ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

日本で描かれたメイドイメージとブームを考えた1年

今年1年は、メイドブームをいろいろと考えていました。以下、Twitterで呟いていたものをまとめていただけていたので、ご紹介です。



メイドブームはいかに発生し定着していったのか?



補足となりますが、以下が今の把握している「断続するメイドブーム」です。世の中的には全部「メイド」としてまとめられています。



「成年向けPCゲーム」(第一次)→主従関係・SM・従属
「コスプレ」(第二次)→かわいらしさ+属性化
「喫茶化・メイド喫茶的独自展開の深化」(第三次)→独自
秋葉原電車男・流行語対象・『エマ』アニメ化」(第四次・ブームのピーク)→萌え+観光化+英国回帰
「創作でのメイド喫茶・メイド服(+アキバ)イメージ再生産」(第五次)→定着



他に、日本のメイドブーム関連の情報一覧(2010/12/25)も整理しました。



なぜ今になって「英国メイド」を学ぶ私が「日本のメイドブーム」を振り返るのかと言うところですが、これは2つの理由があります。



1つ目は「英国メイド」を学び続けると「現代に存在する海外のメイド」に断続していくのですが、日本の場合はそれが途絶えています。その違いの理由を明確にしたいのと、「日本のメイド」の特異性を「英国」「海外」と相対化することで描きえるのではないか、というところが私が今年達した仮説です。詳細は2010年『ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん』アクセスランキング・ベスト10(2010/12/26)の1位に記しています。



2つ目はメイドの持つ曖昧性をクリアにしたいことです。少なからず私はブームの中で育ちました。仮に第一次ブームの臨界点を『殻の中の小鳥』1996年とすると、ブームから14年が経過しています。ただ、ブームそのものは私が思うに断続的に生じており、その都度、メイドに求めるものが違っていて、とても分かりにくい印象です。



こうした分かりにくさや、メイドの持つ曖昧さを分かりやすく伝えたい、また自分が語ることによって「そうではない」と他の照らし方が出ることを期待して、一連の記述をしています。異なることが同時多発的に生じているので、現象そのものをひとつにまとめることはそもそも無理なのでしょうが、「どう見えていたか」ぐらいは残したいものです。


語り手と、今残る情報

上記の流れについて概要を示す資料はいくつか見ていますので、後日、これも整理して紹介しますが、最近興味深かったのは2008年に刊行された『メイド喫茶で会いましょう』(ASIN:4862040780)という資料におけるメイド喫茶ブーム総括です。



ここでは、オタクが愛するメイド服の源流を『まほろまてぃっく』と定義し、90年代以降の萌えキャラとしてのメイドのイメージがこの作品で具体的に確立したと記しています。(P.28) 同作品はアニメ化しており、キャラクターイメージの上でも一般化の上でも重要だと思いますし、私自身、この説は有意性が高いように思えるので論証したいと思いましたが、私が今まで見た情報ではそれほど触れられていない(少なくともここまで断言していない。たとえば2006年『メイド喫茶制服コレクション』では言及なし)ので、どういう根拠でこの結論に至ったのかを知りたいと思います。



『まほろまてぃっく』wikipediaを参照すると、「2000年以降に話題となった「メイド喫茶」などのメイドブームにも、多大な影響を与えた[要出典]「メイドもの」のマンガ・アニメ作品の一つである。」と、[要出典]タグがつけられています。この説は、この本が出典なのかというところや、wikiの書き手の方がどの情報をベースに書いたのかを知りたいです。



まほろまてぃっく』と『これが私の御主人様』(デジ子も?)はアニメ化している点で、一般への膾炙に広く影響していそうなのですが、今のところ、私にとってはミッシングリンク的になっています。また、「メイド長」の語源は、『花右京メイド隊』(1999)でしょうか? この作品もアニメ化しています。私は積極的にこれらの作品群に接していなければこそ、積極的に楽しまれた方による、上記作品を含んだブーム考察を読みたいです。



と思っていたところ、貴島吉志さんと観音王子さんの2006年の言説が、この辺りを包括しているのを思い出しました。




貴島
実際、これまでにもメイド萌えというのはあったんだろうとは思う。でも、それを本当に、素直に商品でやったのは凄いよ。
そんな『リトルMyメイド』と同じ時期、ちょうど同じ頃に出て来てたのが『まほろまてぃっく』(※14)。連載開始が98年12月で、第1巻の発売は9月。
メイドさんの誕生が、ゲームと漫画という、二大ヲタクメディアで起こってたんだな。



観音
でも、あの原作者は、エルフのゲームのノベライズを書いてた人なんだよ。
それも『同級生』とかの古い年代のね。
だから、流れとしてはやっぱりエロゲーからではあるかもよ。



貴島
エロゲー的なメイドのイコンを、まほろさんも受け継いでいるよね。
もしかしたら、『河原崎家の一族』とかでのメイドの扱いがあんまりだったものだから、逆にそうした館ものメイドへのカウンター表現として、まほろさんというメイドさんが生まれたのかもしれない。



観音
彼がどこまでエルフ関係だったのかは分からないけどね。
個人的には、まほろさんは『To Heart』のマルチ(※15)の線もあるんじゃないかなって思ってる。
あれはメイド服は着ていないけど、メイドロボだった。



(中略)
貴島
そういえば『まほろまてぃっく』も、『リトルMyメイド』も、どっちもスカートの丈が長いね。
社会的に認知された萌えメイドの起源は、『殻鳥』からのビジュアルの流れに対して、明らかに反発してる。





観音王子×貴島吉志 メイド対談 より引用
http://meimix.moe.to/off1.html


また、先日購入した『コミケットプレス33』特集記事「コスプレ」を読むと、1999年に"メイドコスが大ブーム。その他にギャルゲー系が増え、以降定着していく"(P.7)と記されているのも、メイドブームを知る上で、貴重な声なのではないかと思います。



コスプレでいえば、コスプレに詳しい方による以下のような意見も有ります。



twitter:21294371142:detail