今年は自分自身の資料収集に集中しすぎていて、あまり外部に目を向けることはかないませんでした。大きなニュースは幾つかありますが、逆に普通のニュースが無かったかなぁというのが本音です。
5位:『Times』のアーカイブ公開
英国の過去の新聞のアーカイブが公開されました。当時の使用人事情を知る意味でも最高の資料です。
但し、今現在は有料化してしまいました。年間$129.95必要です。一日分や一ヶ月での料金プランもあるので必要になったら利用しようと思います。
ヴィクトリア朝の英国の求人情報まで閲覧可能(2008/06/26日記)
4位:『ラークライズ』刊行&BBC『Lark Rise to Candleford』
英国の古典的な書物で、帯によれば「イギリスで高校生の必読書とされ」と書かれた作品です。1880年代の英国を生きた作家フローラ・トンプソンが描き出すのどかな田園風景と、田舎の素朴な暮らしは英国田園マニアには最高の資料です。
村からメイドとして勤めに出る娘たちの解説で、一章を使っています。資料本『ヴィクトリアン・サーヴァント』でも幾つか引用されているぐらいに、英国に根ざした作品だと言えます。
その小説をドラマ化したのが、BBC『Lark Rise to Candleford』です。映像美を楽しみたい方にはこちらがオススメです。
一九世紀イギリスの田園風景を描いた『ラークライズ』(2008/09/19日記)
DVD『Lark Rise to Candleford』第1話(2008/04/12日記)
DVD『Lark Rise to Candleford』第2話(2008/04/17日記)
3位:使用人資料本の充実
今年は使用人の手記を買いあさりました。
その中で素晴らしい価値を持つ本を幾つか発掘できました。『What the Butler Saw』と、『THE GREEN BAIZE DOOR』です。
P.G.WODEHOUSE推薦の資料本と英国王室に使えた執事の本(2008/02/14日記)
前者は読み進めていくと、実は『ヴィクトリアン・サーヴァント』の様々な視点の引用元になっていることがわかりました。独自のエピソードが多く、ジーブスの筆者であるウッドハウスも賞賛したというのも頷ける「総合的」資料本です。
後者はエドワード八世やエリザベス王女に仕えた最高峰の執事です。他にも二〇世紀前半を執事として生きた人の手記や、屋敷に勤めたハウスメイドの手記、さらに年末には1924年に執事が出版した本を買いました。資料充実の年でした。
さらにメイドと結婚したArthur Munbyの資料本を見つけたことが大きいです。これを題材に、同人誌の世界を広げました。
詩人?変人?だから何?(2008/11/30日記)
2位:『Honey Rose』配信&『Under the Rose』5巻
船戸明里先生の作品『Honey Rose』がネットで配信されました。メイド編にカテゴライズしていいのか難しいところですが、貴族と使用人の物語としては非常に美しい作品です。
そして同じく2008年刊行の『Under the Rose』5巻の完成度は最高です。物語として美しく、深い迷宮のような人間心理を描いています。
『Under the Rose』5巻感想「疑うこと、信じること」〜貴族とメイドの織り成す最高の世界(2008/03/24日記)
1位:『エマ』完結
『エマ』を知ったのは、2002年12月末のことです。当時も久我は英国メイドの資料を研究していたので、「クラシカルメイドを丁寧に描いた珍しい作品」として注目しました。一番面白かったのは、森薫先生自身が自分と同様に、あの時代を研究し、作品自体が変化していったことです。
知らなければ書けないことが、ちりばめられている。
その点で、あの時期、英書に目を向けて作品の幅を広げていった森薫先生には、一方的ながら「同好の士」という感慨を持っていますので、その作品の完結は寂しさもありました。
『エマ』10巻/最終巻〜完結ではなく、完成(2008/04/25日記)
そこで描かれたアデーレの姿は、至高です。
というところで『エマ』の完結が自分にとっては最も大きなニュースでした。来年は作品が来るのか、資料が来るのかわかりませんが、自分の中では『エマ』と『Under the Rose』で固定化している現状、新規の世界に出会いたいものです。