ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

『のだめカンタービレ』と『3月のライオン』最新刊を読んで

最近、発売された「買い続けている」コミックスです。(『鋼の錬金術師』も買いましたが) どちらの作品も今回はかなり大好きなテイストでした。どこが大好きなのかと思って考えてみると、似ているところがありました。



「努力して、常人には超えられない壁の向こう側(演奏のトップ/将棋のプロ)で一生懸命、熾烈な戦いを生きている人々」の世界に憧れと、そこで垣間見える同じ世界を生きる者同士の「繋がり」に惹かれるのだと思います。



月下の棋士』や『ヒカルの碁』も好きでした。



自分には遠い世界、そこでの人生を懸けた生き方。その世界での上に近づけば近づくほど日常生活や社会生活から切り離され、費やした時間も重ねた努力も発揮する集中力も、すべてが桁違いになっていきます。ある意味、異世界であり、ある意味、群雄割拠の戦国的でもあります。



だからこそ、そこにいる者同士でしかわかりあえないことがあって。



だからこそ、そこにいる者にしか見えない視点があって。



だからこそ、そこにいる人に認めて欲しいと思う気持ちもあって。



それで「食べていける」ってことへの羨望もありますね、きっと。



編集王』的に言えば(この表現で通じるか分かりませんが)、最終巻で「喜びの歌」について、マンガの神様が、マンボ好塚(でしたっけ?)に行った言葉が思い出されます。うろ覚えですが、その扉をくぐるには資格が必要、全員には開かれていない残酷さがある、といったような。



自分自身にとってのそれがどのジャンル、どの世界なのかは分かりませんが、その扉の向こう側を見てみたい気持ちもあります。見るではなく、飛び込む、ですね。覚悟の量が違いますが、こういう世界は気づかないだけできっとそこかしこにあるとも思いますし、それを描き出せるのが、世界の見方を変えてしまえるのが、伝えられるのが、作家なんでしょう。



久我が好きな作品はストーリーが面白いということよりも、登場人物がどれだけ「視点」の窓を開いていくれるのか、だと思います。自分が考えたこともない着想、同じ物を見たのに生じる異なる感想、それ自体は何気なく日常生活には転がっていて、家の中でも会社の中でも、それこそネットではよく出会うものですが、人間が描かれている作品は素晴らしいなと、思います。



『のだめ』は音楽の素晴らしさを、表現する世界の素晴らしさ(怖さも)を伝えてくれました。『3月のライオン』は一流の世界の厳しさ、何かを投げ出してでも一途に勝とうとする勝負の世界と、その世界に生きればこそ得られる視点の美しさ、そして勝負事とは関係ない日常における人との繋がりが心地よい作品です。



結論から言えば、『月下の棋士』刈田升三(7巻時点)最高なのですが、こう書くと意外と『スピリッツ』好きなんだ自分、という結論が。



のだめカンタービレ(22) (KC KISS)

のだめカンタービレ(22) (KC KISS)



3月のライオン 3 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 3 (ジェッツコミックス)





そういえば、同じ時に買った『鋼の錬金術師』は、この点、人々との繋がりの美しさが、「才能」ではなく、「出会いのきっかけ」「人の意志」なのが面白いですね。抽象的ですが、そう感じました。こちらはこちらで緻密に構築されていて、人間ドラマが大好きです。