ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

なぜ執事はデキャンタにワインを入れるのか?

イーヴリン・ウォー (現代英米文学セミナー双書 (19))

イーヴリン・ウォー (現代英米文学セミナー双書 (19))





最近の乱読具合はひどく、ここで取り上げている興味の幅が、どれだけ散在しているのか、と思われるかもしれません。執事の手記を読んでいたかと思えば、イギリスのDVDを見て、ガーデナーの話になり、今度はイブリン・ウォーです。イギリス文学です。



その中で興味深いことが2つありました。



ひとつは以前読んだ本に出てきたNancy Mitfordとウォーとの関わり。1955年に上流階級とそうでない階級の言葉の使い方に関する論文(Uとnon-U)をNancyは紹介し、ウォーが反論し、センセーションを巻き起こしたと言うのです。(上記の書P.20−23に依拠)



Nancyは貴族であるMitford家の娘で、この六人姉妹はヨーロッパで最も有名な姉妹でした。末の娘が現在のDevonshire公爵夫人です。そのエピソードはwikiか、以下の本で。



http://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Mitford



ミットフォード家の娘たち―英国貴族美しき六姉妹の物語

ミットフォード家の娘たち―英国貴族美しき六姉妹の物語





そもそもMitfordのご先祖は幕末/明治の日本にも来ていたり、六姉妹の中の唯一の男子Thomasは日本との戦争で亡くなったりと日本とも関連がある一族です。



ミットフォード日本日記 (講談社学術文庫)

ミットフォード日本日記 (講談社学術文庫)





話が逸れましたが、タイトルの件は、この言葉の使い方のエピソードの中、著者である小池滋先生の言葉として出てきます。専門の研究をされている方にとっての常識が、違う関心領域の人間にとっては未知でした。



なぜ執事がデキャンタを使うのか?



裏返せば、なぜ、主人たちは執事にデキャンタを使わせたのか?




お客が来た時、食事に輸入もの,例えば上等のものはフランス産のBurgandy(Bourgogne産)かClaret(Bourdeau産の赤)などを出すが,ラベルを見せびらかすようにして壜のままテーブルに出すのは成上がりのやることだと軽蔑して、わざとデカンターに移したものを出すのが礼儀である。本来デカンターでワインを出すのは,フランスの家庭での食事とか,町の庶民レストランで銘柄などを問題にせず安い土地の酒を出す時の習慣である。つまり、安酒のように見せかけて最上等のワインを客に出すところに,上流階級の奥ゆかしさ,ないし裏返しの傲慢さが見られるのだ。



『現代英米文学セミナー双書19 EVERYN WAUGH 小池滋編著 P.22より引用


とのことで、使用人のマニュアルだけを見ていたら、わからないことです。ただ、もうひとつ可能性として考えられるのが、「執事」(この場合はButler)の由来です。Butlerはフランス語のbouteille(bottle)の言葉を名前の由来とし、ワインを扱う職種として最初は登場しています。



http://en.wikipedia.org/wiki/Butler



フランス貴族がどうしていたかはわかりませんが、その点では、フランスの流儀を持ち込んだのかもしれません。



或いは、デキャンタに入れた方が「管理」が楽だったのでしょうか? 飲み終わらず、デキャンタに残されたワインの行方は不明ですし、管理方法がマニュアルには載っていないので、執事の役得になっていたのかもしれませんが。



というところで、他の本を読んでいて、別のことを学ぶ、という事例が続きました。絶えず、興味の幅を広く持ちたいところです。


理由の補足

デキャンタを使う理由について指摘を受けたので情報を追加します。本来的にはマニュアルに作業内容も書いてありましたが(忘れていました)、「古いワインに生じる澱を濾過して取り除く為(布を使って濾過する描写あり)」と、「古いワインに固有の匂いを飛ばす為」というものもあります。


夏コミは『完結編準備号』と『執事名鑑』の予定

夏コミの同人誌は「完結編(使用人の終わりの時代)」のつもりでしたが、これまであまり20世紀以降の資料収集に注意を向けてこなかったので、何度も言っていますが、難しそうです。そこで、準備号にしようと思います。



