絵の表現力は非常に高い
Fellows! 2008-OCTOBER volume 1 (BEAM COMIX)
- 作者: 森薫,入江亜季,雁須磨子
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2008/10/14
- メディア: コミック
- 購入: 4人 クリック: 16回
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森薫先生の最新作が掲載された雑誌を、ようやく買いました。(AMAZONで買ったのを忘れて、書店でも買ってしまい、2冊手元にあります……) 森薫先生の作品への感想は後日書きますが、久我も遊牧民族の資料を調べたいと思った時期があります。(アラブですが)
雑誌全体への感想でいうと、とても挑戦的だなぁと。
非常に美しく、丁寧に構築された「箱庭」が数多くあります。これだけ、作者の筆致が伝わる「妥協していない」作品群を集めた雑誌は少ないと思います。新人が多いと聞きますが、「丁寧に作りこんでいる」のです。
ただ、それがマンガとしてどうなのかは、好みによると思います。
本の形をした『同人イベント』
描かれる世界と、絵の美しさ、箱庭の緻密さには圧倒されるものが多いです。しかし、価値観を揺さぶり、胸を熱くするような尖った作品には、出会いませんでした。いい意味でも悪い意味でも、毒が無く、「お行儀がいい」のではないかと。
価値観を揺さぶられるような、「見たことが無い視点」には出会いませんでした。(その雰囲気を感じるものはありました)
『Fellows!』はこれから化けていくのが期待されているのではないかと思います。森薫先生も、『エマ』1巻からすると劇的に絵が変わり、世界の厚みが変わりました。同じようにこの雑誌を読み続ければ、人が変わっていくところも見られるのではないかと。
表現者の表現を行う気持ちが伝わってくるような新鮮さ(その点では同人誌に近いかもしれません)、まだ作品メインではなく、ここから何が生まれてくるのか、という期待が自分の中では大きいです。
その点では「作品への妥協を感じない」、良質の作品群だと思います。丁寧に表現にこだわり、自身の絵にこだわらなければ、作れないような絵を書かれている人が多いです。なんというか、連想するのは「同人誌」なのです。
読者がどこまで、この雑誌を買い続けることでその機会に関与していくのか?
読みきりの数も、そこそこあります。来月号をどうしても読みたい、というものはまだそんなに無いです。その点では、ひとつの「同人イベント」を凝集した雑誌を連想します。
「同人」と言う言葉の定義は難しいですが、長い間、そこで活動してきた久我にとっては「自由な表現の場」を指し、「多様な可能性を担保する」「自分にいいわけが出来ない、限界をどこまでも突き詰められる」という、ポジティブな意味で使っています。
結論としては、「箱庭」的な世界を期待する人にはオススメできますが、読者の人生に深く影響を及ぼしそうな熱気を持った荒々しさが出てくるのは、これからなのではないでしょうか。最近あんまりマンガを読んでない人間のコメントですが、コミックスに求めるものが何かによって、評価が大きく異なると思います。
新人が多いといいますが、「絵を描く才能が非常に高い人たち」が集まっているようです。だから「漫画」というところでは、「漫画家としての成長・変化」を見ていくというスタンスが、この雑誌との距離感になりそうです。
ここまで感想を書けば、気に入っているってことなんでしょう。
気になった作品と好みの絵柄・世界観の作家:敬称略
『彼女と彼』冨明仁
『蝋燭姫』鈴木健也(HP「ジゼルとエステル」)
『花の森の魔女さん』笠井スイ(HP鳩[hato])
『ラストダンスは踊り場で』宮田紘次
『水晶石の森』福島久美子
『敬遠球をフルスイング』百名哲
補足:ホームページを見つけた2名の作家はカラーで見たい
『蝋燭姫』の鈴木健也さんと『花の森の魔女さん』笠井スイさんのホームページ(名前のところにリンク貼ってます)を拝見しましたが、カラーイラストのレベルが異常に高いです。
すごい。
イラストとマンガは違うと言いますが、そこで描かれる線、情報量、色彩の差が興味深いです。
コミックスの内容だけではなく、これまでの活動などをウェブで調べてみると面白いですね。少なくとも、この二人の絵を見ることが出来た(出会うきっかけをくれた)ので、自分にとっては『Fellows!』は買いでした。
Fellows! 2008-OCTOBER volume 1 (BEAM COMIX)
- 作者: 森薫,入江亜季,雁須磨子
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
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