ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

現状のまま進めば9月末校了・2010年10月刊行

担当の方より、確度が高い情報として、「現状のまま進めば9月末校了・10月刊行」との話をいただきました。ほぼ原稿は書き終わっており、あとは全体との調整やバランスを見ながら校正で指摘された箇所の修正を行う、図版デザインの確認、写真資料のキャプションなど、様々な作業をしています。



同人誌版はデザインがシンプルで(自分の技量の問題)、1ページの文字量が多かったとはいえ、572ページありました。今回の講談社BOX版では総ページ数の今時点での見積もりが634ページっぽいです。削りも入ってくるはずですが、これだけ多いと、2年近く取り組んでいるので、段々と忘れてくる部分もあります。



『ヴィクトリアン・サーヴァント』というメイド資料本の最高峰の書籍と同じフィールドに出ていくことになりますが、今回、私が想定しているメインの読者像はそこにはなく、今まで『ヴィクトリアン・サーヴァント』を手にしていない人であり、またメイドの名前を知っていても興味を持っていない(しかし、実は接点があるかもしれない)人向けで、よく初心者向けガイド本で言われる、「これ一冊で済む」ことを重視しています。



メイドを大好きな人を増やす、というよりも、メイドや英国の100年以上前の生活に関心を持ち、その世界に少しでも興味を持つ人との接点を作っていく、というのが目指しているところです。メイドジャンルに支えられた部分が非常に大きいので、ジャンルに対して恩返しできるよう、いかに接点を広げていくかが課題です。



その割にページ数は膨大ですが、これは「屋敷の仕事」に特化して、類書にはない切り口でアプローチしているからです。使用人の職業と仕事、そして「どのように仕事を進めたのか」が私の関心領域です。メイドの資料本に関しては様々に出ていますが、これまでの冊子でフォローされていない領域を扱い、また基礎的な部分はほぼこれまでの本、そしてこの『英国メイドの世界』で押さえきれるはずなので、日本におけるメイド研究が、「この先」に進むことを願っています。



出版の際には、是非、書店やレンタルDVD店などと関連フェアに取り組んでみたいと考えています。私の書籍で紹介している本に限らず、たとえば最近直木賞受賞で話題になった『小さいおうち』、そして同じ作者の方による『女中譚』は日本でメイドが雇用されていた時期の話を扱っているのですから。私は、一見、バラバラに見えるものを繋ぐことが好きなので(時に迷探偵ぐらい強引な展開ですが)、メイドや執事、屋敷を軸に、様々な価値を繋ぐ「絵」を、今回の出版を通じて描きたいと思います。



9月末まで、あと、35日ぐらいでしょうか。



無事是名馬ヒロ斉藤さんを評した、大槻ケンジさん?)の言葉を胸に。