だいたい骨格はイメージできているのですが、熟成が足りないと言うか、時間をかけて自分の中で消化し、他の資料を組み合わせることで様々な角度から照らし出さないと、いいアウトプットは作れません。



資料本を作るコンセプトは「ひとつの本に依存しない」ことです。過去には『ミセス・ビートンの家政読本』や『ヴィクトリアン・サーヴァント』に依存しましたが、多くの本を読むと、それだけがすべてではなく、一面でしかないと言うことがわかります。(『ヴィクトリアン・サーヴァント』の完成度は別格ですが)



常に新しい視点を模索し、その上で、自分なりのポイントを作っていくのが楽しいのですが、今回の完結編に関してはまだそこまで到達せず、「エッセンス」になりません。



ということで、準備号で方向性を固めつつ、夏はこれまでに蓄積してきた「執事」資料で、名鑑を作ろうと思います。好みもあって一冊しか読んでいないジーブスは除き(小説として面白いですが)、実在7〜8名+それ以外3名で、執事のエピソードと能力を評価しようと言う試みです。



各執事にはイラストをつける予定で、表紙・裏表紙+10名分で考えています。平均年齢は50歳以上をイメージしており、青年執事は存在していません。ビジュアル的には期待しないで下さい、というか、別の意味でご期待下さい。



背中で語る執事が理想です。



誰が買うのか、というのは課題ではありますし、メイドが表紙からいなくなった場合にはいつも苦戦するのですが、だいぶ執事ストックが貯まったので、放出したいところでもあります。



一名だけどうしても手記が手に入らず、AMAZONでも登録さえ無く困っていましたが、どうやらその本は「Private」で出版したようなので、イギリスの学術系の図書館にでも行かないと読めなさそうです。



他にも手記を買った執事が実はその後にもう一度、手記を出していて、そっちも読みたくもなりました。こちらも入手は困難で、まとめてイギリスで読まないと駄目かもしれません。「これからどうなるかわからない。さよなら!」というところで終わっていたので、その数年後の手記は是非読みたいんですよね。



そんな感じで準備を始めます。


最高の執事としての条件再び

過去に、幾つか、執事関係で考察をしました。



『日の名残』、或いは「上級使用人・執事」補遺

百年前の執事から学ぶマネジメント



考察自体は同人誌(総集編)の解説「執事」で完成させましたが、他にも再考の執事に必要な要件が必要だったのではないか、と思うことがありました。



最近、以前買った執事の本も完全な形でようやく読み終わりました。前回は普通に読み、今回は執事の人格と向き合う為、細部まで読み込みました。細部まで読んだおかげで、これまで弱かった「Shooting」「Hunting」「Fishing」「Valet」に関する知識も、高まりました。



家族を持った執事の生涯



感想自体は前回書いていますが、執事としての能力を発揮するには、自分の才能だけではなく、如何に「いい主人(安定して「働き続けられる」職場)を見つけて能力を発揮する機会を得るかにもかかっているのではないか、と思いました。



今回の手記の人物は手記から伝わる視点、表現される言葉からすると、今まで出会った中で最も質が高いのですが、その不幸さゆえにトーンが暗くなっています。一方、明らかに「運」よくいい主人に出会った別の執事の本は、資料性があっても、本から伝わる人格はあまり好きになれませんし、「漫遊記」的なものです。



何よりも、この執事は「六フィート」ありませんでした。もしも彼が六フィートあれば、もっと一流の仕事に恵まれたかも知れず(そうなっていたら手記は書かれなかったのでしょうが)、そうした本人ではどうしようもない部分で評価される点について、シニカルにもなったのでしょう。



そこで浮かぶのが、Astor家の執事たちです。彼らは比較的成功した部類に挙げられます。それは主人の一族が裕福で、また親類縁者も多かったからではないでしょうか? 一箇所で評価を上げれば、その血縁の中で転職が出来るのです。



会社と違い、一族が繁栄を続ける限り、子孫は増え、「職場」も増えます。(会社も繁栄し続ければポストが増えたり、機会も増えたりしますが) 血縁が続く限りにおいて、また有能である限りにおいて、執事としての仕事は絶えません。少なくとも生きている間、2代に仕えられれば、十分ではないでしょうか?



