- 作者: 君塚直隆
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/10/01
- メディア: 新書
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今月出た新刊です。
ヴィクトリア朝関係の資料を大量に読んでいますが、生活史に重点を置いていたので、あまり王族や政治の話は詳しくありません。同書はヴィクトリア女王の誕生から、即位して、歴代首相とどのように関わり、外交や政治に影響力を発揮したか、というのをわかりやすく解説してくれます。
ヴィクトリア女王が如何に内外の政策に強力な影響力を及ぼしたか、首相との間に大きな軋轢を生んだか、時系列でよく整理されています。特に久我は人名と年代をあまり覚えられませんので、今回の本はこれまで意識しなかったものを、明確にしてくれました。
今まで、ピールもディズレーリもグラッドストーンも、世界史の勉強をしていないので、あまり印象に残りませんでした。しかし、同書は歴代首相と女王との対立点を明確にし、また印象的なエピソードを挟むことで、イギリスの政治史を身近なものにしてくれます。
正直なところ、ここまで女王が指導力を発揮したのは、意外でした。海外の王族の交流や血縁と国際政治をうまく関連させており、「歴史」「政治」「国際史」を学ぼうと大上段に構えることなく、自然とイギリス・ヴィクトリア朝の歴史とエピソードが、記憶に残っていくいい本だと思います。久我は専門では無かったので、勉強になりました。
また、うまく「日本」と関わるエピソードも織り交ぜています。明治時代の日本を最初に訪問したヨーロッパの王族がヴィクトリア女王の四男の王子だったり、渡英した岩倉具視を接見した女王の感想が残っていたりと、日本人に興味を持たせる工夫もされています。
読み物として、十分に面白い本だと思います。