『東のエデン』を見ていたら、学生たちが開発したアプリ「東のエデン」でいろいろと妄想してみました。特に事実の裏づけなどはしていませんし、垂れ流しです。
補足:既にそういう発想のサービスがあるようです(はてな経由で知りました)
『東のエデン』に登場した機能
携帯のカメラを通して写された対象に、携帯のディスプレイ上で対象に紐付けられたテキスト情報が表示される。
情報は任意に入力可能である。
撮影された被写体と情報とを紐付ける一意性は開発した固体識別ツール?か何かによって成されている。
ソーシャルブックマーク(SBM)+ICタグ
これを見て最初に思ったのが、ソーシャルブックマークです。何かのページ情報に対して、接した個人がタグ(「これはひどい」とか「役に立つ」とか「あとで読む」)やコメントを付与し、それを同じページ情報に接した他者が共有できる仕組みです。
インターネットではURLが一意性を担保し、誰が見てもそこにアクセスすれば、紐付けられた情報を参照できます。もちろん、ソーシャルブックマークの種類が違えば(はてなやLivedoorなど)紐付け情報を管理するデータベースが違うので共有できませんが、ブックマークを現実世界の情報として引き出すインターフェースのヒントとして、この携帯アプリは面白いです。
携帯アプリで既に実現されているもので近しいものは、「GPSによる地図情報」と「そこにあるお店の口コミ情報」でしょうか。これは「ある場所での感想」を書き込んでおけば、誰かが同じその場所に言ったとき、「住所と言う一意性」をGPSで担保し、そこからデータベースにリンクさせ、その土地に紐づく情報を引き出せる、というサービスです。
「どこかにあるデータベース情報をリアルの情報を紐付ける」の着想は、「ICタグ」でも考えられたものだと思います。
ICタグは例えばスーパーで野菜や牛乳を買った際、ICタグに割り振られた一意のIDにアクセスすることで、「誰が生産し」「いつ出荷され」「どの経路で店頭まで来たのか」という、「トレーサビリティ」(追跡可能性)を担保したものです。食の安全や、流通や製造における信頼性を増す意味でも、トラブルが発生した場合のボトルネックの把握にも、使えるでしょう。
しかし、ICタグはそれ自体のコストがまだかかったり、私レベルでは身近に来てはいません。また、最初に「ICタグと商品を紐付ける」必要があり、『東のエデン』のサービスや、GPS+地図情報のように、誰か第三者が評価情報を紐付け、それを引き出す、というところにいたるには、まだ課題があるのでしょう。
人間をソーシャルブックマークする、を妄想する
『東のエデン』の話に戻ると、画像識別と個人の一意性をどのように担保するかは技術が解決するとして、その利用の可能性を妄想すると、かなりいろいろな意味で可能性を感じました。
1:評価情報を引き出すツール
これは今でもISBNで実現されていそうですが、お店で本を買う際にその本の姿を写すことで、簡単にその本の評価情報を引き出し、参考にすることも出来ます。
自分のお気に入りのブックマーカーがいるように、評価情報をISBNに紐付けてくれている人を登録しておき、その人の優先度を上げておけば、その人の情報だけ見える、というようなことも可能ではないかと。
ISBNや何か一意のIDで登録されていないものでも、識別可能になるわけで、まずは企業が買い物情報の拡充やマーケティングツールとして活用してくれそうな気がします。
その点ではリアルの買い物にレコメンデーションエンジンやコンシェルジュ機能を持ち込むような発想にもなります。ただ、「携帯のカメラ」で情報を引き出すのでは手間がかかるので、そのうち他のGUIが開発されるのが前提かもしれませんが。
2:初対面の人に会う場合の情報入手経路
もちろん、人物へのタグはありです。
誰かがつけたタグを見るというのもありますが、個人とデータベース情報を紐付けると、学校や会社では大変なことになるのではないかなぁと思うのです。
効率的ですが、非効率的にもなるというか。
教師であれば生徒の出席率も成績情報も引き出せるでしょう。会社では、面接を行うのであれば人事情報のデータベースにアクセスし、転職履歴や前回面接時の発言やそれに対する評価情報も参照できるはずです。
入社してからも営業成績やミス報告頻度や、様々な情報をタグ付けしておけば、「人間の記憶によるあいまいさ」が消え、すぐに情報を引き出し、評価のプラスマイナスも行える、と思います。
会社で名刺交換をした際の印象情報や会議での発言内容を引き出す、或いはその人のブログやそれまでのメディア掲載履歴などの情報を引き出し、その人の人となりを、なるべく早く調査するといったことも可能になるかもしれません。
これらはそもそも「人間が見て、その人が識別し、個体IDである名前や所属番号などに変換して」「情報を引き出す」部分を省いてくれるだけなのですが。
個人による口コミ情報を紐付けないと面白くないのでしょうか? ただ会社の資源活用の観点では特技や人脈を可視化しておき、必要な情報として必要なときに引き出せるのは有益だと思います。
「誰と誰が付き合ってる」「不倫している」といった情報の方が流布してしまいそうですし、最近話題になった「男の子牧場」的なものと紐付けられてしまうと、大変です。
どの道、この方法でも情報を引き出す際に、「携帯カメラで撮影して」というところが障害にはなりそうです。サイバーパンク的なSF世界だと眼球や脳内だけで完結してくれる?
