ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

「F-Files 図解 メイド」を考える

図解 メイド (F-Files)

図解の精度は未知数

きっしーさんよりトラックバックをいただきました。それがきっかけで、考えてみました。



きっしーさんが言及されるように、今までのメイド資料本で「図解」にこだわったものはほとんど皆無です。メイドの描き方的な本は、ヴィクトリア朝メイドには程遠く、文章の資料本はあふれているものの、わかりやすい絵を意識した本は少ないのです。



新紀元社の本は、イラストの質にあまりにもばらつきがあります。かつて衣装の勉強をしようとして買った『コスチューム』、果たしてこれが商業レベルなのかと思えるほどのイラストで、かなり掴まされた感じがしました。



自分でいざ同人誌を作ってみると、如何に適切な絵を織り込むのが難しいか、痛感します。イラストを頼むこと、そしてその枚数を増やすことは、かなり困難です。



1:プロに頼むとコストが高い。

2:友人や知り合いの人に頼むとしても彼らの時間を確保できない。

3:自分が思い描いたこと、見ている世界がそのままには再現されにくいこと、絵を描く作業とは別に、その前の情報・感覚共有で、膨大な時間を必要とする。



今回のイラストを見る限り、『コスチューム』と同じ匂いがしています。内容が面白ければそれでいいのですが、この値段ではイラストに期待するのは難しそうです。



コスチューム―中世衣裳カタログ (Truth In Fantasy)

表紙が山田章博さんだったので期待して買ったものの……


質のよい「検索結果」を期待

目次を見る限り、正直なところ、「ライターの人が自分で研究して書いてある」ことは本当に少ないでしょう。ほとんど、主要参考文献やネットの情報の要約だと思います。『エマ ヴィクトリアンガイド』も、どの本のどの場所を参考にしたか、ある程度、わかります。小説やニュースとは異なり、「その人が作り出す情報」は少ないのです。(いい悪いではなく、それが普通なのです)



しかし、こうした本はいわば「ブックマークの集合体」「ニュースサイト」「良質の検索結果」だと思うのです。「既に存在している・散在している情報を再構成し、編集して、わかりやすく伝える」、そのことはオリジナルの情報よりも、より多くの人に影響を及ぼすことが出来、マニュアル本やガイド本と同じく、限られた時間・限られた資源の多くの人にとっては便利なのです。



Googleで、どこまでも時間を費やせば、欲しい情報は得られるでしょう。でも、人はすべてにおいてそこまでしません。新聞を見て、そのニュースソースが本当にあっているか、自分の足で調べに行く人はほとんどいません。雑誌やメディア、パッケージされた情報は人の時間を、選択にかかるコストを下げてくれます。その扱う情報の中身の価値にプラスして、「パッケージ・見せ方・伝え方」に個性が出てきます。



その点で、『エマ ヴィクトリアンガイド』や、今回の『図解 メイド』も価値を持つ、ことになるでしょう。多くの人が時間とお金を費やすことなく、伝えてくれる点で。



過去において、そういう需要を満たしてたのは同人誌という世界です。その同人に対して、「同人誌作家に、手軽な資料としてお勧めの解説書です。」と言ってくることに、同人の世界で資料本を作っている立場として、「負けないよ」というプライドは当然あります。


コミックス+解説本は強い

そう考えると、『エマ ヴィクトリアンガイド』はよく出来ています。「イラストレーターに絵を発注する」必要が無く、「既に描かれたコミックスの中から」絵を持ってこれるからです。



上記で言うと、1の部分はその本のためにイラストを書く枚数は極力抑えられるのでクリア、2の部分は関係ないとして、3の部分では本人が思い描いたものがそのまま絵になっているので不要、あのクオリティであの値段なのは、「イラスト」の部分でのコストが抑えられているからだとも思います。



また、森薫先生の書き込みは、一枚一枚に丁寧さと背景の正確さ、こだわりがあり、イラスト集的な展開が可能だったのも、特殊な事例と言えるでしょう。



そういう点で、久我は自分と同じ世界を好きな絵描きさんにもっともっと出会いたいと、思っています。可能であれば、今までに作った同人誌にこれでもかというぐらい、絵を盛り込みたいですし、そういう企画本を作りたいです。骨の髄までヴィクトリア朝メイドを愛されている森薫先生と一度でいいので、一緒に本を作ってみたいです。



とはいえ、まずは自分自身の描くものに魅力を出すことですね。いまだ、人を集めると言う部分では弱いのです。あまりの多忙さで途絶していた連載も、今週から再開するつもりです。



図解 メイド (F-Files)

エマヴィクトリアンガイド (Beam comix)


船戸明里さんのインタビューが『ぱふ』に

あの、『Under the Rose』筆者の船戸明里さんが、今月号の『ぱふ』でインタビューを受けているそうです。(WEB拍手にて情報をお寄せいただき、ありがとうございます)



『ぱふ』



実は作品でしか知らないので、かなり興味があります。本屋に立ち寄った際、買ってみようと思います。



船戸明里さんに三つ編みメイドを寄稿していただけるならば、最低でも十万円は出す覚悟があります。次回同人誌の表紙にしたいです。だったらもっと出します。家宝にします。お願いします。(誰に?)



『Under the Rose (3) 春の賛歌』感想


なんでこんなに働いたのかなぁと

300時間(月22時間*8時間=176時間、124時間の残業)働きました。昨日(今日)も朝の五時まで仕事してました。別にやらされる仕事でも無いのですが、段々と人がなぜ残業していくのか、わかった気がします。



うちの会社は半分ぐらいが目標管理制度的なもので、要は自分の仕事は自分で決めます。つまり、与えられた仕事が、「自分の仕事」になってしまう。「自分の仕事になった」以上、達成できないことは自己責任になる、そういうところでプライドや負けたくない意識で、過剰な労働時間に繋がるのかなぁと思ったり。



最初の目標設定、そして変化する状況の中、その仕事が与えられた時間で出来るか、条件は大きく動きます。その再検討も無しに最初の目標が達成しにくくなるのは、個人の責任なのか。個人の努力でなんとか出来てしまいそうな希望があるだけ、厄介です。こういう働き方は嫌いではないですが、「続ける」ことが大事なので、新年度は再検討です。