最近、新刊作業に向けて、各種資料を振り返っています。で、資料の中でそこそこ出てくる20世紀の執事に「Arthur Inch」がいます。彼の父もまた執事であり、父から「執事は大変だぞ」と言われても尚、執事を選び、執事として生きている(そう、最近まで現役だったのです!)方なのです。
まさに、リアル『日の名残』です。
ここまでは別に珍しい話でもないのですが、実は久我はこの方を「DVDで」見たことがあったのです。それを知ったのは、最近、この方の著書『DINNER IS SERVED』を読んだからです。
Arthur Inchがあの使用人映画の名作『ゴスフォード・パーク』で、執事の時代考証・指導を務め、特典映像に出演していた実在の執事その人でした。
久我の記憶では「映画の中、執事が指紋のついたナイフかフォークに息を吹きかけ、磨いた」シーンがありましたが、実際はそういうことをしないとこのArthurが語り、監督は「演出を優先した」と語りました。
こういうすれ違いの感動に打ち震えたのですが、この話には続きがありました。Arthur Inchが協力した作品はもうひとつあったのです。
それが、『The Edwardian Country House』、アメリカと日本では『MANOR HOUSE』(『マナーハウス』)として知られるあのドキュメンタリーです。念のため、『MANOR HOUSE』の別売り英書副読本を見ると、確かにArthur Inchの名前が入っています。
その当時はそれと気づかず、後で何かのきっかけで、すれ違っていたことに気づく。これが資料を読み進めて、深めていくことの最大の楽しさです。この瞬間、「Arthur Inch」と言う人間を知った喜びの大きさは、得がたいものでした。
塩野七生さんはマキアヴェッリを描いた作品にて、仕事から帰ってきたマキアヴェッリが著作を書く為に衣服を正して、「過去の人物たち」と向かい合った・交わった、と書いていましたが、まさにそういう心境です。
こういう「本と本、資料と資料との繋がり」をマインドマップにしたいですね。
『名探偵ポワロ』でイギリスの屋敷・貴族に興味を持つ
↓
和書で学ぶ
『ヴィクトリア朝のキッチン』
『路地裏の大英帝国』
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和書で参考にしていた英書に手を出す
ダブル・パメラに出会う(Pamela Horn & Pamela Sambrook)
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彼女たちが紹介するエピソードに興味を持ち、使用人の手記に手を出す
『Of Carriages and Kings』
『ROSE:MY LIFE IN SERVICE』
『KEEPING THEIR PLACE』
こういうのはOral Historyというもので主観的なものや当人が語るものでしかない、という限定的なものなのですが、久我は社会学や歴史学的なものよりも、こういう個人が見た世界、生活史が大好きなので、向いているとは思います。
最近は参考文献に出てくる「カントリーハウスにしか残っていないと思われるOral history」を読みたいので、カントリーハウスに勉強に行きたいと本気で考えています。欲しいのに、AMAZONで売っていない資料が多くなってきました。
紹介したもの
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- 作者: Arthur Inch,Arlene Hirst
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MANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日 【3枚組】 [DVD]
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Manor House: Life in an Edwardian Country House
- 作者: Juliet Gardiner
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