとつ、面白いエピソードをご紹介しましょう。
彼がまだ執事として未熟だったとき、千人近いゲストが来るパーティを倫敦の屋敷で行いました。このとき、交通渋滞を予見した彼は警察官3人に事情を説明し、取り計らってくれるよう頼みましたが、指揮系統がばらばらで道路は大混雑。結局、交通を麻痺させてしまったのです。
その後、彼は「警視」「警部」などの命令権を持つ人に仕事を依頼し、二度と同様の混乱を招かなかったそうです。「権限のある人に、仕事を任せる」というのが、学んだ教訓だとか。
また、交通が麻痺しなかったとしても、それだけの数の馬車・自動車(彼の時代はもう自動車がありました)が来るので、玄関前でそれらを適切に裁き、また追い出していくのも屋敷にとって重要な仕事でした。専任の役割がおり、それをlinkmanといったそうです。
こんなエピソード、聞いたことがあるでしょうか?
映画でも小説でも、見たことが無いです。
実在した人たちの言葉、だからこそ、ですね。
「誰が本物であるのか?」を見つけるのもまた、資料本作成の楽しみです。
そんな感じで、粛々と進めています。
『エマ ヴィクトリアンガイド』と戦えるとの確信を持てた3巻『貴族と使用人(二)』、3巻を初めて超えた手ごたえを持った7巻『忠実な使用人』、それらをさらに上回るだけの密度を、この『総集編1』では実現できそうです。
懸念していたハウス・スチュワード、ランド・スチュワードも資料が見つかりました。が、ハウスキーパー、ヴァレット、ガヴァネスあたりがまだ弱く、ボトルネックになるかもしれません。