不幸な目に遭った執事は、「子供がいない主人の死」で、最高の職場を失います。後継者はお金に不自由した遠縁の人間で、使用人の使い方もお金の使い方も知りませんでした。「子供がいる」屋敷は「後継者を知る機会」がありますし、親子の仲がよければ、少なくとも親と同じ基準で使用人を使ってくれもするでしょう。



第一次世界大戦や、相続税の問題によって、貴族の財産維持自体が難しくなって、職場が崩壊していくリスクもありましたが、少なくともこの不幸な執事が生きる時代(ヴィクトリア朝後期〜第一次大戦後)では、上記選択はリスクを下げられる、と思います。



Edwin Leeはこれまで久我が出会ってきた執事の中でも最高の「視点」を持っていました。しかしそれは、主人があってこそ、です。Astor家に所属したが故に、Lordと呼ばれるほどに主人の信頼を受け、機会に恵まれ、能力を発揮できた部分は忘れてはなりません。



パイロットとしての腕がよくても、良いモビルスーツに恵まれないと、勝ち「続けられない」のです。Ernest Kingのように「エリザベス王女の執事」になっても(最高の機会を得ても)、失言で解雇される場合もあるので、両方必要なのですが。



こうした執事は、あくまでも「手記を書いた」という氷山の一角に過ぎず、まだ見ぬ未知の執事がイギリスの歴史の中には埋もれているのでしょう、ってどんな強引な終わらせ方だと思いつつ、そういう人に出会ってみたいものです。



ただ、残念ながら、いまだに「有能なハウスキーパー」には出会っていません。描写されることが少なく、手記すらも見つからない彼女たちの言葉を、なんとか集めたいものです。


家族を持った執事の生涯

購入した本を読了しました。感想は後日書きますし、そのタイミングでタイトルも明かしますが、家族を持った執事の苦労が描かれています。とにかく、彼は経済的に苦労していました。


家族と生活することの難しさ

現代人が経済的理由で結婚できないのと同様、或いは結婚や子供が出来ることによって経済的に自由度を失っていくのと同様、彼は結婚で貯金を失っていきました。妻と子供を勤務先の近くに留めておくのは、住み込みの立場の使用人には難しいことです。



運が良ければ主人たちが領地内に屋敷をくれたり、便宜を図ってくれたりしますが、普通の主人はそこまでしませんし、結婚した使用人を好んで雇いません。彼の場合は一度目こそ勤める屋敷の近くに妻を住ませましたが、妻は職場の移動の多さや転職で住むところが変わることに不安があってか、定住する場所を夫に求めました。



彼がかわいそうなのは、妻が目を患ったことです。医療費がかさみ、やがて失明しました。自分自身も新しい事業に首を突っ込み身体を壊し、お金を失っていきます。その後、彼は子供を成人させ、孫も生まれました。なんとか、成功したのでしょう。


不運の連続

しかし、不幸が訪れます。家には妻と息子夫婦と孫とが住んでいましたが、息子が仕える屋敷の主人の厚意で出かけさせられた劇場でインフルエンザになり、あっさり、妻が病死してしまうのです。



人生の後半、彼が仕えた主人たちは第一次大戦後の激動の時代にあったので、財産を失うことも珍しくありません。他の使用人よりも、彼は「主人の死」にも遭遇しました。「最も素晴らしい職場」は主人の死で失い、屋敷の規模は縮小され、後任の座は態度の悪い「一ヶ月足らず」しか勤めていないヴァレットに奪われます。(この直前、運悪く非常に仲がよく信頼しあっていたヴァレットが運悪く解雇されていた)



「私が死んだら500ポンド、お前に残すよ」と言ってくれた主人は二十代と若く、死と無関係に思えましたが、妻との関係が非常に悪く、酒に逃避し、破滅的な人生を歩んで死へと至りました。遺言は無く、妻に仕える気もせず、彼は去ります。


最高の主人はインドの王子

不思議なことに、最も素晴らしい主人は「インドの王族」でした。『エマ』のハキムのようなこの王子が英国を滞在している間に、彼は執事として仕え、「最も素晴らしい」待遇を受けました。あくまでも彼の滞在中の仕事でしたが、この仕事中、彼は王に出会うことも出来ました。



