ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

その3 カントリーハウスは遠い



どこに行く?

その後、三人で行きたいところをピックアップすることになりました。ヴィクトリア朝の生活や使用人の知識は異常にあるものの、いざ実際の観光地は?と問われると、それほど知りません。ヴィクトリア朝関連で散々学んでいるはずのロンドンも、実は地名や通りを記憶するのが面倒で、位置関係などもわかっていませんでした。



ひとまず、自分の行きたい場所・知りたいことは何かと考え、一生懸命頭を使いました。



希望

1:カントリーハウス

2:バッキンガム宮殿

3:大英博物館

4:ヴィクトリア&アルバート博物館

5:カーライルの家(森薫先生&村上リコさん推薦)

6:古本街(チャリング・クロス)

7:大英図書館

8:ハイド・パーク

9:ブレナム宮殿



やはりカントリーハウス

カントリーハウスへの憧れが非常に強いので、カントリーハウスはどこがいいのか、徹底的に捜しました。まず『ブライズヘッド再び』で御馴染みの「カースル・ハワード」……ロンドンから果てしなく遠く、交通手段が無いと厳しいです。そもそもカントリーハウスとは、「広大な領地を含んだ屋敷」であるので、駅の近くにあるわけがありません。移動時間を考えると、正直、凹みました。



次に思いついたのは、HISで見つけた『週刊世界遺産』に出ていた、「ブレナム宮殿」です。位置的にはオックスフォードに近く、直通バスも出ているので、その界隈を散策するのはいいかもしれない、と候補のひとつになりました。



さらにNationalTrustEnglishHeritageなどの歴史的建造物を保護する機関のホームページを訪れ、好ましいカントリーハウスを捜しました。ブルーガイドを買ったり、NationalTrustの本を買ったり、情報収集に余念がありませんでした。



日本の観光ガイドや現在の流行は「ロンドン」中心であったり、田園のコッツウォルズであったり、自分の求めるものはあまりありませんでした。行きたい場所が決まっているので、その点では、ガイドブックに不満は無かったのですが、カントリーハウスそのもの、そこでの暮らしへの情報の絶対量は少なかったです。



他に行きたかったのは、『英国貴族の邸宅』で紹介されているカントリーハウスです。この本は自分の好みである建築家「ロバート・アダム」の屋敷の写真が掲載されており、巻末には彼が関わった屋敷などが紹介されています。その中でロンドン近郊にあるのは三つ、いよいよ現実的な候補が出てきました。(近郊=領地が広くないのであまり望ましくは無いのですが)



ロンドン近郊で考えると、他にもいろいろとカントリーハウスがありました。その数は、十以上と予想を超えていました。選択肢は一気に広がり、どうしたプランニングが可能か、いよいよ現実的な検討の段階に入りました。自分の中だけ、ですが。



ロンドン交通局

この頃にはホテルも決まり、主要な駅はHolbornとなりましたので、そこからの時間を、異常に性能がいいロンドン交通局から割り出しました。



このホームページは神懸りとも思えるほど高性能で、「ロンドンのバス停の時刻表」まで入手できます。それも、駅と駅を指定したら、その区間のPDFファイルを動的に作成してくれているようです。さらにバス停周辺の地図も簡単に印刷でき、日本では信じられないようなサービスの充実振りでした。



上述のロバート・アダムの本で外観やインテリアを写真で知っている三つのカントリーハウス、それにEnglishHeritageで「駅から近い」と書いてあったものなどを考慮しました。



○1:Kenwood House/English Heritage

映画『ノッティングヒルの恋人』に出たり、日本人の好きなフェルメールの絵画があるカントリーハウス。ロンドン近郊のハムステッドにあります。ネットを見ると、「非常に迷いやすい」とあちこちに文章がありました。



地下鉄:Holborn To Golders Green(20分)

バス :210のバス。Kenwood House下車(4分)。



○2:Syon House

元々が修道院だそうです。ちょうどテムズ川をはさんでキュー植物公園の反対側にあり、「キュー植物公園を見た後、バスで行けるかも?」と真剣に検討しました。最も豪華なカントリーハウスのひとつではないでしょうか? 交通手段は悪いのですが、ここに一番行きたかったです。



地下鉄:Holborn To Gunnersbury(30分)

バス :237/267のバス。Brent Lea 下車(10分以内)



○3:Osterley House/NationalTrust

交通手段の面で考えると、妥当な場所でした。駅から歩いていける距離です。ネットを検索していると、ナショナルトラストは時々、ここのキッチンを見学するツアーを会員向けにやっているとか。キッチンが見たいので、もし見れるならば……と候補になりました。



また、地図上はSyon Houseと近い感じもするので、真剣に「キューガーデン→Syon House→OsterleyHouse」のコースを考えました。理論上、それは可能でした。



地下鉄:Holborn To Osterley(40分)

駅から2km。



幻の案:Syon To Osterley

1:地下鉄Gunnersbury To Osterley

2:バスGunnersbury To Osterley(H91)

3:TAXI

4:徒歩。何キロ?



○4:Chiswick House/EnglishHeritage

これは英国パラディオ様式と呼ばれる、ローマの影響を受けたバーリントン伯爵が建築したカントリーハウスです。あまり自分好みの外観ではないのですが、駅から近く、交通の便がよさそうなので、候補にしました。



地下鉄:Holborn To Chiswick House(35分)
駅から、400m。



いずれにせよ、開館時間は10時以降がほとんど、閉館は17時前後という条件の中で、往復で2時間を取られると、見学する時間は限られてしまいます。今回は5泊7日の予定でしたので、すべてに行くのは困難で、駆け足で通り過ぎる程度ならば意味が無い、とも思いました。



初めてのイギリス旅行だった為に、「あまりにもマニアックなところに行って、押さえるべきところを押さえていないんじゃしょうがないし、そもそも他の二人と一緒に行くんだから、彼らが興味を持てない」との結論になり、一通り、候補として準備だけしておく、ということで自分の中で決着しました。



今、こうして陽の目を見ることを想定してもいたのですが、次回イギリスに訪問する場合は、出来れば観光ガイドに出ていない2〜3辺りを攻めたいです。