ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

BBC『Lark Rise to Candleford』第2話・二つの家族

最初に:前回「郵便」への感想


イギリスで制作された「小公子」を思い出しました。



郵便料金負担は問題がありまして、郵送事故があったとき日本で補償を要求できるのは、切手代を貼った送り手でして、遅れて迷惑を被った受けては苦情をいえません。だから受け手が送り手に送付を確認して、郵便局に調べてもらって、紛失だと思ったらまた送り手に連絡して送り手に損害請求を出してもらわないといけないのです。手間です。



就職活動の採用通知、会社は速達で出してくれたのに、うちに来るのに一週間かかりました。



感想、ありがとうございます。日本でもいろいろとあるんですね。久我も一度だけ郵便事故に遭いました。送付したものが届かない、というのです。結局見つからず、連絡もなく、保障もありませんでした。



以降、そういうものは履歴が追える方法を使うようにしましたが、損害請求と言うのもあったんですね。



以下、第二話感想です。ネタバレを避けたい人は見ないようにご注意下さい。






























第2話感想:家族

意外と事件が多くて、『Cranford』よりも面白い感じがしてしまいます『Lark Rise to Candleford』、第二話は家族の絆、です。



駄目叔母さんMrs Arless、ドラマの冒頭でいきなり公吏に「召喚」されます。例のビールを売った行商人が公的機関(この場合、その地域の領主Sir Timothy Midwinter)に訴えて、彼女を裁判の場に引き釣り出したのです。



お金を払えればいいのですが、頼みの綱である夫からの手紙には「新しい航海にまた行く」というもので、頼むすべもなく、貧しい村人は彼女の借金を代替することも出来ず(そもそも的にお酒に弱い彼女に問題があるのですし)、彼女は息子と娘との別れを覚悟しなければなりません。



娘を着飾らせて卿の屋敷へ行って慈悲を請うも、効果がなく。挙句(本当にこの人のアクションは「挙句」の言葉が似合います)、息子Alfが部屋に隠していた給金を、妹から聞き出して盗み、最後とばかりに酒を飲みに行くのです。



ちなみに、Lauraは文字が読み書きできるので、Mrs Arlessの為に手紙を読みます。また、原作でも村人の為に、或いは臨時で出稼ぎに来ている農場労働者の為に、代筆をすることもあったようです。



という物語がある一方、Candlefordでも、もうひとつの家族で事件が起こります。こちらは村人のMrs Maceyに関するものです。ひとり息子と暮らす彼女の元へ、刑務所にいる夫が脱走し、行方知れずになった、と言う話が届くのです。



Candlefordでも、また息子もその事実を知りませんでした。しかし、郵便局長Miss Dorcas Lane(彼女は頭がよく、統率力もあり、また領主を「Timothy」と呼べる実力者)がMrs Maceyから相談を受けたのを、メイドのZillahが盗み聞きし、事実が広がります。



当初、Lauraしか知らなかったはず、というのでLauraが疑われますが、Zillahはあっさり白状します。しかし、その後、一人の女性の名声を傷つけ、また自分の信用を傷つけたZillahに冷たく接し、Zillahもようやく罪を自覚する、という流れに。



戻ってきた夫は正体を隠したまま息子に接しますし、息子は父が殺人犯だと言うのを知らないまま(スペインにいると知らされています)、「森に隠れる」彼と接します。やがてMrs Maceyも夫に再会し、夫へ自首することを勧めます。ここでもDorcasの領主との人脈が役立ち、夫は刑務所に戻る覚悟を決めます。その先に、息子へ正体を告げることがあっても……



わき道にそれましたが、主題は「子供が親を赦す」ことです。ひとりの被告と、ひとりの受刑者。それぞれに子供がいて、親の犯した罪を見て、親をどう受け入れていくのか? 家族愛がテーマ、という深い内容になっていました。



ひとつの物語ではなく、Lark RiseとCandlefordの二つの家族を対比的に描き、収束させていく手法は見事です。



個人的にはMrs Arlessの裁判が興味深いものでした。『シャーロック・ホームズの冒険』などでありそうな光景ですが、領主が裁判官として証人に発言を求めて、判決を下します。



その場で、傍聴するLauraの父(設定では封建的・保守派のトーリー党ではなく、自由主義でインテリ)の弁護で裁判自体がいい流れになりましたが、実はこのLauraの父の存在も、次の伏線になっていたのです。(Lauraが読み書きできるのも父の影響)



物語はヴィクトリア朝の田園を描いた作家の作品を基調にしているので、サスペンス的な要素もミステリ的な要素もありません。しかし、だからこそ、日常誰にでも起こりえる不安定な要素と日々の暮らしを、バランスよく描いていて、秀逸です。



徹底的に「生活に近い」視点になっています。


実は恋愛モノ?

劇的なドラマが見たい方にはオススメしません……というのもあまり当てはまりません。前回も書きましたが、よくよくみると、ドラマティックな要素が多いんです。



領主のTimothyは妻帯者ながら明らかにDorcasにべた惚れですし、ヒロイン・Lauraも、Mrs Arlessの息子Alf Arlessという恋人に近しい存在がありながら、領主の屋敷で出会った魅力的なGameKeeperの若者Philip Whiteと、少しずつ親しくなっていきます。



どういうオチになるのでしょうか?



第三回まで見ているのですが、第三回の感想はまた近日中に。



ちなみに次回・第三回は、「家にやってきた新しいハウスキーパー(実質メイド・オブ・オールワーク)を親子で奪い合う驚愕の展開」です。やっぱり恋愛モノ?