ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

表現者向け支援プラットフォーム元年となるか?

表現を行うには時間が必要で、限られた「プロ」以外は、その表現に従事するだけでは生活できません。表現の代価を得るには作品をアウトプットし、「販売」することが最も近道ですが、最近は「活動そのもの」を支援するためのプラットフォームとして、多くのファンと繋がっていくサービス提供の動きがみられています。



[jp] 日本の「ソーシャル資金調達」レース開始ーーGrow!、READY FOR?、CAMPFIREの3社がデモ(2011/02/11)と記事になっていますが、READY FOR?とCAMPFIREがある種の「プロジェクト」(これをするから、パトロンになって欲しい)というものであるのに対して、Grow!はボタンを押して気軽にクリエーターを支援できる“ソーシャル・パトロン・プラットフォーム”の『Grow!』がサービス開始との記事にあるように、「作者その人」へポイントを送る方式です。



個人的に前者は賛同が得られやすく、成果も見えやすい点でかなり大きな金額が動かせるような感じがします。『READY FOR?』に至っては一定の成果物を「支援者が買う」形になっており、ここで商品だけではなく、賛同者にどのような想いを返すかでの工夫が問われています。



一方、『Grow!』は投げ銭はてなポイントや、pixivに有料会員制度 ポイント貯めて“投げ銭”可能にというところに似ている印象で、プラットフォームを問わない点や繋がりを可視化する点で、既存のサービスと異なるのかもしれません。



しかし、個人的にはこの「少額決済」「プロジェクト単位」は長期的に表現者を支援する安定性があるように思えません。過去とはソーシャルメディアを巡る環境の相違や利用者の変化もあるかもしれませんが、電子書籍を単品で売るのとあまり変わらない感じがします。



この点、個人的には有料メールマガジンといった定期購読による座布団型のプラットフォーム、いわば「ファンクラブ」的な方式が登場して欲しいと思います。この形態を突き詰めたのが月額1万円を支払うオタキングexですが、一瞬の繋がりよりも、継続的な繋がりが生まれていく方が、安定していくのではないかと思う次第です。



プロジェクト単位を継続的に続ければ同じことかもしれませんが、あるいは私の発想が違っていて、「創作に専念したいわけではなく、ただこのプロジェクトを世に送り出したい」との機会が増えること自体の価値が大きいのかもしれません。



たとえば、私が「メイドに関する資料を収集し、会員に閲覧可能とする図書館を作りたい」として家賃代や管理費、そして私の研究成果をウェブで公開していくのを前提に1000万円を仮に募集したとして、というような発想は今まではやりにくかったと思います。



何よりも、こうしたプラットフォームができると、「まず、プラットフォームを訪問し、支援するプロジェクトを探す」という人々が生まれ、本来出会えなかった人々と結びつく可能性が出てきます。



いずれにせよ、「自分が支持する誰かを、応援する」システムが今後も多様性を増していくことを願いますし、逆にプロジェクトを行う誰かを「募集する」というようなことも実現していくと面白そうです。そのコンテンツを束ねて、メディアも生まれそうですから。