王子は「私について、インドまで来ないか?」と帰国する際に声をかけましたが、彼は「私がもう少し若ければついていけました」と断ります。「最上級の人物だった」と、彼は褒め称えています。公爵や侯爵、伯爵など数多くの貴族に使えた彼が「最も立派」だったのは、このインドの王族だった、というのです。


転職市場にあふれる「執事」

最後に与えられたチャンスは、「雑用執事」、なんでも雑用をする仕事でした。この仕事はハードワークで、しばらくしてそこを離れた彼は、すぐに後悔します。「執事」が転職市場にあふれかえっているのです。



貴族たちも、低コストなパーラーメイドを導入しだしていることを。英国執事と言う存在が、既に「大英博物館」に陳列されてしまうような存在になっていることを。



その後に見つけた、最後の最後に仕えた貴族(臨時の仕事)も、彼を騙して、都合よく利用し、何度請求しても賃金を払おうとしませんでした。



彼は「救貧院で死ぬだろう」と自らを語りつつ、執事の仕事を諦めて、この自叙伝を書きました。その後の彼がどうなったかはわかりませんが、今、久我が読んでいる本が売れたならば、多少違った人生になったでしょう。


本が印象的な理由・働くことの難しさ

本全体に流れる暗い感じや使用人職に対するシニカルな考え方は、彼が直面してきた様々な失敗、裏切られた経験の連続にもよるでしょうが、これまでに「明るく」主人たちの世界を照らしてきた使用人の手記とは、一線を画しています。



家族を持つが故の苦労、無能どころが有害な同僚に迷惑をかけられる立場、主人の死で職場が消えていくこと、破滅していく主人を見たこと、家族を支えたものの失ったこと、そして使用人職を辞めようと他の職へ転職して何度も失敗したことなど、様々な不運にも見舞われていました。



唯一、彼を高く評価してくれた、そして彼が評価した主人が「インドの王子」というすぐに英国を去ってしまう人だったことも、泣けます。


手記を残した他の執事との相違

ただ、他の執事との相違を考えると、彼がよい「エージェンシー」に出会えていなかったのではないかと思います。彼は「エージェンシーは金を搾取するだけ」と軽蔑し、自分で広告を出していました。



しかし、他の執事たちの手記を見る限り、彼らはいいエージェンシーに出会い、彼と同じ時代を生きた(彼よりも少し後)にもかかわらず、仕事を見つけています。



この点では「ヴィクトリア朝の頃の悪い評価のエージェンシー」と、それ以降の「徐々に評価を上げていったエージェンシー」の相違点を、長い時代を生きたが故に、彼が区別できなかったのが、最後の仕事を見つけられなかった理由になるでしょうか?



二十世紀以降のエージェンシーは手記を読む限り、かなり「良質な職場」を提供してくれています。彼はその点で、自分で考え、行動できるだけの頭脳と行動力を持っていたが故に、他者の助けをあまり得られなかった(自分から求めなかった)気がします。



もう少し彼が生きた年代と、職場で働いた時間を正確にリスト化してみるつもりですが、使用人の転職事情や家族を持つことの大変さが伝わる本でした。多分、能力や人間の品格としては、これまでに読んだ中で最高峰です。



唯一、若いうちに、機会と主人に恵まれなかったのが、彼の人生を変えたように思います。他にも、彼は厳密には労働者階級ではなかった(農場主の一族がいたが火事で財産を失う:当時は保険がなかったとのこと)ことや、他への転職活動が多かったことが、他の使用人との相違だったでしょうか?



少なくとも、彼が「執事」と言う仕事、自分の仕事を「好き」に思っている言葉はほとんど出てきませんでした。仕事を失って以降の最後の章はエピソードというよりは、愚痴の連続でした。それは愚痴も言いたくなるよねと……


イギリス執事Arthur Inchとの「再会」

最近、新刊作業に向けて、各種資料を振り返っています。で、資料の中でそこそこ出てくる20世紀の執事に「Arthur Inch」がいます。彼の父もまた執事であり、父から「執事は大変だぞ」と言われても尚、執事を選び、執事として生きている(そう、最近まで現役だったのです!)方なのです。



