ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』

友人が昨年11月ぐらいに借してくれました。「コミケ前の入稿」で忙しいこと、「いいものに触れすぎると創作のエネルギーが逆に削がれる」可能性があることなどから、二ヶ月ぐらい放置していました。



三が日の最終日、ふと思い出して始めたところ、危険領域でした。久我は一度ゲームにはまると「先が知りたい」気持ちが強く、中毒傾向が出ます。ここ数日の睡眠時間は平均4時間程度。社会人としてかなりの駄目っぷりです。風邪も引きました。



ようやく全八話をクリアしたので、冬コミに出た『礼』は自分で買うつもりです。


日常描写がすごい/馬鹿描写が突き抜けている

とにかく「言葉の魔術師」ですね。この筆者にかかれば、日常のすべてが輝きを帯びてしまうでしょう。ありふれた遊びや光景を、杖の一振りで黄金に変えてしまいます。仲間と過ごす時間、総称としての「部活」が好きなんでしょうね。『イリア』を思い出しました。



こうした「言葉」をテンポよく読ませるには「紙」という表現形式では適していないです。音楽を重ねて、軽快に膨大なテキストを読ませていく、しかもそれはユーザによる「エンターキー」によって加速していく、受動的でありながらも能動的な部分もある、「紙」では表現できない手法です。



また、キャラクターの「立ち絵」が会話の速度を高めます。文章ではその人物と分かる特徴的な言葉(「おじさん」「ボク」「〜かな? 〜かな?」など)を混ぜればある程度識別できますが、人物名や「〜が言った」などの表現は欠かせません。しかしこのようなゲームでは、「立ち絵」を混ぜることで、言葉の発信者が明確になり、非常にリズミカルに会話の流れが楽しめます。



それに「紙」では「先読み」出来ます。自分が手にしている本と、読み進んだページから「結末」までどのぐらいの位置にいるか容易に把握できます。また、面倒であれば「そこまで飛ぶ」こともできます。映画を見ていても、だいたい「上映時間の半分ぐらいだから」との類推で、結末までの距離を測量できます。



しかし、ノベル形式のゲームでは位置が分からないので、不安です。本当に迷宮のように、「今がどこにいるのだろう?」「この展開だから後半だと思うけど、でも本当に?」「これで終わりか……と思ったらまだ続くのか」と、感覚を喪失します。


音楽がすごい

「紙」が適していない理由のもうひとつは、「音楽」の存在です。ありえないぐらい情景とマッチした音楽を揃えていて、心が突き動かされます。



既に「ゲームミュージック」という言葉は廃れてしまっているかもしれませんが、最盛期のファルコムの『英雄伝説』『Ys2』オープニングは魂が震えます。あれらは楽曲としての完成度もあります。



ひぐらしの音楽は決して主役ではないですが、欠かせない主要キャラクターです。心を乱高下させます。リリカルなトーンで琴線をかき鳴らされたと思えば、恐怖で鷲掴みされて背中が寒くなる。すべての要素が緊密に絡み合って、どれかひとつでも欠けてはならないのです。


キャラクター

については特に書くべきではないと思いますが、「生きて」ますね。



当サイトとしては、入江先生ぐらいに頑張らないといけないのかもしれません。まだまだメイドさんへの愛が足りません。


同人の究極/ノベルゲームの至高

今までに出会った「同人」で制作されたものの中では、心と感情を鷲掴みされて、時間を費やした作品になります。友人は「去年最大のゲーム」と評しましたが、一年遅れの僕にとっては「今年最大のゲーム」であり、「最も涙を流した作品」になるでしょう。



いわゆるノベルゲームとしても、今までに接してきた中で最も感情が動き、「ノベルゲーム」という定型化された括りの定義を新しく覆すような展開をしています。



同人、すごい。



リアルタイムで経験していたら、身悶えしていたでしょう。久我は諦めが早く、「短時間で楽しむ」に主眼を置いて、謎解きはあまり重視しませんでしたが、推理の正解を楽しむよりも、推理にいたる自分の思考過程(何を根拠にそう思ったか・どの情報をどのように受け止めたか)が非常に面白かったですね。



祟りがあるのか、無いのか?



そう思った時点でもう、引き込まれています。



「どちらがおかしいのか、わからなくなる」という展開もありますが、これは以前書いた『メイフィールドの怪人』を思い出させました。ノベルゲームは小説よりも、感情移入の度合いを劇的に高めるのが出来るのだなぁと、思いました。



日常含めた膨大なテキストを表現するならば、紙による小説ではない方がよいのでしょう。いつか「ヴィクトリア朝で屋敷でメイドさんなゲーム」作ってみたいですね。



今日はしばらく、耳鳴りでか、「セミの鳴き声」が聞こえていました。