- 作者: サラ・ウォーターズ,中村有希
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/09/18
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資料情報サイトに『エアーズ家の没落』の感想(後半にネタバレ有り)を書きました。この作品、屋敷の描写が優れているだけではなく、第二次世界大戦後、経済的に困窮する地主階級(貴族ではないけど領地を所有する人々)が詳細に描かれています。
上記、感想のリンク先の前半には戦後の屋敷における経済事情や雇用事情の解説を書きましたので、ネタバレに触れる以前までは読書のお役に立てると思いますので、関心のある方はご覧下さい。
戦後衰退する貴族像で言うと『日の名残り』も挙げられますが、「経済的にどれだけ苦しいか」を主人サイドで描いている点で、『エアーズ家の没落』は秀逸ではないかと思います。屋敷を所有する人々が置かれている経済状況を理解すると、この物語は別の見え方になるかもしれません。少なくとも、私の目にはエアーズ家の人々が尋常ではないレベルで精神的に追い込まれているように見えました。
アガサ・クリスティーの作品で、屋敷を維持するために殺人事件が生じるエピソードがあったと思いますが、屋敷というのは本当に愛を注がなければなりませんし、その対象にふさわしいものですが、莫大なお金がかかるものだと再認識しました。
屋敷+使用人+地主階級(貴族ではない)、そして階級を超えて労働者階級から医師という職業に就いた男性の苦悩の物語としても見ることができます。階級の話は感想でほとんど描きませんでしたが、この辺りの描写も非常に多くあって、イギリスらしい作品といえると思います。