ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

『3月のライオン』5巻に感じた「人と人の様々な繋がり」

3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)

3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)





いまさらですが、『3月のライオン』5巻の感想を。3箇所、非常に響くところがあったので、そのうちの一つ、「人を繋ぐ島田八段の生き方」の感想を書きます。このブログで『3月のライオン』の感想を書くのは初めてでしょうか。個人的に好きな作家の方は、「どうしてこの人には、こんな風に世界が見えるのだろう」と共通して思わせてくれます。今回の5巻では特に強く、魅了されました。羽海野チカさんの描く世界は本当に温かく、優しいです。



ネタバレになるので、以下、未読の方は見ないようにお願いします。





























私が最初に魅力を感じたのは、人を繋ぐ島田八段の生き方です。4巻で存在感を発揮した島田八段。「棋士としての生き方」、将棋と向かい合い、故郷の期待を背負う姿は印象的でした。5巻ではそんな島田八段の「人としての生き方」が照らし出されました。5巻では帰郷した先で、故郷の人々を繋ぐ「場」として将棋クラブを作り出した島田八段の魅力を、地元記者が、主人公の零に伝えます。




島田八段の出身は、ここよりもっと山形の奥地でね。過疎化が進んで、冬は雪の中で一人暮らしの老人が孤立してしまう、冬の厳しいところです。それに心を痛めて彼が作ったのが、塩野将棋クラブです。



(中略)
島田八段は自分の村から孤立する老人を、無くす仕組を作ろうとしているんです。

3月のライオン』5巻P.21-22より引用


棋士がこういう描かれ方をするとは、予想外でした。しかし、納得できるものですし、素晴らしい描写だと思います。地元の期待を背負い、応援されるだけではなく、地元に対して自分が何を出来るかを考えて行動する島田八段の姿は、私には眩しく見えました。



バラバラになってしまった人々を結び付け、居場所を作り上げる。場が生まれることで個人個人が繋がり、居場所を見つけてやりがいを見出していく。島田八段に地元の記者がほれ込んでしまうのも、自然なことでしょう。



今回、他にも2箇所、とても言及したい箇所があるのですが、私の言葉では伝えきれません。最後の方で描かれた人と人との繋がり方はとても繊細でしたし、想定していませんでしたし、私ではきっと見つけられない感覚で、羽海野チカさんらしい描き方に震えました。



魅力的な人物があふれている、そして『3月のライオン』はその人々が輝く最高の舞台であると、私は思います。この物語は、どう終わるのでしょうか。いつか来る終わりが寂しくありつつも、主人公の零がどんな人間へと成長していくのか、その過程でどんな人と出会っていくのか(人の多面性に触れていくのか)、興味が尽きません。