ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。同人・出版活動の報告を含みます。

東京都庭園美術館「こどもとファッション」の展示

コミケの感想は後日。



今日はコミケ後の夏休みということで、東京都庭園美術館の「こどもとファッション」の展示を見に行きました。twitterでフォローしている人たちが話題にしていることと、昨日お会いした方から説明を受けた展示内容に強い興味を持ったからです。



東京都庭園美術館の建物自体は好きで、何度か足を運んでいましたが、リニューアルしてからは一度も行っていなかったので、折角だからと行くことにしました。



東京都庭園美術館の「こどもとファッション」紹介ページ



今回の企画がユニークだったと思えたのは2点あります。



1) こどもの衣装に集中しており、数多くの衣装が展示されていたこと。比較用に大人の衣装もあったけど、ここまでこどもの衣装がまとまった展示を見たことが私の経験上、ありませんでした。こどもの靴や靴下、すごろくや図版などもあわせて展示されていて、こどもを取り巻く文化が垣間見えます。



2) 展示はヨーロッパだけだと思っていたのですが、その影響を受けた明治以降の日本のこども服(洋服)や、それらをモチーフにした絵が展示されていたこと。この話を知人に聞いたことが、「足を運ぼう」という動機にもなりました。1階がヨーロッパ、2階が日本と建物のフロアによる内容の変化も、良い構成でした。



私は日本の明治以降のこどもの衣装に詳しくはないですが、特に気になったのはエプロンの導入や、エプロンドレス的な衣装の多さです。そうした衣装の実物が展示されているだけでも驚きましたが、エプロンをつけたこどもを描いた当時の雑紙や絵画が非常に印象的でした。「これが日本なんだ」と驚きもしました。絵画では、明治27年頃の「はるの像」(紙中糸子、No.89)では幼女が着物にエプロンをつけ、明治45年の「遊戯」(秦テルヲ、No.93)では数多くの子どもたちが和服+エプロン姿で手をつないで遊んでいる姿が、同様に「あそび」(北野常富、No.94、明治末期から大正初期)でもエプロンが目を引きます。



あと、服の装飾の歴史というのか、シンプルな布地から、レースや刺繍、織などの装飾が盛り込まれていき、衣類の線が複雑化していく様子もまた、面白かったです。どれぐらいの制作時間がかかったのかと思えるような服も散見しました。


メイド研究者なのでメイドっぽいイラストやエプロンドレスについて

これらについても話しておきますと、ひときわ印象に残った展示は『プリンセス・パーティ』。1993年に販売していた子供服を用いたと記載があれど、1993年にエプロンドレスなどが流通していたことは目を疑いました。自分が生きていた時代ながら、その当時に関心がない領域は未知ですね。



メイド的なものでは、こどもを着替えさせているメイドの写真(フレデリック・ボワッソナ『身づくろい」No.54)があったり、19世紀の作家ケイト・グリーナウェイのイラストが展示されていたりと、自分にとっては意外な展示も多かったです。グリーナウェイの展示の近くにあった楽曲集『幼い子どもたちのための古い歌』(1883年、ルイ=モーリス・プテ・ド・モンヴェル)も、私にはとても19世紀の作品に見えませんでした。そこに描かれた、列になった子どもたちのイラストのタッチと、その着ている衣装とが、どちらもモダンに見えたからです。


建物を鑑賞する楽しみ

展示のユニークさもさることながら、やはり旧朝香宮邸は素晴らしいのです。正面玄関のルネ・ラリックのガラスの装飾。様々な部屋の天井と照明、壁面の美しさ。階段マニア的には、玄関ホールから通じる表階段と、奥にある裏階段の2つが、たまりません。天井の高さも楽しめますし、存在そのものが美術品の館です。



そして現地で『アール・デコ建築意匠: 朝香宮邸の美と技法』を購入しました。結構な値段をしたので買おうか迷いましたが、中身に「建築にまつわる費用」の詳細が出ていたので購入を決めました。セメント代とか水道工事費、館の工事費用から、家具まで様々です。



中でも個人的なお気に入りは、それぞれに仕入先も記載されていること。たとえば、妃殿下下居間緞帳代68円、たとえば受付レース取り付け代2290円。いずれも三越から。消耗品(文具)や器具代、通信費、給料、電気代までの詳細もあるので、生活風景マニアには最高の資料です。








屋敷といえば正面と、庭に回って裏の姿を見ることも醍醐味です。唯一残念なのは、庭園のほとんどが整備工事中だったことです。



今回の展示は8月31日までということで、ご興味のある方は是非。