ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

コミケの徹夜組対応は、「時間差入場証の導入」で解消できるか?

コミケの徹夜組対応と、猛暑時の対応のための列解消をどう行うか?

コミケでは、同人誌や欲しい限定販売アイテムを購入するために、徹夜で並んで列を形成する「徹夜組」の存在が知られています。準備会は公式に徹夜は認めていませんが、数千人規模であるためにコントロールが難しいとも言われており、実質的に排除できず、先着順で入場する現在の運用体制で存在しています。

以下、公式が公開している徹夜・深夜来場禁止のメッセージです。

こうした徹夜組に加えて、一日に17〜20万人が来場するコミケでは、一度に入場できる人に限界があり、周辺に大規模な入場待機列が形成されます。2019年8月11日(日)にはこの列形成の運用でミスがあり、1) 熱中症で倒れる方達が出る、2) 後から並んだ人の方が先に入場するといった事態が生じ、コミケの準備会が経緯説明とお詫びを行いました。

これも、1) 今回の会場の構成が初めてであり(オリンピックの影響で東が使えなくなり、新環境で行う)、さらに2) 入場に必要な有償リストバンドの導入といった2つの新しいオペレーションが生じていたことも影響していると考えられます。

こうした中、徹夜組の問題と、大勢が外に並ぶ問題を解決する方策は長年検討されてきたものと思います。今回、この「有償のリストバンド」を進化させることで、待機列形成を減らせるのではないかというのが、今回のテキストの内容です。

※内部の運営の詳細情報を知らないので、あくまでも思考実験として捉えてください。

事例:美術館やイベントで行われる時間差入場の概念

英国やイタリアを旅行していた時の体験として、人気がある美術館や美術展では「観光客の総入場数」を制限するため、入場時間を決めたチケットを使ってネットで予約受付や、現地での販売を行なっています。入場者が快適に回れるように10〜30分単位で入場時間を決めて、予定数を超えれば、次の時間帯のチケットを買うことになります。

運用は、次のようなものになります。

1) チケット入手:ネットで予約または現地で直接購入
2) QRコード記載のチケットを受け取る(メールやアプリで配信・印刷も可能。または現地で紙で受け取る)
3) スマホタブレットなどに入れたアプリでQRコードを読み、入場チケットのチェックを行う。

ネットでは、これを支援する次のようなイベント管理ツールがあります。

peatix.com
www.eventbrite.com

私がこのようなサービスを活用した、QRコードでのイベント入場を体験したのは、英国で行われたOpen House Londonです。
openhouselondon.org.uk

普段は公開していない場所(政府施設や個人・法人管理の屋敷やクラブなど)を1年に2日間だけ一般公開するイベントで、そのうちの建物のいくつかは、上記のhttps://www.eventbrite.com/のサイトで予約受付を行いました。そこで日付・時間帯を指定して予約し、QRコードを受け取り、当日は受付の人が持つiPadスマホに出したQRコードを読み込んでもらい、入場しました。

リストバンドからQRコード・時間帯チケットへの切り替えは可能か?

コミケでもこの概念を導入できないかと、以下具体的に考えます。

そもそも、このような概念を導入する検討ができるようになったのも、「リストバンドによる有償化」が初めて実施されればこそ、です。これまでのコミケはカタログを買わなくても入場できました。しかし、今回からは1) コミケカタログ(紙)に付属、2)日付別でアニメイトメロンブックスなどショップで販売、3) 当日現地で準備会が販売するリストバンドが、入場に必要になりました。

www.comiket.co.jp

ただ、リストバンドの事前購入分が売り切れたり、現地でも列を作っての購入や売り切れが出るなど、実際の「リストバンド」であることで在庫管理が必要で的整数の流通にも課題があったと考えられます。

このリストバンドを、QRコード・時間帯チケットのデジタルデータ化(印刷化)に切り替えることで在庫問題を解消し、さらには徹夜組や列の総数を削減できるのではないか、と考えてみました。

※2019/08/14追記 ブクマでご指摘を受け、私の提案内容を「徹夜組に相当する1万人規模の先着入場パス」と、「リストバンドに相当するフリーでの入場パス」に切り替えます。最初の以下の提案を残し、ページ最下部に修正案を記載しました。

時間を決めたデジタル入場証について

1) 会場に入場できる数も上限があるので、時間単位での入場時間上限を定めて入場証を事前発行する。
2) 徹夜しても始発で行っても、その時間帯から入れる入場証がなければ、入れない。
3) 何時に入れるかがある程度まで保証されれば、列に並ぶ必要性は低く、暑さ・寒さ対策の余地も減る。