それともスカウター?
3:犯罪者識別のメリットと監視社会?
今回のは個人の識別をカメラによって行っているので、最も有効な使い道は、「犯罪者情報の登録」だと思います。
例えば振り込め詐欺の口座からお金を引き出す人物にこの登録を行えば、携帯のカメラで見れば、本当にそうかがすぐわかります。運用に乗せるには動画情報と個人識別情報を紐付けて、個人情報の側に「指名手配」というタグがあれば、アラームを出す、というソフトを開発する必要があると思います。
範囲を限定し、せめて銀行ATMの防犯カメラでこの識別情報と手配犯登録情報を紐付けらると、犯罪の摘発率や抑止効果は違いそうです。
アプリによる個人特定の正確性にバグがあったり、ハックされてしまったりすると、誤った情報で判断することになりますし、個人情報との紐付けが可能なので政治・信条・発言録などと紐付けて警察が利用すると、監視社会になってしまいます。
過去に年金情報を閲覧権限のない人間が見ていたというお役所の事例もありますし、個人情報(特定の機関によってタグ付けされた評価情報)が流出した場合は大変なことになりそうです。
4:動画情報とテキストを紐付ける動画検索機能?
というと夢がないようですが、たとえば野球選手やサッカー選手だとわかりやすいでしょうか?
彼らの動きを見つつ、それまでの個人成績や所属履歴、決定率などのスペック情報を簡単に引き出し、かつその個人のタグが紐付けられている動画情報などにもアクセスできれば、楽しみ方の幅が広がります。
トーナメント方式の対人競技でも、対戦相手の戦績や得意なこと、苦手な情報も簡単に引き出せますので、スポーツの世界でも使えそうです。
で、ここまで書いて思ったのが、直近ではGoogleあたりに開発してもらって、動画を検索して「テキスト情報」と紐付ける技術に使われた方がいいような気がしました。
膨大な動画情報の中にある「個人」の映像情報と、データベースにある「個人の情報」をマッチングできれば、著作権管理も肖像権管理も検索精度も向上するような気がします。
このベンチャーだったら、Googleが買うのではないでしょうか?
結論はとりとめもなく
諸々と妄想してみましたが、一部は既に実現されていそうだったり、使い方によっては怖いことになったりしそうですが、リアルの人間や物に評価情報を振って、第三者が引き出す着想のインタフェースとして、『東のエデン』に登場した携帯アプリは面白いです。
アニメを見て、そこに登場する道具の使い方に面白さを感じることはあまり無いので、今回は新鮮でした。
問題はアニメの中でもあったように、評価された人間がその情報を知った場合に、名誉毀損や犯罪に繋がる・巻き込まれる可能性を秘めていることでしょうか?
まずは人間以外の物だったり、映像情報のタグ付けなどと紐付けていけると、現実的になっていく気がします。
公共性の観点では選挙の立候補者と彼らの政策や公約、発言履歴・投票履歴などの情報を、選挙前に共有することも有益だと思います。
まとめきれませんでしたが、誰かもっと情報を持ち、ネットに精通している人が分析をしてくれることを願って。
アニメ本編との関連で言うと、あのアプリのおかげで誘拐された仲間の居場所が特定できたりするんでしょうか? 物語の伏線として登場したと思うので、「サポーター」の識別に使ったりされるのかもしれません。