ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

冬コミ新刊は『誰かの始まりは、他の誰かの始まり ヴィクトリア朝の暮らし短編集・総集編』

久しぶりの同人関連の更新です。結論から言えば、創作の作業は完了し、ページ調整とまえがき・あとがき、そして入稿の準備をするだけです。



ページ数は220ページ(約17万文字・厚さ1.4mm)と過去2番目のものとなります。総集編に次ぐものとなります。


同人誌製作の背景:今後の創作のための整合性をここで取る

この冬は「創作・短編集」の新作を作っていくつもりでしたが、いざ新作を書こうとすると過去の同人誌の中で出てきた登場人物が多く、「だったら、既刊の短編集の総集編にしよう!」と方針を決めました。



2001年から刊行した『ヴィクトリア朝の暮らし』シリーズで掲載した短編集をベースにしています。具体的には『5巻 使用人の生活風景』『6巻 使用人として、生きて』『7巻 忠実な使用人』『9巻 終わりの始まり』、『外伝1〜2巻』です。



ところが、ここでも同様の問題に直面しました。1〜4巻の短編集が無いと、分かりにくいところが出ているのです。1〜4巻は2008年に『英国メイドの世界 ヴィクトリア朝の暮らし総集編』を刊行した時に再掲しましたが、絶版となっています。その後、資料パートが2010年に独立して講談社『英国メイドの世界』となりましたが、短編集は宙に浮いていました。



そこで、この機会に2001年から2009年までに刊行した短編集を、「分かりやすいグルーピング」で編集・改訂することにしました。また、最近廃刊にした8巻との融合も考えたのですが、ぺーじずうが増えすぎるのと最近まで頒布していたこと、そしてどうせならば作り直すぐらいの気持ちでないとダメだと考え、時間の都合で8巻は除外しています。



たとえば、サイラス・ブライズヘッドと言うフットマンの物語を7巻で書き、8巻で書き、9巻で書き、今回、その続編を新作で書いたのですが、7巻・9巻は絶版です。で、彼が執事になるきっかけを書いたのは8巻にあります。



同様に、8巻でメイドからハウスキーパーへ転職して新環境で働くセシリー・カヴァナンの話を書きました。しかし、彼女がどういうメイドで、どうしてハウスキーパーを目指し、どのように転職を行うかの話は、それぞれ4巻、5巻に掲載されています共に。絶版です。



こういう状況を解消するための総集編とご理解ください。



「もう絶版にしない」ようにすることを考えつつ、8巻の短編から数本、整合性の面で今回の総集編にコンバートもしています。「ある創作を読まなくても楽しめるけど、事前に読んでおいた方がいい」作品の帳尻合わせと、編集によって読む順番をコントロールして、読者の記憶に残りやすくすることを主眼にしたのが今回の方向性となります。


概要:総作品数51(短編45本、中編6本:中編の2本が書き下ろし)

・『ヴィクトリア朝の暮らし1巻』からの公爵家の物語は『英国メイドの世界』から再掲。

・各職種を解説する箇所の直前にあった小説を再掲。

・5巻登場セシリー(スティルルームメイド→ハウスキーパーへの転職物語)

・7巻登場サイラス(ボーイ→フットマン→執事への昇進物語)



これ以外に、私が存在を忘れていた短編の発掘も行いました。



新作は2本あり、それぞれ中編ぐらいの規模となっています。


目次


はじめに

プロローグ   7

 擦り切れた膝



第一章 ある公爵家の物語   9



第二章 忠実なる使用人   23

 ヴァレット/侍女/ハウスキーパー/執事



第三章 階段の途上   36

 階段の途上/公爵夫人の変わらぬ午後/執事の本分/コックの矜持/ハウスキーパーの決意/通り過ぎていく



第四章 階下の暮らし   57

 階下の暮らし/ハウスメイド/パーラーメイド/ナースメイド/ランドリーメイド



第五章 使用人として、生きて  79

 帰還/スカラリーメイド/キッチンメイド/コック/デイリーメイド/スティルルームメイド



第六章 公爵家のメイドたち  105

 ブリキのトランク/公爵と共に/最初の主人/夕暮れは明日へ/すべて初めから/いっぱいのトランク/公爵家のメイドたち



第七章 春、ひとり窓際で  145

 小さな決意/リリィ/束ね髪/在りし日の面影/冷たい頬/その、指先/春、ひとり窓際で



第八章 執事の肖像 169

 ボーイ/フットマン/ゲームキーパー/コーチマン・グルーム/ガーデナー/執事



第九章 誰かの始まりは、他の誰かの始まり  183

 明日の自分/開かれたドア/誰かの始まりは、他の誰かの始まり/踏み出したその先



最終章 屋根裏部屋の少女たち 203

 ロンドンへの途上/白い舞台/屋根裏部屋の少女たち



エピローグ 206

 百年前