ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

コミケ99に参加したサークル側の視点・感想

2021年12月31日のコミケに、サークル側として参加してきましたので、良かったこと・気になったことを振り返ります。

感染症対策による制約事項

1:一般入場:1日5.5万人規模(事前チケット購入、追加入場なし)
→これまでは入場者数無制限。前回2019年冬コミで約19万人なので、約70%減。

2:サークル参加数:1日1万サークルかつ配布入場チケットは3枚から2枚
→前回1.1万サークルなので、2万人/3.3万人で、サークル関係者約40%減。

3:入場時に検温、ワクチン接種証明等の確認、本人確認証明証の提示

新コミックマーケット99チケット販売について

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コミケ99・チケット情報(上記「新コミックマーケット99チケット販売について」より引用)

それ以外の特記事項

1:コミケカタログ(紙)の廃止とウェブのコミケカタログ運用
2:事前チケット購入自体は、前回導入済み
3:上記、一般入場の入場者は、入場時間を時間帯ごとに割り振られる。
4:原則的に入場者は東館か、西館・南館かのいずれかにしか入れない。これまでは往来自由。

背景の振り返り

2020年は夏季の東京オリンピック開催のため、夏にコミケ会場が利用できなくなり、2020年春にコミケは開催予定でした。しかし、コロナの感染拡大が重なり、春のコミケは中止になりました。

さらに、東京オリンピックの延期・会場が抑えられた状況が続き、2021年9月パラリンピック終了以降に、ようやくコミケが開催できる会場側の条件が整います。

しかし、コロナの感染対策として大規模イベントが入場規模の制限を受ける状況は続きました。行政との協力の中で感染症対策を行っての開催が必須となり、入場時に前述のオペレーションが加わりました。

サークル参加者として良かったこと

1:コミケが開催されて参加できたこと

当たり前と言えば当たり前ですが、感染状況次第では舵取りが難しい中で、上記の様々な仕組みを整え、人員を配置し、関係各所とも調整をした上で大規模で開催実績を作ったことは、コミックマーケット準備会の尽力あってのことで、参加者として感謝しています。そのおかげで2年ぶりに同人誌の新刊を作り、参加でき、会場にて読者の方たちに出会えました。

2:最も快適なコミケ

コミケはこれまで参加人数が膨れ上がり(来るものは拒まず)、往復の交通機関を始め、会場内部の移動や、トイレの利用などで行列ができました。場合によってはすし詰め状態でした。

しかし、今回は入場者数の規制で混雑が相当に緩和され、鉄道の利用でもトイレでほぼ並びませんでした。これは初めての経験で、過ごしやすいものでした。会場周辺への治安への不安と、警備対策費負担などに影響を与えて問題視された「徹夜組」も実質不在となり、かつ一般参加者には見えない「サークルチケット入場者による開場前行列」も、サークルチケットの削減とそれに相当するアーリーチケットの導入(入場価格が普通より高い)で相殺したように見えます。

3:撤退も容易なコミケ

快適さと重なりますが、コミケの宅急便での在庫搬出は行列ができやすく、サークル参加者にとって「その日、最も長時間並ぶ列」「宅急便が最大手」と言われるほどの状況でした。特にサークル参加で疲弊しきったところ、最後に外で行列に長時間並ぶとダメージが大きいものの、それがありませんでした。このため、いつもは混雑回避のために早く撤収して宅急便に並んで撤収していたが、今回は数年ぶりに最後までサークル参加できた(これは東館は別だったようなので、後述します)

4:サークル参加登録が便利になった

これまでのコミケでは、スタッフがサークルスペースに人がいる時を見計らってやってきて、コミケで初頒布する同人誌の内容確認と受け取り、サークルが記入した参加登録証の受け取りを行いました。しかし、これは何度も足を運ぶことになり、たまに提出済みの場合に聞かれることもあります。

今回に関しては、サークル登録を封筒で行う方式で、スタッフ確認が効率化されていました。具体的には、サークル情報が印字済みの提出用封筒(素晴らしい)が参加スペースの机の上にあり、そこに見本誌を入れて、スタッフがいるスペースに行って提出するだけです。ちょっと眺めたところ、そこで受け取った同人誌をスタッフスペース内で確認しており、問題があった場合のみ、スペースに訪問しているように思います。

今回見たコミケのオペレーションで、最も良い点の一つに思いました。

5:宅急便の引き取りの手続きが減った

今まではゆうパックを利用しての在庫搬入を行い、当日に引き取り手数料の支払いを行なっていました。今回、佐川での事前予約を指定され、かつその料金支払い時に引き取り手数料も支払う形で、当日支払いがなくなりました。

確信がない良かったかもしれないこと

1:サークルスペースに滞留する人が減った?

環境次第かもしれませんが、チケット数が3枚から2枚に減ったことと、感染対策の影響か、これまでよりサークルスペースを拠点にして買い物に出かけ、その後は戦利品を携えてスペースにたまる、という人たちが減った印象です。元々、西館は東館よりも人が少ないのでなんとも言えないところもありますが。

2:検温導入で体調不良者が来なかった?

