ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

メイドブーム関係の言及をしている理由

最近、メイドブーム関係の発言を続けています。



メイドブームの終焉は「衰退」か、「定着」か

補足・メイドブームの断続性と連続性を考える



元々、私はなるべくメイドを巡る言説から距離を置いてきましたし、自分の研究内容に関連しないことは黙っていたつもりです。とにかく、自分の研究する領域だけを見ようとしてきたからです。今でも読み終わっていない英国メイド・屋敷関連の資料が数多く存在しており、そうした研究成果で何かを示すことが、自分には向いていると思っていました。



ところが、昨年の2009年11月に日本ヴィクトリア朝文化研究学会にて、サブカルチャーとしてのメイドを語る方が登壇した際に、違和感を感じました。その方の語るメイド像と、私が知っているメイド像(あるいはオタク界隈におけるメイドブーム)は、あまりにかけ離れていたからです。



ここで感じたことは、「当事者として語っておかないと、声が大きい人に上書きされてしまう」「自分のことを語られてしまう」という危機感と、「語られていた言葉に一理あるけど、それだけでは全然ない」との想いによるものです。



こうした経緯もあって、学会の会報誌に「メイドブーム」についての寄稿依頼が来た際はお引き受けしました。しかし、これまで述べてきたように私はブームそのものの主体ではなかったので、「ブームを誰が受け入れたのか」というのを、私が見た範囲で描こうとしました。



日本ヴィクトリア朝文化研究学会の会報にコラム掲載(2010/04/30)



また、昨年にはこの界隈では私以上のベテランといえる酒井シズエさんと墨東公安委員会さんにお会いすることで、私が伝えてきたことの伝わり方や、メイドを巡る言説について様々な示唆をいただきました。多分、私が今語っているようなことは、御両名にとっては数年前に通過した道なのでしょう。



ある種、私が作るようなニッチなメイドの歴史資料本がブームが去った今になって(多分、ピークは『図解メイド』や『召使いの大英帝国』が出た2005〜2006年)講談社から刊行できること自体が、メイド表現が日本で定着しつつある証拠に思えます。その文化の土壌で育った立場として、周囲を見よう、土地を耕してきた人たちを振り返ってみよう、というのが今の心境です。



私が一連のメイドブームについて語っていること自体、他の誰かにとってのメイドブームを上書きする行動かもしれません。そのときはどうか、是非、声を上げてください。私も、もっと知りたいのです。