- 作者: 小池滋
- 出版社/メーカー: 山口書店
- 発売日: 1983/01
- メディア: 単行本
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最近の乱読具合はひどく、ここで取り上げている興味の幅が、どれだけ散在しているのか、と思われるかもしれません。執事の手記を読んでいたかと思えば、イギリスのDVDを見て、ガーデナーの話になり、今度はイブリン・ウォーです。イギリス文学です。
その中で興味深いことが2つありました。
ひとつは以前読んだ本に出てきたNancy Mitfordとウォーとの関わり。1955年に上流階級とそうでない階級の言葉の使い方に関する論文(Uとnon-U)をNancyは紹介し、ウォーが反論し、センセーションを巻き起こしたと言うのです。(上記の書P.20−23に依拠)
Nancyは貴族であるMitford家の娘で、この六人姉妹はヨーロッパで最も有名な姉妹でした。末の娘が現在のDevonshire公爵夫人です。そのエピソードはwikiか、以下の本で。
http://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Mitford
- 作者: メアリー・S.ラベル,Mary S. Lovell,粟野真紀子,大城光子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/03
- メディア: 単行本
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そもそもMitfordのご先祖は幕末/明治の日本にも来ていたり、六姉妹の中の唯一の男子Thomasは日本との戦争で亡くなったりと日本とも関連がある一族です。
- 作者: アルジャーノン・B・ミットフォード,長岡祥三
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/02/09
- メディア: 文庫
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話が逸れましたが、タイトルの件は、この言葉の使い方のエピソードの中、著者である小池滋先生の言葉として出てきます。専門の研究をされている方にとっての常識が、違う関心領域の人間にとっては未知でした。
なぜ執事がデキャンタを使うのか?
裏返せば、なぜ、主人たちは執事にデキャンタを使わせたのか?
お客が来た時、食事に輸入もの,例えば上等のものはフランス産のBurgandy(Bourgogne産)かClaret(Bourdeau産の赤)などを出すが,ラベルを見せびらかすようにして壜のままテーブルに出すのは成上がりのやることだと軽蔑して、わざとデカンターに移したものを出すのが礼儀である。本来デカンターでワインを出すのは,フランスの家庭での食事とか,町の庶民レストランで銘柄などを問題にせず安い土地の酒を出す時の習慣である。つまり、安酒のように見せかけて最上等のワインを客に出すところに,上流階級の奥ゆかしさ,ないし裏返しの傲慢さが見られるのだ。
『現代英米文学セミナー双書19 EVERYN WAUGH 小池滋編著 P.22より引用
とのことで、使用人のマニュアルだけを見ていたら、わからないことです。ただ、もうひとつ可能性として考えられるのが、「執事」(この場合はButler)の由来です。Butlerはフランス語のbouteille(bottle)の言葉を名前の由来とし、ワインを扱う職種として最初は登場しています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Butler
フランス貴族がどうしていたかはわかりませんが、その点では、フランスの流儀を持ち込んだのかもしれません。
或いは、デキャンタに入れた方が「管理」が楽だったのでしょうか? 飲み終わらず、デキャンタに残されたワインの行方は不明ですし、管理方法がマニュアルには載っていないので、執事の役得になっていたのかもしれませんが。
というところで、他の本を読んでいて、別のことを学ぶ、という事例が続きました。絶えず、興味の幅を広く持ちたいところです。
理由の補足
デキャンタを使う理由について指摘を受けたので情報を追加します。本来的にはマニュアルに作業内容も書いてありましたが(忘れていました)、「古いワインに生じる澱を濾過して取り除く為(布を使って濾過する描写あり)」と、「古いワインに固有の匂いを飛ばす為」というものもあります。