これは体験談ではなく、想像による一般論です。コミケは特別なイベントとして、体調不良でも無理して参加するケースがおこえります。今回初めて「検温」を導入したことで、体調不良者(発熱している人)は参加できなくなりました。この点で、体調不良の場合に参加しない決断が、以前よりしやすくなったように思います。その結果、急病者や医務室の利用者は減ったのでは。


サークル参加者として気になったこと

1:訪問者の減少

事前に試算したように、入場制限によって最大70%の入場者数減少が見込まれたことで、サークルを訪問する人も減りました。具体的には新刊の頒布数が通常の1/3-1/4ぐらいになりました。

コミケはオールジャンルの最大規模の即売会として表現の多様性を持ち、「来るものは拒まず」を体現しています。多くの人が来訪することによって、マイナーなジャンルや他の同人イベントの参加が難しい同人活動をしていても、一定数の人たちに出会う場としての役割も持っていました。

今回はその部分の実現に制約が加わりましたが、これは「開催が最優先事項」で、今後は感染状況次第で上限を引き上げていく過渡期であるため、特に不満はありません。いきなり0から100の状況に戻れるとは思いませんし、100の状況に戻るべきかも検討されていると思います。

制限が伴う中、東西の移動制限という人流の抑制についても、私が参加した12/31時点では前日よりも早い段階で解除され、その時間から人の流れが増えた感じがします。

そもそも訪問者数の減少要因には、2つあると思います。

1)外出リスクを回避して不参加(これまで来た人が参加の意思を持てない)
2)チケット抽選による落選(参加の意思はあったけれども、落選で来られなかった)

この比率によって、対策もだいぶ違います。前者は時しか解決しません。コロナのリスクが社会生活に支障をきたさないレベルに落ち着くと社会的に合意がされるまでの間は、参加者上限を引き上げたとしても、それほど増えないはずです。この視点で不参加を決めたサークルも少なからずあったように見えます。

後者のチケット購入の抽選倍率から後者の数が準備会には見えていると思いますので、今後はそこも踏まえての対応と思います。現状で入場制限を外しても普段通りにならなかったと思います(適当に考えて10-12万人ぐらい?)

2:宅急便搬出の選択肢の少なさ

私がいた西館は、ホール内にクロネコヤマトがあり、行列はほぼありませんでした。仮に並んでも内部で並ぶので寒くありません。

しかし、Twitter検索で観測したところ、東1-6ホールの宅急便搬出受持はゆうパックが実質的に1社だったため、「ゆうパックが最大手」という事象が起こりました。しかも外なので、寒い中で1.5時間並んだ人もいるとのことです。

また、今回は佐川急便が搬入・搬出に関わりましたが、制約事項がありました。搬入では箱サイズ120がなく、料金がひとつ上の140になって割高になったこと(これまでの搬入配送料の1.2〜1.5倍程度?)、当日も東・西に佐川急便の利用はウェブで事前予約が必要でした。当日の搬出数は在庫で変動するため、選択肢になりにくいです。この受付が自由であれば、行列は分散して若干緩和したと思われます。

ただ、この点については、以下のように納得はしています。

・今回に限らず、これまでも搬出時の宅急便は常に行列ができており、今回が異常というわけではない。

・開催規模が1/4になったことで、ビジネス的に無理に行ってもらっていたことも難しくなった可能性がある。コロナ禍でもあり、人員配置やその優先事項は相手会社次第で、準備会が頼み込んで佐川急便が「この条件ならば」と飲んだ可能性もあるので、そこは部外者からはなんとも言えない。


「最後まで参加すると、宅急便が行列になるリスクがある」
→「完売するだけの適正在庫を持ち込もう」という話もありますが、完売は避けたいのも人情としてあります。


とはいえ、実はサークル向けには、相当に選択肢を広げてもらっています。

会場で在庫を預かり、「次のイベント会場」に配送を行う在庫預かり・配送サービス会社が参入していること。

 ウエストウィング:https://www.west-wing.net/2021winter.html
 HakoBook:https://hakobook.com/shitei-event

とらのあなメロンブックスなどの同人ショップが、会場内での在庫預かり・同人委託の流れを作る。

 とらのあなコミケ99会場に委託受付回収所を設置します!
 メロンブックス【C99】コミケ無料回収/無料搬入サービス

以前から書いていることですが、「最後にまとめて在庫を搬出しようとすると、箱数が多くて大変。だいたい14時以降は、それまでと同じ部数が売れることはあまりないので、その時点から少しずつ在庫の搬出を始める」のが良いと思います。みんなで分散して空いている時間に搬出しておけば、開催終了後の搬出量も減り、受付時間も減るはずです。

ここはお互い様というところもあります。

15年前に書いたコミケのサークル視点の注意事項:搬入・搬出も、あとでアップデートします。

今後について

時間での解決と、上記「良かったこと」の継続を願っています。

時間が解決すること

1:コロナが終息して、総参加者数が増える。

続けて欲しいこと

1:チケット購入と時間制限での入場=徹夜組の廃止の継続
2:サークルチケット入場者数を3名から2枚にしたことを維持する。椅子は2脚欲しいです……
3:サークル参加登録証の提出を封筒で行うこと
4:搬出手段の継続と、拡大。及び早期搬出への告知など?

総論

あくまでも、サークル参加者としての観点です。

・「参加者数が少なくて快適!」でした。交通機関とトイレの快適さは人権。
・コントロール可能な部分で「様々な工夫で便利になっている」ところがあり、継続して欲しいです。
・コントロールできない「感染症の状況に基づく総量規制」は、一サークル参加者としては増やして欲しい、としか言えません。今回の対応の良さを見るに、コミックマーケット準備会への信頼度は最大値なので、信頼しています。

「自分のサークル参加・同人活動」ということへの個人的感想は別に書きます。