入場証の入手手段

1) 入場証予約は先着予約販売/抽選などの組み合わせで公平性を高める。ネット決済できない人向けに、個々の店舗用の販売枠も用意。
2) 設営協力者が買いやすい枠なども準備。
3) 高い入場料金枠(優先パス)も一部設定。寄付などに使う。
4) 10〜20%の当日フリー入場枠を設ける。時間帯ごとの空きが出た都度、入場。受付は8時からなど。

列形成

1) 入場時間毎の列を形成する。10:00入場(5000人)、10:15入場(5000人)など、それぞれの最大人数が並べる場を確保する。
2) 列形成の受付は入場の1〜2時間前などから受付開始し、先着順で実施。
3) スタッフがアプリでチェックし、またあわせて手荷物検査を事前に行う。QRチェックは自動ゲートでもできる?
4) 混雑度合いで時間帯枠も細分化する。1) 混雑枠(企業や壁外周)、2) 島(壁にも行けるけど)など。
5) 上記のフリー枠は今まで通りの運用にして、先着順で時間帯入場者を優先しつつ、一定感覚で入場してもらうかは要検討。
6) 自分が持つ入場時間帯に遅刻した人は、フリー枠に並ぶ。時間帯あたりの入場者数を明示しておく。

徹夜して早く入場したい人は早期の入場証争奪戦を行い、負ければ当日枠の確保を狙う。これで当日の総量は減ると考えられます。

混雑が嫌で12時入場できれば良い、13時入場でも良いという方も、上記運用がうまくいけば、入場時間を見越して入れます。

要検討事項

1) コミケ会場への収容能力は想定通りに行くのか?

・現実的に、時間帯別に列形成を行なって会場へスムーズに入場させることは可能なのか?
・チケットチェックや手荷物検査で、余計にスタッフのリソースがかかるのでは?
・フリー枠を用意しているが、必要なのか? 徹夜組を生むのでは?

2) 導入コストは?

・現在例に挙げたサービスは、コミケなどよりも圧倒的に少人数のイベント運用を想定。可能か?
・この規模の在庫管理大変ではないのか?
・店舗発行を行う端末の確保はどう行うのか? 費用は?

まとめ

今のところ、「徹夜組をどう規制するか」に議論が向かっているように思いますが、前提条件を変えることで解決策を広げられないかというのが、今回のテキストの趣旨です。並ぶこともイベントの醍醐味ですが、流石にこの暑さで行列に並ぶのは危険であり、ならば行列を作らない運用を可能とするにはどうすれば良いのか、というところで上記のように考えました。

あと、会場が増えることでスタッフの絶対数が不足しており、会場外担当部署の積極募集が行われています。
www.comiket.co.jp


特に来てほしい部署!
なお、2019年からは、2020年の東京オリンピックパラリンピック開催に伴い、ビッグサイトの東展示棟が使用できないことや、新しくできる青海展示棟・南展示棟を使用する等、会場利用方法が大きく変わります。このため、引き続きコミックマーケット97でも、特に会場外を担当する部署では積極的にスタッフを募集しております。詳しくは下記の応募方法よりお問い合わせください。

今回の提案の根幹には、店員不足でスーパーやコンビニで導入が進む「セルフレジ」と似たものもあります。出来るだけ当日の列形成を少なくして、少ないスタッフで回せるようにする方法としても、検討の余地があると思います。

そもそも「時間帯別チケットの発行」という考え方自体がコミケの理念と乖離する運用方法かもしれませんし、現実的なのかとの話もあります。1時間ぐらいでひとりで考えたことなので、その辺りはご容赦を。

様々な具体的なアイデアが出てくることを願っています。

追記:10-11時の先着入場を保証するファストパス方式はどうか?

ブクマでご指摘をいただき、ありがとうございます。

コミケの徹夜組対応は、「時間差入場証の導入」で解消できるか? - ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

無理。入場者数の桁が違いすぎる(というか、この程度で対策できるなら既に実施している。ワンフェスでは導入されてた気がするし)

2019/08/13 21:12
b.hatena.ne.jp
コミケの徹夜組対応は、「時間差入場証の導入」で解消できるか? - ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

コミケに並ぶ目的は「サークルの頒布物」でそれは時間帯が早ければ早いほど手に入れやすいので、早い時間帯にプレミアついてダフ屋か転売家が横行しそうな気がする。あと15分5000人では全然足りないよなあ

2019/08/13 21:34
b.hatena.ne.jp]