まさに、リアル『日の名残』です。



ここまでは別に珍しい話でもないのですが、実は久我はこの方を「DVDで」見たことがあったのです。それを知ったのは、最近、この方の著書『DINNER IS SERVED』を読んだからです。



Arthur Inchがあの使用人映画の名作『ゴスフォード・パーク』で、執事の時代考証・指導を務め、特典映像に出演していた実在の執事その人でした。



久我の記憶では「映画の中、執事が指紋のついたナイフかフォークに息を吹きかけ、磨いた」シーンがありましたが、実際はそういうことをしないとこのArthurが語り、監督は「演出を優先した」と語りました。



こういうすれ違いの感動に打ち震えたのですが、この話には続きがありました。Arthur Inchが協力した作品はもうひとつあったのです。



それが、『The Edwardian Country House』、アメリカと日本では『MANOR HOUSE』(『マナーハウス』)として知られるあのドキュメンタリーです。念のため、『MANOR HOUSE』の別売り英書副読本を見ると、確かにArthur Inchの名前が入っています。



その当時はそれと気づかず、後で何かのきっかけで、すれ違っていたことに気づく。これが資料を読み進めて、深めていくことの最大の楽しさです。この瞬間、「Arthur Inch」と言う人間を知った喜びの大きさは、得がたいものでした。



塩野七生さんはマキアヴェッリを描いた作品にて、仕事から帰ってきたマキアヴェッリが著作を書く為に衣服を正して、「過去の人物たち」と向かい合った・交わった、と書いていましたが、まさにそういう心境です。



こういう「本と本、資料と資料との繋がり」をマインドマップにしたいですね。



名探偵ポワロ』でイギリスの屋敷・貴族に興味を持つ

和書で学ぶ
ヴィクトリア朝のキッチン』
『路地裏の大英帝国

和書で参考にしていた英書に手を出す
 ダブル・パメラに出会う(Pamela Horn & Pamela Sambrook)

彼女たちが紹介するエピソードに興味を持ち、使用人の手記に手を出す
『Of Carriages and Kings』
『ROSE:MY LIFE IN SERVICE』
『KEEPING THEIR PLACE』


こういうのはOral Historyというもので主観的なものや当人が語るものでしかない、という限定的なものなのですが、久我は社会学歴史学的なものよりも、こういう個人が見た世界、生活史が大好きなので、向いているとは思います。



最近は参考文献に出てくる「カントリーハウスにしか残っていないと思われるOral history」を読みたいので、カントリーハウスに勉強に行きたいと本気で考えています。欲しいのに、AMAZONで売っていない資料が多くなってきました。


紹介したもの

Dinner Is Served

Dinner Is Served

Manor House: Life in an Edwardian Country House

Manor House: Life in an Edwardian Country House


執事の解説24,000文字=原稿用紙60枚、尚も増加中

バカです、はい。



どんだけ執事が好きなのかと。



久しぶりに資料本の解説に集中すると、バランスを見失うのです。引用する箇所と解説する箇所のバランスが著しく悪いと思われるので、今のテキスト量は、膨大です。正直に言えば、日本で二番目ぐらいに執事について詳しく扱った本、といって過言ではありません。



ただ、本当に「一度に全部書けない」のが困りますね。既刊に書いているエピソード、面白いからその時点で使いましたが、実は今時点で最適な形で使いたいものも多く、「最後の最後の総集編」でない限り、このバランス調整は出来ません。



以前、読者の方より指摘を受けたこともありますが、使用人の採用部分のところでも似たようなところが無いとも言えず、難しいです、本当に。



『ヴィクトリアン・サーヴァント』に依存せず、執事の仕事姿を構築しております。確かに、最初に執事の解説を自分の同人誌で書いた2002年では物足りず、様々な時間を経た2007年でなければ、書けませんね。時間は嘘をつかない、と思う次第です。



エドウィン・リーと書くと違和感があって、ミスター・リーと書かないと気まずい。エドガーとは呼べない、ミスター・エドガーと呼んでしまう。そんな過去と現代の執事に囲まれた時間を経て、果たして夏の新刊はどうなるのやら?



