イギリスを代表するヴィクトリア朝期の作家、オスカー・ワイルドの名作の映画版が遂に日本でも発売です。邦題がわかりにくいですが、原題は『THE IMPORTANCE OF BEING ERNEST』、日本では『真面目が肝要』と翻訳されているタイトルです。
- 出版社/メーカー: アルバトロス
- 発売日: 2008/04/04
- メディア: DVD
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邦題に原題を選ばなかったのは、日本においてオスカー・ワイルドがマイナーだからでしょうか? 非常にストイックで美しい『幸福の王子』や、退廃的な雰囲気であふれた『ドリアン・グレイの肖像』で知られていますオスカー・ワイルドですが、この『真面目が肝要』はコメディです。
(この記事は、UK-Japan 2008 WEBサイトに記事掲載されました)
久我はかつて電車の中でこの原作小説を読んでいましたが、あまりの馬鹿馬鹿しさに声を上げて笑いそうになりました。その映像化作品が英国ではDVDとして販売されており、その存在を知るや、2年前に英語版DVDで購入しています。
今回はその日本語版、です。
この作品の魅力は何よりも舞台背景、衣装、登場人物が「贅沢」なことです。ヴィクトリア朝の退廃的雰囲気とは程遠く、明るく華やかでユーモアのある世界観は、これまでのヴィクトリア朝映画を見慣れている人には、眩しすぎるかもしれません。
コリン・ファースとルパート・エヴェレットに、さらにはジュディ・デンチまで登場します。
何よりも美しいのは、屋敷です。
最も美しい屋敷の階段のひとつ
コリン・ファース演じるジャックがこの屋敷を訪問する風景、使用人がドアを開け、天井が高い階段ホール、両翼に広がる階段、その美しさは想像を絶します。また幾重もの扉をフットマンたちが開けて、ブラックネル卿夫人のいる応接間へと彼を通すシーンは最高です。(久我の同人誌7巻『忠実な使用人』表紙はこのシーン、空間をイメージして描いていただきました)
このロンドンの屋敷はスタッフォード・ハウス(ランカスター・ハウス)と呼ばれています。サザーランド公爵家がかつて所有した屋敷で、その豪奢さは際立っていました。
あの壮麗極めるバッキンガム宮殿に住む当時のヴィクトリア女王をして、「私の家(バッキンガム宮殿)から、あなたの宮殿(スタッフォード・ハウス)に訪問するわ」と言わしめたほどです。
美しいのはロンドンの屋敷だけではありません。ジャックが所有するカントリーハウスは現代人が好きそうな絵に描いたような美しい屋敷West Wycombe Parkです。確か、以前ご紹介した『Cranford』において、領主夫人が住む屋敷の外観もここを使っていました。
屋敷であればこそ、使用人も映える
使用人の描写も非常に多く、執事やハウスキーパー、ガヴァネス、フットマン、そしてメイドと、オールスターで登場します。屋敷が美しければこそ、屋敷であればこそ、数多くの使用人が登場できるのです。
小説版ではまったく気づかないと言うか、背景なので描かれる必要がなかったと思いますが、映画で彼らはシーンの中に溶け込んでいて、存在感を発揮しています。
ある意味、これも「使用人が非常に目立つ」映画と言えるかもしれません。
とここまで書きましたが、本当にストーリーが面白く、最高の役者たちが最高の演技を見せてくれるので、レンタルでもいいので是非、ご視聴下さい。
DVDの感想はこちらに書いてありますので、興味のある方はどうぞ。ストーリーの根幹に関わるネタバレはありません。
DVD『THE IMPORTANCE OF BEING ERNEST』感想(2006/01/28)
たまたま見つける
このDVDに気づいたのは偶然です。今日、たまたま髪を切りに出かけ、「30分待ち」と言われたので、普段は行かない本屋/レンタルDVD店で時間を潰しました。ふと新作のコーナーを見ると、見たことのある女優の顔が。
タイトルは無いと思いますが、ずっと「日本語化」を望んでいた作品なので、本当に嬉しいです。そういえばあまりにすごすぎたので、買った当初、森薫先生に見て欲しいと思い、『コミック・ビーム』編集部に送った気がします。その後、もう一枚買いましたが(英語版は安いです)
『ゴスフォード・パーク』『マナーハウス』とは違った意味で、「ヴィクトリア朝の作家が描いた上流階級の世界を、美しく映像化」した作品で、ヴィクトリア朝と貴族と屋敷とメイドさんも執事も好きな方は、きっとお気に召すと思います。
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