ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

夏コミ新刊と、目指す資料本のかたち

資料整理がてら、執事の本を作っています。



『MAID HACKS』的なエピソード集を志向していましたが、どうにも真面目すぎるというか、こんな組み合わせで作るやついないだろう的なものになりつつあります。



市場独占です。



元々の同人誌が、「メイド」を制服ではなく、「屋敷で働いてこそ」という関係性で描き、集団で働くその職場に魅力を見出すことでオリジナリティを追求してきましたし、仕事内容に重点を置いてきましたが、今度は「働き方」に突っ込みました。



社会人の友人たちにヒアリングもしました。



働く人に共感してもらいつつ、「それ違うんじゃない? こう思う」的な興味を持ってもらえることも期待しつつ、日本でわざわざ異国の歴史を調べるという意味づけにはなりますね。



個人的に今回の新刊は、外資企業で働く方の視点を今後取り入れ(自分の視点の独自性は海外でも通じると思いますが、共感できる書き方をしているか分からないので)、その上でならば、海外で展開しても読んでもらえる気がしています。



多分、本場イギリスでも、こんな本はないはずです。



久我の志向的には、「専門家/研究者」向けに作っていません。そもそも作れません。



大学の研究者ほど真剣に勉強してきたバックグラウンドもなければ、コネも研究環境もありません。社会人として働いたお金をつぎ込み、資料を買い、余暇を費やしているので、同じことをできるはずがありませんし、その努力をしてきませんでした。



なので、必然的に、違う道に行きます。「けもの道」なのか「別の高速道路」なのかはわかりませんが。



元々興味が深い層に応えるのではなく、興味が少しあったり興味のない人が、本を作る時に思い描く対象読者です。大切なのは「資料のレベル・深さ」ではなく、「読者に共感してもらえる視点」です。



端的に言えば「同じことをしたら埋没するし、同じことをする実力はないし、そもそも自分がやる意味がない」ので、「違うことをしているから自分がやる意味がある」、というところが、スタンスといえるでしょうか。



さらに、イギリスで使用人を研究する人々以上に、学会向けの専門研究や発見ができると思えません。日本人である自分が同一の対象を研究する理由も、自分の中にありません。あくまでも、発見や考察が目的ではなく、自分が好きな対象を、「読んで楽しい」「わかりやすい」「発見がある」ように伝えられる本を目指しています。



要は、歴史書と、旅行ガイドブックの違いです。(或いは歴史書と、歴史マンガ本) あんまりマイナーすぎると旅行する人がいないのですが、そこは旅先の魅力を伝えるのが役目ということで、目に触れられるようにするのが、勘所です。



あ、司馬遼太郎さんや塩野七生さんの方が、志向としては近いかもしれません。



友人に「最近、執事の(仕事の)ことしか考えていない」と告げると、「ヘンタイ」といわれました(笑) その点では相当真面目に馬鹿をやっていますので、いい意味で頭が悪い本になりそうです。



電車に乗っていても執事のことしか考えていません。『英国メイドの世界』を作ってから、同人誌では燃え尽きた感じもしていましたが、久しぶりに集中力が高まってきました。