総集編準備号/初めて手に取る方向けのはずが……濃いです。



ヴィクトリアン・サーヴァント―階下の世界

ヴィクトリアン・サーヴァント―階下の世界




メイドさんと執事などのリストアップ・200人超え

今回の夏の同人誌は使用人エピソード集を作ろうと決め、復習がてら、実在の使用人(執事・フットマン・メイドなど)の手記から、彼らの働いた屋敷と主人、そして同僚の名前をピックアップして、面白いエピソードを持つ使用人を百人、集めようと思い立ちました。



とはいえ、そんなにうまくいくはずもなく、実際には「名前しか出てこない」人も多いのですが、今時点で200人ぐらいは人名をリスト化できました。未読の資料も一冊残っているので、多分、300人ぐらいには膨れますが、基本的なところはなんとなかりそうです。



で、今回はただ書いても面白くないので、エドウィン・リーを軸に描こうかと思います。彼に育てられた執事orフットマンの多いこと多いこと。彼の時代は1920年代以降であり、ヴィクトリア朝から外れますが、執事の仕事という本質的な部分は変わっていないので、気にしないことにします。



こうも様々な使用人から褒め称えられ、またそこで描かれる仕事振りに認めるものが多いミスター・リーは、少なくとも、久我の中では理想の執事であり、『日の名残』のミスター・スティーブンスを超えました。



ミスター・リーは「優秀な執事たちを育てた執事」「愛され、憧れられた執事」なのです。



最近、同人誌を作るために、自分で書いた『ヴィクトリア朝の暮らし7巻 忠実な使用人』を読み直しました。使用人のエピソードが豊富で、読み返してみると、手前味噌ですが、面白かったです。もしもこの日記を読んで、「他と違う」と思った方、「ここにしかない価値」を感じる方がおられましたら、まず『7巻』を読んでみて下さい。



ある意味、7巻の価値を伝えきれない自分が不甲斐ないのですが……『虎の穴』秋葉原1号店5階で立ち読みもできますので、メイドや執事が好きな方には是非読んでいただきたいのです。



以下は単なるリストで、あんまり整理していません。他の資料本にエピソードを提供している人たちを探せばきっと、1000人ぐらいにはなると思います。


■使用人名鑑〜屋敷と使用人

○1:フレデリック・ゴースト

フットマン フレデリック・ゴースト
ハウスキーパー ミス・ジャイルズ St.Aidens
執事 ミスター・テイラー St.Aidens
主人 牧師ベイベッツ St.Aidens
パーラーーメイド ジェーン St.Aidens,Rev.Harding
コーチマン チャールズ Carden Park
ヘッドガーデナー ウィル・コーツ Carden Park
仲介者 ミス・マッシー・ジャイルズ
執事 ミスター・リン Carden Park
ヘッド・ゲームキーパー ミスター・ヘンディック Carden Park
グルーム トム・ファインドリー Carden Park
パーラーメイド マーガレット Carden Park
執事 ミスター・パウエル
コック兼ハウスキーパー ミセス・スワン Court Hey
執事 ミスター・ダウンズ Court Hey
フットマン ウィルソン Court Hey
ボーイ ソーンヒル Court Hey
ボーイ へリック Court Hey
侍女/近侍 ミス・プール Court Hey
ヘッドガーデナー ミスター・バンクロフト Court Hey
執事 ミスター・ファーリー レディ・ハワード
コック ミセス・ムーア レディ・ハワード
侍女 ミス・マンソン レディ・ハワード
侍女 ミス・バングス レディ・ハワード
ヘッド・ハウスメイド ジュリア レディ・ハワード
フットマン トロブリッジ レディ・ハワード
フットマン ウィーバー レディ・ハワード
ヘッド・キッチンメイド ジュリア・ドナヒュー レディ・ハワード
オッドマン ガリバー レディ・ハワード
ハウスメイド? ブリジット レディ・ハワード
コーチマン ダーウィン レディ・ハワード
ガヴァネス ミス・ヘイグ レディ・ハワード
ガヴァネス ミス・ウェルズ レディ・ハワード
フットマン ジム・アスキュー ポートランド公爵
フットマン オズボーン ポートランド公爵
フットマン ヘイルズ ポートランド公爵
スチュワード ミスター・スペッディング ポートランド公爵
アンダーバトラー ミスター・オーウェン ポートランド公爵
ワインバトラー ミスター・クランシー ポートランド公爵
スティルルームメイド ゲートルード ポートランド公爵
シェフ ムッシュ・デビッド ポートランド公爵
フットマン 'BLACK JACK' マンチェスター公爵夫人
フットマン ラムズデイル 王室勤務
近侍 ミスター・レーン ポートランド公爵
Sergeant Footman ミスター・ホーキンス ポートランド公爵
砂糖菓子職人 Franz エドワード七世

