ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

コミックマーケット78/3日目・参加終了

本日スペースにお越しいただいた皆様、誠にありがとうございます。



非常に暑い中、なんとか無事に参加を終えて帰宅することができました。



個人的にはいろいろとミスが続き、今回のコミケは大丈夫か、と危惧していました。在庫を搬入し忘れるかもしれない事件があったり、ブログでコミケの開催番号を間違えたり、挙句、本日、参加開始から一度も忘れたことがないスペース用のテーブルクロスを「アイロンをかけようとしてどこかに置いたまま忘れる」といった具合でした。



それでも、「駄目なときは何をやっても駄目」と諦めがついていたので、状況が悪いなりに形を整え、結果としてはお会いできた方々から出版に向けた励ましや、活動についての暖かいお言葉をいただき、参加して幸せだったと思えるコミケとなりました。


当日の感想

朝の光景

コミケサークル参加前日は、いつも気持ちが落ち着かなくなってか、ほとんど眠れません。早めに寝転がって目を閉じて、音楽を聴きながら身体を休めることに主眼を置いています。他の機会ではほとんどないのですが、今回に限ってはいつもより眠ることができました。



有明の会場には午前7時前に到着し、友人と合流してサークルスペースの準備を始めました。いつもはスペースを圧迫する新刊の在庫は、今回に限っては少なく、また諸事情があって在庫の持ちこみ数が少なかったので、ゆとりある環境となりました。



しばらくスペースの都合(誕生日席は在庫が置きにくい)で誕生日席を避けたいと希望していましたが、今回は書き忘れたのか、数年ぶりに誕生日席配置となりました。西の誕生日席は1テーブル・2サークル配置(東は2テーブル・4サークル配置)で、また東よりも空間に余裕がありました。


参加者の増加と創作者の高齢化?

ひとつ今回感じたことは、西館で私が見た範囲の開場前行列(サークルチケットを使って大手サークルに並ぶ列)は、かなり若い層が多い印象でした。私がおっさんなので若いといっても20代前半ですが、ここ1〜2年でコミケの参加層が変化している印象です。ニコニコ動画的な文脈やネットメディアとの親和性が高い(コスプレ写真などネタにしやすい)だけではなく、今年はNHKでも結構大きく報じられるなど、裾野は広がっているのでしょうか。



ただ、以前読んだコミケットプレスのアンケート記事では、確か、過去に比べてサークル参加者の高齢化が進んでいたと思います。前回アンケート時の上位層がそのままスライドして数年後のアンケートで上位に出ていたと記憶しており、必ずしも「若い同人表現者」が増えているような数字には見えませんでした。



友人と昨日話したのですが、同人誌を作ってから10年目となる私にしても、まだコミケの中では「長い」部類だという自覚がありません。15年、20年以上と続けている方が多い「印象」(実際の数字は知りません)を受けるからです。


メイド・アンソロジー

今回のお隣は前回同様『英国メイドさん協会』様で、新刊の『Maid-san Souvenirs』(メイドさんのお土産・冥土の土産?)は、24名の同人作家の方々が参加する「コミックス」としてのアンソロジーでした。非常に分厚く、B5サイズ・ブックカバーつきで、私の主観で言うと商業版TRPGのルールブックぐらいの存在感です。



私自身、メイドジャンルには長く参加していますが、かつては同ジャンルの同人誌を買っていたものの、この数年、自分の追い求める方面追及に余念がなく、なかなか自分が所属するジャンルの作品に目が向いていませんでした。また、サークルスペースにて読者の方とお会いすることを優先し、スペースを離れる新規開拓は避けていました。「スペースを離れたときにこそ、お会いしたい方が訪れる法則」があるからです。



そんな出不精な私にとって、「今の同人メイド」を知る意味でも、作品と出会う意味でも、素敵な出会いをくれるものでした。同人誌を作る立場としては、これだけの人数をディレクションして原稿を集める作業は想像するだに胃が痛いので、主宰されたMaid Aさんの努力と情熱には脱帽です。



個人的には久しぶりに「悠々アソブ」さんの作品を読めて嬉しかったです。


スペースにて

今回のコミケは非常に蒸し暑かったものの、配置された場所は風の通り道だったからか、時々、涼しい時間がありました。また、近くのシャッターを開けた出入り口からは陽光を浴びた緑が非常に爽やかで、さながら高原の避暑地のようでした。



今回もほとんど席を離れず、多くの方とご挨拶できたこと、会話をできたことに感謝しております。全体の傾向としては普段と変わらない感じで、だいたい男女で半々ぐらいの方にご来訪いただきましたが、やや若い層(20代前半)が加わってきてるように思います。



正直なところ、出版の話が延期を繰り返しているのでその都度、個人的に「言い訳」をしているようで気が引ける部分もありましたが、今回、出版の話を尋ねて下さった皆様からは暖かい励ましをいただき、参加してよかったと思っています。



毎回書いていますが、「新刊下さい」ほど嬉しい言葉はありませんし、ご友人の分も買っていかれる方に出会えることも、筆者冥利に尽きます。そして、差し入れを下さった方々も、ありがとうございます。甘いものは嬉しかったですし、九州から来られた方もいたようで、こういう場ですれ違えることの面白さを感じます。



