ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

エマ アニメーションガイド1巻

思っていたものと、ずいぶんと違いました。設定資料・図面・デザインなどのボリュームが多いかと予想しましたが、クオリティ的には多分DVDの初回付属ブックレットの方が内容が濃い感じです。いわゆるフィルムコミックほどではなく、画面一つ一つに解説がついているのはわかりやすく、良心的です。



本単体とすると、画面画面の完成度・情報密度が高いものの、全体としての流れ、「ストーリー」を感得するには難しい構成で、まずアニメを見て、その上で興味のある人が「穴埋め」として補完する作りなのでしょう。この本だけを見たとしても、アニメを想像するのは困難です。



『エマ ヴィクトリアンガイド』が単体で存在する本ならば、こちらは「DVD」と共に存在する、しかし、込められた情報量と伝えられる表現の幅は圧倒的に高い、といった本になるのでしょうか。フルカラーで紙質にもこだわっていい仕事をしています。



ただ、画面で伝わりにくかったものの解説が多くあるのは嬉しい反面、「スタッフが頑張ったことを分かって欲しい」気持ちが出すぎているように感じました。『エマ』の作者は森薫先生なのか、村上リコさんなのか、監督なのか、『エマ ヴィクトリアンガイド』において調和していたバランスが、崩れているようにも思います。



『エマ ヴィクトリアンガイド』は少なくとも、『エマ』の魅力を伝えるために存在しました。しかし、今回のガイド本は「アニメで表現されている世界」を伝えるために存在しています。



「では、『エマ』本来の魅力は何なの?」というところで、そこが伝わってきませんでした。なんというのか、『エマ』という作品が、「ヴィクトリア朝を演奏する道具」になってしまっていないか、そこが多分、前にコラムでも書きましたが、アニメや最近の展開に対しての違和感かもしれません。



『エマ』の魅力を増す手段としての「ヴィクトリア朝」が一人歩きして、「ヴィクトリア朝を伝える手段としての『エマ』という、本末転倒が起こっている、と感じる本の内容です。



否定的に書きましたが、ここにある知識は面白く、買って損はありませんし、様々なエッセンスが集約されていて、わかりやすいです。アニメを見た人には、オススメできます。

ASIN:4757724462


関連

ヴィクトリア朝メイドを語ること・『エマ』に思うこと