2004年の資料・本
05位:『名探偵ポワロとマープル』の失敗
期待していたものの、「クリスティー作品の世界を伝える」作品ではなく、プロデューサーが「俳優を声優に起用する」番組になってしまったため、世界初のアニメ化が泣いています。今日、12/31に例の『クリスマス・プディングの冒険』が再放送していました。原作からトリックをアレンジしたこのストーリーには、「人間が肌で体温を感じる生き物」だという当たり前の事実を無視した致命的な脚本ミスがあり、原作の雰囲気を損ねました。そして、それを制作に関わるプロの人々が誰も指摘せずに放送されたのは、あまりにもお粗末で哀しいことです。
04位:『荊の城』『半身』などのサラ・ウォーターズ作品
流行する本も買わず、雑誌も専門情報サイトも見ず、ただ友人の評価や書店散策などで適当に捜している日々ではありますが、たまたま書店で見つけたのが、『半身』でした。そこですっかりサラ・ウォーターズの描写に引き込まれ、『荊の城』も読みました。気づけば『Tipping the Velvet』のドラマまで入手していました。ミステリという要素で、ヴィクトリア朝の世界観を広く伝えた作品であり、日本におけるヴィクトリア朝認知度に最も貢献した小説家として、去年・今年と語っていいのではないでしょうか。
03位:『The Country House Kitchen』
もしもこの本が存在しなければ、今回の新刊4巻は作れませんでした。2002年01月、今からほぼ三年前に、初めて海外で通販した記念すべき一冊は元々絶版書籍でした。今は古本でさえ入手がほぼ不可能な一冊になっています。その理由はわかりませんが、過去に入手を決意した自分の直感を、褒めてあげたいです。そして、今回の新刊でも、まだまだ伝え切れていない部分は多く残っています。それをどう伝えていくかは、来年の課題です。
02位:『エマ』4巻&『アンダーザローズ』2巻
日本のコミックスによる使用人・メイドさん描写も、ついに世界レベルに到達しました。どちらの作品でも『階段の上』『階段の下』が明確に分けて描写され、物語にリアリティと緊迫感を与えることに成功しています。結局、創作は「知っていることしか」書けません。その点で、「熱心に世界を広げていく」、特に『エマ』は1巻の頃と比べ、作者の成長と共に作品も広がっている感じがします。新聞各紙で取り上げられたり、アニメ化するのも当然といえます。
01位:『アガサ・クリスティー自伝』
日記内でふれた、この文章がすべてです。
『かりに今わたしが子供だったなら、いちばん寂しく思うのは使用人がいないことだと思う。子供にとって彼らは日々の生活の中でもっともはつらつとした部分なのだ』
『よくいわれているように、彼らは"自分の立場を心得ている"が、立場を心得ているということはけっして卑屈ということではなくて、専門家としての誇りを持っているということなのだ』(『アガサ・クリスティー自伝』(上)P.58〜59より引用)
同人誌で資料本を作る作業は、「如何にいい材料を見つけるか」に70%以上、左右されます。感度を広げ、様々な関心を持つこと、それが最も大切だと思います。その結果、思いもよらぬ知識や存在に気づくことがあるのです。
2004年の映画とドラマ
今年の特色をふたつ挙げるならば、「英語ドラマに本格的に手を出したこと」と、「『MANOR HOUSE』との出会い」に集約されます。前者では、『Upstairs Downstairs』を制覇(全68話)したのを皮切りに、『Brideshead Revisited』『Lillie』『Tipping the Velvet』『Victoria & Albert』などに手を出しました。
後者の『MANOR HOUSE』との出会いの契機は、ほんの偶然でした。詳しくは2004/04/19の日記に譲りますが、これも上述の「様々な関心を持つこと」によってのみ、存在を気づきえたものです。
このドキュメンタリーへのコメントは別途記します。
2004年総合ニュース
最後に、同人活動に関わるような総合的なニュースです。05位:イギリス旅行
イギリスの建物やカントリーハウスが見たい気持ちが高まり、初上陸してきました。海外経験はほとんど無く、語学力も低いのですが、いい経験となりました。準備に多大な時間を費やし、友人との打ち合わせや協議は何回にも及びましたが、それだけの価値がある旅行でした。04位:コミケ当選(5回連続5回目)
2002年冬、2003年夏冬、2004年夏冬、気づいてみれば5回連続での出場となりました。毎回新刊を出しており、かなりのプレッシャーではありますが、「新刊ありますか?」と買って下さる人たちのことを思うと、苦にはなりません。今のところ前年比で成長を続け、活動開始からの累計は6種類・2414になりました。自分自身が納得できる本を作って、それが受け入れられた場所がコミケでした。自分はコミケで育てられました。あの会場の雰囲気や訪れてくれる方々の存在が無ければ、ここまで真剣に研究したり、執筆は出来なかったでしょう。コミケは人が本当に多く、それだけに本を読んで下さる方も大勢います。
こうした「実際に人が自分の意思で本を手に取る。それも筆者の目の前で本を読んでくれる」「短い時間ながら買うかどうかの判断をする」ことは、ネットでは代替出来ないものです。目を輝かせてくれる人、ほんの短い会話ながら喜びを声や表情で伝えてくれる人、そうした人に出会いたくて、参加を続けています。
目の前で問われる、あの緊張感。
TRPGに興味の無い人にはわからない話ですが、数年前、角川や電撃などで構成されたゲーム出版懇話会主催によるTRPGイベントのJGC(1994晴海→1995幕張→1996ホテル浦安)に、GMとしてボランティア参加したことがあります。あの大会の為に、全国からプレイヤーが集まりました。その「コスト」に対して、自分のマスタリングは見合ったものなのか、今も時々思い起こします。自分の本を買われた方が、「コミケでいい本を見つけたよ」と、その一冊に加われれば、いいなと思います。
だからこそメイド・ジャンルが創作少年に成立する限りは出て行きたいと思いますし、数年後にジャンルが消えたとしても、創作として出続けるつもりです。その頃はもしかしたら、「帝政ロシアの生活史」を始めているかもしれませんが。
03位:初の合同誌に参加しそう
お誘いいただき、初めての試みに挑戦することになりそうです。といっても、特に趣向を凝らした企画を自分で作るわけではないのですが。来年の話です。02位:同人誌の参考文献になる&既刊と新刊をいただいた
初めての経験です。同人誌の参考文献にあげていただいた上、その既刊&新刊を頂戴しました。ありがたいです。01位:『MANOR HOUSE』の影響力
某イベントに参加していたときのことです。会場がうるさすぎて声がよく聞こえず、会話した文脈から類推するしかないので錯覚かもしれませんが、このジャンルで有名な方(?)に、既刊をお買い求めいただけました。友人も久我もお顔を知らなかったので、聞こえた途切れ途切れの内容だけでは確認できず、その日の日記に書くこともしませんでした。その方はDVD『MANOR HOUSE』を紹介した初期段階に、久我のサイトでそれを知り、買ったとおっしゃっていました。果たして、ご本人だったのでしょうか?ご本人だったらいいなぁと思っています。
また、『MANOR HOUSE』は人を動かしました。夏コミでも、「サイトを見て購入した」「それでイギリスに行ってきた」と話して下さった方がおりました。日本での『MANOR HOUSE』人口は着実に増え続けています。