ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

森薫先生の『乙嫁語り』の1〜3号掲載の総集編と対談記事

森&入江のFellows! 総集篇、貴重描き下ろし収録で発売



とのことで。この売り方は最初、微妙だと思いました。お互いの読者がお互いの作品に触れること自体はよいと思いますが、まだ掲載作品が載っている『Fellows!』は売っていますし、その先にコミックス化があると思うので、重複になります。



こっちもコミックスも両方買うと思いますが、それってどうなのか、というのが「微妙」に思った理由ですが、思ったほど「微妙ではないかも」と考えました。


ターゲット1:「コミックス化」まで待つ派を取り込む

久我のように「森薫先生の作品だけ読みたい」からコミックス化を待ち、「Fellows!」を買わない層を取り込もう、とのアプローチにも見えるところです。この層が既刊を買う可能性は無いので、いわゆる「重複での嫌な感じ」は生じません。


ターゲット2:追加コンテンツでの購買意欲・ファンサービス

何よりも、総集編に含まれる追加のコンテンツが、新しい方向性なのかもしれません。掲載中のコミックスがコミックスになる前に、総集編+追加コンテンツの売り方は、珍しいのではないでしょうか?



過去の森薫先生のHP「伯爵夫人の昼食会」にて公開していたコンテンツや、『乙嫁語り』ラフスケッチなども掲載するようなので、買ってしまいますね、これは。


ターゲット3:創刊号のみ買って離脱した人の『Fellows!』への再取込

そして1〜3話まで読めば、『Fellows!』の創刊号のみ買った人も、既刊に追いつき、再度、「続きがどうしても読みたいから」ためし買いするかもしれない、という読みでしょうか。



発売予定日は2009/06/15とのことです。


隔月刊行の悩み解消? 資金の早期回収の可能性

Fellows!』はまだ4回しか発行されていません。しかし、発行号数が少ないだけで、2ヶ月に一度=創刊から結構時間経っている=コミックス発行できるだけの号数が揃うまでにまだ時間が必要、という状況だと思われます。



あくまでもマンガ雑誌は認知メディア的なものでそれ単体での収益をあげる構造ではなく、利益はコミックスであげる構造だと指摘されています。



マンガ雑誌に「元をとる」という発想はないたけくまメモ:2008/11/20)



なので、通常の月刊であれば創刊してから半年以上が経過する頃にはコミックスで資金回収できると思われるところ、『Fellows!』の場合は隔月刊ゆえにその2倍以上は時間がかかるのではないでしょうか?



そこで今回のような発行物で資金回収、という意図もあるかもしれません。出版界のビジネスモデルに詳しくありませんが、あえて「人気作家・看板作家」だけで、コミックスが出る前にこうした企画を立てていますので。



あまり専門でもないことを書くのも何なのですが、「本がどのようにして生まれてくるのか」「自分が好きなことを続ける(=人、時間、お金の確保)にはどういう戦略が大切なのか」を考えていますので、参考にと思考しました。



入江亜季&森薫の総集編?すると『乙嫁語り』の単行本はいつ?(黒い天使のブログ様)でも、今回の「コミックスが出る前の総集編」と言う手法については、疑問を呈されています。


対談記事

他に『Fellows!』公式サイトには、興味深いインタビュー記事が出ていました。どちらかというとこっちの方が、自分的には本筋で、面白かったです。



特別対談・森薫×しおやてるこ×笠井スイ-----2009/04/15



読者とのコミュニケーションサイトを廃止した『コミックビーム』ですが、Fellows公式サイトに資源を集中し、広報・宣伝・企画にも力を入れているようです。



Fellows! 2009-APRIL volume 4 (BEAM COMIX)

Fellows! 2009-APRIL volume 4 (BEAM COMIX)