要点と、それを踏まえての考え方を変えてみます。

1. 規模が違いすぎる

→その通りですね。自分でも10万単位の人を、10-15分刻みの入場管理でできるように思えなくなりました。

なので、「徹夜組の規模」に対応だけした「10-11時に入場が見込める先着入場枠(1万人ぐらいの規模)」だけを切り離すことを再提案します。徹夜しても、この先着入場枠より先に入れません。

1) 1万人分のチケットの発行(1万人はあくまでも例です)
2) 1万人の中で先着争いの徹夜が生じないよう、50〜100ブロックに分けて発番。5001-5100の人は、そのブロック内にしか並べない。100人の中での先着順はたかが知れているので、その中で早い番号になる誘引は低い。

2. というか、この程度で対策できるなら既に実施している。

→有償化・リストバンドの導入という「チケット発券」に属するものが今回のコミケから導入されたから発案できるものだと思います。

3. ワンフェスでは導入されてた気がするし

→ご指摘ありがとうございます。確認しました。上記に書き直した修正案と重なりますね。これの規模を変えて、導入すれば良いのではないかと思います。以下部分引用します。ワンフェスで導入し、コミケで導入していなかったのは、前述したように「入場者に課金するかどうか」の考え方の差だと思います。

ワンダーフェスティバル|Wonder Festival


【ダイレクトパスとは】ダイレクトパスは、開催日の8:00〜8:30のあいだに会場にお越しいただければ優先的に館内に入場することができる「特別整理券」です。

【価格】3,000円(税込)+システム使用料216円+発券手数料108円※入場には、別途入場チケット兼公式ガイドブック(2,500円)の購入が必要です

【開催当日の入場方法】
ダイレクトパスには「企業/一般」のチケット区分ごとに始番0001番より整理番号がランダムに印刷されています。開催当日、パスに印字された地図の場所に、8:00〜8:30のあいだに到着するようにお越しください

【ダイレクトパスのご購入をご検討の方へ】
ダイレクトパスは、整理列入場時に本人確認書類をご提示いただきます。対象となる本人確認書類は以下のものとさせていただきます。

4. コミケに並ぶ目的は「サークルの頒布物」でそれは時間帯が早ければ早いほど手に入れやすいので、早い時間帯にプレミアついてダフ屋か転売家が横行しそうな気がする。

→早い時間帯を、「徹夜組の管理リソースに使うのか」「転売込みで、購入者に寄せるのか」の考え方と思います。いずれにせよフリーライドする徹夜組にコストを支払わせることを目的としています。

ただご指摘のように、それ以外の時間でも転売が生じることは否めないと思いますので、「10-11時または1万人の先着入場のチケット予約」と、「フリー入場(今まで通りのリストバンド)」の運用に分けても良いと思います。

転売対応は、ご指摘いただいたワンフェスのダイレクトパス方式で使っている基準の個人確認で良いと思います。1万人分できるのか、については、徹夜対応されているスタッフの声も見聞きしますので、徹夜対応リソースをそこに回す考え方になります。「スタッフを徹夜させないことを優先し、それ以外のことは優先度を下げる」と。


5. あと15分5000人では全然足りないよなあ

→こちらはすみません、正確な数字は知らないので、適当に書いています。

待機列を減らすには、1) 並ぶ人を減らすか、2) 入場処理能力を上げる(入り口を増やしていく、既に中にいるサークルチケットでの会場前行列を減らす、手荷物検査時間を減らす 、チケット確認などの時間を減らす)になると思います。

メモ

全時間帯にダイレクトパスに相当するのがあっても良いかもですね。

十万人以上を時間帯でコントロールするのは難しいので、数千人や全体の一部に「お金を追加して払うと快適な環境が得られる」枠を用意する、という考え方です。

過去に、ヴェネツィアサン・マルコ寺院を訪問した際、事前に追加料金を払って早期入場券を買っておくと、現地で並んでいる人と別の入り口から並ばずに入れました。バチカンの美術館でも、予約しておくとほぼ並ばずに入れました。
www.venetoinside.com

お金を取るのかというところがありつつ、スタッフを含めて全体が快適になるところへ再投資されれば、特に文句もありません。

以上、また何か補足があれば追記していきます。ご指摘、ありがとうございました。

さらに補足「前提が違いすぎるし、先行議論を踏まえてない」

あさくらさんから、Twitter上でご指摘を受けました。



先行議論をきちんと見ていなかったことはその通りです。また挙げていただいた前提情報も大きく異なるため、私の書き込みはここまでとします。きちんと情報を集めて議論に加わることは、自分にとっては優先度が高くないためです。不勉強な領域での議論に参加するのはよろしくないと、自戒の意味で、メモしておきます。