○2:マーガレット・パウエル

キッチンメイド マーガレット・パウエル クライズデイル牧師
アンダーハウスメイド マリー クライズデイル牧師
コック ミセス・マクロイ クライズデイル牧師
ファーストハウスメイド キャリー クライズデイル牧師
庭師兼運転手 ダンブローシュ・ダシェット クライズデイル牧師
ハウスメイド エルシー クライズデイル牧師
執事 ミスター・ウェイド クライズデイル牧師
コック ミセス・ボーチャード カトラー家
近侍 無名 カトラー家
アンダーハウスメイド グラディス カトラー家
オッドマン oldトム カトラー家
ヘッドパーラーメイド フロラ カトラー家
ヘッドハウスメイド アニー カトラー家
アンダーパーラーメイド アグネス カトラー家
ハウスメイド ジェシカ ギボン家
パーラーメイド オリーブ ギボン家
シェフ 料理教室 カトラー家
パーラーメイド エドナ バーナード家
コック アギー ダウネル家
ハウスメイド ヴァイオレット ハンタージョーンズ
パーラーメイド リリー ハンタージョーンズ
パーラーメイド ヒルダ ビショップ家
ハウスメイド アイリス ビショップ家
執事 ミスター・カイト オランダ人

○3:ゴードン・グリム

フットマン ゴードン・グリム
ガーデーナー ゴードン兄 ノーサンバーランド公
スティルルームメイド ゴードン姉 ノーサンバーランド公
パーラーメイド ゴードン姉 倫敦
仲介者 ミセス・ハンツ
スチューワーズルームボーイ ボブ・ヒュースウェイト バース侯爵
執事 ミスター・ブレイザー バース侯爵
近侍 ミスター・ピグリム バース侯爵
病院スタッフ ペギー バース侯爵
ハウスキーパー ミセス・パーカー バース侯爵
ナースメイドとグルームオブチェインバー 結婚 バース侯爵
スティルルームメイド アリス バース侯爵
執事 ジム・ビレット ミセス・スタンフォード
フットマン ビル・ルース ミセス・スタンフォード
コーチマン ディック・ウィリアムズ ミセス・スタンフォード
執事 ミスター・タブ ミセス・ポートマン家
フットマン デビッド・ジョーンズ ミセス・ポートマン家
侍女 フロイライン ミセス・ポートマン家
コック ミセス・ブリジッド ミセス・ポートマン家
グルーム ジム・ターナー ミセス・ポートマン家
スクールルームボーイ エリック アスター
シェフ 無名 アスター
オッドマン ジャック・ギャモン アスター
近侍 アーサー・ブッシェル アスター
リンクマン ジェームス・ホプキンス アスター
運転手 バート・ジェフリー アスター
フローリスト ポップ アスター
侍女 ローズ(ポップの姉) アスター
ナニー ミセス・ギボン アスター
フットマン ジョージ・ワシントン アスター
アンダーバトラー フレディー・アレクサンダー アスター
コック フロ・ヒラー アスター家の近く
ナースメイド エルシー(スイス人) アスター
ヘッド・ガーデナー フランク・コプカット アスター
フットマン アーネスト アリス・アスター
キッチンメイド 無名 アスター
スチュワード ジミー・ゴードン フランス大使館?

