2012年11月30日と、半年以上も前の話ですが、以前から興味があった昭和の暮らし博物館へ出かけました。英国の家事使用人への興味は女中へと広がり、そこから建物から伝わる家事の歴史にも目が向いていった次第です。あとは、どことなく、幼い頃に訪ねた祖母の家に似ているというか、幼少期を思い出すような郷愁も一役買っていそうです。
過去に『コクリコ坂から』と家事使用人からの脱却を迎えた日本、ジブリ作品の家事描写についての雑感(2011/09/14)を書いた折には、江戸東京たてもの園を訪問した際の写真を用いましたが、その場でお話しした方と「家事の歴史に興味がある」と雑談をした際、強く推薦されたのが、この「昭和の暮らし博物館」でした。その展では、1年以上を経て、ようやく訪問できた訳です。
昭和の暮らし博物館
昭和の暮らし博物館は、普通の住宅街のど真ん中に位置する昭和の一軒家が、昔の家具や道具を残して公開・展示を行っています。最初に行くときは、とても迷うかもしれません。私が訪問した際は普通の民家があり、その庭にチケットを売ったり本を扱っている小屋があり、そこから案内の方が家屋へ誘導してくれます。
玄関は横開きの戸で、ここで靴を脱いであがります。内部は撮影禁止でかつ、間取りなどを紹介する本も出ているのでここでは写真を用いた紹介をできませんが、歩くときしむ木の廊下の床や、急勾配な木の階段、そして祖母の家のような床下倉庫のある台所にはもう、心が震えっぱなしでした。
建物には縁側もあって、なんともいえず、懐かしい感じがします。子供の頃、古い一軒家に住んでいたこともあったので、その点ではなんというのか、時代を超えた一般家屋にお邪魔しているような気分になってきます。
- 作者: 小泉和子,田村祥男
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2000/11
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 25回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
2階では第11回企画展 「少女たちの昭和」が開催されていました。2階は下宿人の部屋だったとのことでしたが、訪問した時点では、そこに昭和の少女たちの服飾の変遷や、農村で働く少女の姿の写真などが展示されていました。学校のアルバムや、少女時代を過ごした方のコメントなども記されて、その時代を生きた人たちの時間が切り取られています。
しばらく仕事のために参加できませんが、『月夜のサアカス』での研究会で深めたいと思っていた軸のひとつ、「少女文化」に連なる展示が見られて、ラッキーでした。
2012-11-30 20:14:28 via web
この博物館を営む小泉和子さんは、日本での家事使用人・生活研究に言及する上でも欠かせない方です。"図説 イギリス手づくりの生活誌"の翻訳をされ、 URL また『女中がいた昭和』もまとめられました。 URL
2012-11-30 20:17:16 via web
この博物館を営む小泉和子さんは、日本での家事使用人・生活研究に言及する上でも欠かせない方です。"図説 イギリス手づくりの生活誌"の翻訳をされ、 URL また『女中がいた昭和』もまとめられました。 URL
2012-11-30 20:17:16 via web
博物館、つまりは日本家屋に残されている昭和の暮らしの詳細は『新装版 昭和のくらし博物館』に出ています。 URL 自分も「昭和」なんだよなぁと再確認する次第。
2012-11-30 20:22:04 via web
貴族の屋敷のなかでメイドや執事のいる「家事」を行う使用人エリアに興味があるように、昭和の建物でも洋館的なものより、こうしたこじんまりした家の方が居心地がいいのは、懐かしさがあるからでしょうね。
2012-11-30 20:24:45 via web
と、Twitterでつぶやいていた感想を抽出してきましたが、いつのまにか、『少女たちの昭和』展も出版されるとのことでした。
- 作者: 小泉和子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/06/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (6件) を見る
混雑次第かもしれませんが、私が訪問した際は室内でお茶とお菓子をいただくこともできました。ひとりで出かけるのも、誰かと出かけて昭和の時代を懐かしむのも、或いは世代が違う人と行くのもいいかもしれません。
そして、場の勢いとは恐ろしく、記録映画『昭和の家事』を買ってしまったのです。
家事の歴史を学べば学ぶほど、労力と時間削減の進歩に感謝をしますし、便利な時代が大好きなので「昭和の家事」は自分にとってノスタルジックな感傷ともいえますが、選択できる範囲で「時間をかける」ことに心を向けられたらと思うてんでは、「不自由に見える過去の家事」も、部分的には「贅沢な時間の使い方」になるのかもしれません。