ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

『THE GREEN BAIZE DOOR』読破と『Rosa Lowis』の読書開始

エリザベス女王の新婚時代に執事を務めたErnest Kingの自叙伝を読み終わりました。エドワード八世、億万長者、そしてギリシャの王様に仕えて、その次に仕えたのが新婚のエリザベス王女というのですから、驚きの経歴でした。



しかもチャールズ皇太子の誕生後の洗礼にも立ち会っている、という輝けるキャリアでしたが、最後の章に到達すると、意外な結末が待っていました。彼は同僚の使用人との間に感情的な問題を起こし、失職するのです。



相手は、エリザベス王女が生まれた頃から仕えていた侍女です。



執事と言う最高レベルの権力を持つ職場を経験していた彼にとって、「英国王室」と言う職場は異質で、耳目を集める分だけ、苦労の連続でした。その上、侍女との感情のこじれがあり(彼は自分が未熟だったから侍女のアドバイスを「受け入れられなかった」と言っていますが、干渉が非常に多くあったようです)、売り言葉に買い言葉の部分を、侍女は正確に王女へ伝えたとか。



戦後、荒廃した国土で生きる国民感情を刺激しないように、新婚の王女の暮らしを「倹約」するように命じられる執事の苦労など、通常表に出ない「戦後」という風景も、興味深いものでした。



その後も貴族に仕えたようですが、英国王室を離れてから仕えた主人の話は1ページにも満たないものです。明言していませんが、失意のキャリアだったのかもしれません。スチュワードが、侍女(ある意味ナース)に負けるんですね。



『Rosa Lowis』の方は第一章が無駄に長く、Rosaの父と母の血縁・先祖の話を延々と書いていて疲れました……当時の中流階級の家庭に興味ある人には面白いかもしれませんが、固有名詞が多すぎて、飽和しました。



ただ、前に入手した本が「Rosaの知り合い」「上流階級と接点を持つホテルオーナーとしての彼女」を中心にしているので「お上品」なのに対して、今回読んでいる本は「使用人から、いわば『シンデレラ』のように」変わっていった彼女の「全体像」を求めている点で、もう少し公平で、久我が欲しい情報がありそうです。