○4:エドウィン・リー

執事 エドウィン・リー アスター
侍女 ミス・サムソン アスター
フットマン 兄 ポイス伯爵家
仲介者 Massey's
フットマン ウィリアム テイラー家
ヘッドハウスメイド 無名 テイラー家
スチュワード ミスター・パル アスター
ヘッドハウスメイド ヴァイオレット・カヴェニー アスター
グルームオブザチェインバー デビッド アスター
近侍 デビッド・ヒュー アスター
グルームオブザチェインバー ミスター・ファーニー アスター
執事 ミスター・プーリー アスター
運転手 チャールズ・ホプキンス アスター
アナウンス役 ミスター・バトリー アスター
ハウスキーパー ミセス・ムーア アスター家→バッキンガム宮殿
電話交換手 エミリー(妻) アスター
オッドマン セイラー アスター

○5:チャールズ・ディーン

執事 チャールズ・ディーン アリス・アスター
執事 ミスター・ボイド ミセス・ウッドコック家
ハウスキーパー 無名 ミセス・ウッドコック家
執事 無名 ミセス・ウッドコック家
執事 ミスター・ビヴァン ビューフォート公爵家
アンダーバトラー ジミー・ウィードン ビューフォート公爵家
執事 トム・ケリー ミセス・ストラット
侍女 イザベル・ボヤック アリス・アスター
シェフ ヴァシリー・ユーシェンコ アリス・アスター
ナニー ミス・イルヴィン・スパイラー アリス・アスター
運転手 ギルバート アリス・アスター
オッドマン ジョン アリス・アスター
執事 ミスター・ブルックス ヴィンセント・アスター
近侍/運転手 マックス ホフマンスタル(三番目の夫)
代理人 ケティン・コマー アリス・アスター
近侍 ジョン・ホール ケント公爵
侍女 ロジーナ・ハリソン アスター
運転手 ポヴァー アスター
シェフ オットー・ダングル アスター
フットマン ウィリアム アスター
キッチンメイド オリーブ・ハリソン アリス・アスター

○6:ジョージ・ワシントン

執事 ジョージ・ワシントン アスター
ヘッド・ガーデナー フランク・コプカット アスター
ハウスメイド ドリス ロナルド家
ヘッドハウスメイド 無名 アスター
執事 ミスター・グレイ トゥイードマウス家
執事 ミスター・ペピット イルチェスター伯爵
運転手 ミスター・イースト イルチェスター伯爵
ヘッド・ガーデナー ミスター・リントル イルチェスター伯爵
スティルルームメイド メイジィ・ウィザーズ イルチェスター伯爵
執事 ミスター・オースティン サスーン家
執事 ミスター・キットキャット ハルトン家
執事 レズリー・ライト カナード
執事 ミスター・コリンズ ツリーズ家
ヘッド・グルーム ジャック・ボナハム ツリーズ家
ヘッド・ガーデナー ミスター・ウィリアム ツリーズ家
ハウスキーパー ミセス・ヘイズ ツリーズ家
代理人 ミスター・ローチ ツリーズ家
侍女 フリーダ・ラムトン ウィン家
執事 ミスター・コラー ウィリアム・アスター

○7:ピーター・ホワイトリー

執事 ピーター・ホワイトリー アスター
侍女 ミス・ドノヴァン コリアト家
コック ひどいコックたち? コリアト家
ナニー ミセス・スミス コリアト家
スチュワード ミスター・アインズリー バッキンガム宮殿
フットマン アトラス バッキンガム宮殿
執事 ビル・シルバー マイケル・アスター
ハウスキーパー ミス・タムズ マイケル・アスター
シェフ モーリス マイケル・アスター
キッチンマン ロン マイケル・アスター
ナニー ミス・コイル マイケル・アスター
アンダーバトラー ミスター・フォーラー ウィリアム・アスター
ナニー ミセス・オゴーマン ウィリアム・アスター
執事 ミスター・ショー ミセス・ハリソン家
ハウスキーパー ミセス・キー ミセス・ハリソン家
運転手 ホィーラー ミセス・ハリソン家
執事 ミスター・ハリス リチャード卿
侍女 ミセス・ハリス リチャード卿
侍女 ミス・マクドナルド 王宮
近侍 ミスター・マクニール 王宮
ハウスキーパー ミセス・パレット ワーナー家
ハウスキーパー ミセス・ホルムズ ボイド家
フットマン リチャード・ウッド ボイド家
執事 ミスター・フィールド ルパート・ネヴィル卿
執事 レズリー・マクドナルド グロースター公爵
侍女 ミス・サックリング 王女の母
執事 ミスター・ニーズ フィッツウィリアム家
ハウスキーパー ミセス・グレッグ フィッツウィリアム家