心の差し入れ的なものとしては、西館は立地が良かったのか、あるいは東よりも人口密度が低いことが幸いしたのか、多くのコスプレイヤーの方々の姿をスペースから見られました。何名かのコスプレイヤーの方にも購入いただけましたが、メイドの格好をした方より、それ以外のコスプレをされている方が多かったです。その分だけ、メイドに興味を持つ方の多様性が増しているように思えるので、いろいろな方に興味を持って欲しい自分には、嬉しい体験でした。



今回の西館でいえば、動きやすかったと思える点で、メイドジャンルに興味を持つ方「以外」にもすれ違えたようです。特に、『英国メイドの世界ができるまで』や『MAID HACKS』といった「メイド」が強い同人誌が完売して、地味な今回の新刊と『英国質疑の流儀』が残ってから、セットで買う男性が増加しました。私の記憶の限りでは初めてお会いする方ばかりでした。



いわゆる創作ジャンルは、「ファンだから買う」だけではなく、ここにしかない本を探す、「創作を発掘して買う」方々も多く存在しています。『英国執事の流儀』は、ある種、「会社や組織で部下や後輩を持つ経験のある方々」に響く内容となっているので、その辺りが受け入れていただけたのかと思います。


総論的に

以前、ブログに書きましたが、「新刊下さい」と言っていただけること、そうした関係が構築できて続いていることが、本当に奇跡のようなことで、得がたい体験をさせていただいていると思います。今日、スペースに立っていて、こうしたやり取りを行えること、同人最高と思える機会に恵まれたことに、万感の思いがあります。



読者の方から、同人誌を通じてお伝えする情報について感謝をいただくことがありますが、こちらも皆様の感想を受け取ることに支えられて活動を続けられていますし、現在の自分が在りますので、そのことをお伝えできればと思います。


補足事項等

新刊誤植の訂正

P.4「上記資料を見ると、1891年には〜」のくだりは、1881年が正しいです。読者の方よりご指摘いただきました、ありがとうございます。この誤植の訂正箇所は埋没しないよう、どこかに再掲します。


新刊の電子書籍対応

利用しやすい決済手段を有する、アマチュアで利用可能なプラットフォームが見出しにくく、もう少し考えて探してみます。


在庫について

搬入部数が少ない関係で完売した『MAID HACKS』「『英国メイドの世界』ができるまで」については在庫はございますので、次回イベントには持っていきます。今のところ、『英国執事の流儀』と『MAID HACKS』に関しては「とらのあな」で委託しておりますので、こちらよろしければご利用下さい。「『英国メイドの世界』ができるまで」は委託しておりませんでしたが、そろそろ検討します。(新規委託は他サークル含めた新刊が多い状況である8〜9月中の対応は難しいです)


イベントでの見本誌対応について

「『英国メイドの世界』ができるまで」を見本誌でも良いとご購入いただいた方がいらっしゃいましたが、次回のイベント参加時に見本誌をお持ちいただければ通常のものと交換いたします。会場でもお伝えしましたことですが、念のため追記となります。



また、本日の新刊『英国メイドにまつわる7つの話と展望』の見本誌を、誤って購入された方がいたようです。こちらラベルつきの見本誌をお持ちいただければお取替えしますので、こちらもあわせての告知させていただきます。


講談社BOXからの出版はいつ? もう出ているの?

発売予定は何度も延びていますが、編集部から出た正確性の高い予測では2010年10月中になりそうです。最後の原稿の調整で一ヶ月を費やしたり、校正の分量が半端ではなかったり、図版や写真資料のボリュームも膨らんでいるので、並々ならぬ時間がかかっています。



本日、お会いした方々から相当エネルギーをいただきましたので、校了の9月末に向けて、引き続き、がんばっていきます。


公爵家のお話はどうよ

こちらも本人が手をつけられず、かつ最近忘れていた事項なのですが、ご要望いただけたことを感謝しております。2001年ぐらいから始めた創作ゆえに結構、直したいところや調べたいところが増えており、優先順位的には使用人の完結編を制作後、貴族の生活を調べ始められた頃に、形を整えてみたいと思います。



オリジナルのメンバーでできたらいいと思いますが、上述のこともあって来年以降のことはどう転がっているか分からないので、気長にお待ちいただければと思います。

Hannah Cullwickの日記の翻訳は出しますか?

非常にレアなご要望でしたが、現状、個人の優先順位として趣味の範疇ではこの領域は手が出せない状況です。私自身、社会人として働く中、時間を作って同人活動をしており、これ以上、時間を費やすには、経済的な足場の転換を必要とします。



ただ、出版後に、この本に限った話ではありませんが、私の時間をメイド知識の普及や研究の土台つくりをする意思は有ります。



出版後の展開次第の話となりますし、多分に運と、私が提供しえる価値の需要があるかどうかも問われますので、もう少し具体案や形が見えた際にお伝えします。人間の時間は限られていて、限られた中で作業を増やすには人の力を借りなければならず、とはいえ力を借りるには時間への代価も必要となるので、その辺りがうまく回る仕組みを考えています。



メイドジャンルに育てられた立場なので、ジャンルの強化に繋がるリソースの増強を、私の考える範囲で行っていくつもりです。


今後の同人活動

2週間後の08/29にコミティア93に参加予定です。明日に冬コミに申し込みを行います。