ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

冬コミ新刊『屋根裏の少女たち Behind the green baize door』(ワンダーパーラーカフェとのコラボ)告知

ワンダーパーラー様とのコラボ企画同人誌の告知です。





タイトル:『屋根裏の少女たち』

仕様:A5サイズ、フルカラー、36ページ

内容:短編11本(書き下ろし8本)+対応するメイドさん写真

サークル:SPQRコミックマーケット3日目東ポ26bで頒布開始

価格:500円を予定


内容説明 :本書「はじめに」より

本書は、池袋のメイド喫茶Wonder Parlour Cafe』(以降、ワンダーパーラー)店長・鳥居様と、英国メイド研究・創作を行う久我真樹(サークルSPQR)のコラボ同人誌です。同じテーマで、ワンダーパーラーメイドさんを撮影した「写真」と久我の「創作」を表現する同人誌となっています。



ワンダーパーラーは二〇〇五年に創業したメイド喫茶で、池袋を拠点に英国的雰囲気の再現と、クラシックなメイド服を着たメイドさんが給仕するのが特徴です。今回、両者が愛好する「クラシックな雰囲気のロングスカートのメイド」という日本で発展する表現を、それぞれの持ち味を生かして形にしました。



本書を作るきっかけは、鳥居様が「住み込みで働くメイドの自室=屋根裏部屋」の再現を行い、そこで撮影した写真をTwitterで公開し始めたことによります。その題材の一つが、久我が過去に書いた創作『屋根裏部屋の少女たち』(本誌収録)でした。



写真を見たとき、久我は英国メイドの創作をしたくなりました。折よく鳥居様から「メイド部屋に来ませんか?」とのお誘いがあり、訪問する中で、今回の企画を提案しました。



メイド喫茶も私の同人活動も「今は実在しない、過ぎ去った時代のメイド」のイメージを、今の時代に表現する試みといえます。その点で、喫茶のみならず、部屋を作り上げた鳥居様のエネルギーは相当エクストリームです。



そしてそれは、「英国らしさ」の発露といえるかもしれません。十八世紀の英国でゴシック表現を発展させたホレス・ウォルポールは、自身で記したゴシック小説の舞台を、屋敷ストロベリーヒルとして再現しました。屋敷の見学も行われ、ハウスキーパーが入場料を徴収したといわれています。そうしたイメージを再現する試みは、私が好きな喫茶『ワンダーパーラー』、秋葉原の『シャッツキステ』、惜しまれつつ閉店した『月夜のサアカス』にも共通しているように思えるのです。



今年二〇一四年は、「日本における英国メイド表現」にとって忘れがたい年になるでしょう。NHKで『ダウントンアビー』が地上波で放映されたからです。屋敷を舞台に貴族と使用人が主役となるドラマが放送されるのは稀有なことで、メイドブームの土壌のひとつとなった「クラシックな海外ドラマ」(『シャーロック・ホームズの冒険』『名探偵ポワロ』など)が地上波で放送され続けた一九九〇年代に回帰するようです。



さらに、九月には十一年ぶりとなる森薫さんの『シャーリー』の新刊が発売しました。ライフワークのようにメイドを描かれる森薫さんの存在はメイド界隈の人間にとっては心強いものです。



そうしたタイミングで、メイドにまつわる表現を行える場にいることは、メイド表現者として報われる気がします。読者の皆様にも、本書を楽しんでいただければ幸いです。