ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

BBC『Lark Rise to Candleford』第一話・感想

昨日、イギリスからBBCドラマ『Lark Rise to Candleford』のDVDが届きました。DVDは全4枚、メイキング含めて総時間は582分(ほぼ10時間)、意外とボリュームがあります。


美しい風景、村の少女の就職

主役の少女LauraはLark Rise村に住んでいます。冒頭、いきなり「これぞ19世紀イギリスの田園!」という風景が広がります。黄金の小麦畑、井戸で水を汲む姉と弟、母の出産、そして村人総出での祝いの宴。



50人ぐらいの小さな村の生活に、一気に吸い込まれていきます。



この最初のシーンを見るだけでも、価値があります。(DVDキャプチャは著作権的にアレなのでしません)



第一話からLauraは村を出ることになります。当時の村娘の運命ともいうべき「家族が多いし、食べさせるのが大変だから仕事に」出されるのです。



多くの貧しい村の娘はメイド(鉱山や紡績工場があればそちらも就職先)になるしかありませんが、Lauraは極めて珍しい職業に就きます。それが、「郵便局員」です。



田舎の村Lark Riseよりも発展した街Candlefordが、Lauraの仕事の舞台です。Lauraは活動的で魅力的な女性局長・Dorcas Laneの元で働き始め、「価値観が異なる二つの世界」(素朴な村と洗練された街)の間に、翻弄されていきます。



尚、このテキストはUK-JAPAN2008 WEBサイトにて取り上げていただけました。「UK-JAPAN2008」については、本日後半の日記『UK-JAPAN2008公認ブロガーになりました』に書きましたので、あわせてご覧いただければ。



以下、ドラマのネタバレです。読みたくない方はここでお止め下さい。






































郵便を巡る街と村の対立

第一話の題材は「郵便料金」です。



Lark Rise村はCandlefordから8マイル(だったような)離れており、郵便料金が6ペンス余分にかかります。しかし、貧しい村人には支払う余裕もなく、村の中心にある酒場の主は、渋々と立替をしたり、或いは拒否したりとするのです。



ヴィクトリア朝の事始に詳しくないのですが、この郵便局には「電報」があります。そこで受け取った内容は、あの時代に「急いで伝える」必要があるので、非常に重要な情報ばかりです。



出産の情報や、病気、そして逝去。



配達される側が特別料金を支払う、と言う制度は現代人からすればちょっと違和感がありますが、その貧しさゆえに受け取るべき相手がお金を支払えないので受け取れないシビアな制度によって、事件が起こります。



貧しい村人が「弟が病気」という電報を受け取れなかった数日後、今度は「逝去」したと、電報が届きます。村出身の素朴なLauraは、「こんな大切な情報を伝えられないなんて」と、胸を痛めます。



この件で「職務に忠実であるべきか」(料金を受け取る規則がある以上、曲げられない)、「人としての情を優先するか」で、郵便局長Dorcasは悩みます。





最終的にDorcasはその村人に自ら訃報を届けに行き、謝罪します。この事件をきっかけに「本当に6ペンスの料金が必要な8マイルあるのかよ」と疑問が村人から出ます。Dorcasに想いを寄せる領主がこの訪問に同行しており、村人からの疑問に対して、「再計測しよう」と提案し、街と村の間を再計測することになります。



これがちょうどピクニックみたいな展開で、当時の測量の様子も再現されていて、見たことの無い描写が多く、興味深いのです。


多様な登場人物

いっぱいいます。



最初は髪の毛を垂らしていたLauraも、勤めに出ると髪を束ねていて、「女の子は化けるなぁ」と思った次第。



と言うファンタジーある話はそこまで、村の駄目おばちゃん、Mrs Arlessが強烈です。



ビールの樽を買って泥酔して顔に落書きされたり、電報を受け取るお金がないので常日頃借金している酒場のマスターからさらに金を借りたり、ビールを売った行商人が請求に来たら居留守を使ったり、Lauraの母の家に登場したと思ったらパンの塊を奪っていったり、挙句、マスターに返されるべき金を途中でせしめたり、自由です。



この強烈なキャラクターが目立ちますが、Lauraの父はダンディーでいい味出しています。村と街の対立で、敵対する側にいる娘に対する態度(親として、村人として)や、わずかな所作や、娘に対する思いやりなど、いい男です。



かと思えば。街も負けていません。



Dorcasに仕える、「おばあちゃんメイド」Zillahは存在感ありすぎます。ちょっとLauraに意地悪だったり、机の上に足を乗っけていたり、仕事を嫌々そうにしていたり、味がありすぎます。



メインキャラクターにも伏線が様々に用意されています。Dorcasに魅了されている領主、嫉妬を表に出し切れない領主夫人、Dorcasの気持ちはまだ見えていないですが、一波乱ありそうです。



他にも、村の子供たちも素朴な味わいを出しています。子沢山な当時、村の風景として溶け込んでいる姿は、ノスタルジックな風景に彩を添えます。


風景は一見の価値あり

前にご紹介した『Cranford』と近しいのは『Candleford』の方で、『Lark Rise』はもっと田舎です。どちらも、イギリス人が好きな「街並み」なんでしょうね。



そして田園風景は別格です。本当に、『図説 イギリスの田園生活誌』の世界観です。この本の文中でも、『Lark Rise to Candleford』の筆者フロラ・トンプソンの言葉を引用しています。



図説 ヴィクトリア時代 イギリスの田園生活誌

図説 ヴィクトリア時代 イギリスの田園生活誌





こういう世界が好きな人には、たまらない作品です。