以前書いた屋敷に仕えた執事に求められた4つの能力に対して、はてなブックマークで、次のようなコメントを頂きました。
id:reds_akaki 執事, マネジメント, 日の名残り, もしドラ 柳下鰌狙われてはid:spqr id:y_arim http://b.hatena.ne.jp/entry/lunaticprophet.org/archives/4441 2011/04/20
http://b.hatena.ne.jp/reds_akaki/20110420#bookmark-29633569
紹介されていたURLを見に行ったところ、「各界の『もしドラ』フォロワーたち」のその後(2011/04/06)と題して、『もしドラ』的なタイトル・表紙・構成・伝え方をした本や作品の紹介をしていました。とても多いですね。
実は「執事とマネジメント」で本を作ろうと思い、実在した英国がどのように仕事をしたのかを解説する同人誌『英国執事の流儀』を2009年夏コミ(『もしドラ』の発売前です、一応)に作っています。
同人誌『英国執事の流儀』
ただ、『英国執事の流儀』は、ドラッカーのマネジメントを参考にしたというより、それを参考にしているGTD(Getting Things Done)のデビッド・アレンや、会社で受けたマネジメント研修、そして実体験(仕事を管理する側・される側両方)をベースにしています。ちょっとレイヤー的には内向きな感じです。
- 作者: デビッド・アレン,田口元
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2008/12/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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なぜ執事とマネジメントかというと、英国貴族の屋敷で働く人は多いので、きちんとマネジメントしないと最適な運用はできませんし、働く人間が多いので業務効率化のために業務定義や結果の評価が必要でした。ありがちですが、複数の経路から指示を受けるのもストレスになります。
以下は、Astor家で執事となったGeorge Washingtonが見習い時代を振り返っての言葉です。
『私に居心地の悪さを引き起こしたのは、私の雇用主でもなく、執事のMr Brookerでもありません。執事は親切ないい人でした。それは、ハウスキーパーでした。ここで私の業務は曖昧で、何かひとつの仕事を始めるとすぐに呼び出されては、別の仕事をさせられるのでした。こんなポジションでは、何かをうまくやっていくことは不可能でした』『英国メイドの世界』P.39より引用
また、企業で言うところの「クライアント」として「屋敷の雇用主=主人・女主人」がいるわけですが、手ごわい人もいて、指示が下手なのに干渉する雇用主には苦労させられました。最近『英国王のスピーチ』で話題となっているジョージ六世の兄、「王冠を捨てた恋」をした元・エドワード八世、ウィンザー公爵に仕えた執事Ernest Kingは、自らの手記でシンプソン夫人の使用人の使い方の下手さを批判しまくっています。
講談社から出した『英国メイドの世界』の第一章内の「上級使用人・下級使用人」や、第六章「上級使用人」では、屋敷におけるマネジメントや管理職の業務に触れていますが、この中で前述のErnest Kingが述べた言葉を引用します。
『命令を出して使用人を操ることは、ひとつの技です。つまるところ、今日の工場のように――私は使用人と工場の働き手はほとんど同じだと思います――人事をマネジメントすることは、高い専門性が求められる仕事です。
適切なやり方でマネジメントが行われていれば、誰も命令しているのはだれかなんて気にしません。しかし、そんな天分や能力が誰にでも備わっているわけではないのです。
やり方さえ知っていれば、あらゆる人から最大限の力を引き出す方法や手段もあるのです。でもそれを知らなければ、部下はすぐに怒り出すでしょう』『英国メイドの世界』P.40より引用
『英国メイドの世界」はそういう読み方もできるので、興味をお持ちいただけると嬉しいです。
また、同人誌『英国執事の流儀』あるいは執事のマネジメントについての出版をご検討する出版社があれば、お声掛けください。ただ、引用した英文の翻訳校正がかなりあるので、ある程度のコストと手間とノウハウが必要になるのではないかと思う次第です。とはいえ、今、執事のトレンドが来ているので(本当?)、「柳の下の泥鰌」ではなく「鰻」になるといいなぁと思います。
あと、在庫切れ・注文不可となっていた『英国メイドの世界』のAMAZON側での対応が完了し、注文受付できるようになりましたので、ご報告を。
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