ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

『The Duchess of Duke Street』

これまで「コックとして成功した女性」をほとんど知りませんでした。今日、参考資料の整理をしながら、所有するDVDの整理をしていました。そこには、以前買ったまま見ていなかった『The Duchess of Duke Street』と言うドラマシリーズがありました。



「何で買ったんだっけ?」



1年以上買ったまま見ていなかったので、第一話をとりあえず見てみると、キッチンの描写が異常に充実していて、作りこみが普通ではありませんでした。



ある女性が屋敷のヘッド・キッチンメイドに応募し、新しい職場で気難しいシェフの下で働き始める、という内容ですが、キッチンメイドがコックの為にキッチン道具を用意したり、コックは「ペストリーを作るときは大理石の上で」と指導したり、資料でしか知らないレベルの描写がされているのです。



ここまでレベルが高いキッチンの描写をしたドラマは、見たことがありません。



今日は同人誌用にコックの情報を整理していたので、思わぬ収穫に「ラッキー」と思いましたが、時間が無かったのであらすじを知ろうとwikipedia『The Duchess of Duke Street』を見ました。



すると、時代は1900〜1925年の物語で、尚且つ、実在のコックがモデル、ということでした。



彼女の名前は、Rosa Lewis(1867 - 1952)、同時代では最も有名な女性のコックで、the Cavendish Hotelのオーナーにもなったそうです。これまで資料本で、一度も名前を見たことの無い女性です。



wikipediaに残る彼女の写真は美しく、恋多き人だった王子時代のエドワード七世と関係を持ったのではないか、とされています。使用人の立場から、ホテルのオーナーと言う成功したキャリアを描いた人物のようです。「働かざるをえなかった」と言う意識が強かった同時代人の言葉以外に、ようやく「メイドから社会的に成功した女性の視点」を得られそうです。



ちょっと遅すぎたかもしれませんが……



彼女の資料を買うついでに、Nanny系の資料本も買い足しました。間に合えば、総集編の同人誌に反映します。